凶悪犯罪者バトルロイヤル 第133話

 宮崎勤は、この日、T・N宅への、245回目の無言電話をかけ終えた。

 まったく、面倒くさい。どうして僕が、こんなつまらんことをしなければならないのか。大体こんなことになったのは、あの小林とかいうヤツが、僕との約束を破るからだ。あいつさえ約束を守っていれば、僕はこんなことをする必要はなかったんだ。僕は忙しいんだ。

 僕が現在取り組んでいるのは、「毒魔羅」の作成準備である。ドブネズミ、ゴキブリ、糞便、生ごみなどを混ぜ合わせた物体を入れた壺の中に、勃起したペニスを出し入れし、雑菌や毒素を、ペニスに染み込ませるのである。そしてそれを、僕の愛する女、マキに差し込む。

 僕がそのアイデアを実行しようと思ったきっかけは、人気コミック「グラップラー刃牙」を読んだことだった。あの作品に出てくる何某という男が操る「毒手」の項を読んで、それをペニスにおいて実現しようと考えたのだ。

 なぜに「ハンド」と「ペニス」を結びつけたかといえば、これもまた、グラップラー刃牙の影響である。刃牙の作者は、「セックス」を「戦い」と明言した。僕はそれにいたく感銘を受けた。そう、性すなわち戦・・。女を蹂躙し、恐怖を与え、あわよくば死に至らしめてこそ、「勝利」を得られる・・。ペニスで女を殺す、それは僕が、藤波知子とのセックス、いや戦いにおいてやろうとしたことだった。あの時は失敗したが、今度はやり遂げてみせる。「毒魔羅」から溢れる毒素、雑菌で、マキを殺してみせる。

 無論、リスクは承知の上だ。下手したら、マキとの一夜を終えたら、僕のペニスは、使い物にならなくなるかもしれない。どころか最悪、命を失う危険もある。しかし、それでもあえてやる。グラップラー刃牙に登場する闘士たちのように、僕も、命を省みぬ戦いを繰り広げてみせる。僕だって、男なんだ。この身体には、熱き血潮が流れている。

 委員会から咎められない自信もあった。ペニスに毒を塗るなどという行為は、普通に考えたら、自殺行為である。まさか誰も、人を殺すためにペニスに毒を塗るなどは考えないだろう。委員会は、僕の行為を自殺行為と判断し、無罪放免となるはずだった。

 「毒魔羅」の壺をかき混ぜているうちに、我が愛する女、マキからの電話がかかってきた。今週末に控えたデートの打ち合わせだろう。

「あ、宮崎さん!今週末の予定、覚えていますよね?」

「ああ、勿論だよ」

「あの、あの、私、コミケには、進撃の巨人のコスプレをしていこうと思ってるんです!宮崎さんは、何を着ていくんですか?」

「内緒だよ。楽しみは、当日までとっておいた方がいいからね」

「そ、それもそうですね・・。あ、話変わりますけど・・」

「なんだい?」

「あの、さっきから聞こえてる、くちゅくちゅ、ぬちゅぬちゅ、っていう音、なんですか?」

「この音かい?キャノン砲から、新たな生命を誕生させる種子を発射させようとしている音だよ」

「うーん・・?あ!今、ガンダムシードディスティニーのDVDを見ているってことですね!」

「まあ、そう言えなくもないね」

「そっかあ、いいなあ。あ、もう休憩時間終わっちゃう!また、連絡しますね!」

「うん・・うっ!」

 マキとの通話を切ったと同時に、大量の白濁液が、フィルムケースの中に放出された。

 ああ、スッキリとした。暫しの賢者タイムを味わった後、僕は、T・N宅への、この日236回目、通算で1874回目の無言電話をかけた。

 まったく、面倒くさい。なんでこんなことをしなければならないのか。これもすべて、あの小林とかいう野郎が、僕の純愛を否定しやがったからだ。

 なんて酷い野郎だ。あいつに、さっきの僕とマキの会話を、聞かせてやりたかった。あの会話を聞けば、いくらあの馬鹿でも、僕の純愛を疑うことはないだろう。あれを聞かせた上で、マキとの純愛を育みつつ放出した、このフィルムケースの中の種子・・SEEDを、見せ付けたかった。僕のSEEDを見せ付けられ、嫉妬に悶え狂う小林の姿を、見たくて仕方なかった。

 インターホンが鳴った。今、木嶋佳苗は留守にしている。僕が出るしかなかった。

 玄関に出て、宅配便の荷物を受け取った。送り主を見て、僕の背筋に電流が走った。

 小林薫・・。あいつ、いつの間に僕の住所を調べたんだ。

 包みを開け、中の物を取り出した。出てきたのは・・長い瓶に詰められた、マムシのように太い、茶褐色の糞便だった。とくに、メッセージカードのようなものはない。

「いったい・・・これは・・・」

 問題は、誰が放出したものか、ということである。もしこれが、美しいNがひり出したものだとしたら、食べねばならない。味を確かめつつ、SEEDを放出しなければならない。

 だが、これが汚らしい小林が放出したものだとしたら・・そんなものは、絶対に食べたくはない。美しい女が放出した汚物は大歓迎だが、汚らしいおっさんが放出した汚物など、まっぴらごめんだ。

 瓶の蓋を空けてみた。当然というか、くさかった。臭いを嗅いだだけでは、誰が出したかはわからない。くそう・・・僕に犬なみの嗅覚があればよかったのに・・。

 食べるか、捨てるか・・。それが問題だった。

「どうしたらいいんだっ、どうしたらいいんだっ!ああっ!ああっ!」

 僕の頭を、強烈なパニックが襲った。

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宮崎パートで実家のような安心感を得られる私異常(漫画やアニメの話が出てくるからってのもあるだろうけど)
刃牙のベッドシーンは昔書籍化もした大手サイトで紹介されてて知ったよ。最近だと某MADを思い出して笑ってしまうw

No title

>>OKBさん

宮崎パートも、「エログロ」「オタク」で完全に方向性を確立できてよかったわい。刃牙は大真面目に読者を楽しませようとして、結果ギャグになってるってのが面白いよなあ。狙いすましたギャグとは笑いの質が決定的に違う。普通、「笑われてる」は「笑わせてる」の下位互換的評価をされるけど、刃牙の場合は、凄く次元の高い「笑われてる」なんよねえ。

試させてもらうよ。

No title

>>鷹さん

男ならやったるんやで

毒魔羅…なんとも禍々しい響きですねww安定の宮崎氏パートに私も安心してます( ´▽`)「グラップラー刃牙」読んでみたくなりました〜

No title

>>枇杷さん

返事遅れてごめんや~。
土曜日の時点でコメント確認したので、なんか返した気になってたんよ~。

毒魔羅は僕も作ってみたいんよ~。別に女性を傷つけたいわけやなくて、自分のモノが凶器になるのがなんか嬉しいんや。

刃牙は男が読むと笑っちゃうだけど、女だと最悪「?」で終わるかもしれんww「刃牙SAGA」なら楽しめるかな?w



プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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