凶悪犯罪者バトルロイヤル 第二十四話

「あちィっ!」

 湯船に張ったお湯の熱さに、麻原彰晃は顔を歪めた。すぐさま冷水で冷やしたが、皮膚の痛みは消えてくれない。軽い火傷を起こしてしまったようだった。麻原はバスタオルを腰に巻き、バスルームを出た。廊下に貼ってある、当番表を見る。今日のお風呂当番は、菊池正だ。麻原はリビングへと向かった。

「こらっ!正っ!お湯が熱いではないか!」

 麻原の怒声に、リビングで「マリオカート」をしていたバドラの信徒たちが振り返った。

「ええっ??熱かったんですか??」

「熱いもなにも・・体感で50度はあったぞ!見ろ、火傷をしてしまったではないか!」

「で、でも、尊師は熱湯修行をされると、関くんが・・」

 菊池正が、隣の関光彦に視線を向ける。

「そうだよ。尊師はどんなに熱いお湯に入っても大丈夫なんでしょ?ホームページに書いてあったよ。ねー信ちゃん」

 新加入の尾田信夫が頷く。尾田は60年代、働いていた電器店から商品を盗んだ事件で逮捕され、少年院に収監。出所後、店主を逆恨みして店に強盗に押し入り、店舗に放火、殺人に及んだ男である。犯行当時二十歳、戦闘面での活躍が期待される若者である。

「う・・・っ」

 麻原は言葉に詰まった。一体どう釈明し、この場を切り抜けるべきか。

「そ・・それは、精神を集中しているときの話だ!いくら俺とて、油断しているときは、その身は信心なき人間と同様なのだ!」

「なんだよ、そうだったのか」

「第三者が勝手に書き散らしたことを鵜呑みにするでない・・。気になったことがあったら、必ず俺に確認しろ」

「わかったよ。そんなことより、もうすぐ9時のおやつの時間だよ。さっさとお風呂入ってきちゃいなよ」

「そんなことよりって、お前・・」

「尊師、まずはお風呂に入ってきてください。見たところそれほど酷い火傷ではないです。お風呂から出たら、私が治療して差し上げますから」

 火傷は職業病の勝田清孝が、麻原と関のやりとりに割って入った。

「う、うむ・・」

 勝田に救われた。麻原は、日ごろ信徒に、なるべく雷を落とさないよう心掛けている。

 恐怖で従えた兵士は戦場で50%の力しか発揮できないが、信頼で従えた兵士は戦場で200%の力を発揮するという、軍人の格言がある。オウム時代、自分と信徒との間に結ばれた絆は強固だった。しかし、一度断ち切れた絆は、二度と回復しなかった。

 バドラにおいては、麻原は違った形での組織の在り方を目指している。たとえ一時、気の迷いを起こしてバドラを離れてもいい。しかし、一度離れた者がまた戻ってきたくなるような雰囲気を作りたい、と思っている。その方が、衝動的で意志の弱い凶悪犯罪者たちを纏めるに当たっては、なにかと都合がいいように思うのだ。

「いエーい!2位―っ!交代は菊ちゃんと昭ちゃんーっ!」

「くそっ・・麻雀なら負けないんだがな・・」

 ゲームを楽しむ関光彦と正田昭の声を背に、麻原はバスルームへと向かった。


☆     ☆    ☆     ☆     ☆     ☆

 翌日―――――――――。

「もーっ。宅間さん酷いじゃないっすかーっ。せっかく俺が出会いカフェから連れ出した女を、トレードや、とか言って掻っ攫っていっちゃうなんてーっ」

「アホ。お前がいい気になってツーショット写真なんか送って自慢してくるからいけんのや。それに、ワシの方からも女を差し出したんだからええやないか」

「冗談じゃないっすよ!あんな30代でウルトラマンのピグモンに似たババアなんて・・!まあ、顔に拘る必要がなかったらから、好きなだけ殴って気絶させて、暴力衝動を満たした上で犯してやれたから、その点じゃよかったんすけどねっ」

「ドアホが。お前がそんなことをしたせいで、委員会から警告メールが来たんやないか。まったく、ケダモノのような奴やで」

「宅間さんだって人のこと言えねえじゃないっすかーっ」

 紳士服売り場にてスーツを物色しながら、大声で猥談を交す、宅間守と金川真大。買い物客や店員が露骨に眉を顰めるのも構わない。

「しっかし、三日後は楽しみやのーっ。ひっさびさの、ねるとんパーティやで。金持ちの女がワンサカやってくるで。やっぱり女をヤルなら、社会的地位の高い、高慢ちき女に限るで!」

「同感っす。もう昨日はワクワクして、3時間しか寝られなかったっすよ。あ、宅間さん、服、決まりました?」

「おう。決まったで」

 ねるとんパーティに着ていくスーツを選び、試着を終えた宅間と金川が、レジに会計に向かう。 

「10万8千円か・・。おい、小僧、頼んだで」

「はい!・・っと言いたいとこっすけど、今、金ないっす。おい、橋田!頼んだ!」
 
 金川にたかられた橋田忠昭が、視線を逸らして俯く。

「すまんが・・。俺も、金ないんや・・」T

「なにいっ!なんでねえんだよ!」

「そないなこというたかて、毎日毎日、カニや神戸牛や言うてうまいもんばっか食うて、風俗も吉原の高級店ばっかり行ってたら、そら金無くなりますわ・・。あんたらばっか楽しい思いして、俺はいっつもコンビニ弁当と山谷のチョンの間で我慢やし・・」

