凶悪犯罪者バトルロイヤル 第111話

 加藤智大は、仲間とともに、今夜の戦場である、赤羽の横山組東京支部ビル前の見取り図に目を落としていた。

「ビルへの入り口は一つ。正面玄関の自動ドアのみです。敵軍は必ずここから入ってきます」

 重信さんが、赤いボールペンでビルを指しながら言う。

「本当か?場所を変えて行うかもしれないじゃないか」

「ヤクザはメンツの生き物です。襲撃を受ける可能性があると聞いたからといって、警戒して場所を変えるようなことはしません。相手が同じヤクザならともかく、私たちは、彼らから見たらカタギですから、なおさらです」

 孫斗八の疑問に、重信さんが答えた。

「八木たちが来ない、ということも考えられません。ヤクザは何よりも礼にこだわる生き物ですから。同時に、粗探し、揚げ足とりの名人でもあります。援助を受けるようになって最初に行われる定例の会合に顔も出さないなどとなれば、後々大きなデメリットになることを、八木はよくわかっているはずです」

 戦争開始、待ったなし。出撃予定時刻まであと20分、現場に辿り着くまでおよそ30分。遅くとも1時間後には、確実に血の雨が降るということだ。

 先ほどから、重信さんはまるで自分が考えたことのように、八木軍やヤクザの思考を語っているが、彼女との付き合いも3か月になる俺には、なんとなくわかる。今のはすべて、重信さんではなく、松永さんが分析したことだ。

 全体を見据えた戦略や資金獲得、人材獲得など、内務的なことは、松永さんが。実戦を指揮するのは、重信さんが。どうやらそれが、わが軍の首脳陣の役割分担となっているらしい。お互いがそれぞれの得意分野で力を発揮する、理想的なコンビのようにも思えるが、一抹の不安がある。我が軍のリーダーが、重信さんであるということだ。

 トップが武略に優れ、補佐であるナンバー2が知略に優れる。歴史上、このようなコンビがうまくいった例は少ない。うまくいっているのは、宰相ビスマルクと将軍モルトケ、源頼朝と源義経のような、政治家が完全に軍人の上に君臨するパターンだ。

 文民統制に失敗した旧日本軍が自滅したことからもわかる通り、政治は常に軍事に優先しなければならない。今のところは、重信さんが松永さんを信頼しきっているからいいが、この先、二人が決別するようなことがないともいえない。そのとき、俺はどうしたらいいのか。

「今後のことを考える必要はありません。今日の戦いに、あなたたちの全てをぶつけてください。死を恐れてはなりません。死なぬ、帰らぬと思えば、逆に生還できるものです」

 重信さんが言った。その通りだ。先のことを考えても仕方がない。まずは今日の戦いで、確実に生き残ることを考えなければ。

 そして出発時刻となり、俺たちは車へと乗り込んだ。いつも使っているハイエースとは別のワゴンである。みんながシートに座り、俺がエンジンをかけたところで、松永さんから重大発表があった。

「10分後。敵軍の参謀、小林カウが我が軍に合流します。一応、味方に加わって頂けるという形になるので、丁重に迎えて差し上げてください」

 この発表を受け、車内にはざわめきが広がる。

「小林カウを?・・信頼できるんですか?」

「信頼はできないと思いますよ。向こうにも何かしら、よからぬ企みがあってのことでしょう」

 軍団員、とくに傭兵部隊三人の顔色がどう変化するかを観察しながら、松永さんが答える。

「何かしらって・・」

「おそらくは、開戦直前のこのタイミングで我が軍に潜り込み、内部から我が軍に工作を仕掛けようとしていると思うのですが、断言はできません。もしかすると、車で小林を拾う瞬間に、向こうから襲撃を受けるのかもしれませんし。そうなれば、ちょうど立場があべこべになる形になりますから、多少は面食らうでしょうね。またあるいは、本当に我が軍に味方しようと考えているのかもしれません。色々なパターンが考えられます。色々、ね」

 松永さんが、楽しいゲームをプレイしているかのように、口角を吊り上げる。

 正直、余計なことをしてくれたと思う。我が軍と八木軍の戦力比は、9対5。普通にやれば勝てる兵力差だ。策というのは、本来、力が劣っている側が弄するもので、地力に勝っている場合には、素直に数で押した方がいい結果を生む場合が多い。変に動けば、その分相手に付け入る隙を与えることにもなり兼ねない。

 兵力で勝っている側が策を弄するなら、よほど成功率が高いか、あるいはリスクがまったくない、という策以外は、やるべきではないが、松永さんはそこまで自信があるのか。俺にはそうは思えない。ただ、己の趣味でやっているようにしか見えない。

 どうも松永さんには、人殺しをゲーム感覚で行っているようなところが見受けられる。ゲームというよりは、競馬などのギャンブル行為や、ロッククライミングやスカイダイビングのような、エクストリームスポーツに近い感覚なのかもしれない。人の命を奪うことへの罪悪感や、味方の命を危険に晒すことへの躊躇はまるでなく、ただひたすら、己の命や財産を差し出すスリルしかないということだ。格闘技のプロがアドレナリンの放出によりそうなるのではなく、あくまで本人の中では冷静であるところが恐ろしい。
 
 意見してもいいものだろうか。しかし、ここまで、松永さんが立てた戦略で勝ってきたのも事実。やはり門外漢は、口を出さない方が賢明か。

 車を新宿から赤羽に向かって進めていくと、途中、歩道の脇で手を振っている中年の女が見えたので、車に載せた。当時の基準で見ても、さして美人ともいえないこのオバサンが、小林カウらしい。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

