凶悪犯罪者バトルロイヤル 第169話

 8月3日。加藤智大は、松村恭造、小川博、及び同盟軍の永田軍を伴って、角田美代子軍との合同トレーニング会場に赴いていた。

 場所は、杉並区内の倉庫である。どこぞの企業が所有する物件らしいが、現在は稼働していないところを、角田の婆さんが金を払って借りたらしい。永田軍の本拠ほどではないが、広さは十分あり、トレーニングマシンなど設備も充実している。今日はここで、角田美代子軍と、同盟軍であるコリアントリオ、闇サイトトリオの連中とのトレーニングに臨む。

「やあやあ、よく来た・・・ん?なんだい、随分まあ、大勢で来たもんだね」

 朗らかな笑顔で迎えに出てきた角田の婆さんが、俺と一緒に来た永田軍の面々を見て、目を丸くする。向こうのご指名は、当初、俺一人であった。

「まあ、人数が多い方が、充実した訓練が出来ていいやね。今日はひとつ、よろしく頼むよ。純子ちゃん、案内して」

 心にもないことを言っているに違いないが、角田の婆さんは、表情からはそれを微塵を感じさせない。

 角田の婆さんが、今回、俺を倉庫に呼んだのは、十中八九、のこのこ一人でやってきた俺を討ち取るためだろう。しかし、そんなことはこちらとて承知の上である。松永社長に限って、みすみす角田の婆さんの罠に嵌ることはない。

 角田の婆さんとて、己の策が本当にうまくいくなどとは思っていなかっただろう。しかし、人間のやることに絶対はない。松永社長が深読みをしすぎて、俺を本当に一人で寄越す可能性だって、丸きりないわけではない。角田の婆さんは、その僅かな可能性に賭けた。

 一年という期間の中で、やれることはすべてやる――。極限まで無駄を嫌う松永社長とは、一線を画するスタイルである。普通の人間なら躊躇するような大胆な提案でも平然と言ってのける、厚かましさと図々しさ。大阪のおばちゃんの特性をいかんなく発揮し、角田の婆さんは大会を立ち回ろうということらしい。

 ここで一つ、疑念が生じる。角田の婆さんは、俺が永田軍を連れていくことくらいは、読んでいたはずである。リスクは考えなかったのか――?

 一人の男の影がちらつく。永山則夫――角田軍に新たに加わった、連続射殺魔。仮に我々と戦闘になったとしても勝ち残るだけの、絶対的な自信があったからこそ、角田の婆さんは今回の提案に踏み切ったのではないか。

 ともあれ、着替えを終えた俺たちは、トレーニングルームへと通された。角田、コリアン、闇サイト連合軍との、初顔合わせである。

 永山則夫は、角田の婆さんの隣に侍っている。犯行当時、19歳の姿で復帰した彼の顔はあどけなく、凄みや威圧感のようなものは感じられない。都井睦夫、造田博、金川真大・・・大会に参加する戦闘タイプの面々には、そういえば他にも童顔が多かった。くだらないことかもしれないが、もしかしたら、坊ちゃん坊ちゃんした顔立ちのせいで周囲から舐められやすく、鬱屈を溜めやすかった、などといったこともあるのだろうか。

「それじゃあ、ぼちぼち始めようかね。特に段取りなんかは決めてないんやが、どういう風に進めようかね。何しろ、身体を使うようなことには疎くてね」

「せっかく、これだけ多くの軍が集まったのだ。当然、普段はできない、実戦形式のトレーニングメニューにするべきだ」

 提案したのは、永田のオバサンである。正論であり、賛成の声が多かったため、この意見が受け入れられた。また、どうせやるならさらに趣向を凝らしてみようということで、今回は、角田、闇サイト、コリアン連合軍VS永田、重信連合軍との、5VS5対抗戦を行うという形で話が纏まった。