「バカ野郎!それが後輩の宿命だろうが!年功序列を知らんのか?日本の組織ってのは、先に入った人間が無条件で偉いってふうに決まってんだよ。つべこべ言わずに金を出せ!この財布野郎」

「あ、あんまりやないか・・。それに、年で言ったら、この中では俺が一番上・・」

「こいつ・・!」

 不毛な言い争いを続ける金川と橋田。やかましい奴らだった。

「おい、その辺にしとけ。そんで、今いくらもっとんや?オッサン」

 ねるとんパーティに参加できるということで、珍しく機嫌のいい宅間が、橋田を金川から救ってやった。

「5千円くらいや・・。十日前には百万円以上あったのが、もうこんだけや・・」

 5千円・・・。それでは、スーパーで安売りされているようなシケたスーツも買えない。

「なあ兄ちゃん。金を払うんは、寸法を整えてからでええか?」

「申し訳ございませんが、初めてお買い物をされるお客様には、予めご料金を頂くお決まりになっておりますので・・・」

 一応交渉してみたが、当然のごとく、料金の後払いは拒否されてしまった。ねるとんパーティの予定は三日後。今日から寸法を整えてもらわなくては、とてもではないが間に合わない。

 どうする。ねるとんパーティ参加には、ジャケットの着用は必須である。また、カツアゲでもするか?体格の近い人間を見つけて、追剥ぎでもするか?

 いや、それはできない。すでに委員会からは、次に触法行為を犯したら、直ちに処分するとの警告メールが来ている。悪行を繰り返す我ら一行に、ついに雷が落とされたのだ。

「くそがっ・・・どうすりゃええねん!」

 宅間がレジを叩く。悪魔の形相に、若い店員が真っ青になって硬直する。

「た、宅間さんっ・・あれ、あれ見て・・」

 金川がひきつった顔で店の外を見て、宅間の袖を引っ張った。

「なんやっ」

「あいつ・・・麻原彰晃っスよ・・・」

 麻原彰晃。いまだに名鑑に目を通していない自分だが、さすがにその名前は知っていた。あの参加者屈指の大物が、いま自分がいる店の前を通っただと?

「麻原だけじゃないっす・・他にも、参加者が7人も・・」

 宅間の眼が、鋭く光った。
 
 奴らから、金を強奪してやる。3人対8人。普通に考えたら、勝ち目はない。自分は勝てない戦はしない主義だ。だが、同時に、目の前の獲物はけして逃さない主義でもある。
 
 ねるとんパーティの予約をとるのは苦労した。この機会を逃せば、いつ行けるかわからない。委員会の警告メールが来た以上、もう強姦はできない。高慢ちき女とケツの穴セックスができる機会が、いつ巡ってくるかわからない。ならば・・・やるしかない。
 
 幸いにも、今、自分には盾が二つある。いざとなれば、こいつらを犠牲にして生き残ればいい。

「上等やないか。やったるで」

「マ、マジすか・・?」

 無謀な金川も、八人を相手に喧嘩を吹っ掛ける決断には、さすがに驚いた表情を見せる。

「おい、兄ちゃん。そのスーツはキープしとけ。すぐ取りに来る。おい、いくでお前ら」

 宅間は金川と橋田を従え、紳士服店を後にした。麻原のオッサンの首・・必ずや、掻き落としたる。
 
 
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ああああああわあああああああああああああああああああああ!!!!!!(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)!・!わあああああああああああああああああああわあああああマモマモとツツーショット写真撮りたて~~~~~!!!!!!ヤリ捨てマモマモヤリ捨てマモたて~~~~~!!!!!(!!*^^*)(((*^^* )))( *^^*)(((*^^*)プグマモッ
スーツ!!???スーツマモにゃん!!????正装マモにゃん!!??????うんいいいああああああああああ!!!!!なんか湿った汚い服しか着てなさそうなマモマモ~マがスーツ!!????おすましマモマモ!!????んあああああっんあああああああ!!!!?????
カニや神戸牛モムモムするマモマモ想像して爆発しそそさうでいす!!!!!・!!シャリシャリモムッ!!!マムマム・・・マモッ!!!!!ウグギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!苦しい!!!!苦しいすがぎるっ!!?!!!!!!?!!!
ねるとんパ~~チ~~編見たうすぎぐ~~~~~~~~~!・!!!!!茶髪の・・・・・・・・・・紳士・・・・・・・・・・・・?!!!???\(◎o◎)/\(◎o◎)/((o(^∇^)o))((o(^∇^)o))((o(^∇^)o))((o(^∇^)o))\(◎o◎)/\(◎o◎)/\(◎o◎)/\(◎o◎)/
>金川真大が、ひきつった顔で店の外を見て、自分の袖を引っ張った。
>金川真大が、ひきつった顔で店の外を見て、自分の袖を引っ張った。
>金川真大が、ひきつった顔で店の外を見て、自分の袖を引っ張った。
ああああああいあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ袖引っ張りとおおおおうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

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>>1番コメさんコメントありがとうございます!

湿った汚い服笑いましたww
ワイルド系の男って崩れた着こなしが似合いますよね。
僕も彼のような長身細マッチョに生まれたかったです。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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