凶悪犯罪者バトルロイヤル 第八話


 宮崎勤は、赤羽のファミリーレストランで、食事が運ばれてくるのを待っていた。

 待っている間は、趣味のイラストを描いて暇をつぶす。題材は、僕が大好きな立体の図形だ。タイトルはすでに決めてある。ゴーリキ・ベース・サファイアだ。裁判中もこうやってお絵かきをしていたら、傍聴席にいたうるさい偽善者のおっさんに怒鳴られたっけ。

 あれ。ボールペンのインクがなくなってしまった。困った。困ったぞ。

 しょうがない。ちょっと回想でもして、時間を潰すか。



 僕が委員会の教育プログラムを修了して、外の世界に出て来たのは、十日前のことだった。研修施設での暮らしはそこそこ充実していたから、僕は嫌がったのだけれど、グランドマスターを名乗るおっさんは、僕を無理やりに車の外に放り出したのだ。

 僕を生き返らせてくれたのはいいけど、たかだか200万円のお金を渡しただけで、一人きりで放り出すなんて、まったく酷いことをする奴らだ。「家族の人」を頼ることもできないし、僕は途方に暮れてしまった。そしてとうとう、道の真ん中で蹲って、泣き出してしまった。

 しばらくして、パトロール中のおまわりさんがやってきた。僕が帰る家がなくて困っていること、ある程度のお金は持っていることを告げると、おまわりさんは、近くにある漫画喫茶を紹介してくれた。

 そこは楽園だった。僕が拘置所に収監されている間に、社会にこんな素敵な施設が出来ていたなんて。ドリンクは飲み放題だし、漫画も読み放題。パソコンも出来るし、大好きなジブリアニメも観れる。ご飯も食べられるし、シャワーすら浴びれる。

 それから僕は一週間も、漫画喫茶に籠りっきりで過ごしていた。今日出てきたのは、同じような施設は都内にいくつもあることを知り、他のお店を見てみたくなったからだ。



「お待たせしました」

 料理が運ばれてきた。ウェートレスの娘は、18歳くらいの、溌剌とした女の子だった。僕の大好きなナウシカに、ちょっと似ているかもしれない。

 「やさしいこと」をしてあげたいな。そう思った。

 僕をよく知らない人は、僕を真性の小児性愛者だと思っているようだけど、それはとんだ誤解だ。僕は大人の女性も、毛の生えていない子供の女の子も、同じように性的対象にできるだけだ。

 僕の風貌は、大人の女性には敬遠されやすい冴えないものだけど、子供から見た印象では、優しそうなお兄さんといった感じで、警戒されにくい。アニメに詳しいから、話題も合う。腕力のない僕でも、子供なら簡単に制圧できる。狙いやすい女を狙った。それだけの話なのだ。

 テーブルの上では、ハヤシライスとホワイトシチューが湯気を放っている。僕の大好きな、「カレー仲間」の取り合わせだ。さっそくスプーンをとり、食事を始めた。

 暖かくておいしい。でも、拘置所で食べたものの方がもっとおいしかった気がするな。あまり良い食材を使っていないんだろうか。普通の人は知らないだろうけど、拘置所の、とくに刑が確定した囚人ってのは、結構いいものを食べてるんだよ。ま、こんなのでも、さっきの女の子を「肉物体」にして浸せば、もっとおいしく食べられるんだろうけど。

「・・・ですから、今後は人材集めと平行して、どこを拠点として活動していくかを考えなければなりません」

 僕が食事を待っている間に、通路を挟んで向かい側の席についた男女四人組の会話が、聞くともなしに耳に入ってきた。

「最も有力な地域は、なんといっても日本最大の消費都市、新宿歌舞伎町です。ここに拠点を構えれば、飲食や風俗など、あらゆるシノギを展開できる上、武器や情報を提供してくれる裏社会の人間と交流を持つにも便利です」

 ん?あいつら、どこかで見たことがあるぞ。そうだ、僕と同じ、バトルロイヤルの参加者じゃないか。
名前はなんていったっけ。名鑑を開いてみよう。えーっと・・松永太に、加藤智大、前上博、それと、重信房子・・か。

 やばいな。このままここにいたら、殺されちゃうかもしれないぞ。でも、まだ「カレー仲間」を食べ終わってないし・・。ああ、どうしたらいいんだろう。

「だったら迷うことはないじゃないですか。さっそく、歌舞伎町に拠点を構えましょうよ」

「甘いですね、加藤君。歌舞伎町を抑えることがどれだけの利をもたらすかは、少しばかり世故にたけた参加者なら誰でもわかるはずです。もし私たちが、十分な力の裏付けがないままに歌舞伎町で旗揚げした場合、他の参加者がとる行動は?一時手を携え、出る杭をよってたかって叩き潰そうとするはずです」

「そ、そうか・・」

「ですから肝心なのは、我が軍団の戦闘力を高めるとともに、他の勢力の動向にも気を配り、同盟できる勢力とは同盟し、しっかりと土台を固めた上で、歌舞伎町に進出することなのです」

 何を言ってるんだか、さっぱりわからん。たぶん、ゲームを勝ち抜くために大事なことなんだろうけど。僕の頭は、自分が興味のないことは、いくら勉強したって、どんな丁寧な説明を受けたって理解できないように出来ているのだ。

「なあ、大事な話をしているところ悪いんだが・・」

「どうしました。前上さん」

「あそこに座ってるの・・宮崎勤じゃないか?」

「!!」

やばい。僕の存在が、バレてしまった。
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No title

なんか加藤の仲間が増えてますね。
前上も重信も松永にそそのかされて仲間入りしたのでしょうか?
そういえば加藤と重信には「革命家」という共通点がありますね。
ピュア過ぎる彼らは松永の狡猾さに気づけなかったのでしょう。
宮崎も松永にうまいこと言いくるめられてしまうのでしょうか?

No title

>>1番コメさんコメントありがとうございます!

今のところ松永の支配は順調に行きわたっているようですね。

しかし、彼らは歴史に名を刻んだ凶悪犯罪者たちです。
このまま最後まで松永のマリオネットで甘んじているかどうか?
僕にもまだわかりません。

宮崎ver.も久しぶりでした。

今晩は。今日も、じっくりと読ませて頂いてます。
久しぶりの宮崎ver.…なかなか面白かったです。
序盤の章は読み飛ばしが多かった事に気づき、反省しています…。
それかもう4年も前で、私の記憶が曖昧なのかなぁ(笑)
これからまた続きを読みます!
小説をサイト上に保存しておいてもらえて良かった…。
ありがとうございます(*'ω'*)
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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