凶悪犯罪者バトルロイヤル 第82話

 松永太は、先日、Nを応援にやった際に、加藤智大が持ち帰った情報を元に、対八木軍の戦略を練っていた。まずは、敵軍に所属する人員についてのデータを洗い出す。

 八木茂。八木軍のトップ。本庄保険金殺人事件の主犯。

 90年代後半、埼玉県内でスナックを経営していた八木は、配下のホステスとスナックの客を結婚させ、自ら採集したトリカブトを混ぜたあんパンで毒殺。多額の保険金を騙し取った罪に問われた。

 八木はスナックのほかにも、金融業などを幅広く経営しており、地元のワルの大ボスとして名が通っていた。事件が明るみに出た際には、マスコミを対象に203回もの有料記者会見を行うなど、劇場型犯罪で世間を翻弄した男である。

 豪胆で弁が立ち、ユーモアセンスにも富む。能力自体は本物で、社会的には紛れもなく成功者であった。自分との共通点も多い。同族嫌悪というものだろうか、だからあの男は、自分を目の敵にするのだろう。

 都井睦雄。八木軍の戦闘エース。津山30人殺しの犯人。

 1938年。当時、夜這いの風習が残る岡山の山村で育った都井は、村の女と次々に関係を持つが、やがて肺病を病み、徴兵検査にも失格し、村中の者から疎まれるようになる。たった一人の家族である祖母にも冷たく扱われるようになり、屈辱は狂気へと転化。以前より懇意にしていたが他家に嫁いだ女性が里帰りしてきた夜、ついに都井は、銃を用いて、村人30名を惨殺した。

 現代と違って銃の規制が緩く、乱世はみなそうだが、人の命の価値が軽く扱われていた当時、この手の暴発事件は、けして珍しくはなかった。警察の捜査能力も今とは比較にならないほどお粗末だったから、判明してない事件はもっと沢山あったろう。だがその中でも、都井の起こした事件の凶悪さは群を抜いている。殺害数30人の記録は現在でも破られていない短時間での殺人数国内最多記録であり、1982年、韓国の禹 範坤に破られるまでは、世界最多記録でもあったのだ。

 復帰年齢23歳。肺病も完治しており、身体能力は高いだろう。銃の扱いに長けた都井と、この時期に対戦できたのは、もしかしたら幸運だったのかもしれない。加藤智大にとっては、紛れもなく今までで最強の敵である。

 小林カウ。八木軍の参謀。ホテル日本閣殺人事件の犯人。三日前に八木軍に加わったばかりの、新戦力である。

 1960年代、夫を殺して手に入れた愛人の若い男に捨てられ、栃木県の塩原温泉郷に流れ着いたカウは、そこでも36歳の愛人を作り、自らの体を餌にして「ホテル日本閣」の主人を殺害させ、自らが女将に納まった。法廷でも色香を振りまいたカウは、このとき53歳。相手を選ばなければ、容姿の劣る女でも十分「毒婦」として通用するという、いい見本だろう。

 カウは商才にも長けており、土産物の卸売で、若い男を飼うくらいには裕福な暮らしをしていた。現代に蘇った悪魔の頭脳が、八木の知略を補佐している。謀略は武力と違い、1+1が単純に2になるものではないが、警戒を強める必要性はあるだろう。

 佐々木哲也。千葉市原親殺し事件の犯人。20歳と若く、知能、戦闘、両面で活躍するユーティリティープレーヤー。

 庄子幸一。神奈川県で複数件の強盗殺人を犯した男。祈祷師による洗脳を受けての犯行との主張があるが、真偽は不明である。

 以上の五名による構成である。さらに、民間の調査会社から入った情報によると、八木軍は以前より、夕張保険金殺害事件の日高夫妻と懇意にしているという。

 夕張で炭鉱を経営していた暴力団組長の日高安政と元ホステスの日高信子は、1981年、夕張の炭鉱でガス漏れ事故が起きた際、多額の保険金を入手。これにより金銭感覚が狂った夫妻は、1984年、やはり経営していた炭鉱労働の会社で、今度は自ら、配下の組員を使って寮に火をかけ、従業員の死亡保険金を搾取することを目論んだ罪で逮捕された。

