凶悪犯罪者バトルロイヤル 第106話

 松永太は、軍団の配下とともに、新宿中央公園にて、三人の参加者と待ち合わせをしていた。そのうちの一人――坂巻脩吉が、十八番の「マンボ・イタリアーノ」を口ずさみながら現れた。1954年、東京都文京区幼女殺害事件の犯人。今大会においては、Aに殺された小松和人を瀕死にまで追いやった実績を持つ男である。

「どうも、松永さん」

「やあ、坂巻くん。しばらくですね」

 松永が坂巻と会うのは、これが初めてではない。

 この一か月、松永は「麻原包囲網」を完成させるべく、どの勢力にも属していない、一匹狼の参加者に対して、接触を図ってきた。無論、全員と顔を合わせるとはいかなかったが、そのうちの何人かとは、酒を酌み交わすなどして親睦を深め、相互協力を約す仲となっていた。

 できることなら、わが軍の一員として迎えたかったのだが、それは接触した全員に断られた。さすがにこの時期まで一人で活動していただけあり、彼らのアクの強さと協調性の無さは、社会不適応者の集まりである参加者の中でも度外れていた。そんな彼らを無理やり従わせようとしても、本来の力を発揮できないばかりか、不満分子として燻る結果になってしまう。

 ならば、金で仕事を請け負う、傭兵として利用する。それが松永の考えであった。今、彼らを使ってしまえば、当然「麻原包囲網」のピースは減ってしまうが、目先の八木軍との戦いで、「麻原包囲網」の盟主となる予定のわが軍そのものが弱体化してしまっては意味がない。バランスを考えながら、必要なときに必要な戦力を整えていくことが重要である。

「ほんで?用ってのは?」

「まあ、待ってください。今日はまだ、あと二名の方を、この場にお呼びしています」

 傭兵部隊の三人が、意志を統一する必要はない。お互いの顔も知らなくていい。だが、条件は、全員一緒に詰めておかなければならない。後々、あいつは幾らもらった、こいつは幾らもらったと、話がこじれては面倒である。

「・・・」

 しばらくして、周囲を異様なまでに警戒しながら現れたのは、1981年、深川通り魔事件の川俣軍治である。覚せい剤を使用して錯乱し、4人の命を奪った男。鮮烈な印象を残す白ブリーフ一丁の逮捕シーンの写真は、あまりにも有名である。余談だが、なんと川俣の祖父は、被害者の女性の祖父に、同じように殺されていた。川俣はそのことを知らなかったというが、偶然で片付けるには無理のある話である。因果応報といったものだろうか。

「おうおう、来てやったぞ!」

 続いて現れた最後の一人が、孫斗八である。1951年、洋服店主殺害事件の犯人。寒い雪の日、詐欺などの容疑で手配され、薄着で歩く孫に同情し、ぜんざいを振る舞い、酒まで奢ってくれた店主から金を奪って逃走した罪で死刑判決を受けた孫は、拘置所の中で法律を学び、100回を超える訴訟を起こしては、数々の監獄法を改正させた。拘置所の職員は、孫に訴訟を起こされないため、孫を腫れ物に触るように扱うようになり、尊大な態度で刑務官を顎で使う様は「第二の所長」と言われた。

「おいおいおい。俺を呼び出しやがって、何の用だ?」

 孫が、ベンチに腰掛けていた前上博と畠山鈴香の首根っこを掴んでどかせ、踏ん反り返って座った。どかされた二人は、苦笑いである。孫の性格については、前もってメンバーには説明していたため、余計なトラブルにはならずに済んだ。

「今日は、みなさんに頼み事があって、ご足労願いました。来週、6月25日。みなさんには、我が軍の総攻撃に加わっていただきたいのです」

 全員が揃ったところで、松永が、三人への用件を説明した。

 総攻撃―――。いよいよ、八木軍との決戦の日取りが決まった。この日を選んだのは、八木が提携するヤクザとの会合に出席するためである。

 わが軍との対決姿勢を鮮明にしてからというもの、八木は本拠とする池袋の「IKB48」をそのまま住居とし、施設を要塞化して、わが軍の襲来に備えていた。食事もデリバリーで済ませ、徹底的に守りを固めていたが、ヤクザとの会合に出席するためには、どうしても外に出なければならなかった。

 わが軍のように、「ブラック・ナイトゲーム」関連の依頼に応えるなどして信頼関係を作っておけば、緊急時に一度くらい予定をパスすることもできただろうが、八木が暴力団、横山組と提携を結んだのはつい最近のことであり、時間が足りなかった。動くのが、あまりにも遅すぎたのだ。

