凶悪犯罪者バトルロイヤル 第二十話

 グランドマスターは秘書とともに、委員会の報告書に目を通していた。

「バトルロイヤルが開始されてから、40日目か。死亡者は、現在7名。どう思う、アヤメくん」

「はい。ペースとしては、順調に来ていると思います」

「ふむ。そろそろ参加者の懐も寂しくなってくるころだろうからな。一層のペースアップが見込めるだろう」

 グランドマスターは、報告書の死亡者一覧に目を通した。

 堀江守男、藤島光雄。殺害者は宅間守。渡辺清。殺害者は、加藤智大。高田和三郎、大濱松三。殺害者は、バドラ麻原の一派。そしてこの一週間で新たに殺害されたのが、スナックママ連続殺人の金田正勝。殺害者は、永山則夫。千葉女医殺害事件の藤田正。殺害者は、間中博巳。

 単純計算でも、残り11か月で16名まで絞られる計算である。アヤメの言う通り、ここまでは極めて順調に来ているといっていい。

 続いてグランドマスターは、生き残りの参加者の行動をまとめた報告書に目を通す。

「そろそろ、各勢力も組織が固まってきたようだな。アヤメくんは、どの勢力を強豪と見る?」

「はい。今のところは、麻原彰晃率いるバドラと、重信房子をリーダーに、松永太を参謀に据えたチームが、人数、戦闘力ともに抜けています。今後はこの二強を軸とした戦いが展開されていくでしょう」

 思った通り、麻原彰晃は出てきた。ここまでの動きを見ても、あの男の求心力とリーダシップは、統率タイプの参加者の中でも別格であった。麻原の元に集まった人材も、戦闘タイプ、頭脳タイプ、猟奇タイプとバランスが取れ、それそれいい働きを見せている。チームの雰囲気もいい。安定した資金源さえ得れば、一強体制を築いていくかもしれない。

 そのバドラと並び立つ、重信房子軍。といっても、この軍団を実質的に率いているのは、希代の知能犯、松永太である。バトルロイヤルの趣旨を、その鋭敏な頭脳でいち早く理解した松永は、すぐさま参加者屈指の戦闘力を誇る加藤智大、神輿役の重信房子と、計画の主軸となる人材を獲得した。各勢力や暴力団とも提携し、歌舞伎町でビジネスを展開しようともしている。あの男の頭の中には、すでに最終章までのシナリオが書きあがっているのかもしれない。

「二強を追う第二グループが、永田洋子軍、角田美代子軍、八木茂軍です。いずれも人数は4~5名。リーダーの元で、着々と力を蓄えています」

 麻原や松永の対抗馬と目していた三人も、順調に出てきた。統率力に優れた永田洋子、人心掌握術に優れた角田美代子、商才に優れた八木茂。それぞれの元で、それぞれの色を発揮した組織が、形作られてきている。二強を食うか、併呑されるか。今後の戦いが見ものである。

「続いて、宅間守軍。人員が戦闘タイプに偏っていますが、その戦闘力では、三人だけで上位5チームを全て屠り去る力を持っています」

 宅間守。あの男には、正直、頭を痛めている。管理の難しい男なのはわかっていたが、あそこまでの狂犬とは思わなかった。他の参加者ならとっくに処分しているであろう犯罪を、すでに両手で数えきれないほど起こしている。その宅間と組んだのが、よりによって金川真大である。暴力と計略でお互いの短所を補い合うのではなく、暴力と暴力でさらに暴力を伸ばしてしまったのだ。そっちに行くか!と呆れずにはいられなかった。

「あとは、人数2~3名程度の小規模勢力が5、6チーム。それと、これを組織といっていいのかはわかりませんが、市橋達也と小池俊一の二人が、他の参加者と一切矛を交えず、最後まで逃げきる独自路線を、協力して進み始めています。また、宮崎勤が、木嶋香苗のマンションでヒモ生活を始めたようです」

 グランドマスターは満足げにうなずいた。組織を組んで戦おうとする者、一人で戦おうとする者、大きな組織、小さな組織。それぞれが、それぞれの持ち味を発揮して、凌ぎを削る。それこそが、戦争の醍醐味である。