 知略と統率力に優れる夫妻の配下には、他ならぬ我が軍団によって滅ぼされた小林正人軍に所属していた、間中博巳が加わっている。八木軍に日高軍を加えた合計8名が、我が軍団の敵ということになる。人員7名の我が軍は、人員四名の永田軍、人員三名のA軍と同盟しているから、戦力差は14対8。この差を、来るべき決戦の日までにいどこまで広げられるか。自分の智謀に、大きな期待がかかっている。

 携帯が鳴った。同盟者の永田洋子からである。

「松永です」

「あ・・松永さん?その・・ちょっと、言いにくいことなのだけど・・」

「どうしました?」

「今朝なんだけど・・ウチの栗田が、町で偶然、北村一家の長男と出くわしたらしくて・・その場で小競り合いになったようなのね。お互い、小さな怪我で済んだようだけれど、ちょっとこじれそうな雰囲気なのよね・・」

「八木軍との戦いに、全力を注げそうにないということですね?」

「ごめんなさい。今月分の資金援助は、半額でいいから」

 我が軍に対し、全面的に軍事協力をする。契約を破って置きながら、資金援助を減額で済まそうとは、ふとい女である。

「申し訳ないですが、そういうことになりますと、資金のほうは提供できないですね。北村一家との問題を片づけるか、問題を抱えながらも我が軍に協力できる体勢が整ったら、再度連絡してください」

 ここでホイホイ金を出していたら、永田になめられてしまう。同盟者は大事だが、ケジメは必要だ。

「・・・わかったわ」

 もしかしたら、これが最後の連絡になってしまうのかもしれない。これは一種の賭けである。

 松永が期待する展開は、永田がそれでも無理を押して、自分に援助を申し出てくること。そうなれば、永田軍に大きな貸しができる。対等な同盟者から、事実上の傘下団体とすることができるというわけだ。

 最悪の結果は言うまでもなく、永田軍が離反してしまうことだ。味方から離反した敵は、後ろめたさを払しょくするため、元々敵だった相手よりも積極的に攻めてくる場合が多い。非常に厄介な展開となるのは確実である。

 僅かな駆け引きのミスが、命取りに繋がる。あの事件で逮捕される前、娑婆で活動していたときにも味わえなかったスリル。面白い。ゾクゾクするようだ。

 思考能力を高めるブドウ糖を脳に送るべく、松永は、いつもはブラックで飲んでいるエメラルドマウンテンに、角砂糖を一個入れてみた。

 悪くない。苦しみを美化するのは、救いようのない愚か者である。人生はいつだって、苦いよりも甘い方がいいに決まっている。
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シリーズ終了したら再構成してさらにクオリティ上げて出版社に持ち込んだらどうだい?
新人作家大賞に応募とか。その手の活動はしてないの?

下手なメジャー作家よりよっぽど面白いし読ませる文才あると思うよ。

No title

>>けつのす百恵さん

新人賞には応募してるんですよ。
今まで、二作ほどです。
結果はどうなったかは、よくわからないです。
最終的に受賞までいかなければ、一次で落ちようが
最終選考まで残ろうが同じだと考えているので・・。
一応、今、選考待ちの状態でもあります。
どうなることか・・。

言い訳がましい話ですが、小説の世界って、実力は7割くらいで、
あとの3割はギミックがものをいうところあるんですよね。

たとえば「ホームレス中学生」「水島ヒロ」
タレントじゃなければ、100%売れなかったですね。

たとえば芥川賞。
僕が尊敬する西村賢太は、中卒で破滅的な人生を送っているというギミックがなかったら、果たして受賞できたか?
綿谷りさは、十代でそこそこ可愛いルックスがなければ、果たして受賞できたか?

