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犯罪者名鑑 北九州監禁殺人事件 7

ショーンk

 金主

 清志の遺体を処理した松永は、次に清志の親友の妻だという女性に目を付けます。松永は自分を塾講師だと偽り、清志の協力も得て、既婚者であった女性とデートを重ね、男女の仲となっていきました。

 松永は「自分は村上水軍の末裔だ」「東京で兄が医者をやっている」「塾講師の月収は100万円くらいだが、寺で一週間生徒を預かり、集中講義をやればもっと高収入になる」と嘘を重ねました。ラブホテルでも女性に相対性理論のビデオを見せ、30分以上も相対性理論について熱心に解説するなどしていたといいます。

 様々な詐欺の手口が明らかになった昨今では、松永のウソのつきかたはそれほど上手いとは思えません。ウソつきの世界ではすべてをウソで塗り固めるのはご法度であり、むしろ殆どは本当のことを話し、肝心なところだけウソをつくのが上手いウソのつき方とされています。

 こうしたすぐわかるようなウソを信じてしまう、信じようという気になってしまうポイントは、「この人についていけば自分にもこんなメリットがある」と思う、またそう思わせてくるというところにあるのでしょう。ただ華々しい経歴をひけらかすだけではいけ好かないヤツだと思われるだけですが、異性であれば結婚して一緒になるとか、同性であればビジネスで協力して成功できるということを強調すれば、何でこんなことを信じたのかというウソに騙されることもあり得るということです。

 メディアの世界でも、すべての経歴をウソで固めていたショーンKなる人物が実際に長らくテレビのコメンテーターとして活躍していたという事実もあり、恐ろしいほどの自信と、ウソの経歴に見合った実力というか、それらしいことが言えるコメント力があれば、すべてをウソで塗り固めていても人を納得させることはできるのかもしれません。

 松永に騙された女性は、清志が亡くなる一か月前に協議離婚を成立させ、三人の子供を実家に連れ帰りました。こうした行為も批判しようと思えば批判できますが、まあ松永と出会っていなければ不満を抱えながらも家族と平穏に暮らせていたであろうことを考えればそれほど目くじらを立てても仕方ありません。最近またもや九州で起こったママ友洗脳事件のように、すでに家庭を持って安定している人でもかかる洗脳の恐ろしさをもっと真剣に考えるべきでしょう。

 女性が離婚するや態度を豹変させた松永は、「小説家としてやっていくので塾講師は辞めた」などと言い出し、女性に生活資金として消費者金融から250万円を借り入れさせました。同居を始めてからも、理由をつけて女性の長女、長男を前夫や実家に送り返させ、代わりに純子と己の子供二人を連れてきてマンションに住まわせました。
 
 松永はこれまでと同じように、女性に凄惨な虐待を加えて金銭をむしり取っていきました。人質にするために家に残していた次女に危害を加えると脅されていた女性は、食事を制限されて栄養失調に陥り、睡眠も3時間程度しか取れないという状態で会社に通っていました。

 あまりの苦痛に耐えかねて、女性は純子が換気のために開けた窓から飛び降り、マンションの2階から決死の脱出を試みました。腰骨を折りながら、どうにか病院まで逃げたという女性は、その後しばらくは虐待のPTSDに苦しんだといいます。

 女性の逃亡がわかった松永は、すぐにもともと自分で借りていたアパートに帰りました。次女は前夫の家まで車で連れて行き、路上に放置しました。

湯布院

 湯布院

 女性に逃げられて以降、しばらく金主の獲得に苦しんだ松永は、純子に当たり散らすことが増えていました。「俺ばかりが金を工面してきたんだから、今度はお前が金を作る番だ!」などと松永に言われていた純子は、母親の静美に連絡して150万円の送金を頼みましたが、すげなく断られます。

 困った純子は、子どもを叔母の元に預け、自分で働いて金を稼ぐことを決断します。はじめは大阪で働こうと思いましたが、運賃が足りず湯布院を目指しました。

 湯布院へとやってきた純子は、飲食店や旅館を一軒一軒まわり、雇ってもらえないかと頼み込みました。そして焼き肉店の常連からホステスの求人を紹介してもらった純子は、さっそく面接に足を運びました。

 純子の様子を一目見て事情を察したホステスのママは、店の二階の空き部屋を用意し、美容院に行くようにと一万円を渡して翌日から働いてもらおうとしていましたが、純子はわずか一晩で姿を消してしまいました。

 「突然挨拶もせず出ていくことをお許しください。主人が亡くなったので、急遽帰らなくてはいけなくなりました。この恩は一生忘れません」と、置手紙には丁寧なことが書いてありましたが、しばらくすると純子から、「給料が安すぎる!もっと寄こせ!」など、店に凄い剣幕で電話がかかってきました。ママが一日も働いていない者に給料は渡せないと当然のことを言うと、純子は「これから取りに行く!」とすごみ、代わりに出た男性のオーナーが「来るならこいや!」と啖呵を切ると電話は切れました。

 言うまでもなく、これは親しい者との関係を断ち切らせようとする松永の命令によるものでした。純子は他にも店を紹介してくれた焼き肉屋の常連のことも、「娘が薬を横流ししている」と、常連の娘の勤務先の病院に電話をかけるなどしていました。