「いいけど、あんたらと一緒に行動するのはゴメンだよ。一人が気楽でいいからね」

「そうだそうだ!誰がお前の下なんかにつくものか!」

 早とちりした坂巻と孫が、不満を述べる。

「当然です。みなさんには、決戦当日、その瞬間だけ、わが軍の指揮下に入って戦って頂ければ、それで結構です。金で戦いを請け負う、傭兵ですね」

 二人が、納得した様子で頷いた。特に川俣には、「傭兵」という言葉がお気に入りだったらしく、何やら神妙な面持ちで「傭兵か・・」と呟きながら、何度も何度も頷いていた。

「傭兵かあ。なんだか、かっこいいや。で、いくらくれるの?」

 交渉開始である。いかにコストを削減しつつ、彼らにやる気を出させるか。腕の見せ所だ。

「前金で100万。戦闘後の報酬として、大将の八木茂殺害で300万、懐刀の都井睦雄殺害で250万、あとは、男性メンバー殺害で100万、女性メンバー殺害で50万。この条件で、どうでしょう」

「安い!安い安い!そんな値段では、引き受けられん!」

 案の定、タチの悪いクレーマーである孫斗八が噛みついてきた。おそらく孫は、自分がこの先どれほど高い条件を提示しても、なんやかやと文句をつけてくることだろう。

 それを予想していながら、なぜ孫を呼んだのか。一つには、復帰年齢30歳(犯行年齢は24歳だが、拘置所で訴訟を繰り返していたころのほうがむしろメインと評価された結果であろうか)と若い孫の戦闘力を買ったこと。もう一つは・・。

 公園の四方から、松永が提携している暴力団、山崎組の構成員および準構成員たちが現れる。その数は、あっという間に100を超えた。

「孫さん。うちで借りている100万円。はやく、払ってもらいましょうか」

 準構成員の一人が、孫に巻き舌を飛ばした。ブランドものに目がない孫は、山崎組のフロント企業である闇金で、借金をしていたのである。

 弱気な者には強く、強気に出てくる者には弱い、小悪党の鏡であるような孫は、これですっかり萎縮してしまった。クレーマーの口を封じたことで、結局、松永が提示した条件が、三人にすんなり呑まれる形となった。 

 八木茂の軍団統制は中々に見事で、内通者を誘うことは難しい。ならば、味方を増やし、自力を高めるまでである。

 金で傭兵を雇うのは、自分の専売特許ではない。事実、八木茂の同盟相手である日高夫妻が、金銭で小林薫を雇ったという情報が入っている。

 しかし、奴らと自分とでは、人の使い方が違う。しょせん奴ら如きの頭では、クセの強い連中を、単に「殺し屋」として使うのが関の山だろう。自分は奴らと違い、クセの強い連中を、「傭兵」として使うことができる。戦力の逐次投入などという愚の骨頂は犯さない。戦力を一局集中させ、一気に相手を叩いてやる。

 八木茂。宿敵の命は、カウントダウンに入った。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

こんばんは…!?

つつつ遂に八木軍と対決ですか…!!日本きってのスプリーキラー睦雄くんの戦闘シーンですね!毒婦カウさんの活躍も楽しみです!!<●><●>つままれて苦笑いの前上さんかわいすぎる…!!(鼻血)

No title

>>枇杷さん

こんばんは!

いよいよ都井睦雄のバトルシーンですねー
彼が長らく大量殺人の世界記録保持者だったことからもわかるとおり、日本って結構、大量殺人のメッカなんですよね。調べてないんでわからないですけど、アメリカの次くらいに起きてるんじゃないかな。

戦前の、銃を用いた犯罪って、津山事件以上にカオスなのが多いんですよ。機会があったら書いていきます~。

No title

津島さん今晩は!蘭です。随分ご無沙汰してしました!

ここで詳しく書ききれないんですけど・・・、個人的に色々とあって、なかなか来られず・・・

今はだいぶ落ち着きました^^余裕ができてから、小説まとめ読みさせて貰おうとか勝手に思ってたので・・・

急に来られなくなってしまってたんで、もしイヤな気分にさせてしまってたら、ごめんなさい。

今度からは(しばらく来られなくなくなりそうかなって時とか)一言でもコメ残しますね!置き手紙的な?(笑)


それで・・・前回、ガンダム像編(勝手に分類w)まで読んでいたので、最新話までまとめて読ませてもらいましたー♪

一話ずつ感想書いてみたいくらい楽しませてもらったんですけど、今回は感想もまとめさせて下さい><


まず宅間さん、良いですね~!!!書籍を読んでから、お茶目&エロスな守さんwも(創作のキャラとしても)

すごくいいなって思ってやまないですけどwやっぱり鬼畜な宅間さんも凄くイイです・・・噂では声はハスキー?らしいんですが、

それでも高笑いまでされたら凄い怖そう・・・。自分でイメージは出来てもあそこまで書けないので、衝撃的でした!!!