すげぇ!すげぇ!♪w

パネェっす!w重信ねぇさん、
松永(もう呼び捨てでいいやw)、
それぞれの雰囲気が出てて…、
イイですね…。(早朝から微笑みw)

バトルロイヤルの世界に行きたい。
(クックックッ…w)

松永…アドレナリン放出よりは、
気分良すぎてα波とか出ててそう…
うわぁ、こわいなぁ…w

No title

>>蘭さん

α波ですかw
拷問中の彼はビンビン放出していそうですねw

ひっ…、こわっ><
でも、小説でなら読みたい…w
いつか尾形の回以上の高級品を…
いつかきっと…w

今回の決戦は本気ヤバいw
重信軍と八木軍好きとしてはね…
BGMつけて読み返したよ。感涙w

>>蘭さん

横レス失礼します!
BGMつきで再読したくだりが気になりつい書きこんでしまいました。
差し支えなければBGMの詳細を教えて頂けないでしょうか…?

はわわ(*´ω`*)

おきば鯨さん>>今晩は☆
まさかの横レス…嬉し過ぎます♪w
改めてよろしくお願いしますm(__)m

詳細…、ちょっと長くなりますが、
お話しさせて下さい(>_<)

BGMはYouTube等で
好きな音楽を流しながら…
(音量もお好みで~)
じっくり読んで、さらにイメージを膨らませてます♪w

毎回、流す訳じゃないんですけど、
BGM付けると興奮度がさらにup!w
するんですよね~
特に松永、宅間、加藤、市橋、
Nパート、シリアスな回で!

個人的には、洋楽で色々☆
(新旧は問わず、幅広く…)
クラシック、ジャズもイイです!

作戦会議wやバトルシーンには、
某RPG戦闘曲&名曲、他ゲーム曲w
アニメならエヴァのサントラ等。

今回は、FFⅦ 神羅カンパニー
って曲です(YouTubeにありますw)
FFは特に好きなんですよね☆

キッカケは、夏頃に~
久々に洋楽たくさん聞いてて、
そのまま携帯でバトルロイヤル読んだ時に、…BGMとして良いかも!?
って、ひらめきました(*≧∀≦*)

って、感激のあまり、ついつい長文に~~~…すみません。照。
あくまでも個人的な楽しみ方ですw

>>蘭さん

こんにちは(*´∇`*)
詳しいレス大変ありがとうございます!!
FFはあいにく未プレイなもので教えて頂いた曲を調べて聴いてみたところ、今回の緊迫した雰囲気とイメージ通りの曲調にテンション上がりました!
バトルシーンは確かにエヴァやRPGの戦闘曲が合いそうw
洋楽には疎い方なんですが、歌詞を見たら小説のイメージに近いような曲もあるんでしょうね。
私の場合だと好きなアニメのOPをバトルロイヤルの登場人物に脳内変換して楽しんでますw
技術があれば手書きMADでも上げて支援したいんですが現実はそうもいかず;;
でもダイジェスト版にしてサウンドノベル的な紙芝居なら私にも作れる可能性が微レ存…?とか一瞬妄想してしまいました(^^;
文字だけでも十分面白い作品ですが、BGM付きで読み直すと臨場感が俄然増しそうですよね。
BGMの大切さが改めて分かりました…!

No title

>>蘭さん、おきば椋さん

小説や漫画を読むとき脳内でBGMを再生するのはワイもやるんやで~。多分わかんないと思うけど、「麻原彰晃率いるバドラは、~を訪れていた」で始まる麻原パートお決まりの冒頭シーンでは、「信長の野望蒼天緑」の野戦BGMを、宅間VSバドラのシーンでは「三国志10」の攻城戦BGMを、「アカギ編」ではポケモンのアカギのBGMを、宮崎勤が変態的行為を働くシーンでは、「バイオハザード・アンブレラ・クロニクルズ」のハンクのBGMを脳内で流しとるんやで~。

言っても絶対わかんないなw

HN少し変えました(o^o^o)
改めてヨロシクお願いしますw

>>おきば鯨さん
コチラこそ~><嬉すぃです☆w
FFは昔、徹夜するほどハマッてました~w
神曲が多くて、音楽鑑賞だけでも
超オススメです♪
手描きMADって難しそぉですね?
(;´д`)調べたところ未知の領域でうた…w
BGMいいですよね!なくても素敵ですが…
もう萌えというより燃えます♪ww

あと新発見wまたBGMネタです。。
YouTubeで
「東京 ドライブ」「歌舞伎町 ドライブ」って検索したら、都内や首都高のドライブ映像&BGMが色々ありました~~~
なかなか、すぐ都内に行けないので…、都内ドライブ動画を見て、
さらにイメージ膨らませちゃいました。。重信軍に入りたいなぁ(うわぁ…w)
バトルロイヤル好きすぎて辛いです。。www

>>津島くん
そのBGM…知らなかったけど、
調べて視聴したよ~
ゲームプレイ動画まであったよ
(*´ω`*)格好いいな。。
たまたま見かけた、
無双シリーズのもよかった…。
PCで流しながら読んでみますw

宅間さんの戦闘シーン、
あたしは激しい感じの曲にしてる♪

ガンダム像の回…FFⅩ「Over World」が浮かんで、即、視聴しながら読書した記憶が☆w

洋楽なら、ヘヴィメタ、ロック!w
宅間さん通常シーンはR&Bが好き。

David Guetta feat. Akon - Sexy Chick ♪(宅間さん&金川と徘徊してる時とか合いそう☆)他にも色々、似合いそうな名曲あるけど書ききれぬ~~~

しかし宮崎パートにまでイメージBGMがあるとは…!w恐れ入りました…。。(笑)
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR