凶悪犯罪者バトルロイヤル 第60話

「な・・・冗談やな」

「キャー!!尊師と宅間さんがキスなんて!!早く!!早く!!」

 激昂して席を立とうとする宅間を、アヤの嬌声が引き止めた。ここでノリの良さを見せねば、アヤを手に入れることはできない。アヤのぽってりしたセクシーな唇の感触を味わうためには、グロテスクな麻原のオッサンと、接吻しなければならない・・。

「・・ちっ!ワシも男や。やったるわ!」

 男らしく振舞え―――。薩摩隼人の誇り高い、親父の口癖。幼き頃宅間は、自分に、堂々と、裏表なく生きろと強要する親父に、いつも反発していた。殺したいほど憎んだ。

 それが今、親父と同じことを言っている――。どんなに憎しみあっていたとしても、親子というものは、否応なく似てくるものなのだろうか?。いや、認めはしない。あの親父と同じになることだけは、認めはしない。が、この場で男を見せなければ、望むものが得られぬのも事実。だが―――。

「で、では・・お願いします・・」

 瞳を固く閉じて、鱈子唇を突き出す麻原のオッサンの気持ち悪さは、想像を絶していた。

「や、やっぱり、無理――」

「あ、こんなところにバナナの皮が」

 諦めて顔を引きはがそうとした宅間の唇に、湿り気を帯びた生暖かいものが、ぺとっ、と触れた。バドラの関光彦が、バランスを崩したと装って、麻原のオッサンの背中を押したのだ。

「く・・・やりおるではないか・・・」

 唇を拭う麻原のオッサンは、まんざらでもなさそうである。ニヤついている関光彦。宅間の脳に、カッと血が上った。

「おのれ・・・っ!」

 暴発寸前の宅間が――。もはや、アヤの声も耳には入らない―――。が、振り上げた拳は、誰を傷つけることもなく降ろされた。

 宅間を止めたのは、バドラ最強の男、造田博の視線だった。おそらく、宅間が現れた時点で、仲間に指示されたのであろう。奴は酒には口をつけていない。対して自分は、脳からつま先までアルコールに浸かっている。このコンデイションで争うのは、得策ではない・・。宅間はゆっくりと席に着いた。

 だが、これで宅間に火が付いた。ここまでの代償を払ったのだから、何がなんでもアヤを手に入れなければならない・・。宅間は目の色を変えて、アヤに迫った。

 次のクジ引きで教祖さまになった宅間は、あろうことか、自身とアヤを名指しし、接吻を要求したのだ。しかしこれが、みんなの反感を呼ぶ。

「宅間さん、それはルール違反っすよ。ちゃんと番号で指名しなきゃ」

「さっきもキスで、またキスってのはちょっとなあ・・」

 腹心の金川、宅間に好意的なノゾミまでもが、批判的な意見を述べる。うるさい奴らどもめ。そんなに言うなら、グロテスクな麻原のオッサンと、キスしてみろというのだ。

「宅間さん、我儘な人は嫌いよ」

 アヤにまでそう言われては、仕方ない。宅間は退いた。

 このまま、終わってしまうのだろうか――。絶望しかけた宅間だったが、挽回のチャンスは、意外にも早くやってきた。

「ぐっふっふー。アヤ先生に、俺の四十八手で快感をもたらせてあげたいものだな」

「アヤ先生、俺のは凄いぞ。ラスプーチンの三十センチ砲には及ばぬが、色つやはそれ以上だ。味わってみたいであろう?」

 なんと、酔っぱらった麻原が、アヤ先生にセクハラ発言を連発し始めたのだ。

「コラッ、エロおやじがっ!ええ加減にせんか!」

 さっきの失態を帳消しにするチャンス――。宅間は勇んで、麻原に食ってかかった。

「なにを怒っておるのだ。アヤ先生は、嫌がっていないではないか」

 さっきまで弱気な態度だった麻原が、平然と自分に食ってかかってきた。それまで控えめだった女が、貫いてやった瞬間に強気に出てくることはよくあることだが、自分の唇を味わったこのオッサンも、それと同じ心境なのだろうか?気持ち悪い、悪すぎる――。

