凶悪犯罪者バトルロイヤル 第120話

 Nは、新聞専売所で拡張員として勤め始めた小林薫の就職祝いに、青山のイタリア料理店「カノビアーノ青山」を訪れていた。

 思わぬきっかけから始まった同棲生活であったが、思わぬほど順調に進んでいた。家での小林は、私に手を挙げるどころか、怒鳴ったりもしない。性行為の際、頑なに膣内射精に拘ること以外は、私を気遣い、常に優しく接してくれる、良夫そのものだった。

「あの戦いから一週間か・・。俺の雇い主だった日高夫妻にも見捨てられたようだし、八木はもう終わりだな」

 色気も素っ気もないが、やはり一番盛り上がるのは、一週間前、重信軍と八木軍との間で行われた「環七通りの戦い」の話題である。

「そうかしら。八木がそう簡単に負けを認めるとは思わないわ」

 八木は往生際の悪い男である。また、執念深い男でもある。大会開始から、まだ四か月しか経っていないこの時期に、おとなしく引き下がるとは思えない。

 第二次世界大戦で、他ならぬ我が国が証明したように、「破滅へと向かう者」は、ときに圧倒的物量を超越した強さを発揮することがある。失う物のなくなった八木が、どんな大胆な手を打ってくるか。まだまだ、油断することはできない。

「加藤智大も、退院したみたいだな」

 昨日、退院した加藤店長が、店長業務に復帰した。表向き、今までと変わらない様子だったが、私には、必死の思いで強がっているようにしか見えなかった。戦では、都井睦雄に手も足も出なかったという加藤店長。この先、立ち直ることができるのだろうか・・。

「結局、重信軍の戦死者は、戦闘向きではない前上博だけか。良質な経験を積み、資金面での最大のライバルも消えた。これからも、安泰だな」

「そうね。あなたも、加入を申し込んでみたら」

「・・それはできん」

 口に出してから気づいたが、小林が松永軍に入ることは、すなわち私と離ればなれになることを意味しているのだ。重信軍とA軍は、形式的にはあくまで同盟軍。あまりに深く結びついてしまうわけにはいかない。一定の距離感は必要なのである。

 ならば、A軍という選択肢もない。Aは、己の軍が「少年犯罪者チーム」であることに、強い拘りを持っているからである。私と小林の関係が知れれば、おそらく、罠にかけられて殺される・・。

「おい、どうした。俺といるのは、退屈なのか?」

 ついつい、あくびを漏らしてしまった私に、小林が悲しそうな顔で言った。

「違うの。最近、睡眠とれてなかったから・・」

 最近、私の客に、有名企業「コ二ワ口」の幹部が着いた。服飾についての勉強で、連日徹夜が続いていたのである。

 それを知っている小林は、私に、自分が食事をとっている間、居眠りをするのを許してくれた。私をレイプした男の前で、こんなにも油断した姿を見せている。人が聞いたら、どう思うのだろう。私にもうまく説明できないのに、わかるわけがない。


   ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆ 
 



宮崎勤は、同棲相手の木嶋香苗とともに、青山のイタリア料理店「カノビアーノ青山」を訪れていた。

このところは、山地くんとばかり遊んでいた僕だが、木嶋の機嫌を取るためにも、たまには構ってやらなければならない。なんといっても、僕の生活は、この女がいなければ成り立たないのである。

「勤さん!スープを音を立てて啜らない!それと、パンにはかぶりつかない!一口サイズに、ちぎって食べなさい!」

 なんのかんのと、うるさい女だ。メシくらい、好きに食わせろという話である。シャバにいたときは、料理教室だかに通って、本格的にテーブルマナーを勉強していたそうだが、そんなものを学んだところで、犬に論語ってなものではないのか。

 せっかくのうまい料理も、これでは台無しである。しかし、食事代が全部この女もちである以上、口ごたえもできない。僕のコンプレックスである、手首が回らないせいでスプーンやフォークがうまく使えないことを指摘してきたら、躊躇せず「肉物体」にしてやろうと思っていたが、人間心理を知り尽くした木嶋は、そこだけには触れてこない。だから余計にストレスが募る。憮然としたままトイレに立ったのだが、そこで予想外の人物に出くわしてしまった。

 T・N・・。大会に途中参加した、佐世保児童殺傷事件の犯人だ。

 もの凄い勢いで、ペニスに海綿体が漲っていく。僕はずっと待っていたのだ。この女と、出会うときを。

 以前、藤波和子で童貞を捨てた僕であったが、あの女は実年齢で10歳以上、復帰年齢でも、僕より7歳も上のオバサンだった。世の中には熟女マニアなどというのもいるらしいが、僕にその気持ちはわからない。女は若く、美しいほうがいいのである。

 来週末には、「ドラゴンほいくえん」のマキとかいう保育士とデートの予定があるが、あの女は一般人。そうそう、「やさしいこと」はできない。しかし今目の前にいるNには、遠慮はいらない。「やさしいこと」し放題なのである。

 僕はさっそく、己の尻の穴に手をねじ入れ、香ばしい臭いを指先に擦り付けたのち、Nの口、あるいは鼻先にそれを差し込もうとしたのだが、その直前、Nが男と一緒であることに気が付き、行為を中断した。

 ちくしょう。なんなんだあの男は。あいつがいるせいで、「やさしいこと」ができないじゃないか。

 邪魔者のせいで「やさしいこと」ができなくなった僕だが、それでも諦め切れず、自分の席とNのテーブルの周りを、しばらく行ったり来たりしていた。

「勤さん、なにやってるの。ウロウロウロウロ、お行儀が悪いわよ」

 うるさい。今の僕は、お前なんかに構っている暇はないんだ。肉物体にしてやりたいのをこらえ、僕は、糞が付着した指に、今度は己の脇の下の臭いを擦りつけた上で、Nの席へと歩いて行った。

「おい、宮崎勤。挙動不審な動きをしていないで、こっちへ座れ。一緒に、メシを食おうじゃないか」

 初めて目が合ったお邪魔虫男が、僕を席に着くよう促してきた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR