凶悪犯罪者バトルロイヤル 第64話

 宮崎勤は、青山の自宅で、友人の山地悠紀夫を待っていた。今日は山地が、バイト先の友人を連れてきて、三人でゲームをすることになっている。朝の9時30分を過ぎたところで、インターホンが鳴らされた。

「やあ、宮崎くん。おはよう。こちら、バイト先の友達で、バトルロイヤル参加者の、菊池正くん。麻原彰晃の軍団に、所属してるんだって」

「はじめまして、菊池と申します。よろしくお願いします」

 山地くんが連れてきた友人が、腰を90度の角度に折り曲げた、いささか丁寧すぎる挨拶をした。精悍な顔立ちに、堂々たる体躯。間違いなく戦闘力は高いだろう。律儀な性格も伺え、順応性も高そうだ。山地くんのバイト先の新聞配達店では、期待の新人的評価を受けているというから、学はなくとも、職務遂行能力は高いことも推察できる。印象は地味だが、バトルロイヤル参加者中でも屈指の能力値を持つ人材―――。

 が。そんなことは、僕にはどうでもよかった。僕にとって大事なのは、仲良く遊ぶ友達として、いい奴なのか、面白い奴なのか、ということだけだ。

「うん。菊池くん、よろしくね。さあ、上がって上がって」

 僕は二人を招じ入れ、おやつとコーヒーを出し、ゲームの準備をした。今日プレイするのは、プレイステーション2の「三国志Ⅷ」だ。コーエーの「三国志」シリーズは、現在のところⅫまで出ているが、最近のものは一人プレイ専用が多く、かつての「三国志」シリーズの醍醐味であった多人数プレイが出来る最後の作品が、このⅧである。

「菊池くんの所属するバドラでも、三国志シリーズは流行っているらしくてね。今日は菊池くんが、バトルロイヤル参加者を武将化したデータが入ったメモリーカードを持ってきているらしいんだ。ちょっと見てみようよ」

 三国志シリーズに登場する武将には、実際の歴史で残した業績に応じて、能力を数値化したデータが、一人ひとりに設定されている。

 統率・・部隊を率いて戦う力。集団対集団の戦に反映される。
 武力・・個人の武勇。一騎打ちの強さに反映される。
 政治・・内政や外交をこなす力に反映される。
 知力・・謀略や戦闘時の戦術の成功率に反映される。
 魅力・・個人の人間的魅力。人材勧誘の成功率などに反映される。

 といった具合である。

 ゲームでは、「演義」の登場人物だけでなく、自分で武将をエディットすることもできる。菊池くん所属のバドラでは、バトルロイヤルの参加者を、バトルロイヤルや実際の事件で残した業績に応じて、能力を数値化しているというのだ。さっそく、見てみることにした。まずは菊池くんのボスである、麻原彰晃だ。

 麻原彰晃 統率 100 武力 100 政治 100 知力 100 魅力 100

「尊師・・。あれだけ皆に批判されたのに、またこっそり戻してたのか・・」

 菊池くんは、呆れ顔である。同じ東京拘置所に収監されていたという麻原彰晃には、会ったこともないし、興味もないが、自分でこういうことをする彼の性格は、容易に想像できた。

 麻原彰晃 統率 80 武力 5 政治 96 知力 82 魅力 100

 菊池くんが直したデータがこれである。個人的感情が入っているかもしれないが、あれだけの宗教団体を率いていたのだから、魅力と政治、統率の高い数値は納得できる。テレビ番組に出演し、マスコミや学者と対決していたときの弁舌の鋭さからして、知力も間違いなく高いだろう。かつては柔道二段の腕前を持っていたというが、今はあれだけ太っているのだから、武力が低いの仕方がない。

 続いては、松永太だ。

 松永太 統率 65 武力 34 政治 89 知力 99 魅力 90

 類まれなる謀略と商才、コミュニケーション能力で名をはせた、希代の天才殺人犯に相応しい評価だ。

 続いて、僕をなぜか嫌っている、加藤智大。

 加藤智大 統率 95 武力 96 政治 67 知力 45 魅力 66

 成人7人の命を奪った無差別殺傷犯の評価は、やはり戦闘に特化されている。政治、魅力が低くないのは、仕事もそれなりに出来、友人もそこそこいたコミュ力を買われてのことだろうか。掲示板への書き込みは文学的センスを感じさせるが、融通が利かなそうな性格であるから、知力は低めなのは納得だ。続いて、まだ僕は会ったことのない、宅間守軍。

 宅間守 統率 97 武力 100 政治 32 知力 73 魅力 68

 これぞ戦神、といった感じの能力値である。戦闘面に関しては、ゲーム内の実在武将でいえば、補正抜きではあの呂布をも凌ぐ数値だ。政治の低さは、度重なるトラブルで職場を追われてのことだろう。知力に関しては、精神病を利用して悪事を働いていたズル賢さ、魅力は、女性5人を口説き落として結婚まで持ち込んだコミュ力の高さと強引さを評価されてのことか。

 他の人物で主だったところをあげていけば

 永田洋子 統率 96 武力 82 政治 81 知力 74 魅力 78
 角田美代子 統率 71 武力 22 政治 86 知力 97 魅力 93
 金川真大 統率 80 武力 93 政治 62 知力 70 魅力 56
 木嶋香苗 統率 53 武力 62 政治 76 知力 90 魅力 74

 といった具合である。

 これらの人物に加え、僕たちは、自分たちも武将化することにした。菊池くんはともかく、僕や山地くんのような猟奇犯罪者は、能力を数値化することが難しかったが、残虐性を統率に反映させるという、ちょっと無理やりなやり方で、何とか対応した。

 宮崎勤 統率 94 武力 26 政治 21 知力 91 魅力 73

 これが僕の能力値だ。武力は生まれつきの障害で掌を反転させられないこと、政治は仕事が何一つ務まらなかったこと、知力は、犯行声明で世間を引っ掻き回した戦果を反映させた。

 山地由紀夫 統率 91 武力 68 政治 50 知力 48 魅力 69
 菊池正   統率 70 武力 88 政治 76 知力 73 魅力 60

 山地くんと菊池くんも、同じようにして自分を武将化し、僕たちはゲームを開始した。

 バトルロイヤル参加者が、現実より一足先に、古代中国で雌雄を決する―――。
 現実の戦いを占うかもしれない苛烈なシミュレーション・ウォーが、今、幕を開けた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR