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凶悪犯罪者バトルロイヤル 第147話

 麻原彰晃率いる麻原彰晃探検隊は、渋谷区の代々木公園に「かぶと虫採り」に訪れていた。新加入の丸山博文の、歓迎会を兼ねての催しである。

 東京23区――日本でもっとも自然とかけ離れているように思えるこの地だが、意外にも、かぶと虫などの昆虫を目にすることができる場所は多い。雑木林に放虫された虫が、何代にも渡って繁殖を続けているのである。

 以前の冒険で捕まえたカナリアによって、麻原は、みんなでペットを世話することで、組織の気持ちが一つになることを学んだ。また、自分にはさっぱり理解できないが、アニマルセラピーとやらで、凶悪犯罪者どもの荒んだ心が癒される効果もあるらしい。そこで、ちょうどカブト、クワガタが成虫になるこの時期を狙って、昆虫採集に繰り出したというわけだ。

「お、あっちカブト出たぞ!」

「やった!ノコギリクワガタゲットだ!」
 
 探検隊は、野生児菊池正の先導のもと、森の中を進んでいく。虫かごにはすでに、4体の昆虫が蠢いている。大漁の予感――。麻原の中にも、とうに忘れていた、純粋無垢だったあの頃の心が戻り始めていた。

「うわあっ、コーカサスオオカブトだあっ!」

「なんであんなところにっ!」

 コーカサスオオカブト・・・ヘラクレスと並ぶ最強のカブトムシが、なんと野生化しているという。麻原の頃は考えられなかったことだが、近年は養殖が進み、ホームセンターなどでも、外国産のカブト、クワガタを普通に見かけることがあるから、どこかの家庭から逃げ出したのかもしれない。

「ちくしょう・・けど、高いな・・」

「菊ちゃん・・・は、無理か」

 菊池正は、先の西口彰との戦いにおいて、梅川昭美が仕掛けたブービートラップによって、足を怪我している。コーカサスがとまっているのは、地上十五メートル近くの高さで、枝も少なく、登るのは極めて困難である。最強のカブトムシを前にして、諦めるしかないのだろうか・・。

「私が行ってみましょうか」

 名乗り出たのは、新宿西口バス放火事件の犯人、新加入の丸山博文である。報われない境遇の中で心を歪めた、悲しき犯罪者。犯罪の性質からか、探検隊内では、最強の男造田博と特に仲がいいようである。

「よし。ではここは、博文の力を頼むとするか」

 探検隊隊長である麻原の指名を受け、丸山はスルスルと、ブナの木を登り始めた。丸山は元建設作業員。全国の飯場を転々としていたというから、ダム工事などの、危険な現場も経験しているのだろう。足場が不安定な高所での作業は、お手の物だった。
「採ったバイ!」

 丸山が、手に取ったコーカサスオオカブトを、誇らしげに掲げて見せた。

「うおー、すげえ!」

「丸ちゃん、かっけー!」

 丸山が地上に降りてくると、ホームランを打った打者にそうするように、探検隊の隊員たちが代わる代わる丸山の頭を叩いて祝福する。あまりにも悲しい人生を歩んだ彼がようやく見つけた、安息の地。麻原彰晃探検隊――もはや誰もが認める大会最強の集団、バドラが崩壊することを想像するものは、誰もいなかった。

 かぶと虫とりから、帰還するまでは・・・。

「麻原包囲網だと・・・」

 丸山博文が、バドラの面接に向かう前、角田美代子らからの襲撃を受けた話を広げていくうち、ついにバドラを倒すため、複数の勢力が手を結んだ事実が明らかになったのである。

「やべえよ。これマジでやべえって」

「狼狽えるでない、光彦。いつかは来るとわかっていた試練だ」

 そう、予想していた通りの事態――。参加者最大、10名もの人員を抱えるバドラを倒すには、もう、複数の勢力が束になってかかるしかない。

 織田信長やナポレオンも通った道――包囲網。最大勢力の宿命。麻原彰晃率いるバドラの挑戦が、今、幕を開けた。

 
               ☆    ☆     ☆     ☆     ☆

麻原包囲網結成。その合計人数、26名・・。腹心の部下、金川真大がもたらした報を受けて、宅間守は戦慄した。

 冗談ではない。なぜに自分が、麻原のオッサンの巻き添えを食わねばならんのか。こんなことなら、オッサンと同盟など、結ぶべきではなかった。宅間はすぐさま、包囲網に参加している各勢力に、麻宅同盟解消、包囲網加入の打診をしてまわった。

