凶悪犯罪者バトルロイヤル 第163話

「そうか。その理由とは、何なのだ」

 熱い棒読み――。信徒たちに渡すプレゼント代をいかにケチるかに頭を悩ます麻原にとって、宅間たちのことなど、極めてどうでもよかったのだが、立場上、聞かなければならない。実に煩わしいことであった。

「ヤクザです。敵に協力するヤクザが、宅間軍の動向を逐一知らせていたんです」

 現在、日本国内の指定暴力団所属の構成員数、四万数千――うち、東京二十三区に五分の三以上の人数が集中しており、非構成員を含めると、その三倍ほどの数になる。

 六万数千のアウトサイダーたちの眼が、宅間たちを追っている。積極的に探し出そうとしているわけではない。彼らもそこまで暇ではないし、委員会が定めた、大会参加者以外の命をみだりに危険に晒してはならないルールに抵触する恐れがある。

 しかし、アンテナは常に張り巡らせている。外出するたび、アイツじゃねえか、コイツじゃねえかと、道行く人間の顔に着目している。六万数千すべての視線を躱すのは不可能である。この東京二十三区にいる限り、宅間たちの動向は筒抜けになってしまう――ということであった。

「奴らも大変だな。プライベートも何もあったものではない」

 他人事のように、麻原は言った。

「尊師。ここは横綱のように構えるのではなく、我々の方からも動いていかなければなりません」

 正田昭は、空気を読まずに渋い顔で続ける。

「こちらからも、積極的に攻めていくということか?」

「はい。古来より、包囲網を打破するには各個撃破と相場が決まっています。現在、結成されたばかりの包囲網は、二大派閥である重信房子のグループと角田美代子のグループがお互いをけん制し合い、うまく連携がとれていません。包囲網全体では、その人数は我らの倍になりますが、事実上の戦力は半分程度と見ていいでしょう。攻めるのならば、今のうちです」

「しかし、このままじっと待っていれば、敵の内部分裂はさらに加速し、そのまま自滅するという可能性もあるではないか」

 なるべく、自らの命を危険に晒したくない麻原は、問題の先送りを提案した。

「その考えは甘いです。我らはよくても、現在、猛攻を受けている宅間軍が風前の灯火です。3人で7,8人分の戦力に相当する宅間軍の壊滅は、我らにとって大きな痛手です。一刻も早く、援護せねばなりません」

 正田昭の言うことはよくわかる。宅間軍を救うなら、いっそのこと、我がバドラの本部に住まわせてしまうという手もあるが、奴らがみんなで分担しているお風呂掃除、カナリアの世話などをするとは思えない。三時と九時にしか食べてはいけないおやつも、勝手にパクパクと食べてしまうであろう。そうなれば、信徒たちの間には不満が募り、やがては我が軍と決定的な軋轢が生まれてしまう。人と人との関係は、遠すぎても近すぎてもいけないのである。

 あの西口軍と死闘を繰り広げた、世田谷渓谷公園の「秘密基地」の管理を、宅間たちに任せるという手もないではない。しかし、彼らは信頼できない。フラフラと遊びに出かけられて、その間に敵軍に城を乗っ取られたら、たまったもんではない。さらに疑うなら、宅間達が城ごと敵に寝返らないとも限らない。やはり重要拠点を同盟軍に預けるのは愚策である。

「ならば、攻めるしかないのか・・」

 気が進まない麻原であったが、どうやらそれしかないようである。

「よく決断されました。作戦ですが、とりあえずは宅間軍を、今まで通り泳がせましょう。そして、今度は彼らに、持久戦を展開させるのです。宅間軍が粘っている間に、私たちが、秘密基地の城番二人を除く全軍で出撃する。現地に到着したら、宅間軍と連携して、戦闘を展開するのです」

 いつの間にか、パーティーで浮かれていた信徒たち全員が、正田昭の話に聞き入っている。やはりなんだかんだといっても、皆の一番の関心ごとは、大会の帰趨なのである。
 
「現在、宅間達に積極的に攻撃を仕掛けているのは、角田軍、コリアン、闇サイト両トリオのラインです。知能面で要注意なのは、大ボスの角田美代子、その右腕の吉田純子、コリアントリオの孫斗八。戦闘面では、なんといっても、ライフル魔、永山則夫です」

 正田昭が敵軍の分析をすると、信徒たちがこぞって奮い立つ。

「永山則夫はワシが殺しちゃるけえのお。ワシの方が強いんやけえのお」

「角田の婆さんの首は私が取りましょう。皆さんには、露払いをしていただきます」

 造田博と大道寺将司は、闘志マンマンである。

「私も、できることを頑張ります」

「みんなで、バドラこそが最強だってことをわからせてやろうぜ!」

 菊池正と関光彦も、自らの思いを口にする。

 皆の思いは一つ――。手柄を立て、教祖である麻原に褒めてほしい。バドラの名を高め、全国にその教えを普及させたい。

 大会に参加する全勢力中、おそらくはもっとも固い絆で結ばれた集団――。最大勢力であるバドラがいよいよ、重い腰を上げる。

 大戦の気運が高まっていく――。
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さ・つ・り・く・し・た・い

あさはらときくちゃん、せきくん、ひろしさんらは、「バドラ」の仲良しチーム。このチームの目的は「修行だけでは触れられない東京のさまざまな部署に親しむ」こと! 今日も、どらごん保育園のおいしい給食に舌鼓を打ったり、渋谷区でカブトムシの収穫に励んだり、あるいは公園に秘密基地を建設したり。なんだかんだと賑やかに、毎日を楽しんでいる。そんなある日、バドラのマスコット的存在、カナリアの…,,%9が行方不明に。世田谷中を探してまわるあさはらたちだったが……?

バドラ一行の日常パートが恋しいなぁ…この作風なら番外編だけで本一冊作れそうだ

No title

OKBさん

 素敵な紹介文を考えてくれありがとう。この頃のよかったところを新しい作品に反映させていきたいけれど麻原パートだけは中々難しいところがありますね。細かいところを詰めていく作業がどうしても苦手なんで、こういう回の方が書いていて楽だし楽しいです。本編を再開できれば一番いいんですが・・・。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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