凶悪犯罪者バトルロイヤル 第141話

 七月二十日――。世間では、子供が夏休みに入るこの日、グランドマスターは、この二十日間あまりの参加者たちの戦いを振り返っていた。

「前回の報告から、ここまでの死亡者です。尾田信夫。殺害者は、西口彰とその一味。小林薫。一般人殺害のため死刑。坂本春野。殺害者は、克美茂、西川和孝。以上、3名です」

 この二十日間での死亡者は、わずか3名に留まった。

 殺された坂本春野は、1987年から1992年にかけて、複数の保険金殺人で逮捕された、女性死刑囚である。逮捕時60歳、死刑確定時77歳と高齢で、最期の時は絞首台ではなく医療刑務所で迎えたのだが、真面目に暮らしていても、経済的困窮から満足な医療を受けられず、誰に看取られることもなく苦しみぬいて死ぬ者がいる一方で、お天道様に顔向けできぬ人生を歩んでいながら、手厚い医療支援を受け、病院のベッドの上で穏やかに死んでいく者がいるというのは、なにか不条理ではある。

 そして、坂本を殺した二名であるが、この二人は一時期、一世を風靡したタレントであった。克美茂は、1960年代、歌手として名を挙げ、多数のヒット曲を世に残したが、やがて落ち目になると、痴情のもつれから愛人を殺害。出所後はカラオケスクールの講師としてカムバックし、それなりの成功を収めるが、覚せい剤取締法違反で再度逮捕・・・と、波乱に満ちた人生を歩んだ。

 西川和孝は、「大五郎」で名を馳せた子役である。しかし、その後は仕事に恵まれず、高校卒業後に芸能界を引退。スイミングスクールの指導員に転じ、やがて経営者となり、新潟の市議会議員ともなったが、スクールの資金繰りがうまくいかず、金銭トラブルから知人を殺害。タイへと逃亡したが、強制送還され逮捕に至った。

 芸能界は華やかな世界である反面、欲望と野望の渦巻く、一筋縄ではいかない世界でもある。十パーセントの才能、二十パーセントの努力、三十パーセントの臆病さ、そして残り四十パーセントの運を掴んで成功を収めた者は、その魔力に骨の髄までとりつかれ、金銭感覚が狂い、カタギに戻ったあとも、まともな生活が出来なくなる。目的のためなら手段を選ばぬ魑魅魍魎たちは、追い詰められると簡単に一線を踏み越えるのである。

 そして、小林薫が一般人を殺害してしまった。事件の真相が明るみに出ることはなかったが、今後もこのような事例はいくらでも起こるに違いない。被害者、高崎氏の冥福を祈ると同時に、今後の対策について、より綿密なシミュレートを重ねなければいけない。

「マスター、例の詩が届きました」

 秘書のアヤメがファイルから取り出したのは、夜原なおきこと麻原彰晃が発表した、「おじおち」である。世田谷区でブームを巻き起こした詩の内容とは、いかなるものであろうか。グランドマスターは興味津々に、幼稚園児がクレヨンで書いたと思われる、ひげ面、長髪(逮捕前の風貌に近づけるなと、あれほど言ったはずなのだが・・)の男の似顔絵が描かれた表紙をめくった。

 ――六月三日。きょうはおじちゃん、えっちななまえのものでだせんを組んだんだよ。一番 ちんすこう 二番 ちんちん電車 三番 ちんあなご 四番 チンギスハーン 五番ちんプレー好プレー大賞 六番 ちんたいマンション 七番 

 グランドマスターには、この詩の何が面白いのか、まったくわからなかった。まず、麻原が挙げているものは、名前にTINの音が入っているだけでエッチでもなんでもないし、しかも、面倒くさくなったのか知らないが、自分でやりだしておいて、途中で投げ出している。こんなわけがわからないうえ、手抜きの作品が、なぜ受けるのか。世の中わからないものである。

 しかし、その麻原彰晃は、「おじおち」による多額の収益と、宅間守という同志を得たことで、もはや比類するもののない、最大の実力者となった。重信軍も角田軍も、もはや単独でバドラに対抗することはできない。麻原を倒すには、もう全参加者が束になって攻めでもしない限りは不可能であろう。

 その麻原を、滅亡一歩手前まで追い詰めた西口彰。知勇と蛮勇を兼ね備えた彼の実力は、やはり本物であった。西口の本格参戦が、他の大会参加者にいかなる影響をもたらすのか、目が離せない。

 コリアントリオ、闇サイトトリオなど、中規模勢力の活動も活発になってきた。その二勢力を束ねる角田軍との連合軍による襲撃を受け、それを掻い潜った、これまた中規模勢力の宅間軍など、ダークホースの動きにも注目である。

 大会そっちのけで、独自の路線を歩む者たちも、いまだ健在である。今週末は、いよいよ、宮崎勤と、保育士マキのデートが行われる。艶やかなアヤに対し、淑やかなマキと、委員会の男性スタッフの間で人気を二分する彼女に、宮崎は何をするつもりなのか。小林薫の二の舞にならぬよう、監視を厳重にしていく必要がある。

 そして市橋達也は、また新たな職を求めて、知的障碍者施設を発った。同じ逃亡者の小池俊一、福田和子との連携はあるのか?彼を付け狙う松本兄弟から、逃げ切ることはできるのか?その動きから、目を離すことはできない。

 これから暑い季節に入り、ますます激しさを増す大会の帰趨に思いを馳せるグランドマスターは、仕事そっちのけで「おじおち」に夢中のアヤメを残し、執務室を出て行った。


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まとめ乙!おじおちにマスターより夢中で読むアヤメに和んだw
だがあんなにぐう可愛いチンアナゴが淫語にカテゴライズされる風潮は個人的に解せない
(以下下ネタの羅列にしかならないので自重)

宮崎さんとマキ先生のデートが気になるよ!

まとめお疲れ様ですー。尊師がゴリゴリのなんJ民になってて笑いましたwえっちな名前のものに「チン」が付くものしかないあたりはホミカちゃんにも意味がわかるようにしたのかなあって勝手に納得しておきます(*´ω`*)グランドマスターはこんなおかしな企画の発案者なのにツッコミが鋭くて好きです!宮崎氏デート編も楽しみにしてますね(((o(*゚▽゚*)o)))

No title

>>OKBさん

こんなこと言っていいのかわからんが、チンアナゴの名前の由来はアレに似ているからだとマジで思ってたんや・・。ごめんね。
同じ生物とは思えないほど美しいマキ先生に性的興奮を催す勤はどうしようもない鬼畜やね。

>>枇杷さん

勤デート編への期待が高まっていて嬉しいですwなんJネタはせっかく僕の趣味なんで、なんらかの形で役立てればと思っていたんだけど、喜んでくれて嬉しいw

「自分の常識は他人の非常識」というけど、同じキャラクターでもその人視点から書くのと、他のキャラから見た客観的な視点で書くのとは全然違って楽しいね。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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