凶悪犯罪者バトルロイヤル 第158話


 盟友、麻原彰晃から、しばし敵の襲撃を凌ぐよう言われた宅間守は、本拠地、大田区のビジネスホテルに逗留していた。

 毎晩六十分のホテトル嬢とのプレイと、バイキングでの食事の時間以外は、とくにすることもない、退屈な生活。宅間にとっては、飛び降り自殺を図ったあの精神病院での記憶が蘇らされ、甚だ不快な毎日であった。

 地上四階。容易には攻め上ってこれない場所であり、備蓄の食糧も潤沢にある。ここに籠っている限りは、半月以上は持ちこたえられるはずである。それをわかった上でのことであろう。早くもこの場所を突き止めた敵は力攻めを諦め、精神攻撃を選んできた。

 あの池田小学校の制帽。パイロットを目指していたときに憧れてた、飛行機の模型。五十万円をドブに捨てさせられた、司法書士試験の案内。宅間にとって、不快な思い出を呼び起させる物品を、絶え間なく送り付けてきたのである。

「おのれ、なめくさりよって・・・」

 宅間の苛立ちが募っていく。苛立ちが募ると、浪費に走ってしまうのは人の常。二万、五万、十一万・・・ここ数日の、一日の金銭消費の推移であったが、このペースでいくと、半月間持ちこたえる以前に、資金が尽きてしまう恐れがあった。

「限界や。こっちから攻め込むで」

 宅間の決断に、配下の二人が驚いた顔を見せる。

「え?でも、こっちからは、奴らの拠点はわからないんすよ?」

「一つだけ、はっきりしているところがあるやろうが」

 宅間が言わんとしているのは、大久保から百人町の界隈を根城にする、コリアントリオを攻めようという作戦である。

「しかし、ただでさえ反日感情が強く、凶悪なコリアンマフィアを味方につけているコリアントリオの本拠地に攻め込むのは危険であると、宅間さん自身がおっしゃったはずでは・・」

 その通りである。確かに自分は、第一次ゲリラ攻撃の際、コリアントリオの本拠地を攻める危険を、配下の二人に説いた。その考えは、今でも変わっていない。しかし・・。

「だったら他にどうせいっちゅーんや!なんか名案でもあるんか?それしかないんやから、仕方ないやろうが!貴様らは黙って従っとったらええんや!」

 もとより、物事を突き詰めて考えられる方ではない。考えている間に、資金が尽きてしまう。麻原のオッサンに融通してもらう手もあるが、あまりにたかりすぎると、愛想を尽かされてしまう恐れもある。とにもかくにも、麻原のオッサンとの同盟は、我が軍にとっての生命線なのである。

 ホテルをチェックアウトし、タクシーを拾った宅間たちは、コリアンタウンへと走った。思い立ったら即行動。唯一といっていい宅間の取り柄であるが、その大半が単なる無鉄砲、勇み足に終わってしまうのが、玉にキズである。

 しかし、何も物事に手を付けた段階から、失敗を想定する必要もない。新大久保の駅前でタクシーを降りた宅間は、コリアントリオの籠る、四階建ての施設の前まで駆けていった。

 駅前から十分ほどで、その施設は見つかった。スムーズである。いや、スムーズすぎる。予想された、コリアンタウンの住人からの妨害がまったく無い。こんなものなのか?自分は、コリアントリオの住民信服度を過大評価していたのか?何か嫌な予感がしながらも、宅間はコリアントリオが営む焼肉屋の店舗を、持ち寄った武具で破壊して回る。

「くらあ、チョンコロどもが。出てきさらせ!」

 怒声を上げる宅間に飛んできた物体――包丁。施設の中から投げ込まれたものではない。

「$&#”’$#(#$¥!」

「#$#$##”$|!!!」

 わけのわからぬ叫び声を上げながら、宅間達を取り囲む、大久保の住人・・。コリアントリオの作戦、それは街中の深いところまで敵を呼び込み、信服させた住民たちによって包囲する作戦であった。

 委員会が定めたルールでは、大会参加者は、一般人には一切手出しができないと決まっている。また、そのルールを逆手にとって、一般人をけしかけて大会参加者を襲わせることも禁止されている。それを考えれば、コリアントリオの住処にたどり着くまでに、地域住民どもに妨害される事態は、心配しなくてもよかったかもしれない。

 だが、一般人が進んで大会参加者を攻撃する分には、何の咎もない。今、宅間たちを取り囲んでいる連中にとっての、宅間たちに対する認識は、「何の罪もない金さん、孫さん、李さんの店を襲う、悪いヤツ」である。何も知らない第三者が見ても、明らかに宅間達に非がある状況だ。

 今、このチョンコロどもは、コリアントリオの意を受けたわけではなく、己たちの意思によって動いている。

 パンチョッパリ――日本人にも、朝鮮、韓国人にもなれない、国を持たぬ民。その同胞を守るという意思によって――。

「店を派手にぶち壊しすぎたからですよ・・・どうするんですか」

 確かに、あまりにも軽率で、短絡的な行為であった。しかし、後悔しても遅い。

「このまま手ぶらでは帰れん。何が何でも、コリアントリオの首級だけは上げるで」

 深みに嵌るのを承知で、店の奥へと駆けたのだが、この襲撃を察知していたのか、コリアントリオは出払っているようであった。

「チイ―――――――ーッ」

 階段には、すでに地域住民どもが群がっており、四階の住居まで行くことはできない。結局、宅間たちは、まったくの無駄骨に終わったまま、撤退を余儀なくされることとなってしまった。

「チョンコロどもがあああああああああっ!」

 住民全員、敵―――。地獄の街から脱出するための、宅間たちの決死行が始まった。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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