FC2ブログ

犯罪者名鑑 北九州監禁殺人事件 5

マツダ


 地獄

 アパートで純子、恭子と共同生活を始めた清志は、通電をはじめとする様々な虐待を受けるようになりました。

 毎日の食事は白米や食パン、カップ麺など栄養価の低いものに制限され、それをそんきょの姿勢で15分以内に食べろと命令されるなど、理不尽な制約も課されていました。シャワーは冬場でも水しか使わせず、身体を洗うときは亀の子たわしで擦らされ、一着しかない服を洗濯して乾くまでは全裸にさせられていました。トイレに行くにも松永の許可が必要で、用を足すときにはいつも焦らされ、大便を漏らしたときにはそれを全部食わされていました。

 また、清志は普段カツラを被っていたのですが、ある日それを松永に娘の恭子の前で剥ぎ取られたということもありました。それ以後は、ずっとハゲ頭を露出しながら過ごしていたそうです。

 食事、入浴、排せつという人の暮らしの軸を制限され、精神的にも屈辱を負わされる。大変な人権の侵害ですが、力の弱い女や老人ではなく、成人の男である清志がここまでされて反抗できなかったのはなぜだったのでしょうか。

 清志と出会ったころの松永は東大卒のコンピュータ技士を装っており、事業で一発当てたいと考えている清志に夢を持たせるようなことばかりを言っていました。単純な清志が松永をすっかり信じ込み、内妻に「この人は凄いんだよ」と紹介するところまで気を許したところで、松永は今度は、清志をチクチクと責め立て始めます。

 ある酒の席で、酔って饒舌になった清志が、「客から消毒作業を引き受けて、実際にはやらずに消毒費だけを懐に入れる。ちょっとした小遣い稼ぎになる」と、不動産会社勤務時代の小さな悪事を暴露したことがありました。 

 取るに足らぬ話ですが、それを聞いて怒った(フリをした)松永は、居丈高になって清志に説教をし、「本来はA社に入れるべき消毒費を着服していたことを認める」という文面の「事実関係証明書」なる書類を書かせました。

 さらに、松永は清志が勤めていた不動産会社で起きた100万円の窃盗事件について、「お前が犯人だろ!」と決めつけ、清志を厳しく問い詰めます。事実に反することなので清志はなかなか認めませんでしたが、松永から冤罪を作り出す警察のように執拗に執拗に尋問されて、とうとうやってもいない罪を認めさせられてしまいます。この件でも「事実関係証明書」を書かされ、これで心が折れてしまったのか、清志はなんと「娘の恭子に対する性的いたずらを認める」という証明書の作成まで同意してしまいます。

 もちろん、清志が恭子を性的虐待していたという事実はありませんでした。しかし、恭子は松永への恐怖からウソの事実を認めてしまい、これで清志の立場は決定的に悪いものになってしまいました。

 後の緒方家でもそうでしたが、松永は洗脳の対象に序列をつけることで、集団をうまくコントロールしていました。

 序列下位の者は上位に上がるために松永の機嫌を取ろうとし、序列上位の者は下位に落ちないように松永の機嫌を伺い、下位の者を積極的に痛めつける。松永は共産国家のように密告も奨励しており、ワールド時代の従業員や緒方家の人々は団結して松永に抵抗するよりも、互いのアラを探し合い、松永に報告することに努めていました。

 このときの序列は松永→緒方→恭子→清志の順番でした。序列最下位に置かれた清志は、前述した通電や食事、排泄、入浴の制限の他に、いびきがうるさいという理由で寝るときも横になることを許されず体育座りを強制され、ついには扉と窓に南京錠がかかった浴室に常時閉じ込められるようになりました。

 序列の3番目に置かれた恭子の扱いも悲惨なもので、育ち盛りにも関わらず食事は清志と大差ない貧相なメニュー、寝るときも体育座りで、入浴も清志と同じ水シャワーを使わされていました。学校は休みがちになり、貧血や吐き気を催したり、生理が2,3か月来なくなったりしたこともありました。

おがた


 監禁
 
 「初め善意を装って相手の信頼を勝ち取り、徐々に相手の落ち度を突いて罪悪感を抱かせ、精神的に優位に立つ」

 これがワールド時代から培われた松永の洗脳術でした。

 「洗脳の対象に毎日大量の酒盛りを強制し、睡眠不足に陥らせ、思考を麻痺させる」


 この手法も実に効果的でした。

 清志のように日中は仕事をし、帰れば朝の5時まで酒を飲まされるという生活では、どんな人間でもまともな判断力を保つのは不可能でしょう。飲酒には気が大きくなって秘密を打ち明けやすくなる効果もあり、後には緒方家の人々もまた、清志が消毒作業費を着服していたのを話したのと同様、過去に犯した過ちを松永に告白してしまい、それに付け入られることになってしまいました。

 松永のアパートで共同生活をするまでになれば、もはや手、足をもぎ取ったも同然で、さらに暴力やあらゆる生活の制限、序列づけや密告奨励といった手法で被害者は洗脳されていきます。

