凶悪犯罪者バトルロイヤル 第95話

 麻原彰晃率いるバドラは、世田谷区の「等々力渓谷公園」を訪れていた。

 麻原たちは、この地に、ツンベアーズのワタルらとともに「秘密基地」を建設していた。川が天然の堀の役目を果たすこの地は防備に優れており、いざとなれば、ここで籠城戦を展開することもできる。麻原の計画では、ワタルたちの通う「双竜小学校」を、最終的に天下を睥睨する主城とするつもりだったが、校長にその許可を得るまでは、この「秘密基地」を拠点に、天下を伺うつもりであった。

 麻原たちが、今日秘密基地を訪れたのは、エロビデオを回収するためである。エロDVDではなく、ビデオである。

 先日のこと。秘密基地の建設途中に、ツンベアーズの一人が、森林の中で、ダンボール箱に詰め込まれて捨てられた、二十本近いエロビデオの山を発見した。ワタルの家に集合して上映会を開こうと盛り上がってたのだが、麻原は教育上よくないと方便を言ってそれを取りあげ、秘密基地に保管していたのだ。

 現代は、アイドルでも通用するようなルックスの女性が平気でポルノに出るような時代であり、撮影技術も大幅に向上し、ユーザーも特に「美」を求める傾向にあるが、麻原の嗜好は少し違う。むしろ、少し体型の崩れた昔の女優が、チープな撮影技術や粗い画質の中で晒す裸の方に、強い性的興奮を覚えるのだ。

 ラベルに記された「危険な後輩!和田先輩の悲劇!」や、「放課後の性獣 ミサキの罠」などといったタイトルのセンスから、このビデオはおそらく、自分がオウム時代に俗世で活動していたころに制作されたものと思われる。バドラメンバーにもファンが多い伝説のAV女優、白石ひとみや桜樹ルイが活躍していた頃であり、非常に興味をそそられる。

 が。木材を組み立てて作った六畳間の小屋に足を踏み入れた麻原たちの目には、思いもよらぬ物体が飛び込んできた。合金製の金庫である。そして、エロビデオが詰め込まれた段ボール箱は、忽然と姿を消していた。

 いったい、これはどうしたことか。戸惑う麻原たちだったが、その混乱をさらに加速させる手紙を、メンバーの尾田信夫が見つけてしまった。

――宝は、金庫の中に入っている。箱を開けたければ、世田谷区内の各所に隠された、魔法の呪文の記された書を探しだせ。
                             西口 彰

 西口彰・・大会参加者の中でも大物中の大物と目される男が、バドラに挑戦状を叩き付けてきた。挑戦状と一緒に、魔法の呪文・・おそらく、金庫のダイヤルのナンバーが記されたメモ帳かなにかが隠されているのであろう、世田谷区の公園の地図が、4枚置かれている。

 いったい、これはどういうことなのか。西口彰は、なぜわざわざ、こんな手の込んだイタズラを仕掛けてきたのか。

「確信はありませんが、我々のチームワークを量ろうとしているのではないでしょうか」

 正田昭が、推察を述べた。なるほど一理ある。大会開始からすでに三か月が経ち、参加者の勢力も固まりつつある。個人で活動している参加者も、本気で生き残りを考えるなら、何れかの組織に身を預けることを考えなければならない時期に入ってきた。

 しかし、吟味は慎重にせねばならない。組織に属しているからこそ、逆に狙われやすいということもある。下手に徳や能力のない君主に付いていくくらいなら、一人で行動していた方がマシというものだ。

「だけど、何かの罠という可能性もありますよね・・」

 勝田清孝が、慎重論を述べる。これもまた一理ある説だ。地の利を整えた場所におびき寄せ、包囲殲滅するだけなら、こんな手の込んだことをしなくてもよさそうではあるが、どう考えても怪しい。

「力ずくで破壊することはできないのか?」

「無理ですね。強力な合金で出来ていますから、たとえ東京タワーの天辺から落としても壊れないでしょう」

 麻原の問いに、金庫破りのスペシャリストである小田島鐡男が答えた。やはりどうあっても、カギを開けるしかないのか。その方法が、西口の挑戦を受けるしかないのなら、罠かもしれなくても、やるしかない。

「よし。お前たち、旅に出るぞ」

 麻原は決断した。90年代のAVは、ただでさえ数が少なく、入手は難しい。復刻版の動画は、画質が修正されてしまっている。あの、妙にエロティシズムを掻き立てる粗い画質を楽しむためには、当時のフィルムを入手するしかないのだ。

 快楽を得るために、妥協をしてはいけない。それをした瞬間、男ではなくなる。麻原の心は、若き日に、悟りを開くため、遠くインドの地にまで修行の旅に出たときのように躍っていた。

 麻原のこの決断により、バドラは一時、組織名を「麻原彰晃探検隊」と改めることとなった。「麻原彰晃探検隊」は、隊長を麻原彰晃、副隊長を野生児菊池正に任命し、組織の体制を明らかにした後、全員そろって、ホームセンター「東急ハンズ」に赴いた。そこで、揃いのツナギ服とトレッキングシューズ、非常食、ステンレス製マグボトル、ロープ、懐中電灯、十徳ナイフ、野草のガイドブックなどのサバイバルグッズを購入し、準備を整えた。

「よし、出発だ。必ずやあの金庫を開け、今夜は上映会を開くぞ」

「おーー!!」

 麻原彰晃探検隊の大冒険が、今、幕を開けた。
 
 


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麻原の回はいつもなごみます~(個人的にすきw)

No title

>>うさこさん

僕も麻原回が一番書いてて楽しいな~。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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