凶悪犯罪者バトルロイヤル 第161話

「ハーピバースデートゥーユー。ハーピバースデートゥーユー。ハーピバースデーディア関くんー」

 麻原彰晃率いるバドラは、バドラ本部内にて、「お誕生日会」を開催していた。

 といっても、七月の末日であるこの日は、誰の誕生日というわけでもない。今日開かれているのは、今年の一月に誕生日を迎えた、関光彦を、「後から」祝う会である。ちなみに、前日の七月三十日には、四月十九日に誕生日を迎えた、正田昭を祝った。近頃バドラにおいては、この「後祝い」誕生日会を、四日間連続に渡って開催していた。

「よし。では、次はプレゼントの贈呈に移るとするか」

 司会を務める麻原は、食事を一時中断し、まだ酔いの回らぬ内に、各々が購入したプレゼントを、関光彦へと贈呈する段取りへと移行することにした。

「関くん、おいはこれを送るよ!」

 新加入の丸山博文からのプレゼントは、これからの季節に重宝する、小型扇風機である。

「あっしからは、これですがね」

 西口彰との戦いを経て加入した、強姦魔、小平義男からは、世界中にファンの多いオナホール「TENGA」の贈呈である。

 その他、洋服類、食べ物類など、様々なプレゼントが送られ、関光彦はその度、喜んだ顔を見せていたが、ある人物からのプレゼントだけには、不満な顔を見せた。

「ちょ・・・これは、酷いよ・・・」

 関光彦が不満を漏らしたのは、同時期にバドラに入信した、菊池正からのプレゼントである。

 菊池正のプレゼントとは、自作の粘土細工であった。それは、関世代なら誰しも憧れる「仮面ライダー」を模したものであったのだが、素人目に見ても明らかに完成度に難があり、しかも、焼き粘土や紙粘土ならともかく、油粘土で適当に作っただけの、着色も施されていない、お粗末なものであった。

「すまない・・・。もうすぐ訪れるお盆に備えて、お金を溜めて置かなければならないんだ・・」

 菊池正は、無類の母孝行者として知られている。近々訪れるお盆のお供えに備えて、お金を溜めておきたいのは、自然な感情だ。しかし、そんな人間らしい感情が、幼い頃、父からの虐待に怯えているのを常に庇ってくれた祖父の眼球を、あろうことかつま先で抉りぬいた、残虐な関光彦にはわかろうはずもない。

「ふざけんなよ!昨日の正ちゃんの誕生日会には、ちゃんとしたプレゼントを贈ったじゃないか!なのに俺にはこれか?菊ちゃんは、俺のことをどうでもいいと思っているのか!」

 この関光彦の憤りに対し、関を諌める側に回ったのが、年長者の小田島鐵男である。

「関くん。私は昨日、菊池くんが徹夜をしてこの粘土細工を作っているのを目にしました。プレゼントとは、その値段ではなく、込められた気持ちによって、その価値が決まるものではないのかね?ここで菊池くんのプレゼントを受け取らないのは、人としてどうなのかと、私は思うぞ」

 小田島の意見に、一同が頷きかけたが、次の勝田清孝の一言によって、場の雰囲気は一変する。

「いや・・・プレゼントに込められた誠意とは、言葉や態度ではなく、その金額によって決まるものではないですかね・・。なんだかんだといっても、世の中は金でしょう?」

 この言葉は、金銭に貪欲な凶悪犯罪者の心を強く揺さぶったようで、信徒たちは、小田島派、勝田派に別れ、激しい論争を繰り広げた。

 麻原はといえば、断然、勝田派であった。すでに自分の「後祝い」誕生日会が開かれていたならどうでもいいことであったが、今現在、麻原の「後祝い」誕生日会は、まだ開かれてはいない。もし、自分の「後祝い」誕生日会の日に、あんなお粗末な粘土細工がプレゼントとして贈られては大変である。そうならないために、ここで、「誠意さえ込められているなら、どんなお粗末なプレゼントを贈ってもいい」という風潮は、掻き消しておく必要がある。

「そういえば・・・尊師からのプレゼントを、まだ受け取っていないよ」

 関光彦が、論争を遮って、麻原にプレゼントを催促してきた。

「おう。そういえば、まだであったな。待っていろ」

 麻原はそう言って、手元の袋から、一枚の絵画を取り出した。描かれているのは、幸運の神ガネーシャである。

「おおっ、すげえっ」

「目が見えないのに、こんな絵が描けるのかよっ」

 五日前のこと――麻原は、自分のカリスマ性を高めるため、実は自分は、視力がまったく無い全盲ということを、信徒たちに言い含めていた。

 実際は、麻原は先天性緑内障のため十分な視野は確保できないものの、まったく目が見えないということはない。バドラのこれまでの活動を考えても、麻原が全盲などというのは通用しないはずなのだが、盲学校に通っていた実績もあり、信徒たちは容易く騙されてしまった。

 麻原がなぜにそんな嘘をつこうと思ったかといえば、「奇跡の才能――盲目の画家、昼原まもる」として、世間に売り出そうという腹積もりがあったからである。麻原は、たまに暇なときにクレヨンで絵を描く程度で、その画力は保育園年中組程度のものであったが、画壇の世界とは、画用紙に水性絵具で斑点をつけただけのものが、それを「0歳児が描いた」というだけで、ウン千万の値がつくこともあるような、狂った世界である。それならば、自分の絵ともいえない落書きでも、「盲目」というギミックがつけば、大金に繋がるのではないか、と、麻原は安易に考えたのである。

「今は紙クズ同然のこの絵も、いずれ高い値段がつく日がやってくる。真心も籠っているのに加えて、金にもなるプレゼントだぞ、光彦」

「確かにそうだ!」

「さすがは尊師だ!」

 麻原の、何の根拠もない理屈に、信徒たちはみな賛同する。俗世に解き放たれてからの麻原のマインドコントロール術は、塀の中にいたときよりも、むしろ高まっているような感覚を、自分自身感じていた。
 
自分は金を遣わず、信徒たちからは、高価なプレゼントを徴収する――。麻原の目論見が、着々と進行していた。
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No title

こっちは乗り遅れちゃって読んでいないのだけれど警備員のほう楽しみにしてるからはよー

No title

>>おおさん

了解です!
バトルは20話ごとにまとめたので、幾らか過去作が読みやすくなったと思います。なんとか追いついてください~!
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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