凶悪犯罪者バトルロイヤル 第121話

 宮崎勤は、眠っているNと男が並んで座る対面の席に、腰を下ろした。

「こうやって会うのは初めてになるか。俺が小林薫だ。よろしくな」

 小林薫・・。聞いたことがあるぞ。法廷で、「第二の宮崎勤として名を残したい」などとのたまった、あの男だ。あの陰毛みたいな髪の毛を短く切っていたから、全然気がつかなかった。

「かけさせろ」

 小林に自己紹介する代わりに、僕は自分の願望を、ストレートに伝えた。

「だめだ」

「どうしてだ。いいじゃないか」

 にべもなく頼みを拒否する小林に、僕は食い下がった。

「俺は、この女を愛しているからだ」

 小林が、開いているのか閉じているのかわからない糸のような目を細め、ニタァと笑いながら、隣に座るNの肩を抱いた。

「よくわからない。愛していたら、かけさせてくれないものなのか?」

「そうだ。俺はこの女を、誰にも汚させない。お前のようなやつには、わからないだろうがな」

 いちいちムカつく顔を浮かべやがって。これが巷に言う、「ドヤ顔」ってやつか?こいつ、ひょっとして、自分に女ができたことを僕に自慢するために、相席を持ち掛けたのか?

 忌々しい奴めーー。愛する女がいるのは、お前だけじゃない。僕にだって、マキという、生涯の契りを結ぶ相手がいるんだ。

「僕にも、愛している女はいるぞ」

「木嶋香苗のことか?」

「違う。あんなんじゃない。あれの3分の1くらいしか体重のない、しっとりした和風美人の女だ」

「ほう」

「僕はあの女の足を輪切りにし、デミグラスソースをかけて食べた後、今度は尻の肉を切り取り、あの女の唾、淡、めやに、涙、陰毛を刻んだ粉末をミックスしたドレッシングをかけて食したいと思っている。これは愛じゃないのか」

「違うな、それは愛じゃない」

 この野郎、僕の純愛を否定しやがって。まあいい。幼女を殺し、その写真を親に送り付けるなんて酷いことをする変態野郎が語る愛など、僕は真に受けることはない。それより、なんとかして、Nに「やさしいこと」をする許可を、こいつから取らなくてはならない。早くしないと、不審に思った木嶋香苗が、こっちのテーブルに来てしまう。

「おい、一つ質問がある」

「なんだ」

「愛する女ができても、オナニーのときはAVを見たりするのか」

「当然だ。いかに愛する女といえど、そこまで俺に干渉する権利はない」

「そうか。ならこうしよう」

 僕は小林に、「勝負」の提案をした。ルールは簡単。僕が、小林に、オナニーネタの提供をする。それを聞いて小林が興味をそそられ、勃起をした時点で負け。僕に、Nに「やさしいこと」をする権利を与えなくてはならない、というものだ。ちなみに、小林が勝っても、とくに見返りはない。

「いいだろう。俺のNへの愛が試されるいい機会だ。乗ってやろう」

 小林が、勃起をすればすぐわかるように「チンポジ」を調整した。こうして、僕と小林、新旧小児性愛殺人者の戦いが始まった。

「ある小学校で知り合った31歳の女教師と10歳の少年がセックスをし、子供を作った。少年はまだ働けないから、生まれた子供は、女教師の51歳の夫の子として育てられることとなった。やがて夫は定年を迎え、少年は大学を卒業し、社会人となった。そこで、少年は夫に真実を告げ、子供と妻を引き取りたい旨申し出た。夫は発狂した」

「うっ・・」

「願として譲らない夫に、少年は妥協案を提示した。妻はいただくが、子供はやる、というものだ。子供は女の子だった。そして現在、13歳。すでに初潮を迎えている。夫は喜んでそれを受けた。そして、今まで自分の娘だと思っていた子とセックスをし、子供を作った。めでたし、めでたし」

 テーブルの周囲にいた客、ウェイターの顔から、血の気が失せていくのを感じた。ゴキブリの交尾を見るかのような痛い視線が、僕に注がれている。快感だった。変態冥利に尽きる瞬間。生きているという実感がする。

「幸せな夫婦がいた。夫に手かせ足かせをはめ、檻に放り込んだ。毎日毎晩、夫の前で妻を凌辱した。やがて子供が生まれた。それまで夫には、ドッグフードを食べさせていたが、その日から違うものを食べさせることにした。妻の乳から作った、チーズだった」

「チ・・チーズ・・作れるのか?」

「知らん。食ったことないから」

 小林の鼻の孔が、さっきの倍くらいに広がっている。興奮してきている証拠だった。

「制限時間まで、あと2分か。続けさせてもらおう」

 フィニッシュ。これで小林のペニスに、大量の血液を流し込んでやる。

「雑誌に載るレベルの美女がいた。美女は純白のウェディングドレスを着ている。だが、二週間、風呂に入っていない。そして、さっきまで運動をして大量の汗をかき、また、用を足して、拭かなかった。その美女を、みすぼらしい身なりをしたホームレスが犯した。しかしホームレスは、つい一時間前、風呂で入念に体を洗ったばかりだった。二人のセックスを見ているギャラリーは、部屋を覆う悪臭は、どっちが発していると答えるだろうか?を調べる実験が行われた」

 周囲の客が僕を見る目が、ゴキブリの交尾を見るものから、ゴキブリの孵化をみるものへと変わっていった。

「あの、お客様・・お隣の席の方から、話の内容を変えてほしいとのお願いを預かっておりまして・・」

「僕の勝ちだ。Nはもらう」

 クレームを預かっていたウェイターの口を封じて、僕は小林に勝利宣言をした。小林の履いているスラックスには、立派なテントが張っている。僕は、壮絶な戦いに勝利したのだ。

「うっ・・おい、N。起きてくれ」

「…何?え、ちょ・・宮崎・・え?なにがどうな・・」

「話は後だ。さあ、もう出よう」

 小林が、動揺するNの手を引いて、会計を済ませ、足早に店を出ていった。どうやら、あのままホテルにしけこもうということらしい。

 人との約束を守らないなんて、ひどい奴だ。これでは、僕は、オナニーネタの食い逃げをされてしまったようなものではないか。

 小林薫・・。覚えていろよ。この落とし前は、絶対につけてやる。そう決意しながら、僕はNの食べかけの食事を、Nが使ったナイフとフォークで食べ、Nが使ったナプキンで、口を拭いた。

 もう一つの誓い――。いつか、違う口につけるナプキンで、口を拭ってみせる。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR