凶悪犯罪者バトルロイヤル 第79話


 各国首脳や財閥が集まる会合に参加したグランドマスターは、ホテルのルームサービスを取りながら、秘書のアヤメとともに、5月の参加者の戦いを振り返っていた。

「今月の死亡者は、以下の五名です。石橋栄治。殺害者は、栗田源蔵。小林正人。殺害者は、加藤智大。加納恵喜。殺害者は、A・S。小松和人。殺害者は、A・S。尾形英紀。殺害者は、松永太」

 一か月の死亡者五名。まさかのペースダウンである。ゲーム開始から三か月が経った現在、参加者の半分は何らかの組織に属しており、また各勢力とも、現在は様子見の段階にあることが影響した停滞だろうか。一応、銃火器の早期解禁を念頭に置いておかなければならない。

「各勢力間の動きは以下の通りです。重信房子、永田洋子連合軍が、小林正人軍と抗争。小林正人軍は滅亡しました。その後、重信房子軍は、新加入のA・S率いる軍団と同盟を締結。さらに、八木茂軍との間に、戦端が開かれた模様です。そして、麻原彰晃軍と宅間守軍との間に、和平の道が開かれたようです。宅間軍は角田美代子軍と同盟しており、その角田美代子軍の傘下には、金嬉老、李珍宇のコリアンコンビが加わったようです」

 麻原彰晃率いるバドラと重信房子軍―――。二強の間に、確かな戦力格差が生まれつつある。強豪、八木茂軍との対立により、尾形英紀を失った重信軍に対し、「獄中ブログ」の小田島鐡男を加えて、合計9人を抱える最大勢力となったバドラ。両軍のダブルスパイとして暗躍する正田昭も、近頃では、明らかにバドラに心が傾きつつある。同盟軍の永田洋子、A・S軍も合わせれば、重信軍が数では上回るが、強豪八木軍と対立している重信軍には常に戦力損耗のリスクが付きまとい、対して、明確な敵対勢力のいないバドラには、さらに上昇気流が吹いている。龍虎が火花を散らしあっている内に、一人勝ちを決めてしまうかもしれない。

 が―――。重信軍には、バドラにはない資金力がある。これの使いようによっては、まだまだ挽回のチャンスはある。重信軍の頭脳、松永太は、この状況にまだ焦りを感じていないようであるから、戦局はどう動くかわからない。グランドマスターにも、展開がまったく読めなかった。

「ところでマスター。昨日の、宅間守の発言なのですが・・」

 アヤメの報告を聞き、グランドマスターは頭を抱えた。警告メールで大人しくなったかと思えば、早くもこれである。まあ、宅間が面倒を見ている少年たちが殺人を実行したとして、教唆になるかどうかは微妙なところではあるが、あれを許していたら、図に乗った宅間が、また厄介なことを起こしはしないかという危惧はある。ただ、宅間は余人を持って代え難い人材である。下手に規則でガチガチに縛り付けてしまうと、本来の実力が発揮できないタイプでもあるだろうから、グレーゾーンにいる間は、好きにやらせておくのがいいのかもしれない。

 危険な要素を孕んでいるといえば、宮崎勤だ。あの男は、まるで掴みどころがない。本当に、まともな教育を受けた人間なのかと疑ってしまうときがある。世界中の犯罪者、とくに宮崎のような快楽殺人者にはそういう傾向があるが、あの男の浮世離れは度が過ぎている。その宮崎勤が、同じく、何を考えているかまるでわからない、山地由紀夫と組んだ。宅間守と金川真大もそうだが、磁石の同極はふつうは反発し合うというのに、あの二人はくっついてしまった。何か起こらぬかと、心配しない方が無理である。まったく、頭が痛い。

 自分との約束通り、参加者三人を始末してのけ、参加者の椅子を勝ち取ったAは、今のところは便利屋の経営に専念し、力を蓄えているようだ。そのAが脅迫して参加させたNとともに勝ち残りを伺うAが、この先どんな戦いぶりを見せてくれるのか。勝ち残ることが目的ではない、殺人をすることそのものが目的であるかのような節もあるあの男の動向には、目が離せない。あの男の犠牲になったホームレスには申し訳ないが、楽しみで仕方なかった。

 「伝説の強姦魔」小平義男、「籠城戦のエキスパート」梅川昭美、「悪魔の申し子」西口昭、「毒婦」小林カウ。沈黙を守っている大物たちがどの勢力に味方するか、はたまた、己が組織を立ち上げるのか。それによっても、勢力地図は変わってくるだろう。まだまだ、未知数の部分は大きく、展開はまるで読めない。

「マスター。市橋達也を狙う松本兄弟に接触してきた人物のことですが・・」

 あの問題か。ブラック・ナイトゲームの筋から漏れた情報だとは思うが、やはり、参加者に直接殺害を依頼する人物は現れてしまった。各国のマフィア関係者などには気を配っていたが、「そっちの線」をおろそかにしていた。不覚である。

 まあ、ゲームは予想外のことが起きるから面白い。これからも、外部からゲームに介入してくる人間は出てくるだろうが、それがゲームの根幹を揺るがすものでない限りは、あまり厳しく排除はしないようにしていこう。大事を成し遂げる一番のコツは、些事を気にしないことである――。

 グランドマスターは、アヤメとともに「淡麗・生」の缶ビールを飲んだ。バトルロイヤル参加者の生活を覗くようになってから、庶民の文化に染まりつつある自分がいる。今度は、牛丼屋とやらにでも行ってみようか。

 この上なく上機嫌なグランドマスターは、パソコンを開き、最近はまっている「2ちゃんねる」にアクセスするのだった。
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グランドマスターは2ちゃんの凶悪犯スレでも見てるのかな???(笑)

こんにちは(*^.^*)
グランドマスター…2ちゃん見てるなんてwwwオチャメさん?(笑)

個人的に>宅間守と金川真大もそうだが、磁石の同極はふつうは反発し合うというのに~ の箇所が、ツボでしたね…///この二人の組み合わせも好きなので!!!

各軍についてもまとめられていて、おさらいになってよかったですよ☆
昭和の凶悪犯だとまだあまり詳しくない人もいるので…、ググッて予習しておかなきゃ~~~(笑)

梅川は一体、どの軍に付くんだろう~~~???やっと名前がチラチラ出てきてワクワク(笑)ですっ…!!!
関西のオチャメなお兄さん同士で、宅間軍だといいな///(…いわゆる、俺得、ってやつです)
金川くんも余裕で籠城できそうですし…。楽しめるゲームがあればww

また、続き楽しみにしてますね♪♪
急かすつもりはないんですけど…、
なんだかいつも、続き続き~~~言っちゃってますよね、すみません…。これからも、あまり無理はしすぎないよう…執筆ファイトです~☆(´ω`)ゝ

No title

>>蘭さん

明治~昭和の犯罪者も面白い人物は多いですよ~。
以前にもどっかで書いたんですけど、貧富の格差が開き始めた昭和後期以降の犯罪者は、社会への不満が動機の一つにあった場合が多いんですけど、昭和中期以前の犯罪者って、本当にどうしようもない、矯正不可能な人物が多いんです。それだけに個性的なんですよね。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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