凶悪犯罪者バトルロイヤル 第50話

 宅間守は、駐車場で煙草を吸いながら、「生徒」を待っていた。宅間が座っているスペースの番号は「68」である。別に、特別な意図があったわけではない。たまたま座ったら、この番号である。

「68のおっちゃん、ちーっす」

「おっちゃん、今日も悪いこと教えてもらいにきたよ」

 「生徒」たちが、今日も仲良く揃ってやってきた。19:00。学校の通学時間など守ったことなどないだろうに、宅間の「授業」には、ゴルゴ13並みの正確さで現れる。

 宅間は一週間前より、大田区の小中学生を相手に、「塾」を主宰していた。言うまでもないが、国語や数学を教えているわけではなく、宅間が今までやってきた悪事を教えているのである。料金は、一人一時間1500円。中学生が簡単に出せる金額ではないが、自分が教えた悪事によって彼らが儲けた金額を考えれば、安いものである。

 今日の生徒は、5人。一週間前には2人だったのが、もう倍の数に増えている。5人に2時間、教授を施して、15000円の収入である。ボロイ商売。笑いが止まらなかった。

「おう。そんじゃ、始めるで。一時間目は、ATMの荒らし方や」

 生徒たちの表情が引き締まる。

「一昔前のATMは、バールかなんかでこじ開ければあっという間に壊せたものやが、近年のは頑丈に出来とって、そうもいかん。ごちゃごちゃとやっているうちに、機械警備が作動して、警備会社の機動隊がやってきてオシマイや。そうならんためには、ショベルカーを使って、機械ごと分捕ればええ。安全なところまで運んで、ゆっくりと破壊しにかかるんや。ショベルカーと、ショベルカーを積むダンプの盗み方については、後日に講義する」

 生徒たちが真剣な表情で、ノートにペンを走らせる。私語や居眠りをする者は、誰一人としていない。学校の授業では見せたことなどないであろう、物凄い集中力である。この集中力を学校の勉強に活かせれば、とは誰もが思うことだろうが、なかなかそうもいかないことは、宅間が一番よく知っている。

 家庭の悩みや友達関係。最初は、ちょっとした躓きだった。ちょっとした躓きで、授業についていけなくなった子供が、そのまま劣等生の烙印を押され、放置されているうち、自信を失い、ますます勉強しなくなっていく。潜在能力が開花せぬまま、自分はバカだと思い込んだまま大人になり、十分な収入を得ることができない、不安定な職についてしまう。

 しかし、その者は、本当に勉強がダメだったのだろうか?本人や、周りの人間が、できないと思い込んでいただけではないのか?

 一度躓いた子供がもう一度立ち上がるチャンスが、十分に提供されていないのではないか。本来は優秀な頭脳を持ち、学習意欲だってあるのに、キッカケを掴めないでいる子供は大勢いるのではないか。頭の柔らかい子供のうちに、ちょっと誰かが手を差し伸べてやっていれば、眠っていたポテンシャルが花開くということは、いくらでもあると思うのだ。

 宅間には、社会貢献をしようだとか、人を導き、育てようなどという気はさらさらないが、宅間の授業がきっかけで、生徒たちが勉学に目覚めるというようなことがあれば、それもよかろう。そのまま悪の道を究めるならそれもよし。自分の知ったことではい。

「よし。2時間目は、強姦についてレクチャーするで。女を犯るのに一番ええのは、やっぱり徒党を組むことやな。女っちゅうても必死に抵抗するから、一人だと返り討ちにされることは結構あるんや。4,5人のグループを組んで、狙っている女の生活パターンをつぶさに調べる。一人になったときを狙って、車に引きずり込んで、人気のないところまで連れて行き、代わる代わるに突っ込んだるんや。フェイスマスクを被って、絶対に顔見せたらアカンぞ。体液を残さんのは、言うまでもないな」

 白けた目をしている少女と対照的に、少年たちの目が、爛々と輝く。やはりこの年頃の子供を一番惹きつけるは、性にまつわる話である。

「まあ、ワシは集団行動は肌に合わんかったから、もっぱら一人で犯しとったけどな。お前らと同じ齢のころからやり放題やったが、一番よかったのは、不動産賃貸物件の紹介案内をしとったころや。合鍵もっとるから、契約成立した後に、いつでも犯ったれるんや。趣味と実益を兼ねて、まったくボロイ商売やったで」

「バれないものなの?」

「そらいつかはバレるわ。そんときに備えて、精神病院入ったりして、キチガイの実績を積んでおくんや。そうするとな、司法と精神医療、それから、人権なんてのが、強力な盾になって、守ってくれるんや。ま、そうは言うても、実際にはバレんかった方が多いけどな。世の中にはどんなに真面目に生きても女とヤレずに死んでいくやつもおる。それに比べれば、100回女を犯って、1回の懲役で済むなら安いもんやろ。勝ち組や」

 少年たちが、大いに納得した様子でうなずく。この年頃の子供だと、いわゆる不良であっても、まだまだ女には甘美な幻想を抱き、まともな恋愛に憧れをもってもいそうなものだが、最近のガキの心は、自分の頃よりも遥かに冷え込んでいるようだ。結構なことである。

「よし、今日の授業は終いや。家帰ったら、ちゃんと復習しとくんやぞ。それから、紹介の件な。一人紹介するごとに授業料100円免除やからな、忘れんなよな」

「はーい。68のおっちゃん、今日もありがとな」

「おう」

 敬語もよう使えん悪ガキどもが、大人にお礼を述べている。宅間の授業でしか、見られない光景だろう。親が知ったら、涙するかもしれない。

「ねえ、68のおっちゃん」

 少女が、腰をくねらせながら近づき、艶っぽい声で話しかける。

「なんや」

「あのね、アタシ、今日、お金もってないの」

「なんやと」

「それでね、体で払うならどうかと思って」

 宅間は考え込んだ。少女は目も一重で、肌も浅黒く、髪質も悪く、容姿は自分の好みではない。だが、なんといっても若さがある。未成年とは長らくご無沙汰だ。おそらく処女ではないだろうが、ヤッてやっても、いいかもしれない。

「ええで。ほんなら、ホテル行こか」

「だめよ。だって、その必要もないもん。おっぱい触らせるだけだから」

「なんや、それは」

「授業一回でボディタッチ、二回でキスとハグ、三回でフェラ、七回でスマタ、十回でゴム付き本番、十五回で生本番。キモイオヤジならもっと取るけど、68のおっちゃんはタイプやから、安くしといてあげる」

 宅間は苦笑した。近頃のメスガキは、こまっしゃくれている。

「わかった。ほなら、十五回目まで我慢するわ。そん代わり、毎日来るんやぞ」

「うん。また明日ね」

 少女は、ウインクをして去っていった。
 
 まったく、ボロイ商売である。
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津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
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