凶悪犯罪者バトルロイヤル 第139話

 麻原彰晃率いるバドラが、世田谷渓谷公園の秘密基地の包囲を始めて、およそ二週間の月日が過ぎようとしていた。

 あの後、西口彰たちからの要求は図々しさを増す一方で、食事や風俗などのデリバリー、「通販生活」で購入した健康器具、インターネットを使うためのWIーFI設置、またバドラ自身の滞在費などの出費により、バドラの金庫は、戦闘開始時から半分近くにまで減少していた。

 包囲の間、信徒たちに命じていた「ワーク」や、世田谷のスーパーバイザーとしての活動は滞っていたから、収入はゼロ。今後もこの状況が続くようであれば、早晩、バドラの金庫は枯渇してしまう。バドラは滅亡し、信徒たちは解散。すなわち、麻原の死を意味するのである。

 バドラの信徒たちは、麻原の憂慮などどこ吹く風で、自分たちで作った「犯罪者人生ゲーム」に興じている。

「お、就職マスだ。どれどれ。ヤクザ、議員、「きらい家」「コ二ワ口」「ク夕三」、闇金融、振込み詐欺業者か・・・」

「うわ、くそ、刑務所ゾーンに突入だ!」

「俺もだ!」

「パンの耳をりんごジュースに浸して、密造酒を作った。3マス進む・・。これマジ?小田島さん」

「マジ話だよ。酒、タバコ、博打、その気になればなんでもできる。ムショでできないことなんて、女くらいのものだ」

「男のケツの穴で妥協するって手もあるんじゃ?人によっちゃ、そっちに目覚めちゃうかも」

「そういう考えもあるね!ハハハハ」

 教祖がどれだけ悩み苦しんでいるかも知らず、何ともいい気なものである。

 信徒たちにとっては、バドラが滅亡したとて、他の組織に属すればいいだけの話。だが、最大組織の教祖として全参加者からマークされている麻原は、そういうわけにはいかない。バドラの滅亡イコール、麻原の死なのである。

 唯一の楽しみといえば、三時と九時のおやつの時間出るが、ここ数日は悩みわずらいのせいで食欲もめっきり減り、十分に満喫できなくなっている。この日のおやつの時間でも、大福二個、シュークリーム三個、ばかうけ十五枚、カリカリ梅五個、ねるねるねるね一個、メントス四個、ハイチュウ三個を食べるのが精いっぱいだった。

 麻原の唯一の希望は、ホミカのアドバイスで実行した、「おじちゃんのおちんちんが、ほみかちゃんにはいるまで」の公開である。麻原は三日前より、世田谷区に彗星の如く現れた詩人「夜原なおき」を名乗り、記憶を頼りに日記の内容をノートに記して五千部をコピーし、食客となっている宅間守たちにリアカーを引かせ、世田谷区内で行商をさせていたのだ。

 ダメ元で始めた試みであったが、やはり今からすると、あんなものが流行るはずはないと思えてきた。宅間の報告では、初日から予想以上の売れ行きで、一部300円を500円に上げてみてもペースは上がる一方という話であったが、にわかには信じがたい。

 また、その話が本当であっても、彼らが金を持ち逃げしないとも限らない。しかし、あの破廉恥な内容を信徒に知られるわけにはいかないから、不安であっても今は宅間たちに頼るしかないの現状だ。ネット販売も開始しようかと考えてはいるが、昭和から平成初期に逮捕された者の多いバドラにおいては、まだネットを完璧に使いこなせる者はおらず、その道も難航していた。

 つまりは、麻原の目に見える範囲では、状況は何も変わっていないのである。麻原は決断を強いられていた。このままジリ貧になり、金銭枯渇による滅亡の道を辿るよりも、イチかバチか力攻めを敢行しよう、ということである。たとえ城を落とせてもこちらの損害も大きいが、背に腹は代えられない。西口たちが日記を、ペンネームなどではなく麻原本人の作者名で発表してしまう恐れもあるが、もう仕方がない。麻原はそこまで、追い詰められているのである。

