凶悪犯罪者バトルロイヤル 第十二話

 
 松永太は、ビジネスホテルの食堂で、優雅にコーヒーカップを傾けていた。
 
 バトルロイヤルが開催されてから三週間。今までの成果を振り返りつつ、今後の作戦について思惟を巡らす。

 人材集めの面での成果は、なんといっても、加藤智大、重信房子の両者を手に入れられたことだ。

 まずは加藤智大。あれだけの戦闘力を持ちながら、従順で適応性の高い加藤が戦力になるのは、考えるまでもない。これから他の参加者との抗争が激化するにつれ、加藤が活躍する場面は増えてくるだろう。

 そして重信房子。組織運営の面から考えれば、この女を手に入れられたことは、加藤を手に入れた以上の収穫だった。もっともそれは、重信の能力に期待してのことではない。確かに重信の統率力には目を見張るものがあるが、それだけだ。戦略眼もシノギのうまさも、比較にならないほど自分が上である。

 重信に出来ることのほとんどは、自分にもできる。ならばなぜ自分は、能力で劣る重信を頭に頂いたのか。それは、今後の人事を考えてのことだ。

 現在、我が軍団の構成員は、自分、重信、加藤、前上博、正田昭の5名。今月中には、最終的な勝ち残り人数である8名まで増やす予定でいる。その後も各方面にネットワークを張り巡らし、積極的に勧誘をかけていくつもりだ。

 軍団の人数は多ければ多いほどいい。数は力である。最終的な勝ち残り人数は8名と定められているが、関係ない。増えすぎれば、適当な理由をつけて粛清すればいいだけの話なのだ。使うだけ使って、用済みになったら始末する。自分から敵を探す手間も省けて、一石二鳥である。

 たとえば、その粛清の際などに、重信をリーダーに据えた戦略が生きる。仲間を殺したことで軍団に生まれる不満と疑心暗鬼の空気を、全て重信に向けさせるのだ。もし反乱が起こったとしても、殺意の矛先は自分ではなく重信に向かう。重信が殺されたときには、自分が名実ともにリーダーとして軍団を率いていけばいい。

 重信はいつかは使い捨てにするつもりだったが、自分のマリオネットでいる内は、精々たっぷりと働いてもらう。重信の仕事はリーダーとしての役割以外に、軍団員に戦闘訓練を施すことだ。旧日本赤軍のトップとして様々なテロ活動に参加してきた重信には、豊富な実戦経験と武器の知識がある。

 今、ホテルの部屋では、加藤と正田、若い二人が重信による教授を受けている。特に加藤の吸収力は素晴らしい。もともと運動神経に優れている上、性格も勤勉で、非常に飲み込みが早い。モデルガンによる射撃訓練も行わせているが、この上昇速度なら、後のち銃器の使用が解禁された後も、銃器の扱いに長けた過去の犯罪者たちと互角以上に渡り合えそうだった。

 一方の正田昭は、戦闘技術の吸収は若い割に今一つだが、慶応卒の学士だけあり、頭は切れる。自分がいるため、全体戦略の立案などで役に立つことはないだろうが、諜報活動などで使い道がありそうだった。また、正田は熱心なキリスト教徒である。他の宗派に靡くことはない。潜りこませるとしたら、「あの男」の組織か――。

 外交面での成果は、先日、歌舞伎町に勢力を持つ暴力団、佐野組佐野一家三代目山崎会の幹部との接触に成功したことだ。裏社会には、すでに凶悪犯罪者による、東京を舞台にした殺し合いの噂は拡がっているようで、自分の正体を、北九州監禁事件の松永と明かしても、顔色一つ変えることはなかった。幹部は、今後の戦いにおいて我が軍団を全面的に支援し、後のち歌舞伎町でシノギを展開するときには、快く初期費用を全額出資してくれることを約束してくれた。

 金は、人材と同じくらいに重要である。生活費に必要なのはもちろん、人材獲得や、敵対組織の切り崩しにも、金は大きな効力を発揮する。一年という期間は、短いようで長い。予想だにしない場面で、金が必要になることもある。欲深な凶悪犯罪者には、手に入るかどうかもわからない賞金十億円よりも、手に入ることが確定している百万円を選ぶという人間はいくらでもいるはずだ。

 無論、武器を買うにも金は必要である。刃物や鈍器で戦っている今はともかく、銃器が解禁されれば、金と人脈の力が物を言う結果になるのは火を見るより明らかだ。弘法は筆を選ばずの逆で、素人こそ、いい武器を使用しなければならない。銃の使い手である都井睦雄や永山則夫が中国製の粗悪な改造銃を持っているのと、射撃の素人である加藤智大が欧米の正式軍用銃を持っているのと、どちらが脅威か、という話である。

 実は今、その金が枯渇しかけている。一刻も早く補充しなければ、戦闘どころか生活もできない。本格的にシノギを始めるのはまだ先だから、他の参加者を仲間に引き入れるか、もしくは――殺して金を奪い取るしかない。

 自分の願いに応えるように、携帯が鳴った。こういうときに役に立つ男――前上博からである。

 前上は窒息に性的興奮を覚える異常性癖の持ち主で、自殺サイトを利用して3人の男女をおびき寄せ、絞殺した男である。典型的な快楽殺人者だ。こういう人間は、自分と同じ種類の人間を嗅ぎわける嗅覚が並外れている。人材探索には、うってつけの男だった。

「松永さんか。参加者、発見したよ。今港区にいる。渡辺清だ」

 渡辺清。60年代に起きた、娼婦連続殺人事件の犯人か。年齢は若い。戦闘力もあるだろう。それなりに用心していく必要がありそうである。味方に引き入れることができればいいが、いざというときには――。

「ご苦労様です。今から、そちらに向かいますので、目を離さないようにしていてください」

 前上との通話を切ると、今度は重信の番号にかけた。

「出動です。加藤君と正田さんを連れて来て下さい」

 松永は、カップの底に残ったコーヒーを飲み干し、席を立った。

 ようするに、重信に出来ることのほとんどは、自分にもできる。ならばなぜ自分は、能力で劣る重信を頭に頂いたのか。それは、今後の人事を考えてのことだ。

 現在、我が軍団の構成員は、自分、重信、加藤、前上博、正田昭の5名。今月中には、最終的な勝ち残り人数である8名まで増やす予定でいる。その後も各方面にネットワークを張り巡らし、積極的に勧誘をかけていくつもりだ。

 軍団の人数は多ければ多いほどいい。数は力である。最終的な勝ち残り人数は8名と定められているが、関係ない。増えすぎれば、粛清すればいいだけの話なのだ。使うだけ使って、用済みになったら始末する。自分から敵を探す手間も省けて、一石二鳥である。

 その粛清の際にこそ、重信をリーダーに据えた戦略が生きる。仲間を殺したことで軍団に生まれる不満と疑心暗鬼の空気を、全て重信に向けさせるのだ。もし反乱が起こったとしても、殺意の矛先は自分ではなく重信に向かう。重信が殺されたときには、自分が名実ともにリーダーとして軍団を率いていけばいい。

 重信はいつかは使い捨てにするつもりだったが、自分のマリオネットでいる内は、精々たっぷりと働いてもらう。重信の仕事はリーダーとしての役割以外に、軍団員に戦闘訓練を施すことだ。旧日本赤軍のトップとして様々なテロ活動に参加してきた重信には、豊富な実戦経験と武器の知識がある。

 今、ホテルの部屋では、加藤と正田、若い二人が重信による教授を受けている。特に加藤の吸収力は素晴らしい。もともと運動神経に優れている上、性格も勤勉で、非常に飲み込みが早い。モデルガンによる射撃訓練も行わせているが、この上昇速度なら、後のち銃器の使用が解禁された後も、銃器の扱いに長けた過去の犯罪者たちと互角以上に渡り合えそうだった。

 一方の正田昭は、戦闘力の成長は若い割に今一つだが、慶応卒の学士だけあり、頭は切れる。自分がいるため、全体戦略の功案などで役に立つことはないだろうが、諜報活動などで使い道がありそうだった。正田は熱心なキリスト教徒である。他の宗派に靡くことはない。潜りこませるとしたら、「あの男」の組織か――。

 外交面での成果は、先日、歌舞伎町に勢力を持つ暴力団、佐野組佐野一家三代目山崎会の幹部との接触に成功したことだ。裏社会には、すでに凶悪犯罪者による、東京を舞台にした殺し合いの噂は拡がっているようで、自分の正体を、北九州監禁事件の松永と明かしても、顔色一つ変えることはなかった。幹部は、今後の戦いにおいて我が軍団を全面的に支援し、後のち歌舞伎町でシノギを展開するときには、快く初期費用を全額出資してくれることを約束してくれた。

 金は、人材と同じくらいに重要である。生活費に必要なのはもちろん、人材獲得や、敵対組織の切り崩しにも、金は大きな効力を発揮する。一年という期間は、短いようで長い。予想だにしない場面で、金が必要になることもある。度外れた物欲を持つ凶悪犯罪者には、手に入るかどうかもわからない賞金十億円よりも、手に入ることが確定している百万円を選ぶという人間はいくらでもいるはずだ。

 無論、武器を買うにも金は必要である。刃物や鈍器で戦っている今はともかく、銃器が解禁されれば、金と人脈の力が物を言う結果になるのは火を見るより明らかだ。弘法は筆を選ばずの逆で、素人こそ、いい武器を使用しなければならない。銃の使い手である都井睦雄や永山則夫が中国製の粗悪な改造銃を持っているのと、射撃の素人である加藤智大が欧米の正式軍用銃を持っているのと、どちらが脅威か、という話である。

 その金が、近頃枯渇しかけている。一刻も早く補充しなければ、戦闘どころか生活もできない。本格的にシノギを始めるのはまだ先だから、他の参加者を仲間に引き入れるか、もしくは――殺して金を奪い取るしかない。

 自分の願いに応えるように、携帯が鳴った。こういうときに役に立つ男――前上博からである。

 前上は窒息に性的興奮を覚える異常性癖の持ち主で、自殺サイトを利用して3人の男女をおびき寄せ、絞殺した男である。典型的な快楽殺人者だ。こういう人間は、自分と同じ種類の人間を嗅ぎわける嗅覚が並外れている。人材探索には、うってつけの男だった。

「松永さんか。参加者、発見したよ。今港区にいる。渡辺清だ」

 渡辺清。60年代に起きた、娼婦連続殺人事件の犯人か。年齢は若い。戦闘力もあるだろう。それなりに用心していく必要がありそうである。味方に引き入れることができればいいが、いざというときには――。

「ご苦労様です。今から、そちらに向かいますので、目を離さないようにしていてください」

 前上との通話を切ると、今度は重信の番号にかけた。

「出動です。加藤君と正田さんを連れて来て下さい」

 松永は、カップの底に残ったコーヒーを飲み干し、席を立った。
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No title

>娼婦連続殺人事件の犯人

またどうしょうもないない屑が出てきましたね。
売春婦相手にコンドームを使用しない性交を拒否され憤激し殺した
そうですが、こんな小心者にどのような利用価値があるのでしょうか。
松永の采配に疑問を感じます。

No title

>>1番コメさんコメントありがとうございます!

渡辺清と松永一派の邂逅がどういう結果を生むかは・・すみません、ネタばれになってしまいますので、次回をご覧ください!
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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