凶悪犯罪者バトルロイヤル 第99話

 麻原彰晃率いる麻原彰晃探検隊一行は、多摩川のほとりにある、多摩川二子橋公園を訪れていた。バーベキュー場の近くにある、川の中州に置かれた宝箱の中に書が隠されているようなのだが、中洲までの距離は5メートルほどもあり、川を泳いでいかなくてはならない。

 さっそく、じゃんけんで取りに行く者を決めようとしたのだが、川岸に立てられた看板を見て、麻原は考えを変えた。

―――箱の中には、下北沢駅トイレの個室で拾った物を入れてある。

 麻原はそれを見て、自分ひとりで取りに行くことを決めた。実は麻原は、昨日、日ごろの暴飲暴食が原因で急に腹を下してしまい、駅のトイレに駆け込んだのだが、その際、下痢便が和式トイレの枠からはみ出してしまった。その下痢を、自分の靴で踏んづけてしまったのだ。

 麻原はその失敗を、すべては日本のトイレ事情のせいだと思っている。

 和式トイレは、機能的にどう考えても洋式に劣っている。それはもはや、疑いようのない事実のはずだ。和式のほうが用を足しやすいなどと言う人間は、世界中どこを探してもいないはずである。

 ただ、和式には和式の長所もある。他人が座った便座に、腰かけてなくてもいいということだ。男女とも、意外にこれを気にする人間は多い。

 だから併存していてもいいとは思う。問題は比率だ。三つ個室があるようなトイレでは、いまだに、和式二つ、洋式一つというような配分が多いのである。

 これはどうかと思う。駅のトイレは、通勤時間帯の一分一秒を争うようなときに使用されることも多い。そんなときには、他人が座った便座に座りたくないとか、悠長なことは言っていられないはずだ。また、焦っているから、自分のように、はみ出してしまうこともあるはずだ。

 そうなれば被害は拡大し、多くの人間が、他人が座った便座に座るよりも嫌な思いをする。大体、そんな潔癖症みたいな細かい人間だったら、日ごろから、アルコールティッシュなどを持ち歩いて、用を足す都度便座を拭けばいいだけの話ではないか。なぜ、細かいやつの基準に合わせなくてはならないのか。

 つまり麻原が言いたいのは、和式便所の比率を大幅に減らせ、ということである。バドラが日本を席捲したのちは、必ずやそれを実現するつもりだった。

 しかし、ひとまず西口彰が、下痢の付いた靴を回収していたというのは大事である。あの靴を見られたならば、駅の中にいたホームレスに靴を恵んだ、という、自分のウソが瓦解し、下痢を踏んづけてしまっていたことがバレてしまう。なんとしても、それだけは避けなければならなかった。

 ところが、川に入ることを名乗り出た麻原に、新たな問題が浮上した。看板の文言には、まだ続きがあったのである。

―――この川には、ピラニアが泳いでいる。

 これに恐れをなした麻原は、「東急ハンズ」で、ゴムボートを買いにことを提案したが、探検隊の反応は冷淡だった。

「尊師。ピラニアは熱帯魚ですから、日本の川には生息できません。それに、本来は気が小さい魚ですから、出血した状態でない限りは、滅多に人を襲うことはないんですよ」

 博学な正田昭がそう教えたのだが、麻原は聞く耳を持たない。

「いやだ!そんなのは、無責任な一般人が、ウィキペディアに書いたようなことではないか!お前は現地に行って、実際にそれを確かめたのか!絶対に安全と証明できない限り、俺は行かん!」

 麻原のわがままにより、探検隊は、十万円も出して、ライフセーバー御用達のゴムボートを購入し、麻原は一人それに乗って、川の中州へと向かっていった。

「せえの・・そーんしー!」

 橋の上から、女子中学生たちの黄色い声援が飛ぶ。麻原は軽く手を振ってそれに応えつつ、オールを漕ぎ、ついに中洲へとたどり着いた。

 宝箱を開けてみると、西口の言っていた、クソの付着した靴は入っていなかった。どうやら、ハッタリだったらしい。が、自分がトイレで失敗をしたこと自体は知っていたということで、西口にバドラの行動は筒抜けになっているのは間違いない。もしかしたら、ゴムボートを買わせることで、バドラの資金力を削ぐのが目的だったのか。だが、ひとまずそれは考えず、金庫のダイヤルの番号が記されたメモだけを回収し、麻原は川岸へと戻っていった。

 そして麻原彰晃探検隊は、金庫を開けることに成功した。二十本からのAVを、入手できたのである。

 毛虫、カナリア、ワラジムシ、ダンゴムシ、ハサミムシ、ゲジゲジ、ヤスデ、べろべろばばあ、ピラニア・・数々の強敵との死闘を経て、麻原彰晃探検隊の絆は、いっそう深まった。それは上映会にて、さらなるカタルシスとして昇華するはずだったのだが、探検隊を待ち受けていたのは、恐ろしい悲劇だった。

「ぐああああああああああああっ」

「汚ねえええええええっ」

「和田先輩って、男じゃねえかああっ、ミサキも、名前じゃなくて、ミサキゴウスケっていう、苗字だったのかよおっ」

「気持ちわりいいいいいいっ」

 麻原たちが回収したのは、エロビデオではなく、ホモビデオだった。確かに、よくよく見てみれば、どちらとも取れるタイトルではあり、一応、その可能性も考慮に入れておくべきだったのかもしれないが、この結末はあんまりである。

「ふざけんなよ、西口彰あっ!」

 そもそも、ツンベアーズと探検隊が最初にビデオを発見しなければ、この悲劇は起こらなかったはずなのだが、探検隊はすべてを西口彰のせいにし、必ずや、命をもって購わせることを、心に誓ったのだった。
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こんばんはー

前回までちょいちょい世田谷区が出てきましたね。
前に世田谷区に散歩しに行ったのは、小説の取材?なのでしょうか?
その割りには風景の描写が少なく、残念に思ってたのですが…
今回の多摩川は書かれていて、麻原彰晃探検隊を近くで覗き見しているみたいでちょっとドキドキしました(笑)

べろべろばばあ強烈!!
舐め回されるのもイヤだし、いきなり怒りだされるのも恐いー(><)
でも、お婆ちゃんの親族が迎えに来るまで舐められ続けていた、って辺りで笑わせてもらいました(笑)(笑)


続き、楽しみにしてます♪

No title

>>ひなさん

こんばんは。
取材というかロケハンは大事にしているんですよね。
風景描写を書く書かないに関わらず、現地の空気を吸うってのは大事です。

都内や神奈川県内だったらいいんですけどねー。
遠出するときにはお金がきついところです。

初めましてです
小説楽しみにしてますよ!
いよいよ100話ですね!
余計な事かもなのですが91話が飛んでませんかw?

何か訳があって飛ばしたとか自分の勘違いならすみません

これからも影ながら応援してます!

No title

>>イチさん

ありがとうございま~す!

タイトルナンバーは、ときどきミスってるかもしれないですw
直しておきますね。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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