 監禁されてから、清志は親や友人に泣きついて約1000万ほどの借金をさせられていましたが、それもできなくなると、虐待はいよいよ凄惨を極めました。

 指に銅線を巻き付けて電気を流され、肉がただれて骨が見えてしまいましたが、病院に行くことは許されませんでした。一度に強烈な電気を流され、跳ね返った腕は肩から上に上がらなくなってしまいました。

 親類縁者にこれ以上の借金を断られ、絞りカスも出なくなった清志には、もはや虐待されて松永の酒の肴になることしか存在価値がありませんでした。清志の身体に電気を流すのは恭子や純子の役目で、松永はけして自分は手を汚さず、清志が苦しむのを見て愉しんでいました。

まつながあ


 死亡

 平成7年の暮れごろから、清志は吃音が酷くなったり、「えんま大王が・・」など意味不明のことを呟くなど、言語障害が著しくなっていきました。痩せこけて顔がどす黒くなり、表情も消えるなど、見た目にも廃人のようになっていました。

 心身ともに衰弱し、死ぬのを待つだけという状態の人間を見て愉しむ。こうした感情が異常であり、松永が異常な性癖の持ち主であったことは疑いありませんが、人間は必ずしも己の欲求だけで人の道を踏み外すものではありません。犯罪者のほとんどには暗い生い立ちがあることは常識といってもいいですが、言ってしまえば「自分は不幸なのだから何をやっても許される」という理屈が、人を悪の道へと進ませるのです。

 例えば松永と同じ九州の出身者であり、マインドコントロールに長けていた麻原彰晃には親に捨てられたという悲しみがあり、弱視というハンディキャップがありました。結局は欲に飲まれて道を踏み外しましたが、若い頃は真剣に修行をしていた時期もあり、また父の責任感と己の子への愛情は、形は歪んでいたとはいえ貧乏だったころから教団を率いるようになるまで変わりませんでした。

 特に貧乏でもない家庭で母や祖母に甘やかされ、容姿にも優れていた松永の幼少期のどこに不幸な要素があったというのでしょうか。彼の生い立ちに歪んでしまう要素のあるエピソードは何もなく、成長してから理不尽な痛みや大きな挫折を味わったという話も見当たりません。松永の息子は「アイツもいっぱいいっぱいだったのかもしれない」と語っており、確かに指名手配犯という立場で切羽詰まってはいたのでしょうが、その自業自得の状況を「自分は可哀そう」という理屈に変換できる人間は誰もいないでしょう。

 少なくともこれを書いている私には、松永に共感できるところは何一つありません。月並みですが、松永という男は天性の犯罪者であったという以外に表す方法がありません。

 そして平成8年2月26日、浴室で大量の軟便を漏らした清志は、そのまま昏倒して帰らぬ人となります。

 清志の遺体を前に、松永、純子はいつものように酒盛りをし、未成年の恭子にも酒をすすめました。

「清志の身体には通電の痕や恭子がつけた噛み痕が残っている。警察にいけば恭子も逮捕される」


 松永のこの言葉を鵜呑みにした恭子は、緒方とともに、父、清志の解体作業を行うことを同意させられてしまいます。 
 
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

No title

松永の清志への虐待は酷いですね。
相手より優位に立ち対象に序列をつけるというやり方で集団をコントロールするのですね。
松永がトップにいることで誰も逆らえない方向に持っていくのですね。
自分は決して手は出さないという所が賢いですね。
麻原彰晃は暗い過去があるのに対して世間一般の家庭環境から松永という凶悪犯が生まれるというのは不思議です。
松永の相手を言い包めて信じさせる話術は並みの人間には出来ない芸当だと思います。
松永はとんでもなく恐ろしい男ですね。

No title

seasky さん

 松永の洗脳はオリジナルの要素もありますが心理学や共産国家のマインドコントロールのやり方をよく研究して応用していますね。昔、北朝鮮という国は国家ぐるみでこういうことをしていました。会社経営者などは多少学ぶところもあるのかもしれませんが、ここまで揃うと民主国家にはいてはいけない人間としかいえませんね。

No title

とある文献で、麻原彰晃は弱視、貧乏、親との不和、学歴と、挫折まみれのコンプレックスによるもの。松永太は全能感、万能感によるもの、と言う指摘がありました。二人とも痛いところを突かれれば完全に動揺して支離滅裂になる点など、松永も麻原もどこか似たようなところはありましたね。


ただ、「失敗は成功のもと」と言ったように、挫折や苦しみは人を成長させる要因にもなります。ただ、松永にはそれがあまりにも見えません。


麻原には何度かやり直せるチャンスがあったように思いますが、松永がこうなったのは、ある意味必然的かもしれません。

No title


 GGI さん

 麻原は親に捨てられたという思い込み(盲学校の環境はそう悪いものではなかった)があるところに、本人の才能と新興宗教というものにアレルギーのない世の中が結びついて成功してしまった怪物ですね。

 井上嘉浩に虐待を行ったような話もありますが、盲学校を出てから教祖になるまでには人に暴力を振るったということはなく、自分の子には盲目的な愛情を抱いており、松永よりは人らしい面があったのではないかと思います。
プロフィール

asdlkj43

Author:asdlkj43

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
凶悪犯罪者バトルロイヤル
凶悪犯罪者バトルロイヤル
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR