凶悪犯罪者バトルロイヤル 第140話

「おう、麻原のオッサン。今帰ったで」

 世田谷の女子高生から、「おじおち」ブーム到来の話を聞き、半信半疑の麻原の元に、行商に出ていた宅間守が帰還した――。空になったリアカーを引いて。

「これは・・これは、夢ではないだろうな?」

「ワシも驚いとるが、現実に起きたことや。五千部のコピーは、三日間で完売。区民からは、早くも増刷の依頼が来とる」

「そんな・・・まさか」

「ウソやと思うなら、これを読んでみい」

 宅間が取り出したのは、読者から届いた、ファンレターの山であった。

――夜原先生の詩、とても面白かったです。次回作も期待しています。 32歳 男性

――夜原先生のおかげで、手術をする勇気が湧きました。 23歳 女性

――よるはらのおじちゃん、こんにちは。ぼくわ、いつもねるまえに、おじちゃんのおちんちんが、ほみかちゃんにはいるまでお、おかあさんによんでもらっています。とってもおもしろいです。 5歳 男性

――私ウガンダから来たボボと申します。夜原さんの詩を、毎朝公園で朗読しています。おかげで、日本語力が向上しました。これからも続けていきたいと思います。 44歳 男性

――なおきさん・・・・あなたの心と身体を、これほどまでに鷲掴みにする、ほみかという女は誰なのですか・・・私が殺しに行きます・・・必ずやほみかの命を奪い、あなたの心と身体を私の物にします・・・。  81歳 女性

 さらには、県外の読者からも。

――くそ・・・こんなんで・・・。うっ。 復帰年齢26歳 実年齢44歳  男性

――最低!こんな吐き気がする文章を書くような変態は、死ねばいいと思う! 21歳 女性

「ほんで、これが三日分の売り上げや。約束通り、三分の一は、ワシらの手間賃として貰っていくからな」

 宅間が、バッグから「おじおち」三日分の売り上げの三分の二、145万を取り出し、麻原に手渡した。禁治産者たる宅間が、たった三日間でこれだけの金を用意できるはずもなく、また、用意できたとて、麻原にそれをポンと手渡すはずなどない。まさしく、「おじおち」が売れた結果であることを証明していた。

「今後も、ワシらは、オッサンの詩の唯一の販売業者としての利権に預からせてもらう。見返りに、バドラに万が一のときがあったら、ワシらがすぐに駆けつける。今日この日より、正式な同盟の締結や。ええやろう?」

「うむ.。ついでに、アヤ先生をモノにする優先権を俺に渡す、ということも、条件に付けくわえてもらおうか」

「ふん。悪党めが」

 「麻宅同盟」の成立――。麻原と宅間、死闘を繰り広げた二人が手を携えた瞬間だった。

 「おじおち」ブームはその後も加速し、増刷分の一万部も、二日で完売してしまった。三刷目は二万五千部を予定し、さらに絵本化の話や、続編「おじちゃんのぱんつを、ほみかちゃんがあらうまで」の発売も決定した。また、このブームに目を付けた、参加者のT・Nが、「おじおち・N
バージョン」の発売を強要してきた。これにより、「おじおち」の二人のモデル、Nとホミカが在籍する新宿のスカーフキッスも、読者の間で話題となり、連日大盛況となった。

 ここに至り、麻原は「おじおち」の作者が自分であることを正式に世田谷区民に発表した。世田谷区内において爆発的人気を誇る大ヒット作「おじおち」の作者が、やはり世田谷区内においてカリスマ的人気を誇る麻原の作だと聞いて、幻滅する者はおらず、むしろ喝采の声が上がっていた。

「西口彰。もはやお前たちが持つ物質の効果はなくなった。俺たちはその気になれば、遠距離から大石を投げつけるなどし、施設を破壊することもできる。そうなれば、お前は一貫の終わりだ。しかし、子供たちと一緒に作った秘密基地を壊してしまうのは、俺たちの本意ではない。ここは和睦といこうではないか」

