凶悪犯罪者バトルロイヤル 第171話


 第三試合。永田チームは松村恭造くん、角田チームは、コリアントリオの孫斗八の登場である。

「おいおいおいおい~!貴様ら、ウチのイを傷つけやがって、この落とし前はどうつけてくれるんだ?あ~」

 開始線に立つなりまくしたてる孫。永山則夫の迫力にただ一人怖気づかなかったのが、この「獄中所長」である。

「おい!貴様、聞いてるのか?文句があるならその口で言ってみろ!貴様らの非道な行為について、俺が断罪してやるからなあ!」

 文句があるなら聞くと言っておきながら、相手が言葉を返す間も与えず口撃を繰り返す孫に、松村くんはタジタジである。松村くんも松村くんで、親族二名を自分勝手な理由で殺害し、法廷ではあの宅間守のように被害者を冒涜する発言を連発し、最後まで反省せず死んでいった凶悪犯罪者なのだが、傍若無人を絵に描いたような孫の威勢には圧されっぱなしだった。

 吉田のオバサンが半ば呆れ顔でゴングを鳴らし、試合が始まった。まず仕掛けたのは孫である。

「はははは~、どうした、手を出してみろ!」

 孫の連続攻撃を、松村くんは躱すのがやっとである。滅多無人に警棒を振り回しているようだが、返しは早く、狙いは全て人体の急所。確かにあれでは、反撃のきっかけを掴むのは難しい。子供のころはスポーツ万能で、喧嘩も強かったという孫。どうやら、口だけの男ではないようだ。

 ―――が。軍団に加わってから三か月、松村くんと一緒にトレーニングをしてきた俺は確信した。敵ではない、と。

「ぐふっ」

 松村くんは、ウォーミングアップ時から孫の動きを観察し、攻撃の癖を把握していた。あとは目が慣れるのを待つだけだった。一瞬で孫のみぞおちに警棒を突き刺し、返す刀で側頭部を強打。そこで相手がタオルを投げ入れ、それで試合が終了した。

「まてっ、まだやれたっ!仮にあれがナイフだったとしても、俺はまだ戦闘力を有していた!今のはタオルのせいで負けたのであって、力が劣って負けたわけではない!試合をやり直せ!やり直せ~!」

 試合が終わった後も、孫は一人叫び続ける。往生際が悪いのも、ここまで行けばあっぱれであるが、その孫が、次の試合を見て言葉を失う。

「ふんはっ!」

 猛牛――。いや、永田のオバサンの、裂帛の気合い。男勝りというか、男そのものの凛々しい姿。これに圧倒された孫は、それきりクレームをやめたのである。対戦相手の藤井政安も、その迫力に、早くも戦意喪失気味だった。

 ゴングが鳴らされる。試合が始まってみると、永田のオバサンは、先ほどの雄々しい雄叫びに似合わない、華麗な足さばきからの突きを繰り出し、藤井を翻弄する。じりじりと後退していく藤井に、最後は小手を浴びせて警棒を落とさせ、鼻先に警棒を突きつけ、ここで相手がギブアップ。開始から一分も経たぬ内の、鮮やかの秒殺劇だった。

「なんだい、これで四戦四敗やないか。うちのチームは情けないねえ」

 角田の婆さんが嘆くが、しかしその顔には、けして悲壮感はない。

 最後の試合――大将戦。俺と永山則夫、両軍のエース対決。クイズ番組のお約束ではないが、この試合には、前四試合の結果を帳消しにするくらいの意味がある。角田の婆さんの余裕はここからきており、俺にとっては、絶対に負けられない戦いだった。

 そう、絶対に負けられない戦い――。しかし、これはあくまでトレーニングの一環である。あまりに勝敗に拘りすぎるのもどうなのか。この合同トレーニングが決まったときから、俺にはこの永山則夫を相手に、試してみたいことがあった。

「永山、エアガンを使えよ」

 俺の発言に、一同が顔色を変える。

「おい、加藤。お前、何を言ってるんだよ」

「これを勝てば、我が軍の全勝ですよ。加藤くん、考え直しなさい」

 コーチの小川さんとキャプテンの永田のオバサンが、口々に発言の撤回を求める。しかし、俺にも譲れない考えがあった。

 「環七通りの戦い」――俺が都井睦夫に惨敗を喫した理由は、まさしくヤツの使う電動ガンにあった。予期せぬ戦術に戸惑った。たしかにそうなのだが、銃を使って三十人を殺した都井と戦うのに、その戦術を予期していなかったのは、明らかな失態である。

 傾向と対策――。学問の世界から落ちこぼれた俺には思い出したくもない言葉だが、実際に鉾を交える前に、出来ることはなるべくやっておかなければならない。

 永山則夫は、都井同様に銃の使い手である。都井との戦いで刻み込まれた飛び道具への恐怖を払しょくするとともに、いつか殺し合うかもしれない永山則夫の対策を固める。折角合同トレーニングという機会を得たのだから、出来ることはすべてやっておきたい。

 俺はチームメイトを説得した。永田のオバサンと小川さんも、結局は押し切られる形で、首を縦に振った。そして、俺の提案を受け、特別ルールが制定される。

 ・試合は10m×10mの枠内にて行われ、開始線は枠内の自由な位置に設けられる。
 ・武器は永山則夫に限り、エアソフトガンを使用。加藤智大には防弾ゴーグルの使用が認められる。

 それ以外のルールは、基本的に前四試合と同じになる。そしてルールに対応して、拡張された枠内に、ソファやタンスなどの、障害物となる家具が運び込まれた。「車のジャングル」での戦いだった、環七通りの戦いと酷似した戦場である。

 全ての準備が整うと、俺は開始線へと歩き、永山則夫と向かい合う。お互いに、枠の外ギリギリいっぱいからのスタートである。

 5×5対抗戦第五試合――。連続射殺魔との戦いのゴングが鳴らされる。コンセントレーションを高めるため瞼を閉じていた永山則夫が、殺意の炎が燃え盛る瞳をあらわにした。
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初コメですが、全話読んでます♪面白くなってきましたね!これからも楽しみにしてます(^-^)/

No title

>>mi-yaさん

どうもありがとう!
僕もサクサク進めていきたいので、これからもガンガンコメントくれたら嬉しいです~!
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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