「みんな・・・遊びの手を止めて、聞いてくれないか」

 麻原が神妙な面持ちで言うと、信徒たちは「犯罪者人生ゲーム」の手を止めた。

「今まで散々持久戦を主張しておきながら、すまないが・・・」

 麻原が重い口を開こうとした、そのときだった。

「ねえ、今話題の”おじおち”読んだ~?」

「読んだ読んだ!なんかあの、気持ち悪いような、おかしいような、なんともいえない読後感が最高だよね~」

 世田谷渓谷公園を通学路とする女子高生たちから聞こえてきた、会話であった。

「き・・君たち!」

 麻原はいてもたってもいられず、女子高生たちを呼び止め、彼女たちが口にする「おじおち」なる書物について、詳細を尋ねてみた。

「うん、”おじおち”は、夜原なおきって人が、世田谷区でリアカー販売している詩だよ~。クラスの半分くらいが読んでるよ。あれすっごい面白いんだから。尊師も読んでみなよ」

 やはり、”おじおち”とは、「おじちゃんのおちんちんが、ほみかちゃんにはいるまで」の略称であった。あの書物が、今、世田谷区内で密かなブームになっている・・?あんな心底くだらない、ダメ元というかヤケクソで始めた自分の試みが、大成功を収めようとしている・・?信じられない。だが、その信じられないことが、現実になりつつある。

 偉大なるシヴァ神の加護としか思えぬ奇跡が、今、起ころうとしていた。

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No title

こんにちわ。きょうはそんしのおぢちゃんのきぶんをあじわおうと
ばかうけをかいにいったのですがどこにもうっていなくて
がっかりしました、三コマもどる。

No title

>>NEOさん

過去記事にコメントありがとうございます~!
ばかうけうまいですよね。
実際の麻原はステーキやパーコー麺、メロンなどを好んで食べていたとされていますが、それだけじゃあそこまで太れないだろうしお菓子もパクパクやっていたんだろうなあ。

No title

ところで、麻原で気になった事が一つ。
現役時代にはサティアンの一つを専用ハーレムにして
一説には100人以上の若い女性信者を愛人として囲っていた麻原ですが、
今のバドラにおいてはいかにして処理しているのでしょうか?
記念すべき第一話でも朝勃ちしていましたし。
あの信徒達が麻原の性処理を快諾するとも思えませんし。
まあ、この後の展開次第ではそれどころではなくなるかもですが。
最低でも一人は氏ぬんだろうな、と見ています。

No title

>>NEOさん

 現在の女っ気がないバドラでは風俗に行くのが一番の解消法でしょうねwでもなんだかんだ、余計な取り合いが起きない男所帯というのが一番平和な気がします。一応、最後に生き残れるのが8人と決まっているので、最低あと二人は殺さないといけませんね・・。

No title

私の勝手な予想ですが、
麻原は最終的に「たった一人だけ」生き残り、一応「勝者」となるも、
なんだかんだ言って仲が良かったバドラの信徒達が
一人もいなくなってしまった事に対し
「自分は今まで何の為に・・・?」と勝者となった事を
素直に喜べず虚無感に苛まれるようになるのでは?
などと思ったりしています。

「たった一人だけ生き残る」部分は長い戦いの末、バドラ対松永軍との最終戦争に至り、
バドラの信徒達が一人、また一人と倒れ、ついには麻原も・・・となるも
その時点で残り生存者が「8人」となりグランドマスターから強制ストップが、
な展開になるかなあ、と勝手に想像してます。

No title

>>NEOさん

 結末に関しては僕もまだ考えていないのでどうなるかわからないですね・・。バドラと松永の戦いは近いうちに実現するでしょう。八月の尊師には休む暇はありませんw
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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