「今後は、集団対集団の戦いも増えてくるだろう。どういった方法で資金を稼いでいくかも見ものだな。楽しみになってきた」

 グランドマスターは、報告書を読み終えると、続いて、新聞各紙に目を通した。全国紙にも地方紙にも、バトルロイヤルを扱った記事はない。報道管制がしっかりと効いている。テレビのニュースも同じことだ。インターネットにおいても、委員会のサイバー科が数百名体制で目を光らせている。ニュースサイトはもとより、個人のサイトや匿名掲示板で、バトルロイヤル参加者が都内で起こした事件の話題が出たら、その瞬間に消去される仕組みになっているのだ。

 自分の計画は、誰にも邪魔させない。

「マスター、例の申し出にはどう返答します?」

 三日前に委員会にコンタクトをとってきた、あの男のことか。あの申し出には、さすがの自分も面食らった。だが、同時に心も躍った。想定外の事態。しかし、考えようによっては、面白くなるのかもしれない。

「まあ、無視というわけにはいかんからな。近いうちには結論を出す。一応、前向きに検討しておく、とは伝えておいてくれ。しびれを切らして勝手に動かれても困るからな」

「はい。では、事務処理の方があるので、失礼いたします」

「うむ」

 秘書が部屋を辞していった。一人になったグランドマスターは、窓際に立ち、今日も参加者たちが血みどろの戦いを繰り広げているであろう東京の街を一望した。

 東京。死臭漂う町―――――。
 
 年間何千、何万もの命が、この町で失われている。人に悼まれる死、見向きもされない死、満足な死、理不尽な死。栄華を極めた者であろうと、敗れて滅びた者であろうと、死ぬときは一緒である。どの死も取るに足らない。死ぬとき振り返る生涯がどれだけ煌めいていようが、命がなくなったら同じである。全ての人間が平等に死ぬ。

 バトルロイヤル参加者の死も、繰り返される命のドラマの、ほんのワンシーンにしかすぎない。けして特別ではない。
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ハアハア…!
宅間のおいちゃんに夢中です!

はあはあんああああああん・・・・・はああああああああ・・・・・はあはあはああああ・・・・・・んあああああ・・・・マモマモマモマモォ・・・・・

マモマモと金川のカップ・・・・・・・コンビの今後が気になルンバででう・・・・・(⌒⌒~⌒⌒)
マモマモ狂犬マモマモうちゅぽぉ))・・・・・・・・

No title

>>けつのす百恵、フムフム草さんコメントありがとうございます!

 宅間氏の人気に嫉妬します。。w
 デンジャラスな男はやはりモテるんですね。
 僕もアウトローにクラスチェンジを検討しますw
 

No title

そうそうたるメンバーが集まりましたね。
女性革命家対決・重信房子vs永田洋子
一家恐怖支配者対決・角田美代子vs松永太
こいつらの一騎打ちも見てみたいです。

No title

>>4番コメさんコメントありがとうございます!

まだまだ大物は控えております・・・!

津島さんへ

十四~二十話まで読み直しました!
懐かしいシーンあり、笑いあり、やっぱり面白かったです!!!

やっぱり宅間&金川のコンビ好きです~~

私に画力があればパロディー漫画を描けるのになぁ・・・><
画力がないこと、悔やまれます・・・。笑

引き続き読み直していきたいと思います!!!

No title

蘭さん

 バトルロイヤルはとにかく登場人物を多数出せたので、人間関係を描くいい練習になりましたね。同じ麻原や宅間に対してでも、たとえば同じチームの人物と違うチームの人物では距離感がまるで違うところなど振り返ると面白いです。こうしてたまに古い記事にコメントいただけると、当時の自分ができて今できなくなっていることを分析できてありがたいです。

 定期的にコメントいただけるようですので、できましたら、ほかのコーナーなどにもコメントいただけると嬉しいです。



こんにちは!

津島さんへ☆
私のコメントでも多少は役立っているようで…、何よりです!
はい!次回からは他のコーナーにもコメントしますね♪(*'ω'*)
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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