凶悪犯罪者バトルロイヤル 第119話

 宅間守は、角田美代子が本拠を構える練馬区のマンションへと足を運んでいた。もともとは世田谷区を拠点として活動していた角田であったが、近ごろ世田谷では、麻原彰晃の力が大きくなりすぎ、締め出されるような形で引っ越したのだという。

「いっそのこと、麻原のオッサンと組んだらどうや?」

 宅間のこの質問に対し、角田はこう答えた。

「確かに、今力を蓄えることを考えたら、最大勢力の麻原と組むのは最高の手だろう。だが、それでは麻原を超えることは永遠にできない。あたしらと組んで後顧の憂いがなくなった麻原はさらに肥え太り、どうあがいても勝てない怪物となってしまうだけだ。麻原に力をつけさせず、あたしらが力をつけるには、たとえ茨の道だろうが、独立独歩でやっていくしかないんだよ」

 そういうものなのだろうか。自分が生き残ること、大会を勝ち残ることを考えるのにまったく積極的になれない宅間には、いまいちよくわからなかった。

「で・・今日は何の用件でワシを呼び出したんや」

 そう問う宅間に対して、角田は、金嬉老、李珍宇のコリアンコンビが謀反を起こし、角田軍への敵対姿勢を鮮明にしたことを伝えた。

「なんでや。オバハンとあいつらは、うまくいっとったんやないのか」

 先月のこと、角田軍と、参加者の向井義己と江東恒のコンビとの間で、抗争の火花が散った。宅間は、「アカギ事件」の際に負った怪我で負傷療養中であったため、金川と上部を援軍に差し向けただけで参戦しなかったのだが、その戦には角田軍の傘下であるコリアンコンビも参戦しており、李珍宇が、我が配下の上部と協力し、敵軍の江東を討ち取るなどして活躍を見せたという。なお、この戦で角田軍の松本健次が命を落としたが、相手方の向井が降伏して、新たに角田軍に加わっていた。

 あのコリアンコンビが、角田のオバハンを裏切った・・。いったい、何が起こったというのだろうか。

「どうやら、新しく加わった、古着店主殺害事件の孫斗八に唆されたようやね」

「なにもんや、そいつは」

 尋ねる宅間に、金川真大が、宅間も収監されていた大阪拘置所にて、「訴訟魔」として当局と徹底的に戦った男の話を聞かせた。

「・・・ま、大体わかったわ。せやけど、そいつを合わせても相手は3人。こっちは、オバハンとことワシら、合わせて8人や。戦力比は倍以上。力ずくで潰したったらええやろ」

「どうやら、そう簡単にはいかなそうなんだよ」

 角田のオバハンの語るところによると、コリアンコンビ改めコリアントリオは、本拠を駒込の商店街から、大久保のコリアンタウンに移し、ビルの四階に住居兼店舗の飲食店を構え、天下を伺い始めたのだという。

 大久保から百人町にかけての界隈は、多くのコリアンマフィアの根城ともなっている。コリアンマフィアやチャイナマフィアは、ヤクザに比べて数は少なく資金力にも乏しいが、暴対法などの規制がなく、また民族性もあって、ヤクザよりも遥かに凶暴で見境がないことで知られている。コリアントリオは、おそらくそうした勢力と結びついたのであろう。

 しかし、コリアンマフィアがいくら凶暴だとしても、委員会の後ろ盾がある大会参加者に、直接の手出しはできない。純粋な兵力がアップするわけではないのである。安定した資金源を得たとしても、軍事力の裏付けがなければ、角田軍に牙を剥いたりはしないはずだ。

 軍事力の裏付けは、あった。コリアントリオは、闇サイト殺人事件の三人、堀慶末、神田司、川岸健治と手を携え、角田――宅間のラインに対抗しようというのだ。

「おかしいじゃないすか。闇サイトの三人は、裁判でお互いに罪を擦り付け合い、憎しみあってるはずっすよ。なんでまた、一緒に行動してるんすか?」

 疑問を呈したのは、金川真大である。

「調べたところによると、どうやらあの三人は、事件前後の記憶を、委員会によって消されているようなんだよ。それでも、資料なりなんなりを見れば、自分らの関係性はわかると思うんやが・・」

 宅間にとっては、さほど疑問に思うことでもなかった。人と人との間には、理屈では説明できない何かがある。因縁と呼ぶべきものだろうか。100回生まれ変わっても、たとえ地球の真裏で生まれたとしても、必ずどこかで出会い、愛し合う。あるいは、憎しみ合う。そうした関係が、確かにある。

 宅間にとっては、人ではないが、あの池田小。幼きころ憧れた学び舎であり、最初の妻の勤め先でもあった。自分があの学校を襲撃したのは、理屈では説明できない何かに導かれたから、としか思えなかった。

「で、そいつらを倒したら、どんだけの報酬を払うてくれるんや」

 御託はいい。どこのどいつが相手だろうと、逃げも隠れもしない。殺して、金を得るだけや。

この世に蘇り、はや100日以上が経過した。散々、やりたいことはやり尽くした。心残りがあるとしたら、ただ一つ。死んでしもうたら、ワシの後継者のこれからの暴れっぷりを、この目で見られないことくらいか。

「一人につき、200万。約束するよ」

「・・・もう一声や」

 200万では足りん。こちとら、風俗に、ねるとんパーティへの参加にと、色々金もかかるのや。ワシだけではない。金川のアホは、最新のゲームが欲しいとかぬかしよるし、上部の鳥の巣頭にも小遣いをやらねばならん。人を使うには、まっこと、金がかかるのや。

「わかった。250万。これでどうだい」

「ふむ。とりあえず、それくらいで手を打ったるわ。ただし、相手の強さによっては、多少、報酬を上げてもらうかもわからんがな」

「悪党やね」

 当然や。かつて親父の出資で始めた運送屋を3か月で潰したとはいえ、ワシも商人の国で育ったのやから。

 角田、宅間軍VSコリアントリオ、闇サイトトリオ。死闘の幕が、今、上がった。

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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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