 しかし、その悉くは、失敗に終わっていた。コリアントリオ、闇サイトトリオ、芸能人コンビ・・もう、三件が潰れている。どこへ電話をかけても、宅間は信用できない、加えるわけにはいかない・・と、話も聞いてもらえないのである。

「クソ、こうなったら・・・」

 宅間が次に電話をかけたのは、かつての盟友、角田美代子である。

「なんだい」

「おう、オバハンか。折り入って頼みがあるんやが・・」

 窮したときは、どれだけ過去に遺恨がある相手にも、媚びてみせる――。前世での犯行直前、あの憎き父親に金の無心をしたときと同じ声音で、宅間は角田に話を切り出した。

「麻原包囲網に加わりたいって話だろ?冗談じゃないよ。誰があんたなんかを信用するかい」

 角田美代子も、同じ返事――。宅間が詳しい話もしないうちから、口調にはすでにして拒絶の意がたっぷりと含まれている。
 
 いったい、何故や。なぜにどいつもこいつも、ワシを拒絶するのや。

「なんやクラァ、ババア!貴様、ワシを裏切って殺そうとしよってからに、どの口から信用なんて言葉を抜かしとるんじゃ!」

「その性格だよ。義理という言葉から遠いという点じゃ、アタシも同類だが、アタシは利益が絡んでいるうちは、相手を裏切ったりはしない。だが、あんたは別や。あんたは、たとえそれがどんな不利益に繋がることがわかっていたとしても、一時の感情で大爆発し、すべてを台無しにする。そんな男と組むのは、自分から爆弾を抱え込むようなものだ。危なっかしくてできるかい」

 返す言葉もない。四度の結婚生活もそう、安定した公務員の職もそう。確かに自分の人生は、後先を考えずに爆発をし、そのたびに大事なものを失うことの連続だった。だが――。

 どうもワシは、イメージだけで語られているところがないか。確かに前世での行いを見たら、ワシのそうした、どうしようもない直情径行の性質は明らかになるところではある。しかし、現世においては――今大会において、ワシは誰かに、何か不義理を働いたか?むしろワシこそが、角田のオバハンに裏切られた被害者ではないか。

 なのに、なんや。なぜにワシが除け者にされ、角田のオバハンの方が受け入れられておるのや。

 前世でも、同じことがあった――。そこでは何もしていないのに、心を入れ替え真面目にやろうと思っているのに、いつも過去の素行不良を理由に、宅間は信用できない、消えてくれと言われる。そうやって疑いの目で見られるから、こちらにも不信感が募り、じゃあお望み通りやってやろうか、となってしまうのである。

「そんなに仲間に入れて欲しいなら、包囲網の盟主の、重信と松永に頼んでみるんだね。最高の権限は、奴らが握ってるんだ。電話番号を教えてやろうか」

「ええわ!」

 通話ボタンを押した。これ以上、不快なだみ声を聞いていると、爆発して、辺りの一般人を殺ってしまいそうだった。

 もうわかった。貴様らがワシをそういう目で見るのなら、もう仲間に入れてくれとは言わん。皆殺しにしたる。麻原のオッサンと、運命を共にしてやる。

 糞どもが。

 地獄で後悔せえや。

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宅間さん…(´;ω;`)自分の人生とも似通ってて作中でも共感する時があるお…。

コーカサスオオカブト知ってる!カブトムシの種類はどうぶつの森で覚えたよ!グラフィックがリアル過ぎて若干グロッキーなのが玉に瑕だけどww

今冬のアニメは織田信長モチーフが熱いよ!『ノブナガン』が面白かったからもう一つの方も観てみよう!

No title

>>okbさん

僕の人生もそうだよ。
でも宅間さんが感じていてギャップというのは、僕らの人生の比じゃなかったと思うんよね。

カブトムシは僕の純粋だった記憶の一ページをつかさどっているよ・・・。ホームセンターのコーカサスは弱っててかわいそうだなあ。

信長ブームは根強いねえ。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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