凶悪犯罪者バトルロイヤル 第175話

セブンスターをゆっくりと灰にしながら、宅間は今回の戦場である「あやめ橋交差点」へと、敵軍を誘導する。

 宅間達自身があやめ橋交差点を通過し、交差点の名の由来であるあやめ橋に到達したころ、麻原のオッサンからのワンコールが入った。戦場到着の合図。今まさにあやめ橋交差点に到達した角田、闇サイト、コリアン連合軍の背後から、バドラの所有するファミリーワゴンが現れた。

 ワゴンから、造田博、小田島鐡男の二人が降りてくる。さらに、都道11号線の蒲田駅側からは、バドラの勝田清孝、菊池正の二人、反対の京急蒲田駅側からは、大道寺将司、小平義男、丸山博文の三人が姿を現す。

 ワゴンに乗って現れたグループをA班とするなら、蒲田駅側から現れたグループはB班、京急蒲田駅側から現れたグループはC班、そして宅間たち三人をD班とする。この四班で角田連合軍を取り囲んで逃げ場をなくし、一気に叩き潰す。それが宅間が即席で考え、麻原のオッサンに、金川真大のメールで伝えた作戦であった。

 バドラの連中は、例の「秘密基地」に、城番として正田昭を残し、九人が出陣している。バドラ、宅間連合軍の十二に対し、角田、闇サイト、コリアン連合軍の十。そのうち、女の吉田純子はおそらく全体の目付け役として戦地に赴いているだけで、戦闘には参加しないだろうから、実際の戦力差は十二対九。人数の上でも、配置の上でも、こちらが有利の体制だ。

 宅間達が横断歩道を渡ったとき、ようやく信号の前まで来た敵が何かを感じたのか、歩みを止めた。しかし、もう遅い。もはや角田連合軍は、四方をバドラと宅間軍に囲まれた、袋のネズミである。

 狭まる包囲の輪を見て、敵軍が動いた。敵は、9人の集団を分割し、A,B,Cの各班に向かって攻めかかったのである。

 宅間が憂慮していた一つの事態は避けられた。それは、敵軍が一か八か、麻原のオッサンがいるワゴンの方へ、全軍を投入して攻めかかることである。戦力の一極集中の原則からいけば十分あり得る展開であったが、敵軍はそれよりも、前後から挟み撃ちにされる事態を恐れたらしい。

 ワゴンに麻原のオッサンが乗っているとわかれば事態は違っただろうが、スモークフィルムが貼られた窓ガラスからは、車内にいる麻原のオッサンは視認できない。敵軍は、己らが総大将の角田の婆が戦場に出てこなかったのをいいことに、こちらも麻原のオッサンが家で寝ていると思い込んでおるようだ。

 ともかく、敵は軍を分割する手を選んだ。A班に向かったのがコリアントリオ、B班に向かったのが闇サイトトリオ、C班に向かったのが、角田軍の連中である。最強の男、永山則夫をA班にぶつけなかったことからも、敵軍が麻原のオッサンが戦場に赴いていることに気が付いていないのがわかる。

 最大の戦力を持つ我がD班と真正面からぶつかろうとしなかったのは懸命な判断のようだが、奴らはわかっていない。我がD班が、A班、B班、C班、どの班に援護に回っても、戦力の均衡は著しく崩れるのである。宅間が援護に向かった班が、対峙する敵軍のグループを壊滅させれば、すぐさま別の班の援護へと向かい、そこでまた戦力の不均衡が発生する。敵が全滅するまで、それが繰り返される。

 敵軍を蒲田駅周辺の然るべき場所まで誘導するにあたっては、二通りのパターンが考えられた。一本道で前後から挟み撃ちにするパターンと、交差点で四方から包囲するパターンである。特に根拠はなく、宅間独特の動物的勘により後者を選んだわけだが、どうやら正解だったようだ。

「手始めに、一番近いところにおる闇サイトの奴らからや。チャッチャと済ますぞ」

 宅間が、蒲田駅側から現れたB班の援護に回ろうと走り出した瞬間、信じられないことが起こった。麻原のオッサンが、ボディーガード兼運転手の関光彦を伴い、ワゴン車から降りてきたのである。

 あのアホは、何を考えておる?車の中に隠れて、高みの見物を決め込んでおればいいものを、なぜわざわざ、危険に身を晒す?あんな不細工な体で殺し合いなどできるはずもないのに、何を考えて出てきたのか?宅間にはまったく、わけがわからなかった。

 大声を出すわけにもいかない。まだ、敵が全員、麻原のオッサンに気が付いているわけでもないのである。とにかく、宅間が今せねばならないのは、速やかに麻原のオッサンと同じ島に移ることだ。島というのは、交差点を中心とした、北西、北東、南西、南東の歩道のことで、それぞれを、米屋のある北西が1の島、レンタカー屋がある北東が2の島、便所がある南西が3の島、駐車場がある南東が4の島とする。

 現在の配置は、麻原のオッサンがいるA班が1の島信号機付近、蒲田駅側から到着したB班が3の島西側、京急蒲田駅側から到着したC班が4の島信号機付近、そして我がD班が、3の島南側に位置している、という状況である。

 もともとは3の島信号機付近にいた敵軍は、今、それぞれの敵と相対しに、各島へと散っている最中である。避けなくてはならないのは、麻原のオッサンがいる3の島に、敵軍が殺到してしまう事態だった。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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