スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

凶悪犯罪者バトルロイヤル 第三十一話

 

 宮崎勤は、シンクにあった包丁を手に取ると、仰向けに転がった服部純也の死体の腹部に突き立てた。力を込めて、三センチほど刃をめり込ませると、夥しい量の鮮血が床に流れる。一たん作業を中断し、僕は服を脱いで全裸になった。

 作業を再開したところで、問題に気付く。刃の接触面積が、三センチではあまりに少なくて、うまく力が伝わらないのだ。そこで僕は、再び刃を垂直に立てると、柄の尻に手を置き、思い切り体重をかけた。

 どす黒い血液が噴水のように勢いよく吹き出して、僕の全身を染め上げる。包丁の刃は、根元までずっぷりと突き刺さった。接触面積が増えたこの状態なら、さっきよりもずっと簡単に肉が切れるだろう。僕は包丁を両手で握り、手前に向かって引いた。鋸のようにして上下に刃を動かし、摩擦力を利用して切っていくのがポイントだ。

 じゅぶ、じゅぶ、と、血液が噴き出す音と、ぶす、ぶす、と、裂けた腸からガスが立ち昇る音が、室内に響き渡る。血で汚れるのはいいのだが、糞便と吐しゃ物を混ぜ合わせ、それを何日もかけて熟成させたような、この猛烈な悪臭は耐え難かった。換気のため窓を開けるわけにもいかず、仕方なくその場にあったファブリーズを噴霧したが、効果は焼け石に水だった。くさい臭いも、小さな女の子が発していればむしろ興奮するが、むさい男では不快でしかない。この辺りは今後の課題とし、今回は我慢するしかなさそうだった。

 十分ほどで、どうにかこうにか、腹部の肉を、200gほど切り取ることに成功した。僕は、血と体液と脂とに塗れ、テラテラと鈍い光沢を放つ肉塊を手に持ち、キッチンへ移動した。コンロに火をつけ、サラダ油を敷いたフライパンをよく熱する。油がはね始めたところで、肉塊を投下した。

 強烈な刺激臭が、鼻孔に侵入・・はしなかった。臓物と汚穢が浮かぶ血の腐海から立ち昇る悪臭のせいで、僕の鼻は、突発性の嗅覚障害に陥っているようだった。
 
 三分ほど火にかけると、肉はいい色に焼けてきた。ちょっとしたポークソテーのような塩梅である。僕は火を止めると、肉を皿に盛りつけ、食卓へと運んでいった。テーブルに置かれている唯一の調味料である醤油をかけて、肉にかぶりついた。

「ふむ」

 肉は筋張っていて硬く、皮もあるため、余計に食べにくい。だが、味の方は、そう悪くない。独特の塩味が利いていて、調味料がいらないくらいである。ジューシーで、なかなかに深い味わいである。二十数年前、僕が優しいことに使ってあげた「あの子」の指はどうだったろう。じいさんの骨は、スナック菓子みたいでなかなか美味だったな。懐かしい思い出を振り返りながら、僕は食事を楽しんだ。

 200gの肉を食べ終わると、腹が膨れてきた。そろそろ、おいとまするか。僕はシャワーを使って、身体にこびり付いた血液と悪臭を洗い流してから、また服部の「肉物体」が転がる部屋に戻り、服を着た。

 が。そこで、異変に気付いてしまった。

「くせえっ」

 僕のお気に入りの白のシャツが、耐え難い悪臭を発している。凄まじい臭いだ。ファブリーズをかけてみたが、臭いは落ちない。まるで、服部の恨みが染みついたようだ。こんな服では、とても外を歩けない。

 どうしよう。
 
 服部の服をいただくか。

 と思ったが、衣装ダンスが見つからない。なんと、服部の奴、今着ている服しかもっていないようだった。それは言うまでもなく、血と悪臭に塗れて使い物にならなくなっている。もしかしたら他の服は、コインランドリーで洗濯している途中なのかもしれない。いずれにしろ確かなのは、このままでは、裸で外を歩かなくてはならないということだ。スタイリッシュな僕に、そんなことができるわけがない。

 困った僕は、木嶋佳苗に電話してみたが、出やしない。役に立たない女め。
 
 木嶋佳苗が応答するのを待つしかないのか。鼻毛が干からびそうな、この悪臭に満ちた部屋の中で?冗談じゃない、死んじゃうよ。それに早くここを出なくちゃ、最近はまっている夕方6時のアニメに間に合わないじゃないか。
 

 どうしよう。

 どうしよう。

 どうしよう。

 うーん。

 そうだ。

 閃いたぞ。

 この前番号を聞いた、松永とかいう奴に電話してみよう。

 僕は携帯を手に取り、登録してあった松永の番号を呼び出した。

「松永です」

 松永は、2コールで応答した。

「あ・・あ・・・えっと・・」

「宮崎さんですね。ご無沙汰しております」

 名乗ってもいないのに、松永は僕が誰かわかったようだ。用件を尋ねる松永に、僕は、現在の状況と、服部のアパートの住所を教え、服を届けてほしい旨を伝えた。松永は快く了承した。

 三十分ほど待っていると、いきなりドアが開く音が聞こえてきた。インターホンも鳴らさずに部屋に入ってきたのは、加藤とか呼ばれていた若い男だった。

「な・・なんだこれは・・」

 酸鼻を覆う光景に、加藤が顔をしかめる。そんなに引くほど、グロい光景か?まあいいや、さっさと服を寄越せ。僕はタオル一枚を腰に巻いた格好で歩み寄り、加藤が持っていた紙袋に手を伸ばした。すると、加藤はそれを後ろに隠して、