「黙れやっ、くそボケがあっ!」

「貴様にくそボケなどと言われる筋合いはない!しかもなんだ、さっき貴様の登録している出会い系サイトをチラリと覗いてみたが、なんだあのプロフィールは!年収1000万、医者って・・。まるっきりの大嘘ではないか!」

「やかましいわ!んなもん、言ったもん勝ちやろ!実際それで、何人もの女を食ってきたんや!」

「ふん。ならば、あの恥ずかしすぎる一言コメントはなんなのだ?1秒だけでも、君に逢えたら・・って。ふつうに会うより、難しいではないか。あと、僕をヒマワリだと思って、摘んでくださいって・・。摘んだら、枯れてしまうではないか!」

 不快な麻原の笑い声につられて、テーブルに付いている者どもすべてが、ドッと笑いだす。限界だった。

「ぐっ・・黙らんかいーーっ!」

 宅間が席を立ちあがり、麻原のダブついた頬を引っ張った。麻原が抵抗し、テーブルは大騒ぎとなる。

「いい加減にしなさいっ!戦う男は好きだけど、場所も弁えずに暴れる男は嫌いよっ!!」

 アヤがぴしゃりと言って、なんとか店から追い出される寸前で、場は鎮まった。
 
 その後、参加者は三つのグループに分かれ、カラオケに、町の散策にと、繰り出していった。が、宅間と麻原は、お仕置きとして、どのグループからも参加を許されず、取り残されてしまった。

「くっ。まさか、こんな結果に終わるとは・・」

「オッサンのせいやど。どうしてくれんねん」

「お互い様ではないか。だが・・」

「あん?」

「俺たちの雰囲気、悪くはなかったのではないかと思うのだが・・」

 同感だった。事実、二次会に出ていった三つのグループには、それぞれ、バドラのメンバーと宅間軍のメンバーが混在している。勢いに任せた一夜限りのものかもしれないが、二つの軍団には、確かに友情が芽生え始めていた。

 凄惨な殺し合いを繰り広げた両勢力が手を結んだことによって、世の中が動いた例は存在する。かの織徳同盟である。織田と松平、先代の時代から幾度にも渡って争った両者が、怨讐を超えて手を結んだことにより、天下は統一へと向かった。バドラと宅間軍が同盟を結べば、角田美代子軍をも含んだ大同盟が成立する。大局的戦略眼を持たぬ自分だが、これに勝てる勢力は存在しないことはわかる。

「なあ・・・」

「む。なんだ?」

「いや・・」

「そうか・・・」

「・・・」

「・・・」

「おい」

「なんや?」

「いや・・」

「そうか・・・」

 お互い言いたいことがあるのに、なかなか切り出せない。歯がゆい沈黙が続く。

「アホらしい!サウナんでも行って、一汗かいてくるわ」

「俺も・・いや・・帰って、ハンゲームでもするかな・・」

「・・・ほなな」

「・・・ああ」

 宅間と麻原、犯罪史上に名を残す大物二人が、別々の方向へと歩いていく。

 バドラと宅間軍に、雪解けの兆し――。
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マモマモがちづおと・・・
・゜・(つД`)・゜・
ウワァァァン!!!
ちづおっ・・・関めっ・・・くそっ!くそっ!ww

またまた、おもしろい展開になってきましたね、
まさか両軍団に友情が芽生えてしまうとは・・・(笑)

ちょっと気になったのは・・・、
(今回だけじゃなく今までも何度かあったと思います・・・)
登場人物たちの会話部分に
「w」は不要かな?と思いました。
「w」なくても、
津島さんとても繊細に描写もされていますから・・・、
笑い~嘲笑している様子はじゅうぶん伝わるかなと(^^)/

昔、同人で小説書いたときに、他の作者さんで・・・
登場人物のキャラが照れる様子を「///」で表現したり、
また誰が話してるかを
○○(キャラ名)「(台詞)」・・・
と書いてしまっていて、
小説というよりはドラマの台本みたいになってる方もいました。
コメント欄でなら、ネット用語でも全然大丈夫なんですけどね・・・。
当時は、個人の趣味の作品だしと思い、遠慮もあって
意見できなかったの(^^;)
趣味の作品に何かしら意見や指摘しようものなら、
=苦情、荒らし!と、ひとくくりにされていたから・・・。

