凶悪犯罪者バトルロイヤル 第122話


 宅間守は、今宵の女との待ち合わせ場所である、六本木の町を歩いていた。

 六本木ヒルズ―この町に聳え立つ、仇敵どもの住まう塔。大会を勝ち残り、賞金10億円を得た暁には、各国のプロフェッショナルから精鋭を選りすぐった一大テロリスト集団を結成し、この塔の住人を皆殺しにしてやるのも一興か。

 そんなことを考えつつ、オフィス街から繁華街へと移ろうとした、そのときだった。

 時速100キロを超えるスピードで、自分に向かって突っ込んでくる一台のファミリーワゴン・・・。生物的な本能で、体が硬直する。脳裏に死の文字が掠めかけたが、寸でのところで、アスファルトにダイブする格好で回避に成功した。

 ドライバーを確認するまでもない。闇サイトのヤツらや。たしかあの連中は、犯行にワゴン車を用いていたようなことを、金川のアホが言っておった。

 宅間はナイフを抜き、闇サイトトリオの連中が降りてくるのを待ったが、ワゴン車はそのまま去っていってしまった。

 その晩は普通に女と遊んだ宅間であったが、その翌日は、今度は角田軍の吉田純子が、買い物帰りにコリアントリオの襲撃を受け、右腕骨折の重傷を負ったという知らせが入った。

 ここに至って、宅間と角田にも、敵方の狙いがはっきりとわかった。

 ゲリラ攻撃―ヤツらは、戦力を一極集中させての会戦を挑むのではなく、あえて兵力を分散して機動性を重視し、奇襲に特化した戦術で攻めてくるようだった。

 角田、宅間連合軍は8人。対して、コリアン、闇サイトトリオは6人。しかし、連合軍の人員には3名の女性がいるのに対し、両トリオは全員が男性。一見、両トリオの方が、戦闘力が高いようにも見える。

 だが、問題は兵の質である。宅間、金川、上部が合わさったときの破壊力は、おそらく全勢力中最強。これに角田軍の男性陣が加われば、あのバドラさえも壊滅させかねない。両トリオが、正面からぶつかるのは得策ではないと判断したのも無理はなかった。このあたり、先週行われた「環七通りの戦い」の顛末も影響しているのかもしれない。

 宅間と角田の考えを裏付けるように、その3日後、吹石恵子が殺害された。角田の命で、ヤクザの情婦として客を取っていたところを、闇サイトトリオの方に襲われたらしい。

 あの女は美人であった。違った形で出会っていたら、口説いていたかもしれない。ええやろう。仇はとったる。ワシの利益のためでもあるからな。コリアントリオ、闇サイトトリオ。首を洗って待っておれ。

 両トリオに対抗するため、角田と宅間が着手したのは、内通者のいぶり出しであった。

 両トリオが、なぜああも簡単に、連合軍のメンバーが一人で行動する機会を把握できるのか。それは連合軍内に、両トリオに通じている人間がいるからに他ならない、というのが、角田の出した結論であった。

 しかし、相手はそう簡単には尻尾を出さない。調査を進めている間にも、角田軍の藤井政安が襲われて、背中に十五針を縫う怪我を負い、その二日後には、宅間軍の金川が、ゲームセンターで遊んでいるところを襲われ、メガネを壊された。

「宅間さん!聞いてくださいよ!メガネなしでアキバのメイドカフェに行ってみたら、いつか俺が犯そうと思ってるマリアが、メアド聞いてきたんすよ!俺のこと可愛いとか言って!合意の上だったら、殴りながら犯っても、委員会に何にも言われないのかな?くぅ~っ、春が来た~っ!!」

 底なしのアホにつける薬はないが、とにかく、このまま手をこまねいているわけにはいかない。宅間は、単独で両トリオに攻撃を仕掛ける提案をしたが、角田には反対される。

「やめた方がええ。コリアントリオが立てこもるのは四階建てのビル。高所の上、ヤツはビルの至るところに細工をし、要塞化しとる。それに、大久保という土地柄を考えてみい。下手したら、住民全体が敵に回るで」

 一理あった。古来より戦においては、地域住民によるゲリラ攻撃や流言飛語、補給の援助などが勝敗に重大な影響を及ぼす場合が多い。サッカーや野球の試合でも、ホームとアウェーの勝利が段違いなことを見れば、それがいかに大きな要素かがわかる。

「一方の闇サイトトリオは、車を住居にしている。これはもう、攻める攻めない以前の問題や」

 確かに、どこにいるかもわからなければ、そもそも攻めようがない。これではどうしようもないが、戦争開始から二週間が経ったころ、大きな進展があった。

「あ・・宅間さん、ですか?私、川岸と申しますけど・・」

 闇サイトトリオの川岸健司からの、寝返りの申し出だった。金川の話では、川岸はトリオの中でも気が小さく、警察に自首したことで、唯一、死刑宣告を免れている男だった。

 連合軍の内通者がわからない状態で、向こうのメンバーから寝返りの相談を受けた。複数の思惑が交錯する状況。何かの罠かもしれない。しかし宅間は、これを受けた。角田には一言の相談もなく、である。

 ワシは命を惜しまん。目の前に映っておるのは、1人250万の報酬だけや。べっぴんのホテトル嬢にぶち込む金を得るためなら、たとえ火の中でも水の中でも、躊躇せずに飛び込んだる。

 後先考えないで人生を生きてきた結果、ドツボに嵌った。だからなんや。いまさら反省したところで、どうなるものでもない。あれ以外の人生など、想像もできん。

 どうせなるようにしかならない人生なら、思い切って突き進むことや。穴の前で変に躊躇うから、落っこちてしまうのや。思い切って踏み切ってみれば、案外、飛び越えられるものや。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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