 親切にしてれくた人にわざと失礼なことを言わせ、関係を断ち切らせる。地味ですが純子にはこれが一番精神的に効いたかもしれません。

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 偽葬式

 湯布院から一晩で姿を消した純子は、いったいどうなっていたのか。

 純子は湯布院に行ってから、子供の様子を聞くために毎日実家に電話していたのですが、面接を受けた翌日、理恵子から「松永が長崎県の西海橋から身を投げて亡くなった」と告げられました。

 着払いでいいからタクシーで帰ってこいと言われた純子は、すぐに松永と一緒に住んでいたマンションへと向かいました。部屋に入ると緒方家の家族が居て、室内は線香の香りがし、テーブルには松永の遺影が置いてありました。

 何とも手の込んだことに、松永は直筆の遺書まで用意していました。出会った頃からの思い出が綴られた手紙を読んだ純子は、自分が松永を一人にしたせいで松永は自殺してしまったのだと自責の念に駆られ、感傷的な気分で遺影に手を合わせました。

 そのとき、急に押し入れのふすまを開けて出てきた松永が「かかれ!」と叫び、緒方家の家族が純子を取り押さえたというのが、「偽葬式」の顛末でした。

 大の大人が揃って何をやっているのかと思ってしまいますが、こうしたことを平然とやってのけ、また他人にやらせることができるのが松永という男でした。

 偽葬式の後、純子はいつにも増して激しい制裁を受けたようで、あまりのことにこの時期の記憶は殆ど飛んでしまっているようです。

 純子は殺人事件の加害者でもありますが、明らかに松永の暴力の被害者という側面もありました。多数の人の命を奪った罪は重いとはいえ、主犯の松永との量刑を分けないのは理不尽というものであり、最終的に死刑の松永よりも軽い無期懲役の判決が下されたのは妥当な判例だったでしょう。純子の全身には通電によるケロイドが残り、松永のチョップで喉を潰されてしまったせいで声質がハスキーに変わってしまったそうです。

 そしてこれが、平穏な一家がこの世から忽然と消失する、緒方家一家殺人事件の幕開けでした。
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No title

松永を始めとするサイコパスと呼ばれる人間は狙いを定めたら徹底して相手を追い込むのでしょうね。
最初は様子を伺い獲物になるかどうかを見定める能力に長けており相手を完全に洗脳させてしまえば自分を盲信するということが分かっていると思います。
松永の周りに何人も被害者がいるというのも恐ろしいですがターゲットにされたら全力で逃げないと意外と気付いたら引っかかっていたということもあるのかもしれません。
純子はもう完全に松永から離れられない関係になっていますよね。
純子の性格までも支配してしまっており以前の純子とはもう別人のようですね。
偽葬式をするためだけに松永が緒方家に協力させるというのも考えてみたら凄いですよね。
松永が演出して緒方家が演技し純子を騙すという発想を思い付くのも松永ならではですね。
この時点でもう緒方家は松永に取り込まれていますね。

No title

seasky さん

 意外にも一人の人間に対する執着はそれほど強くないサイコパスには逃げることが一番効果的でしょうね。あくまでも冷徹な計算が働く松永のような男は、リスク度外視で一人の人間を追うことはしないようです。


 善良な市民であり、犯罪とは無縁にみえる緒方家には、サイコパスの洗脳にかかりやすいある特徴がありました。ブログの更新を継続できれば解説したいのですが、今の状況ですと難しいかもしれません。

No title

ショーンKは自分の身分すら詐称してましたが、確かな能力自体はあったように思います。

まあ当時は昭和の残り香も残っており、特に北九州のような地方都市でもそういうウソは通用したのかもしれませんが、つくづく松永と言う男の底知れぬものがわかりますね。

No title

GGI さん
 
 話のうまい人物は1の知識を披露して10の知識を持っているように見せる技術があります。ここまですべてをウソで固めるとツッコまれてやばいシーンは何度かあったはずですがそういう場面をどう切り抜けたかでしょうね。

 もう少しコメントが集まったら更新を再開します

No title

知れば知るほどどろどろとした嫌な気持ちにさせられる男です
同じサイコパスの異常者でも周囲に当たり散らすタイプの宅間のほうがまだいいですね
最初から攻撃態勢でこられるよりも内側に忍び込まれてから攻撃さるる分松永の方が被害が大きくなります
多くの人を騙せるだけの頭と優れた容姿がありながら何故あんな生き方しかできなかったのかと思いますが
そこが異常者たる所以ですかね

No title


からあげ さん

私の知っている人物にも学歴も生活の知恵もないくせに何故か人を騙す能力だけ異常に発達しているという人間がおり、社会悪の一つの型なのかもしれません。仰る通り考えていることがわかりやすいぶん宅間の方がマシでしょうね。

宅間はともかくも労働意欲はあった男であり、救いの道しるべはあったと思いますね。まともには遠いかもしれませんが、少なくとも大量殺戮などやらかさずに天寿を全うすることは不可能ではなかったように思います。

松永はあの強欲が抑制不可能なのだとすれば、彼の能力が中途半端であったことがあのような悲劇を生みだした最大の原因であり、被害者の不幸でしたね。
彼とてまともに金持ちになれるならば人殺しまではしなかったでしょうから。まあ、頭は切れても地道な努力を厭う傾向のあるサイコパスには、まともな成功はやはり難しかったかもしれませんが。




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