津島さんは趣味の範囲で書かれてる訳じゃないので、
ちょっとした意見ですが
お伝えしたくて・・・。

No title

個人的にはもっとキスの描写を濃厚にしてほしかったかも☆★⌒▽⌒
あっでも違う小説になっちゃうか・・・!!!!!⌒V⌒
尊師のツッコミが妙に的確www

私が読んだことがあるネット上の漫画(オナマスだったかな?)でも普通にwが使われてたので商業用でなければ許せる範囲だと思いました!!個人的には!!!!特にギャグ回なんかは・・・
wを使わずに嘲笑を表現するのって難しいですね・・・

そして蘭さんのベテランっぷりが凄い!!!!

横から口出ししてすみません(>人<;)!!!!!!


どっちかというと私は一人称?がコロコロ変わってる部分が気になりました!!!!
58話あたりとか、マモマモ視点とナレーションがごっちゃになっている文章があって「?」ってなりました・・・!!!!!!

…!コメントさらにモリモリート☆

フムフムさん~☆
いや、ベテランなんてことないですよ!
(σ*´∀`)ちょこっと昔に同人サイトを少しカジッてただけですもん・・・。
かれこれ、もう5年以上も前ですよw

一人称が変わるのは、私も少し気になりつつ?でした、あれはあれでアリなのかな?と何気なく思ってました(*´ω`*)ネットの漫画に「w」使われてたんですか!?商業用でなければ、それもアリなのかな(;A´▽`

津島さん・・・私そんなに頭カタイわけじゃないんですけど、気になって意見も投稿してみました・・・ファンなので苦情ではないです!!!(;´Д`)


No title

>>蘭さん

w不要との意見、確かに拝借しました。
ありがとうございます。

応募用原稿と違い、ブログ小説はある程度自由がきくと思い、
より伝わりやすようにと入れてみたのですが、やっぱり余計ですかね。ありがとうございます、改めて置きます。細かいところにも気を配っていきたいですね。

>>フムフム

うーん、読めんかのう。
三人称視点で書く場合は、
俺の小説の師である新堂冬樹氏の手法を忠実に模倣しているつもりなのだが・・。

ちょっと読み直してみますね。
悪いと思ったら直しておきます。

No title

>>フムフム

読み直してみたが疑問点がとんとわからぬ・・。
ナレーションというのは、最後の一文のことかのう?
客観的にみて、俺にはさほど疑問とは思えぬのだが・・。
主人公の内面描写にも、客観的な情景描写にも
なんにでもシフトできてそれが違和感のない、それが三人称のいいところだと思うのだが・・読みにくいかのう?

うーむ・・。

No title

>>フムフム

指摘のあった箇所は、段落変更で対応してみました。
確かに同じ段落内で人物視点と、いわゆる「神の視点」が一緒に出てくるのは問題だったかもしれません。ちょっと気が付くのに時間がかかりました、申し訳ない。

「神の視点」に関しては、たとえば結びの文章なんかに使うには非常に便利なのよね。あと、一文で一気に場面を飛ばすときなんかに、使わざるをえないときあります。癖のように使っている部分あるので、ちょっと言われないとわからないですね。文章の解釈も人それぞれなので・・。

他、どこか問題と思える部分、具体的にあるかな?