まあ、小説に限らず、芸術の分野って、多かれ少なかれそんなもんです。完全実力主義はマンガ業界くらいですね。

僕がブログを書いているのは、その辺のタレント性を強化する目的もあるのです。ニコ生に挑戦したのもそのためだったんですけど、あれはどうも向いていませんでした・・。

再構成して持ち込みはいい案ですね。
せっかくこれだけ評価してくださる方がいてくれるのですから、
埋もれさせておくのはもったいないです。
頑張って書いていきますね。

過去記事にお邪魔しちゃいます(* ̄∇ ̄*)

津島さん今晩は!!
ちょっとご無沙汰してました><

松永パート、すっごく良かったです・・・!!!ほんと二次創作の悪役キャラが似合うなぁ(*^¬^*)

詐欺師、ナルシスト、鬼畜と、
ホンモノの方で性格についての記述が詳しく(もちろん、信憑性があまりないものも多数ありますが…)、
相手相手に合わせて色々な顔を持っているから、創作キャラとしては幅広く書きやすそうですね・・・!?

ホンモノ松永は本気で怖い人物ですが・・・(もの凄く怖いくせに、関連サイトはたまに閲覧してます・・・。怖いもの見たさで読み進めてしまって、まるで肝試しみたいになってますww)

ホンモノさんはともかくっ・・・、
バトルロイヤルの松永は悪役としてカッコイイ雰囲気出まくりで・・・
特に最後の方のシーンは、いかにも考え(企み)そうなことですね!!!

なんだか、津島さんが小説を通じて、松永のイメージアップしてくれた気さえしています(笑)


フムフムちゃんですが勉強、リアルがとてもお忙しいみたいで・・・
でも小説これからもすごく楽しみと、応援してましたよ(* ̄∇ ̄*)

あと、フムフムちゃんを通じて知り合った同志さんもいて・・・、最近、よくお話ししてるんですが、その方は、特にバドラチームがお気に入りみたいですよ!!!(*´ω`*)

私もけっこうギャグ回もお気に入りです!!!・・・って、それはもう分かってますねwww


また長々とごめんなさい!!
まだまだ暑い日がつづくので、
体調には気をつけてくださいね!!
執筆活動ファイトですっっヽ( ̄▽ ̄)ノ

No title

>>蘭さん久しぶりです

松永太は、粗暴犯が多い死刑囚の中では、数少ない裏表を使えるキャラなので、書いていて楽しいですね。麻原や宮崎にバカやらせるのも楽しいですが、また違った楽しさがあります。


フムフムちゃんは勉強で忙しいですか・・。
今、まだ十代らしいですからね。
忙しい中でも、友達にブログを紹介してくれたりして、
本当にありがたいですね。
感謝、感謝です。


こうやって読者の方からレスポンスをいただけると、
執筆もはかどります。応募、持ち込み用の原稿も書いているんですけど、それの倍以上のスピードで書けますからね。
出版社がデビューさえさせてくれたらもっと頑張れることの証明ですねw

ありがとうございます。
また、コメントよろしくお願いします。

名文みつけた♡

苦しみを美化するのは、救いようのない愚か者である。人生はいつだって、苦いよりも甘い方がいいに決まっている。


これ、いい文ですね~(ー_ー)!!ほんとに松永言ってそうで妙にリアル。いまさら82話の感想ですみません。




No title

>>あやかさん

昔の回にコメントありがとう~。

サイコパスは意味のない考え方を嫌うんよね。
苦しみを美化するのって、はっきりいって何も生み出さない考え方だから。そういう連中って、決まって「説教」が好きなんだけど、ありがた迷惑なんだよね。てことで、ちょっとサイコパスの松永さんに斬ってもらいました~。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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