凶悪犯罪者バトルロイヤル 第98話


 麻原彰晃は、探検隊と園児たちが戯れるのを、「どらごん保育園」かいりゅう組の担任、アヤ先生とともに、微笑ましく見守っていた。

「へえ。それでは、尊師は今、その西口さんという人と戦っているんですね」

 麻原はアヤ先生に、西口との争いの話を、巧みに改変して聞かせていた。麻原は、世田谷区においては、中堅のトレーダーとして名が通っている。アヤ先生は、自分と西口のことを、株取引においてのライバルだと思っているというわけだ。

「それで、今、リードしているのはどちらなんですか?」

「今のところは、俺たちは西口に翻弄されている。だが、このままでは終わらない。必ずや、最後の勝利を手にして見せる」

 麻原は大きく息を吸い、細い目を大きく見開いた。

「やられたら、やり返す。倍返しだ」

 決まった。最高に、決まっていた。このセリフを耳にしたアヤ先生は、ハートを鷲掴みにされ、自分の妻となることを申し出てくるに違いなかった。

「尊師。西口にやり返す前に、この間貸した、ムチムチ熟女天国!熟肉8時間総集編を返してください」

 悪魔の笑みを浮かべながらとんでもないことを言い放ち、自分とアヤ先生が結ばれるのを邪魔してくれたのは、勝田清孝だった。馬鹿者めが、わざわざタイトルまで言いおって。勝田はこの前、憧れのマキ先生とデートに行ったのはいいものの、最近のアニメの知識がないせいで、消化不良の結末に終わってしまったという。その件の、憂さ晴らしをしているに違いなかった。

「え~。尊師、借りたものは返さなきゃいけませんねえ」

「い、いや、その・・おのれ、清孝め・・」

 実のところ麻原は、勝田が中古ショップで買ってきた「ムチムチ熟女天国!熟肉8時間総集編」にはハマっており、二日にいっぺんは利用していた。今後、こんなアクシデントを起こさないためにも、はやく興味の対象を別のAVに移さなくてはならない。

「よし。お前たち、旅を続けるぞ」

 麻原は探検隊を連れ、冒険を再開した。

 探検隊が次に訪れたのは、「世田谷区立次大夫堀公園民家園」である。ツンベアーズや保育園の先生たちから聞いた噂によると、古い民家や、田んぼなどが並ぶこの公園には、恐ろしい怪物「ベロベロばばあ」が出るのだという。行ってみると、確かに、一人の老婆が歩いていた。手には、よく研がれた包丁を持っている。

「おい。あれ、やばくないか?」

「おそらく、認知症を患っているのでしょうが・・。世田谷のスーパーバイザーを名乗る我々としては、なんとかしなければならないところですね」

 探検隊の相談の結果、副隊長の菊池正が止めに行くことになった。菊池は、盲目の母親に会いたい一心で拘置所を脱獄した、無類の孝行息子である。

「ばあちゃん。今日はいい天気だね」

「おお・・・たけるか・・大きくなったな・・」

「そうだ。ばあちゃんの孫の、たけるが来たよ。さあ。それは危ないから、こっちに寄越しな」

 菊池が優しくそう言うと、老婆はカッと目を開いた。

「たけるは孫ではない!ワシの息子じゃ!貴様、オレオレ詐欺だな!」

 老婆が、細腕から信じられないパワーで、包丁を薙ぎ払った。慌てた菊池は、その場を離脱する。腕に傷を負った菊池は、そのまま隊を離脱し、病院に直行した。

「手に負えんな・・警察に通報するか」

 麻原が携帯を取り出した、そのときだった。

「おお。あんたは・・」

 老婆が、急に足を速め、探検隊に近づいてきた。

「あんたは・・あんたは・・誰じゃったかのう」

 老婆は、麻原の方を向いている。あんたとは、自分のことらしい。いったい、どう答えればいいのか。

「俺は・・・・なおきだ」

 咄嗟に、自分が今、ハマっているドラマの主人公の名を名乗ってしまったのだが、これが大失敗だった。

「なおきさん・・私は、女学校時代、あなたに憧れていた、花です・・」

 老婆が麻原に抱き付き、いきなり、顔をなめ回し始めたのである。これが、ベロベロばばあの由来であった。

「うう・・」

「ああ、そうだわ・・。西口彰という人から、これを預かっていたのだった・・これを、なおきさんに渡すようにと、言われたのです・・」
 
 泣き顔になる麻原であったが、苦痛と恐怖に耐えたかいはあったらしい。口調まで若返ってしまった花なる老婆から、書を入手することができた。麻原は、家族が老婆を回収しにくるまで5分以上もなめまわされたのち、ようやく解放された。

「ひどい目に遭ったが、次で最後だ。行くぞ、お前たち」

 探検隊は、世田谷の町を歩く。

「あ、尊師だ」

「わははは。尊師たちがまた、バカなことやってるよ」

「おい、尊師。また、野球の対決やろうな」

 道行く麻原に、世田谷の住民たちが声をかける。地域の会合に顔を出したり、「夜回り尊師」としても活動する麻原の人望は、近頃うなぎ上りに上昇していた。地域密着政策は、大いに実を結んでいる。

 バトルロイヤル生き残り――その先の、国家への復讐。高みを目指して、現在は探検隊と名を変えているバドラは、階段を駆け上がっていく。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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