Aは反対にクールでまた良いですね。宅間さんとどっちが年上なのかな?っていうくらい妙に落ち着いててw


あとNの回の小林薫!!!以前、尾形の時にNを助けた男って小林だったのかな?(勝手に予想してましたw)

予想とまた違ってたらすみません!!!ガンダム像編ではいつもより猟奇的だったのに、えrろすも盛り込んでもらえるtttとは!!!

ただお相手が・・・ハードwwwうわあああwwwって思いながらも読んじゃいましたけど(笑)

昔の同人小説(まがい)の時にR18も(鬼畜な内容まで)ちょくちょく書いてたんですよね。それで思ったのは・・・

津島さんの場合(どの回も)台詞以外が圧倒的に多いので!Nと小林の回もそこが凄いなぁって思いました。読み応えがあります!!!

もし私なんかがN→小林を書いたりしたら、Nが小悪魔な女王様として活躍するばかりで色々と路線違って来ちゃうと思うです・・・www

あっ、それか隙をついて息子さんにガブリと噛みつかせるか、いっそのことアベサダの刑に(猟奇・・・)

うふふ♪www感想のつもりが、久々脱線しちゃいました(笑)


・・・獲物wに噛みつくならまだしも、アベサダの刑だなんて、本当に恐ろしいですね、あぁ怖い。(客観的に自分のコメ読むと寒気しますw)

まぁでも創作ですからね・・・!!!グロも猟奇も創作ならだいぶ慣れてきましたよ~(こんな趣味ですけど、グロ画像とか猟奇的な絵は苦手だったりします・・・)

Nパートで不意に官能的な方向にも向かってもらえて、びっくり&楽しかったです!!!(笑)で、まさかNが八木さんを根に持ってたとは・・・

うざったてージジィ!って言い方は流石にもうしないのか、これから垣間見えてくるのか少し期待しつつ・・・

尊師やホミカちゃんの回も笑っちゃいました^^尊師ますますウケますね!!!N達かわいいwww


そして松永パート、やっぱり面白かったです!もう期待以上に!

ほんと松永さんってゲーム感覚ですよね;;お店でも人目がなければサボッて遊んでそうwww

あと気になってたんですけど、凶悪犯相手に通電まではしないっぽいですね?もし通電後に悪戯して依存されても困る・・・そこまでやる必要ないっちゃ、とか考えてたりして・・・w

重信さんは、若い頃の姿なんですかね?たしか逮捕時の姿って説明あったと思うんですけど、もしかしたらグランドマスターのお好みで若返りのアレを重信さんにも使われてないかと・・・

尊師に使われたくらいだから、どうなんだろう!ってずっと思ってました><

風貌についての描写ってあまりなかっただけに、つい若い頃の姿で想像膨らませきってます。Youtube動画で見たんですが当時のワイドショーに出演してたり、

肉声を聞いたら余計にイメージが膨らんでしまって・・・。(梅川照美の報道映像も震撼!でしたが、重信さんの動画もある意味、凄かった・・・密かなお気に入りですw)

重信さんは逮捕直前、空港で煙草をキセル吸いをしてて、その吸い方でバレてしまったらしいですね!!!

津島さんが、もし逮捕時のマダムな重信さんのつもりで、ずっと書かれてたら本当、スミマセン・・・。もう何ヶ月も勝手なイメージつけてから聞くなって感じですね^^;

本編はバトル中心だから・・・バドラほど仲良しムードじゃなくても、重信(松永)軍はお店やホテルどんな風に過ごしてるんだろうなぁって勝手に想像しちゃってます。。

もしスカーフキッスのメンバー同士も、ほのぼのやギャグっぽくも絡ませてもらえたら嬉しいです!!!(勝手なリクエストなので・・・、もし津島さんの気が向いたら^^)

八木軍との戦いもめちゃくちゃ楽しみです><八木さんはバトルロイヤルで知ったんですけど・・・、

けっこう愉快なオジ様だったみたいですね・・・記者会見の動画ようつべで見て色々と衝撃が走りました。インテリ策士松永さんもタジタジな感じの(笑)