 大会期間は、まだ半分以上も残っている。ここで無理に争い、西口たちを、いわゆる「死兵」にしてしまうのは得策ではない。麻原は王者の余裕を見せ付け、西口に降伏を迫った。

「麻原彰晃。どうやら、力は本物のごたるな」

 西口彰・・。知能犯と粗暴犯の両面を併せ持つ、大会屈指の実力者が、ついにその姿を初めて、麻原たちの目の前に現した。

「前回と今回、二度の戦いを通じて、きさんの実力は重々わかった。そして、おいにその実力者と十分に渡り合える力があることもわかった。今回の戦は、おいらの完敗だが、十分に収穫はあったバイ」

 やはり、二度の戦における西口彰の目的は、麻原の力を試すことにあった。しかし、その麻原の力を見てひれ伏し、バドラに入信しようと思うのではなく、むしろ己に麻原に対抗する実力があったことに自信を深め、あくまで敵対の姿勢を貫こうとは、なんたる不敵さか。

 思えば、西口がバドラに対し、現金を直接要求するのではなく、あくまで物品においての要求で資金をすり減らす作戦に出ていたのも、今後、麻原と争う機会がまた訪れることを考えてのことだろう。現金を要求していたのでは、負けた際に必ず、金を返せという話になってしまう。だが、その都度金を使っていれば、無いものは返せないという話になる。西口はそこまで考えていた。やはりこの男、只者ではない。

「助命してくれた礼ちゆうわけやないが、この男が、あんたん味方に加わりたいいっちおる。受け入れてやってくれんか」

 入信を希望するのは、小平義男であった。

「我がバドラは、来る者拒まずだ。これからは教祖たる俺と、偉大なるシヴァ神に、永久の帰依を誓うがいい」

 麻原は、内心で小躍りした。これでまた、バドラの人数は9人になった。草野球チームが組めるのである。

 伝説の強姦魔、小平義男――。早くに逝った大久保清に代わり、我が軍の大きな戦力となってくれることは間違いないだろう。後世この二人は、豊臣秀吉の軍団を支えた二人の軍師、竹中半兵衛、黒田官兵衛の「二兵衛」同様に評価されるに違いなかった。

「あんたも、麻原彰晃についっていっちもよかぞ」

「いや。ワシはあんたに惚れた。地獄の果てまでついていったるわ」

 もう一人の配下、梅川昭美の方は、西口の元を離れぬようである。半月に及ぶ戦いの中で、敵方にも、固い友情が成立していたようだ。

 秘密基地を出た西口彰は、忠実な仲間を連れて去っていく。

「・・・・すまんな」

 西口が、軽く頭を下げた。これを言われたならば、なんJ民の麻原は、こうとしか答えられない。

「・・・・ええんやで」

 麻原のだまし討ちを防ぐ、西口の巧妙な一手だった。

「グッバイ尊師」

「フォーエバー西口」

 周囲の者たちが首を傾げる中、なんJ民同士の、リアルでのやり取り。麻原は、そもそもそれが原因で西口に秘密基地を乗っ取られたのも忘れ、新加入の小平をつれ、草野球の試合がしたくなってきた。

 こうして、麻原の自業自得から始まった戦は、幕を閉じた。最大の戦力を維持すると同時に、貴重な資金源と、宅間守という強力な同盟者を得たバドラ。もはや誰の目にも、生き残りにもっとも近い男が麻原彰晃であることは明らかであった。

 史上無比の宗教団体――世界の救済を目指し、バドラは更なる高みへと登っていく――。

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こんにちは(」・ω・)麻宅同盟!熱い展開ですね〜バドラとわちゃわちゃする宅間軍とかも見られる訳です?なんJ民の邂逅も笑えましたwwやっぱ津島さんの作品好きだなあ…

No title

>>枇杷さん

「おじおち」は以前の回で少し内容に触れておるよ~。これからも何らかの形で書いていくね。僕の作品好きでいてくれてありがとう!
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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