凶悪犯罪者バトルロイヤル 第180話


 兵どもが夢の跡。今は遺体の回収も済み、すっかり平静を取り戻した「あやめ橋交差点」を訪れた松永太は、斥候のヤクザから上がってきた報告を聞き、今回の戦いを総括していた。

 我が軍が経験した「環七通りの戦い」以来の、大兵力によるぶつかり合い。今度の戦いでも多くの血が流され、大会の帰趨に大きな影響をもたらした。

 バドラ側の戦死者は一名。戦闘エースであった造田博の命が失われた。宅間守、加藤智大と比べると一枚格が落ちるとはいえ、これまで有事の際の精神的支柱となってきた彼の離脱は、バドラにとって大きな打撃に違いない。彼の死は、単なる信徒一人の死よりも重要な意味を持つ。いずれ来る我が軍とバドラの戦闘も、これで進め易くなったというものだ。

 角田軍側の戦死者は三名。運命に導かれ、出会いを果たした闇サイトトリオの三人は、死の際も運命を共にした。車両を利用した奇襲戦術が得意であった彼らにとって、正面からの白兵戦は土俵外の戦いだった。神出鬼没の彼らを亡き者にしたことによって、ようやく宅間らは枕を高くして眠れることだろう。

 これにより角田軍の傘下団体は、コリアントリオのみとなった。合計人数は8人で、我が軍及び永田軍のライン10名とは、数の力が逆転した格好である。包囲網によりバドラを追い詰めつつ、潜在敵国である角田軍の力をも削いでいくという松永の狙いは、成功した形となった。

「やあ、松永さんかい?」

 受話口から聞こえる皺枯れた声――。「同盟者」からの、事後報告が入ったようである。

「お疲れ様です。今回のご協力、感謝します」

「いやいや。こっちの総力を結集しておきながら、敵の首は一つしか獲れんで、恥ずかしい限りだよ。こんな戦果しか挙げられんのなら、松永さんに頭を下げて、兵を借りておくべきだったかもしれないね・・」

 出陣にあたって余計な遠回りをし、我が軍の斥候を撒いてから戦場に向かったくせに、よくそんな言葉が出るものだ。お蔭で我が軍は、疲れ果てたバドラ、宅間軍を討ち取り、漁夫の利を浚うことができなくなった。ようするに、我が軍には少しの手柄も渡したくないわけだが、それは松永とて一緒。角田を責めることはできない。

「それで、松永さん。これからのことなんやけど・・・」

「ええ、わかっています。しばらくはゆっくりと休んでください。今度は我々が兵を出します」

 松永は明言した。角田軍がここまで骨を折り、一定の戦果も挙げてくれたのは紛れもない事実なのである。功績を帳消しにするほどの落ち度でもない限りは、次は我が軍が動かなければ、包囲網全体からの信望を失ってしまう。

 角田美代子との電話を終え、松永はバドラとの直接対決にあたっての、具体的な戦略を練る。

 まず、攻め込む時期のことだが、これは早ければ早い方がいいだろう。というのは、バドラの同盟者、宅間守が負傷で動けない隙を狙うということだ。

 バドラ、宅間連合を崩すにあたって、角田美代子は、数の少ない宅間軍を集中的に狙うという方法をとった。間違いではないし、当初は松永もそれを考えていたのだが、宅間軍の脅威的な粘りを見た今、それは得策ではないような気もする。人数は三人とはいえ、宅間軍の戦闘力はバドラを凌ぐのではないだろうか。また、潤沢な資金を持つバドラならば、壊滅し略奪することで我が軍の戦力を増強もできるが、宅間軍を壊滅させても、経済面で大したうまみはない。

 それらのことを踏まえて、松永は宅間軍が動けぬ隙を狙い、バドラに的を絞って攻めることとした。しかし、角田軍のように、大人数のバドラに真正面からぶつかろうというのではない。分断工作を図り、直接対決の際にはできるだけ数的有利を作るつもりである。

 無論、簡単にはいかない。固い絆で結ばれたバドラには、内通の類は一切通用しない。また現在、バドラでは信徒の「ワーク」を禁止しており、行動するときは、常に全員が一緒である。バドラのシンボルである「秘密基地」には、城番としてわずかな信徒が留め置かれているが、夏休みである現在、昼は小学生の子供たち、夜は中、高校生の不良少年が常在しており、一般人に危害を加えてはいけないルール上、攻めることはできない。

 悲観することはない。バドラも人の作った組織である以上、何か必ず付け入る隙があるはずである。川俣軍治ら包囲網参加者に声をかけ、できるだけ多くの兵を募るとともに、バドラの兵力を分断させる方法を探っていく。

 分断工作に成功した結果、相手の兵に麻原が混ざっていなくてもいい。チャンスよりもリスク。一足飛びに麻原の命を奪うよりも、バドラの戦力を確実に削ることを優先する。焦る必要はない。手、足と順番にもぎ取り、最後に首を刎ねればいいのである。

「いよいよ、バドラとの決戦ですね。角田さんたちには、包囲網盟主に相応しい戦いぶりを見せてあげましょう」

 傍らにいる重信房子が力強い言葉を述べる。自分がお膳立てをした後は、この女が戦場で敵を討つ。重信に花を持たせるため、自分は裏で駆けずり回るのだ。

 賞賛はすべて重信が独占する。それでいい。批判もすべて重信に集まるのだから。

 大会の山場となるであろう今の時期を最高の形で勝ち残るため、松永の策謀には余念がない。
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うわああああついに直接対決ですか…!暗躍する松永おじちゃん渋いです(((o(*゚▽゚*)o)))ますます熱くなる闘いに目が離せませんね!(勉強しろや受験生

No title

きょうはそんしのおぢちゃんのひっしょうをきがんして
つめたくてこいーいかるぴすをのんだあとに
おしっこをがまんしました。おぢちゃんがんばれちょうがんばれ。

No title

>>枇杷さん

 八月はバトル展開を多めに書くことになりそうです。結構な命が失われるんではないかな。勉強の合間に読んでやってください💦

>>NEOさん

 熱心に応援されて尊師は果報者だw四方八方から攻められて厳しい時期ですが、バドラは苦境を脱出できるのでしょうかねえ・・。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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