凶悪犯罪者バトルロイヤル 第154話

「そ・・それじゃ、そろそろ、治療といきましょうか」

 加藤智大同様に呆然としていた吉田純子が、自慰行為を続ける宮崎勤を制し、おかしな美人女性には帰宅を促して、宮崎の陰茎の治療を開始した。

「うーん、どれどれ・・」

 任務とはいえ、よく、あんなグロテスクなものをマジマジと見つめられるものだ。医療の世界とはグロ耐性の世界でもあるが、そうした世界にいて、セックス方面の倒錯を起こしたりはしないのだろうか?と、俺はくだらないことを考えた。

「雑菌が粘膜に触れて、軽く炎症を起こしているだけみたいね。一週間ほど安静にしていればよくなるわ。入院はする必要ないから、あなたのハニーに電話して、迎えに来てもらいましょう」

「あっあっあっ。あいつはハニーじゃないんだっ。あれがハニーとか、やめるんだっ」

 今まで、支離滅裂な言動を繰り返していた宮崎が、初めて意味が聞き取れる言葉を発した。ハニーとは、同居人の木嶋香苗のことだろうが、あれをハニーと言われるのは、よほど嫌なのだろう。

「どうもどうも、遅くなりまして。うわ・・勤兄さん、こりゃまた派手に汚したねえ」

 木嶋香苗より先にやってきたのは、便利屋稼業を営むA・Sだった。俺が電話で、宮崎のクソで汚れた部屋の後始末を依頼していたのである。

「いやあ、勤兄さん、ホンマありがとう。勤兄さんのユルユルの肛門のお蔭で、仕事にありつけましたわ」

 Aが、テキパキとした動作でクソを掃除しながら、宮崎を言葉攻めする。その顔は、実に嬉々としていた。

「じゃあ、あとは任せるからな」

 自分のやるべきことは終わった。宮崎やAの世界に付き合いたくない俺は、ここで「魔境」を後にした。

 あんなものを見た後では、食欲も湧かない。俺はまっすぐ駅へと向かったのだが、その途中、ふと、自分があの歩行者天国を歩いていることに気が付いた。

 抵抗は感じない。心はまったく、さざめかない。普通でいられる。宮崎が織りなす「魔境」に比べれば、あの歩行者天国にいることくらい、どうってことはなかった。

 毒を以て、毒を制す。これが、重信さんや松永さんの意図だったのだろうか。何とかとハサミは使いようという言葉もあるが、あんな変態野郎にも、利用価値というものはあるらしい。

「一人のおかげで、みんなが迷惑。加藤を死刑に早くしろ」

 防犯グッズ販売店の軒先に設置されたラジカセから流れる、そんな漫談の一節を聞いても、別になんとも思わない。トラウマを完全に克服した俺は、久々にフィギュアショップを巡ってから帰ることにした。

                ☆    ☆    ☆     ☆    ☆

 宮崎勤は、相も変わらず、毒魔羅を襲うヒリヒリとした痛みに悶えていた。

「しかし、よくもまあ、これだけのクソを漏らせるもんや。勤兄さん、ホモ・セックスのやりすぎなんちゃいますのん?勤兄さんの括約筋、仕事しなさすぎやで」

 なにかと僕と比較される、Aとかいうガキの言葉攻めが、僕の心を蝕む。先ほどは山地くんにも甚振られた僕は、これで「日に二度負ける」を味わったことになる。やはり僕はどこまでも、「グラップラー刃牙」作品内において、勝つために明日を捨てたあの男とシンクロしているらしい。

「勤さん!」

 地鳴りのような足音をさせながら廊下を歩き、僕のブースに入ってきたのは、同居人の木嶋香苗である。ぶるぶると震える頬肉――マキとは似ても似つかぬ、脂肪に塗れた巨大な顔である。

「勤さん・・・アンタ・・・馬鹿じゃないの」

「あっあっあっ。僕はバカじゃないんだっ。バカじゃないんだっ」

 木嶋が放った、あまりにもストレートすぎる言葉が、僕の心を激しく抉る。まさかこんな奴に罵られるなんて。くそう、今日はマキを殺し、人生最大の愉悦を味わうはずだったのに、どうしてこんなことになってしまったんだ。 

「じゃあ、愛しのハニーも来たことだし、私は帰るわねー」

 加藤とともにやってきたオバサンも、僕をからかって帰っていった。みんなして僕を馬鹿にして・・だから、犯罪者なんて野蛮なヤツらは、大嫌いなんだ!

 やがて、仕事を終えたAも帰っていき、僕は木嶋香苗に手を引かれ、秋葉原から青山の自宅へ帰って行った。加藤たちは、僕がマキと一緒だったことは伝えなかったのか、木嶋佳苗は道中、僕が秋葉原に行った理由について、詮索してくることはなかった。

「じゃあ勤さん、薬を塗るから、その・・・・履いてるものを下ろして」

 僕をベットに寝かせた木嶋は、毒魔羅の治療を始めた。

「キャッ・・・いやッ・・・」

 露わになったブツを見て、木嶋が恥ずかしそうに顔を背ける。マキのような若く美しい女がやれば可愛らしくも見えるであろうその仕草も、年のいった巨漢女では、何の興奮もない。大体、容姿がまずい女がセックスにウブで滅多にやらせてくれないなど、それは何の取り柄もないではないか。

 しかし、僕の毒魔羅に薬を塗る木嶋の手つきは、献身的で優しいものだった。この巨漢女が、逮捕される前は何人もの男をたらしこんだというのには、こうしたことも手段としてあったのだろう。

 あれほど激しかった毒魔羅の痛みが、徐々に和らいでいく・・・。この良い心地をもたらしてくれたのは、紛れもなく、僕の同居人、木嶋香苗である。美しいマキに差し込むことあできなかった毒魔羅は、マキとは似ても似つかぬ木嶋香苗によって、快楽の園へと導かれた。

「今日から私が看病してあげるからね。ゆっくり、治していきましょう」

 部屋を出て、僕に振る舞うおかゆを作りに台所に向かう、木嶋香苗の逞しい背中――おっかさんのようなその後ろ姿を見て、なぜだか僕の胸はときめく――。

 この感情を、恋というのかもしれなかった。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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