凶悪犯罪者バトルロイヤル 第123話


 麻原彰晃率いるバドラは、世田谷区の「等々力渓谷公園」を訪れていた。この地には、バドラと少年野球チーム、ツンベアーズが建設を進めている「秘密基地」が存在する。その「秘密基地」が、何者かに乗っ取られたというのだ。

 麻原はこの秘密基地を要塞とし、有事の際にはここに立て籠もって籠城戦を展開しようと考えており、常に2名の信徒を城番として配置し、警備に当たらせていた。だが、今日はある事情で城番を置いていなかった。

 今日はバドラと、草野球チーム「世田谷バイキングス」の試合があったのである。現在、バドラの人員は9名。ちょうど、野球チームが一つ組める人数である。ツンベアーズから代役を頼むこともできたのだが、麻原は一度でいいから、バドラのメンバーだけで試合がしたかったのだ。

 100%生え抜きだけで試合をすることに拘ってしまった結果が、この有様である。いったい、どこの誰が「秘密基地」を乗っ取ったのか。麻原は「秘密基地」の前に布陣し、拡声器を使って、籠城犯に呼びかけてみた。

「おい。誰かは知らぬが、出てきてはくれんか。そこは俺たちと、子供たちが作った家なのだ」

 ここが麻原が正式に不動産屋と契約を結んだ住居ならば、もっと強気に出るところだが、「秘密基地」は、麻原たちが公園内に勝手に建てたものである。麻原が世田谷区に顔が利いていなかったら、違法建築として通報されているところだ。だから、不本意ではるが、侵入者には頭を下げて頼むしかない。

 麻原が立ち退きを頼んだ直後、基地の窓から、紙ヒコーキが飛んできた。そこに書かれていたのは・・。

―――ワイは、西口昭や。

 西口昭――またしても、あの男か。ホームレスか何かであってほしいと思っていたが、大会参加者が相手となると厄介なことになる。

 しかし、なぜ西口は、関西弁を使っているのであろうか。確かあの男は、九州の出身であったはずだが。何か嫌な予感がするが――。

「2通目が飛んできたぞ!」

 届いた紙ヒコーキには、衝撃の文字が並んでいた。

――しょうこうとほみかのこうかんにっき 配信開始。


 麻原の脳細胞が、ポップコーンのように跳ねまわった。「しょうこうとほみかのこうかんにっき」とは、麻原が新宿のキャバクラ「スカーフキッス」にて、キャストのホミカとかわしている、交換日記である。ホミカが書く内容は、その日摂った食事の内容や、今気に入っているキャラクターのことなど、ふつうの女の子らしいとりとめのないものであるが、麻原の書く内容は酷いもので、「おぢちゃんのおちんちんが、ほみかちゃんにはいるまで」と題された、その日のペニスの色、つや、硬度、放出量などを記録した、極めてセクハラ的な記述だった。

 うっかりしていた。そういえば先週、麻原自身が秘密基地の城番を勤めた際に、交換日記を基地内に置き忘れていたのだった。もしもあの日記の内容を公開されたなら、バドラ内のみならず、世田谷区の住民に対して麻原が築き上げたカリスマは、完全に崩壊してしまう。なんとしてでも城を落とし、日記を取り返さなくてはならない。

――7月1日 けさのおぢちゃんのおちんちんは――。

「やめろおっ!やめてくれえっ!」

 麻原は、届いた紙ヒコーキを破り捨て、秘密基地に向かって叫んだ。その直後、秘密基地から紙ヒコーキがまた飛んでくる。

――(読み上げちゃ)いかんのか?

 疑惑が、確信へと変わった。(~)いかんのか?とは、2ちゃんねるで、主に野球関連のスレッドが建ち並ぶ「なんでも実況J」板にてよく使われる言い回しである。麻原は近頃、よくなんJに書き込みを行っているのだが、西口はどうやら、それを知っているようだった。

 どこまでも麻原を知り尽くした男――。恐るべき敵に、麻原は改めて戦慄した。

 とにかく厄介なのは、西口は、麻原が恥ずかしい内容を書き記した交換日記を保持しているということだ。正直言って、あれさえ取り戻せれば、秘密基地が乗っ取られようが、壊されようが、麻原的にはどうでもよかった。

 麻原はその旨を書いた紙ヒコーキを、「秘密基地」に向かって投げ返したのだが、西口からは意外な返事が返ってきた。

――あれ?見当たらんな。尻ふき紙に使って、捨ててしまったかもしれんやで?(すっとぼけ)

 一縷の望みが生まれた。もし西口の言っていることが本当ならば、麻原の憂慮はすべて消えてなくなる。思わず笑みをこぼしかけたが、すぐさま届いた紙ヒコーキによって、束の間の安心は打ち砕かれてしまう。

――でも、内容は全部頭の中に入ってるかもしれないんだよなあ。

 さらにこう続く。

――ちょっと気持ち悪いと思った(粉みかん)

 麻原の顔面が、真っ赤に紅潮した。西口は、完全に麻原をおちょくりに来ているようだった。これでは、交換日記の返還は、迫るだけ無駄であろう。逆に、よけいに西口を図に乗らせるだけに違いなかった。

 これを受け、麻原は陣地にテントを設営し、大量の食糧、および「UNO」「野球盤」「人生ゲーム」蒼龍中学校、蒼龍小学校、どらごん保育園合同制作による「はんざいしゃすごろく」などの娯楽製品を用意し、長期戦の構えをとった。

 秘密基地は、木々に覆われた山の斜面に建てられ、その周囲を川が囲い、天然の堀の役目を果たしている。総面積は、バスケットボールのコートほどになろうか。人数が足りぬため、完全包囲はできないが、公園の周囲に、「夜回り尊師」としての活動で交流を深めた不良たちを配置して見張りに当たらせ、敵方の援軍が来ればすぐわかるようにし、兵糧攻めの態勢も整えた。

 時間さえかければ、城は確実に落ちる。麻原最大の黒歴史「おぢちゃんのおちんちんが、ほみかちゃんにはいるまで」が記された、「しょうこうとほみかのこうかんにっき」を、奪還することができる――。

 そう気持ちを切り替えた麻原の視界は、次の瞬間、秘密基地のドアを開けて出てきた男によって、
暗黒に染められた。

「オッサンが麻原彰晃かい。こんなセコイ城ひとつに、ごくろうなこっちゃな」

 風変りなファッションに身を包み、サングラスの奥の瞳でバドラの陣地を睥睨するのは、三菱銀行人質事件の犯人――伝説の籠城犯、梅川昭美だった。
 
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お久しぶりでsおぼろろろろろ(吐血)

うわああああああ梅川さんキタ━(゚∀゚)━!都井くんと前上さんがいなくなって辛くてしょうがなかったのですがバドラに癒され(?)梅川さんの登場に一気にテンションあがりました!!!!バドラVS西口まだまだ継続中だったのですね…尊師きもちわるいですw

No title

>>枇杷さん

久しぶりにコメントありがとう!
梅川さん出すとしたら籠城戦の展開やから、ここしかないと思って出したで~。都井くんはあそこで退場させるべきか否か、迷ったんだよなあ。だけど大物も少しずつ消していかなならんので、勘弁してくれやで~。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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