Re: No title

>>蘭さん 、フムフム

一人称が変わるというのは、具体的にどの部分を指しているのでしょう?以前にも指摘を受けたんですけど、なにが問題なのかわからないんですよ・・。

その指摘を受けた人が言っていたのは、加藤智大パートなどで、最初に三人称一元視点を思わせる書き口で始まり、そのあとに「俺が~」などと一人称が始まる、という点でした。それに関しては、何ぶん登場人物が多いもので、はじめに個人名を出さなければわからないだろう、という配慮なのですが・・。読めればいいかなと思って気にせず書いていたんですけど、どうしても気になりますかね?他と違うことをしている、それ自体が問題だといわれてしまっては、もう返す言葉もないのですが・・。

 逆に最初に個人名を出さないと、それはそれで大変なことになってしまうと思います。最初から三人称一元視点で書いていればなんの問題も発生しなかったのでしょうが、一人称には一人称でしか表現できないこともあります。加藤、市橋の二人は特に僕と精神的波長が近い人物ということもあり、一人称の手法をとっています。これに関しては、これからもずっとそれで書いていきます。ほとんどの読者の方は違和感を感じていないようですし、正直、何が問題かまったくわからないので・・。それにもう記事もたまってきてしまったので、直しようがないです・・。でもダメですかね?

 

No title

すみません、忙しくてしばらく来れませんでした(;>_<;)(;>_<;)(;>_<;)(;>_<;)


たとえば58話のこのあたりとか↓

 麻原のオッサンが震え声で、宅間と初対面を装う挨拶をした。信者の連中もそれに従う。どうやら、仲間を殺された怨みよりも、宅間への恐怖が勝ったようだ。用事を思い出したと言って帰る、という選択肢もあったはずだが、それもしなかったということは、この中に、よほど惚れている女がいるのだろう。それがアヤであるのなら、渡しはしない。自分の使用済みでよければ、金次第では下賜してやってもいいが。


「宅間」→「自分」になってて違和感を感じ、ムズムズしました・・・・・・・・・・・・・・・

最初に「麻原のオッサン」って書いてあるのでマモマモ視点pっぽいですが、マモマモが自分のことを宅間って呼んでいるように見えて、神の視点?と一人称視点とごっちゃになってる感じがしました!!!!!!

私が文章を読む能力がないせいですかね・・・・・?????( ̄~ ̄)( ̄~ ̄)( ̄~ ̄)( ̄~ ̄)

No title

>>フムフム

それは・・三人称一元視点では普通の手法だよw
三人称は世界観を俯瞰して見れる利点があるけど、内面に深く食い込んで書きたいときは「自分」を使うのね。
別に使ってる人が多い手法だから言うわけじゃないど、全然おかしくはないよ。

いや、逆に安心したwなにかもっと、致命的な間違いを起こしているのかと思ってたw

まあ10代なら読書量が絶対的に足りないだろうから仕方ない。俺も10代のころは読解力なくてロクに本なんか読めんかったし。

No title

ぬああああああにいいいいいいいいいいい!!!!!
ちゃんとした技法だったんですね!!!!!!!!(◎o◎)(◎o◎)(◎o◎)

失礼しまいたああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああいああああああああ
教えてkださりありがとうgざいます!!!!!!!1

Re: No title

>>フムフム

それでも人に読みにくい印象を与えていたのだとしたら、俺の技量不足って可能性もあるけどね・・自分じゃよくわからん。

初心者にも読みやすい平板な文章を書く作家が、一番売れるんじゃないかという気がしている。読みやすさを重視するというスタンスなら、蘭さんがあげてる、セリフの頭にキャラ名を書いちゃったりするようなのも、全然いいと思うんだよね。ただ単に、キャラ名書かないと誰がしゃべってんだかわからなくなっちゃう、という表現力不足なら問題だけど(苦情、荒らしと感情的になって反論してるあたり後者の可能性がでかいが)

小説って基本、自由、自由、自由だからね。近年では、電車男みたいなスレッド形式の小説も売れてるし。なにがハズレでなにが当たりかなんて、売れてみるまではわからないよね。

津島さん>
今晩は♪
本編中で私が少し気になった所は…、フムフムさんと同じ箇所でした(^-^ゞ

宅間視点とナレーション視点が
ミックスされてる…???
こういう書き方もあるんだろうなぁ~と思ってました。
やっぱり技法の一種なんですね…!

少し気がかりなことでも、
お話ししてみて良かったです☆

私の説明不足で、モヤモヤさせてしまったかな…、ゴメンなさい(>_<)
今度もし意見…するような機会があれば、最初から具体的に伝えますね!!! O(≧∇≦)O
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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