凶悪犯罪者バトルロイヤル 第158話

 七月二十五日。大田区の百貨店内で涼んでいた宅間守が、闇サイトトリオの三人から襲撃を受けた。たかだか三人――わけもなく蹴散らせる人数であるが、罠の危険性を感じた宅間は、すぐに戦場を離脱した。

 その翌日、今度は配下の金川真大が、台東区の路上にて、コリアントリオからの襲撃を受けた。アホの金川は、警戒もせず奴らを追って行ったのだが、特に援軍が来るということもなく、コリアントリオはそのまま逃げ切ったという。自分も、闇サイトの三人を追撃していたら――後悔に襲われたが、そう思わせることまで、奴らの狙いなのかもしれない。何しろ、今やあやつらの背後には、あの角田の婆がいるのである。

「けど、おかしいっすよね・・。前回は、同盟者の角田の婆さんが、実は奴らを操っていた黒幕ってカラクリだったから、こちらの動きが筒抜けだったのは説明できるけど、今回はなぜなんすかね」

「あるいは、今度こそ本当に裏切り者が出たか・・・やな」

 そこで宅間は、しばらくの期間、同盟者の麻原彰晃との連絡を断ってみることにした。これで敵の襲撃を受ければ、裏切り者は我が軍の中にいるということになる。

 結果はすぐに出た。七月二十九日、宅間自身が、赤坂の地下鉄構内にて、またもや闇サイトトリオの襲撃を受けたのである。

「上部~!!てめえ、よくも裏切りやがったな!」

「いたたた・・・っ、ち、違いますって」

 金川が、上部の襟を掴んで締め上げる。金川は、上部を裏切り者と決めつけているようだが・・。

「何勝手なマネ晒しとんじゃい!」

 宅間は、金川の臀部を蹴り飛ばした。

「こん中の誰が裏切り者かなぞ、誰にもわからん。無論、このワシも容疑者には入っておる。少なくとも、当分は三人、片時も離れず行動や」

 いつもならば、宅間自身が金川の役を演じ、よく調べもせず、激憤に任せて上部を粛清していたところであったが、今回は自分を抑えることができた。働きアリの法則と似ているかもしれないが、自分より単細胞な人間と一緒にいると、不思議と自分が冷静になれるのである。人と人との関係とは、実に絶妙なバランスで成り立っているものだ。
 
 そして二日後――八月三十一日、敵は、今度は闇サイト、コリアン両トリオを、角田軍の永山則夫が率いるという、大軍勢で攻めかかってきた。すぐに逃亡することもできたが、宅間は裏切り者をいぶり出すため、しばらく戦闘を継続することにした。

 一分、二分・・・強豪、永山則夫の攻撃を捌きつつ、金川、上部の二人が敵と手を合わせるところを観察したが、相手が手心を加える様子はなかった。二人の内どちらかが裏切り者だとすれば、妙な話である。

「・・・退却や」

 目的は果たした。深みに嵌らない内に、逃げるが吉――。走る体力が余っている内に、宅間は戦場を離脱した。

「いったい、どうなっとるんや・・・」

 我が軍の中に、裏切り者はいない。ならばなぜ、敵は我が軍の動向を、逐一知ることが出来る?

「GPS装置を仕掛けられた、とかですかね・・?」

「それはねえよ。委員会に渡された携帯電話には、一切の細工ができねえようになっている。他、常に肌身離さず身に着けているもんなんかねえだろ?」

 ある。金川が持つ、PSPである。

「ちょっと貸せや」

「あっ・・・ちょ・・・あーーーーーーーーーーーーーーーーっ」

 これまでの戦闘でも聞けなかった、金川の絶叫――。宅間は、金川のPSPを、アスファルトに叩きつけたのである。

「ちょ、何すんすかっ!」

「だまれ、ボケカス」

 上部が破損したPSPの破片を調べてみたが、特におかしな機器は見当たらないという。裏切り者でもない、GPSでもない・・。いったい、何が自分たちを監視しているというのか?敵の手の内がわからない。戦争において、これに勝る恐怖はない。

 ここでふと、同盟軍の、麻原のオッサンのことが気になった。すでに、バドラは裏切り者ではないことはわかっている。宅間は久方ぶりに、連絡を取ってみることにした。

「おう、宅間か。今、どうしている?」

「どうもこうも、闇サイトの連中だの、コリアンの連中だのから襲われて大変やったわ。オッサンの方は、今何してるんや」

「今か?今は、お誕生日会を開いている」

「お誕生日会やと?誰の誕生日や」

「いや、特に、誰の誕生日というわけではない。去年の九月に誕生日を迎えた者も祝うし、今年の二月に誕生日を迎えた者も祝う。いわば、そのときに祝わなかった分を、後から祝っているということだ。むろん、これから誕生日を迎える者を、前倒しで祝うという手もある」

「・・・・どんだけ自由やねん」

 しかし、相も変らぬバドラのアホーな雰囲気に、ささくれだった宅間の気持ちも、幾らか和らいだ。

「そっちは、襲われたりとかはしとらんのか?」

「今のところはないな」

 巨象は後回しにして、まずは小さな自分らから倒そうということか。宅間はひとまず麻原に、自分たちの動きが敵に筒抜けになっていることを伝えた。

「わかった。俺たちの方でも調べてみる。お前たちは、その間何とかしのいでくれ」

 他人事だと思って、簡単に言ってくれる――。しかし、今はそれしか手段がないのは事実だった
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Re: 面白いです

>>地味な読者さん

読んでくれてありがとうございます!

携帯からだと読むの大変ですよね。
話数が増えてきたので、今度20話ぐらいでカテゴリに分けていこうと思います。
できたらインデックスも作りたいなあ。

今後もよろしくお願いします!

わーい久方ぶりの宅間軍とバドラですね(((o(*゚▽゚*)o)))しばらく出てこないうちに大変なことに…!角田女史、今度は一体何を考えているんでしょうね…。バドラのお誕生会、私も混ざりたいな〜(*´ω`*)

No title

>>枇杷さん

久しぶりにまともな戦いを描けるんで、僕も腕がなるよ!

包囲網を組まれて窮地に陥ったバドラだけど、享楽的な雰囲気は崩さずに書いていきたいね~。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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