「待て。服は渡す。その代わり条件がある」

 と、僕への謎の嫌悪感と警戒心を滲ませた口調で言った。

「お前のアジトに案内しろ。一緒にタクシーに乗れ」

 なんだ。そのくらいなら、お安い御用だ。僕は加藤が持ってきた服を着た後、加藤と一緒にタクシーに乗り込み、青山のマンションへと向かった。

「おい。お前は今、誰かと一緒に行動しているのか?」

 車に乗るや否や、加藤が質問を飛ばしてきた。こいつ、さっきから生意気だな。見た目は同じ年齢くらいだが、実年齢では、僕より年下のはずだろう。なのになんだ、その口の利き方は。こいつも、肉物体にしてやろうか。
 
 いや。それは無理だ。こいつの全身から発せられるオーラ。服部に感じたそれより、数段上の強さだ。とてもではないが、戦って勝てる相手ではない。素直に言うことを聞いた方がよさそうだ。
 
「木嶋佳苗って女と一緒だ」

「現在の軍資金総額は?」

「・・金は全部、木嶋が管理してる。僕は一切触れてない」

「・・一日の生活パターンを、簡単に教えろ」

 などといった会話を交わしているうち、マンションに到着した。僕がカギを開けると、加藤は断りもせず、一緒に部屋に入ってきた。無礼な奴だが、好きにさせておくことにした。僕は今、それどころではない。六時のアニメを観るため、テレビの前でスタンバイしていなければならないのだ。

「もしもし、加藤です。宮崎勤のアジトに到着しました。奴は今、木嶋佳苗と二人で行動しているようです。木嶋は今、不在にしています」

 加藤が、誰かと電話を始めた。うるさいな、さっさと出て行けよ。アニメが始まっちゃうだろ。

「カギ・・?はい。わかりました。おい、宮崎勤。カギを寄越せ」

 加藤をさっさと追い払うため、僕は言われた通り、カギを渡そうとしたが、そこでハッと思いとどまる。

「あっ・・駄目だ。木嶋佳苗に、カギを失くしたら、カレー仲間を作ってあげないと言われてる」

「つべこべ言わず、よこせよっ!」

 加藤が詰め寄ってきた、その瞬間だった。

「やめなさいっ!加藤くん!」

 加藤の携帯の受話器から、女の大喝が聞こえてきた。重信房子・・。僕が密かに気に入っている、あの女だ。

「すみません・・」

「今日のところは、もう帰ってきなさい」

「はい」

 加藤は重信との通話を終え、携帯カメラで室内の様子を一通り撮影すると、僕になんの挨拶もせず出ていった。やっと出ていったか、野蛮人め。
 
 しかし、久々に重信房子の声を聴いて、少し興奮してしまったな。アニメが始まるまで、あと5分・・か。ギリギリで、間に合うかな。
 
 僕はフローリングの床に、仰向けになった。さっき聴いたばかりの重信房子の声を、脳内でリピートした。股間に手を伸ばす。ファスナーを開けようとした、そのときだった。

「うわっ」

 重信房子の倍は面積のある巨大な顔が、僕を睥睨していた。なんだ、帰っていたのか。

「ただいま、勤さん」

「あ、ああ。おかえり」

「私の頼み事は、聞いてくれたのかしら?」

「う・・うん。君の言う通り、殺して金を奪ってきたよ。ほら」

 僕が戦利品の財布を差し出すと、木嶋佳苗は、肉厚の頬を緩め、満面の笑みでそれを受け取った。財布の中身は、約十二万円が入っている。

「思ったより、もってなかった。ごめんね」

 本当はあと一万円あったのだが、今月発売の「エヴァQ」のDVDを内緒で買うために、すでにガメていた。

「いいのいいの。スポンサーさんがお金をくれるから」

「スポンサー?」

「ふふ。勤さんは気にしなくていいのよ」

 木嶋佳苗は機嫌良さそうに言うと、ドスドスと弾むような足取りでキッチンに向かい、夕食の支度にとりかかった。こいつ、僕に何か隠してるな。気にはなったが、尋ねる気はしなかった。アニメが始まったのだ。

「今日のメニューは、ローストビーフよ。お肉はウチに来てから初めてでしょう。気合入れて作るから、楽しみにしててね」

 うへえ。肉かよ。僕はげんなりした。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: タイトルなし

>>夜桜さん

おお・・。
貴重な経験をされていますね。
よろしければ、詳しくお話聞かせて頂きたいです。
是非とも。


うーん、否定的な意見は殆ど頂いたことがないんですよ。
というか、一件だけですね。
何の内容もない、単なる誹謗中傷目的としか思えないような一行レスでした。
宣伝に利用していた2ちゃんねるの方を見てみればなんか書いてあるのかもしれませんが、ここにそういったコメントが書き込まれたことは殆どないですね。

社会に出ていたときは人の心の冷たさしか感じませんでしたが、
引き籠もったことで、世の中には暖かい人もいるんだなあということを、実感しております。

本当は批判意見が出てきてもいいので、もっと多くの人に見て頂きたいのですけどね。
自分はマザー・テレサのように人に優しい、心がきれいだと勝手に思っている人にこそ見て頂きたいです。
闇を知らない、闇を知ろうとしない人間に、真の優しさなど有り得ないのですから。

俺は最低です…
宅間のおいちゃんにあんなに夢中だったのに。

勤兄さんに夢中になりつつある自分を感じてます。

No title

>>けつのすさん

ww

浮気、いいじゃないですかw

僕だって「エヴァQ」での命を削った宮村優子の演技を見て以来、

十年間連れ添った妻である綾波レイとも今まで通り生活をともにしながら

アスカとも関係を持っています。

プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。