 主なルールは、以下の通りである。
 
 ・勝敗は、本人のギブアップ、両軍キャプテンのタオル投入のいずれかにて決まるものとする。
 ・試合は6m×6mの枠の中で行う。故意に枠外に出た者は、戦意喪失と認め敗北とする。
 ・武器には、練習用のソフト警棒を使用。その他一切の使用は認められない。
 ・制限時間は、インターバルなしの20分。時間いっぱいで引き分けとする。
 
 さらに対戦カードが、以下のように決まった

  先鋒  小川博   ×  川岸健司
  次鋒  栗田源蔵 ×  イチヌ
  中堅  松村恭造 ×  孫斗八
  副将  永田洋子 ×  藤井政安
  大将  加藤智大 ×  永山則夫

「ルールに守られた試合とはいえ、これは我々のラインと、角田美代子のライン、どちらが包囲網の主軸となるかに関わる、大事な一戦だ。けして負けるわけにはいかない」

 キャプテンである永田のオバサンが力強く宣言したが、同感である。今度の戦いで俺たちが負けるようなことがあれば、角田の婆さんはすかさずそこに漬け込んでくるだろう。もしかしたらこの展開も、角田の婆さんの計算づくだったのかもしれない。負けたところで、もともと盟主の立場ではない角田の婆さんには失うものはなく、逆に、今現在主導権を握っている俺たちには大きな重圧がかかる。明らかに不利な条件での戦いである。

「いやあ、こりゃ盛り上がってきたね。両チームフェアプレイで、いい戦いを見せとくれよ。フェフェフェ」

 角田の婆さんの不気味な笑い声が、薄暗い倉庫内にこだまする――。
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老け顔の加藤が童顔を批判するとは┐( ̄ヘ ̄)┌
モテるかモテないかでいったら
男の場合 童顔>>老け顔
女の場合 童顔>>>>>>>>>老け顔
なんだろうけど
舐められやすいのはどちらも童顔なんだろうな
自分が若い時から老け顔だから舐められる経験は
小学生の時いじめられっこだった頃だけで
高校生以上になってからずっとほとんどゼロ
むしろ怖がられる避けられる経験の方が多いので
童顔の苦労は理解できないが
おぼっちゃまに見えるのに実は貧困家庭出身(金川以外)はストレスが溜まりそうだな

No title

>>MSKSさん

いや批判まではいってないですよ💦

よく老け顔よりは童顔と言われますが結局は全体のバランスの問題でしょうね。小雪のような老け顔でも美人の人もいれば、キムジョンウンや与沢翼のような童顔でも気持ち悪いのもいます。

彼らを見てわかるように、普通体型以外には合わないというのが童顔の特徴ですね。老け顔がマッチョやデブになると「ワイルド、貫録がある」なんてことになったりもしますが、童顔だとひたすら気持ち悪いです。女性の場合この法則もちょっと違いますが・・。

No title

ある意味「角田パート」でもありますね。
大会中屈指のアクの強さを発揮して欲しいです。
コリアントリオがどう出るかも気になります。
これまでは猪突猛進一直線の宅間相手だからこそ
籠城やコリアンタウンなどの限定的な状況で
強さを発揮していましたが、
直接の武力衝突での実力は如何なるものなのか。
そして栗田”おせんころがし”源蔵の運命は?
初の実戦デビューとなる永田洋子の実力は?
そして何より加藤対永山の決着は?
今後も楽しみです。

No title

>>NEOさん

コリアントリオに関しては「弱者の戦術」ということを意識して書いてますねえ。バドラや重信一派のような大規模勢力が出来ていくなかで、3人程度の勢力が小器用に立ち回っていく様を描いていきたいと思っています。

栗田源蔵は、作品中でも書きましたけど、およそ人間の為せる悪行を全てやってのけたという犯罪者です。記録に残る限りで、これほど残虐非道な犯罪者はいません。時代が違ったらどうだったかわかりませんが、栗田の凶悪さには宅間さんも一歩及ばない気がします。今は永田洋子の下で飼いならされていますが、今後ひと波乱あるかもしれません。

それでは、5×5全面対抗戦を書いていきます。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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