凶悪犯罪者バトルロイヤル 第69話

 麻原彰晃率いるバドラは、ツンベアーズのワタルが通う「蒼龍小学校」を訪れていた。といっても今日は、公式な活動で訪れたわけではなく、遊びにきただけだった。麻原たちは、ワタルへのイジメを解決した功績から、小学校側より、連絡さえとれば、小学校の設備を自由に遊びに使っていいとの特別許可を得ていたのだ。

 今、体育倉庫の中にいる麻原の目の前に、腹部にナイフの突き立った勝田清孝の死体が横たわっている。死亡推定時刻には、体育倉庫のシャッターは閉まっていた。完全な密室の中で、殺人は行われたのだ。この密室の謎を解かない限り、真犯人を究明することはできない。麻原は途方に暮れていた。

「さあ、尊師。早く事件を解決してください」

 死んでいるはずの勝田清孝が、それは楽しそうにニヤニヤと笑いながら、麻原の推理を眺めている。

「待て。もうすぐ・・もうすぐ、パズルのピースが揃うのだ」

 麻原は眉間に指をやり、頭脳をフル回転させた。

 麻原たちの今日の遊びは、「金田一少年の事件簿ごっこ」だった。ルールは、じゃんけんで探偵役と犯人役、被害者役をそれぞれ決め、他の者は犯人役のサポートに周り、探偵役は、制限時間内に、犯人が誰かを推理する、というものだった。

「・・よし。わかった。謎はすべて解けた!」

 16:56。制限時間ぎりぎり一杯で、どうにか事件解決にこぎ着けた。麻原は皆を集め、推理を披露し始めた。

「まず、この密室の謎だが、犯人が清孝を殺した現場は、ここではなかった。別の場所で殺害を行い、死体をクレーンか何かで、あの開いている天窓から中に降ろしたのだ。そして、真犯人だが、清孝の周囲に散らばったボールが、ダイイングメッセージとなっている。野球ボール、バレーボール、ラグビーボール・・その中から清孝は、一番大きなバスケットボールを選んで、抱きしめている。これは真犯人が逮捕された年の数字が、もっとも大きいことを指している。つまり犯人は、2005年に逮捕された、小田島鐵男!おまえだ!」

 麻原は鬼の首を取ったような顔を浮かべ、先日新たに加入した信徒、小田島鐵男を指さした。

 戦時中の北海道に生を受けた小田島鐵男は、幼少の頃から窃盗や詐欺などあらゆる悪事に手を染めてきた。1990年、練馬区で起こした監禁事件で初めての長期刑。獄で知り合った守田克実と組み、2002年、マブチモーター社長宅強殺放火事件を引き起こした。その後も全国を行脚しながら殺人、窃盗を繰り返し、2005年に逮捕。死刑が確定し、拘置所の中から「獄中ブログ」を執筆していた。

 4歳のころに母親に無理心中を迫られ、11歳のころまで過ごした親戚の家では、ロクロク食べ物も与えられずに折檻を受けて育つなど、愛情に恵まれない少年時代を過ごし、実に人生の三分の一以上を塀の中で生きてきた小田島だが、意外にも社会への適応性は高く、バーテンやミシンのセールス、自動車学校の教官など様々な仕事を務め、フィリピン人ホステスとの間に一子をもうけるなど、女性との縁にも恵まれていた。犯罪経験値の豊富さは参加者中でも屈指であり、肚も座っている。頭脳、戦闘、両面において活躍が期待される逸材だった。

「ぶっぶー。ざんねーん。真犯人は小田島さんじゃなく、俺でしたー」

 関光彦が、得意気な笑みを浮かべて名乗り出てきた。

「なんだと・・」

 納得がいかなかった。自分の推理は、完璧だったはずだ。状況証拠は、すべて小田島が犯人であることを示している。これ以外の結果など、考えられない――。

「では、俺がどうやって勝っちゃんを殺したかを説明しまーす。俺はアメリカNBAのスパースター、レブロン・ジェームズをマインドコントロールして、密室の体育倉庫の中で勝っちゃんを殺させたのでしたー。レブロン・ジェームズのジャンプ力なら、天窓の淵に飛びついて脱出することも可能でーす。勝っちゃんがバスケットボールを抱えているのは、そのまんま、バスケット選手が犯人であることを表していたのでしたー。そして、レブロン・ジェームズをマインドコントロールできるのは、常に尊師の傍にいて、洗脳術を研究してる俺だけだから、俺が犯人なのでしたー」

 なにを言っているんだ、こいつは。これは、ミステリーに対する冒涜である。麻原は、怒りを抑えることができなかった。

「な・・なんだそれは!無茶苦茶だ!なにがレブロン・ジェームズだ!そんなのがありだったら、真冬の雪山で、山荘から1㎞離れたコテージで死体が発見された、死亡推定時刻には全員山荘にいた、犯人はどうやって一瞬でコテージに移動したのか?というアリバイトリックのとき、実は犯人は整形手術を受けた浅田真央ちゃんでしたー、水撒き器を使って長―いスケートリンクを作って、トイレに行くふりをして一瞬でコテージに行き、殺してきたのでしたー、とかも、ありになってしまうではないか!」

 麻原は憤慨して抗議し、別のケースを持ち出した。

「え・・それは無しですよ、尊師」

「浅田真央ちゃんを洗脳したとかならともかく、浅田真央ちゃんが真犯人とかはだめですよ」

「そうです。尊師、それはルール違反です」

「いくらなんでも、やっていいことと悪いことがある」

 麻原が例えに出したケースは、信徒全員から否定されてしまった。どうにも釈然としないが、まだ始めたばかりの遊びなのだから、ルールが固まっていなくても仕方ない――。そんな風に無理やり考えて、納得することにした。

 その後、夜の19時まで「金田一少年の事件簿ごっこ」をして遊んだバドラは、「夢庵」で食事をとり、帰宅後は、「マリオテニス」をするなどして、皆の絆を確かめ合った。

 バドラの人員は、自分を含めて現在9人。そんなことはあり得ないが、このまま最後まで全員が生き残ったとして、8人の枠に収まるためには、誰か一人は死ななくてはならないわけで、本当なら疑心暗鬼が募ってもおかしくはないが、バドラにはそういう雰囲気は一切ない。皆、今を楽しもうと心がけている。自分のムードメイクの、賜物だった。

 生き残りの参加者中、実に8分の1が集中する、圧倒的最大勢力。あまりに人数が膨れ上がったバドラに、単独で勝負を仕掛けようとする参加者はおらず、好循環で人数はますます増えていく。地域での人望も日増しに高まっており、金もどんどん集まってくる。特定の同盟勢力こそないが、宅間軍との反目意識がなくなった今、直接敵対する勢力もなく、外交関係も悪くはない。

 このまま、勝ち残りを決めてしまうのか?そう信じてもおかしくないほど、麻原彰晃の勢いは、止まりそうになかった。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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