凶悪犯罪者バトルロイヤル 第118・5話

 グランドマスターは、某ホテルにて政府要人との会合を終えた後、秘書のアヤメとともに、6月度の参加者たちの戦いを振り返っていた。

 大会開始からちょうど三分の一に当たる、4か月の期間が消化された。大物の参加者にも、脱落者が出ている。運だけではここまで生き残れず、また実力だけでもここまでは生き残れない。ここまで生き残った者たちは、強運と実力を兼ね備えた本物と評価してもいいだろう。

「今月の死亡者です。藤波和子・・殺害者は、宮崎勤及び山地由紀夫。本山茂久・・殺害者は、北村一家。朝倉幸治郎・・殺害者は、都井睦雄を中心とする旧八木軍。間中博巳・・殺害者は、宅間守。小林カウ・・殺害者は、重信軍。前上博・・殺害者は、都井睦雄。坂巻脩吉・・殺害者は、都井睦雄。都井睦雄・・殺害者は、重信軍。以上、7名です」

 前の月で5名に留まった死亡者が、淘汰が進んだ今月で7名。数字以上のペースアップといえるだろう。やはり、4名もの命が一度に失われた大規模戦「環七通りの戦い」の影響が大きかった。

 死亡者の中には、大物中の大物犯罪者、都井睦雄の名前も入っている。彼がこのタイミングで命を落とすとは思わなかったが、その強さは、まさに魔人の如く、であった。まさかあの加藤智大が、手も足も出ず敗れるとは。宅間守や金川真大、造田博などの強豪との戦いが見られなかったのは残念であるが、彼の戦いを間近で観戦できたのは、一生の思い出となろう。
 
 北村一家が殺害した本山茂久は、1960年、男子児童を、営利目的誘拐し殺害した罪で逮捕された死刑囚である。資産家の家に生まれ、本人もまた歯科医としてエリートコースを歩むが、中年になって若い愛人に入れあげ、資産のほとんどを貢いでしまう。そして借金に喘ぎ、犯行へと至った。この愛人は、罪滅ぼしのためか、本当に愛情があったのか、本妻から絶縁された本山に会いに、足しげく面会に通っていた。拘置所では、自分がひり出した糞を食らうなど、拘禁ノイローゼの症状を見せていたが、演技との説もある。昭和46年、死刑執行。

 八木軍に殺害された朝倉幸治郎は、1983年、物件立ち退きを巡るトラブルから、家族5名を殺害し、死刑判決を受けた。拘置所では、刑務官に敬語を使い、支援団体との交流も断ち切って、卑屈ともいえる態度を見せていたが、1990年には死刑が確定。2001年執行された。

 死刑囚の収監年数は、逮捕後で36年、確定後で45年が最長で、平均では確定後7年程度となっている。法務大臣がハンコを押す基準や理由などは明らかにされていないが、一説には、朝倉のような従順な模範囚ほど、ハンコは押されやすいといわれている。皮肉な話であるが、支援団体や精神鑑定、冤罪の問題など、厄介なしがらみがない者ほど殺しやすい、ということなのだろう。

 そして、宅間守が間中博巳を殺害した、「ガンダム像下の戦い」。宅間守が教えを授けた青年、アカギは、現在も国内の何処かで潜伏を続け、「ブラック企業幹部リスト」の皆殺しを予告している。彼の計画が、大会にいかなる影響を及ぼすのか。加藤智大、Nも、彼と関係がある。運営に差しさわりがあるようならばこちらで始末するが、今のところは泳がせておいてもいいだろう。リストの中に、自分がスポンサーを務める企業の名がなかったことは幸いであった。

 スクリーンに映し出される、参加者たちの活躍が収められたフィルム。グランドマスターは秘書のアヤメとともに、恍惚の眼差しでそれを眺めていたのだが、思わず顔を顰めた個所が一つ。宮崎勤が、藤波和子に性的暴行を加えた後、殺害したシーンである。

 宮崎勤の異常性癖が、いよいよ本格的開花を迎えた。精神医学の権威をも震え上がらせたあの男の狂気は、いかなる色艶を放って咲き誇るのか。悍ましいような、楽しみなような。

 そして、麻原彰晃率いるバドラである。あの連中には、殺人ゲームをしているという緊張感がないのか。あのまま最後まで行くことはないだろうが、なんだか本当に最後まで行ってしまいそうな気もするから困る。

「マスター。例の情報が届きました」

 秘書のアヤメがノートパソコンを取り出し、テキストファイルを開いて見せた。テキスト名は「ブラック・ナイトゲーム オッズ 」である。そう、欧州の秘密結社、ブラック・ナイトゲームのブックメーカーが算出した、対象の参加者が生き残った場合の、勝ち金額の倍率だ。

1 shoko asahara 1.14
2 hutosi matsunaga 1.65
3 tomohiro kato 1.98

 これがベスト3である。三人に共通するのは、巨大組織に属しているということ。信頼感が違うのだ。実際、ベスト10まではほぼ、バドラと重信軍の面々で埋め尽くされている。それほど有名ではない参加者も、である。

 では、有名な犯罪者はどうかといえば、こういう順位であった。
 
 15 mamoru takuma 3.45
 18 tsutomu miyazaki 3.59
 32 tatsuya ichihashi 5.98

これでも頑張った方であろう。宅間の上に角田軍の吉田純子がいたりするのを見れば、やはり多数の票を集めているのは、組織の後ろ盾がある者であるのがわかる。

 そして、最高の配当金が得られる、生き残り8人を全員当てるもので一番多い賭け方というのが、こうなっている。

 1 shoko asahara
2 mitsuhiko seki
3 kiyotaka katsuta
4 tetsuo odajima
5 hiroshi zouda
6 tadashi kikuchi
7 akira syoda
8 nobuo oda

なんと、全員がバドラ所属となっている。もう一人のメンバー、大道寺将司が誰かと入れ替わっているものも合わせれば、その総数は、全体の3割近くにも上ったらしい。いささか面白味には欠けるが、大金がかかっているだけ、皆必死ということだろう。

「ふうむ・・。なるほどな。会員が賭けているのは、一口最低でも、日本円換算で5000万円相当だから、これは大変な金が動くぞ。参加者の皆は、責任重大だな」

 冗談めかした口調で言ったが、実際、グランドマスターもまた、このオッズには関心を持ち、自分も一口賭けてみようかという気になっていた。といっても、公式主催者の自分が、外部の団体に利益を供与したと見られては問題だから、賭けの相手は、秘書のアヤメである。

「アヤメくん、一つ、我々も賭けをしないか。君が買ったら、大会勝利者への報奨金くらいのお金までなら、なんでも買ってあげよう」

 アヤメの頬が上気するのがわかる。しかし、自分がこれから提示する条件を聞いて、その顔を保っていられるかどうか。

「その代わり、私が勝ったら・・」

 宮崎勤の気持ちが、少しわかった気がした。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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