マス○ミwへの暴行事件ではあるんですけど、”俺の古い友達に嗅ぎ回ってんじゃねぇよ!”的なことを確か言ってて、

熱い?暑苦しい感じがしました!wwwまぁカッとなって言っただけなんでしょうけど。不良グループのボスとかチンピラっぽいですよね><

事件に関してはネットに詳しい情報が(他の事件より)少なめ・・・?でも興味深いので、近いうちに関連本を買って読んでみようと思ってます。津島さんはもう持ってるのかな?^^

ウチ父親が頭カタすぎな人だったので、八木さんみたいなお茶目なオジ様って何かウケちゃいます・・・。(笑)


ほんっと長々とすみません・・・!!!久しぶりなのとまとめ読みで、つい熱くなってしまった・・・

でもせっかく書いたので投稿させてもらいますね!!!今度からはもう少し手短かに感想書きますっ^^

No title

>>蘭さん

どうもお久しぶりです!
いやー、こちらも色々ありまして。
現在は精神的に落ち着いた状態ですので、
安定して更新していきます!

感想についてですが、宅間守はハスキーな声だったんですねえ。
僕は特に理由もなく明石家さんまみたいなカン高い声をイメージしていたんですがw男の声は低い方がいいですよねえ。

重信房子に関しては、若い頃のイメージで書いています!基本的に、その犯罪者が、もっとも注目されたときの姿をイメージしているんですよ。

松永太は、本当に何をなすにもゲーム感覚だったんでしょうね。ああいう人種は、鬼畜的振る舞いをするのに、悪気というものがまったくないんでしょう。ふつうの人間にはあるブレーキがないんです。

八木茂はそうですね。松永と同じ人種なんですけど、松永にはない豪快さがあります。じめっとしてないんですよね。陰湿な松永と、性格面では反対ですね。


お忙しいとは思いますが、二、三行だけでもコメントを残していただけると励みになります!これからもよろしくお願いします。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

更新めっちゃ楽しみに待ってるね!
いのちだいじに!ガンガンいこうぜ!
どしても無理めなときわ序盤から読み直すよ(*≧∀≦*)いつか金川くんも津島くんなりに書いてほしいなぁ♪簡単に死なせたらヤダよ~~~お願い!(えこひいきww)
宅間さんにブリっこしてくっついたとこだけは誰よりも策士だな。。(笑)

感想もおおすぎ、やっぱりすぐblogか掲示板(鍵つき)借りた方がいーかも。。ちょっと待っててくださいね。。

No title

>>蘭さん

おはようございます。
個人的にやり取りOKですよ。
僕のパソコン、ツイッターがちょっと重くてできないので、
メールアドレス添付してください。

こんにちは~♪メールOK?
よかったぁ。今、出先だよ~喫茶店でのんびり。。PCメール、またあとで載せに来るね~。。返事の速度にムラがあるケドよろしくね(・ω・`)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

それから(笑)感想の感想!

重信さん若い頃ver.でOKだった!
うれしい~☆
他の軍もそれぞれ味があって好きだけど、重信軍が特に好き~!
陰湿ビビりwな太ちゃんも期待してる!(やっぱりキャラとしてはかなり楽しいね。。笑)

八木さん豪快wwたしかに性格が対照的だね…!おもしろそう(*´-`)
太ちゃんだけが本気で張り合ってる気分でいそうww

キャスティングはけっこう時間かけて考えたの?すごく楽しくて好きだよ。( 〃〃)小説の世界観好きすぎて冷静にかけない!!!
ちなみに(小説)男女カップルも好きだよ♪気がノッてきたら男女キャラももっと絡ませ(ry

No title

>>蘭さん

感想ありがとうございます~。
キャラクターは好みと思い付きなんですよ。
一応、うちに資料は豊富にあるんで、暇なときに見て
「あ、こいつおもろいな~」と思ったら、タイミングを見て出していく
感じですね。

そうそう、八木と松永は同じサイコパス型で性質は似ているんですけど、性格は好対照なんですよね~。お互い意識しあって、利益度外視で潰したくなる相手でしょうね。

不意討ちレスだよ(*´ω`*)

くおおっ好みと思いつき~!?w
素敵すぎる(´;ω;`)天才でうか・・・

八木さんと松永さんの関連本、やっと注文しまうた・゜・(つД`)・゜・
同じようなサイコパスなら八木さんについていきたいなぁ(笑)
小娘はカラオケして遊んでろって言われそう。。(八木さんからしたら私なんて小娘ですので!!!笑)

プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR