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犯罪者名鑑 北九州監禁殺人事件 3

matuなが


 稀代のナンパ師 

 無類の女好きである松永には、ワールド時代には、純子や妻以外にも十人近い愛人がいたようです。

 松永はあれほど凶悪な男であるにも関わらず、顔立ちはタレントの中山秀征に似た柔和な感じのイケメンで、背も高く体格も良かったといいます。話術に優れていることは言うまでもなく、また、女を落とす上ではときに必要な強引な性格と、失敗を恐れない、良い意味で「羞恥心」に欠けていたところもありました。

 松永は一度、湯布院に逃亡した純子を連れ戻すために「偽葬式」を行ったことがありました。わざわざ自作の遺影を用意し、緒方家の家族に松永が死んで悲しんでいる風な芝居を打たせ、純子が信じ切ったところで押し入れから現れ、家族に「かかれ!」と命令して純子を取り押さえたという出来事ですが、現場を想像するとかなりシュールな空気が漂います。

 ワールド時代、目当ての女性にアピールするために、千人ほどが収容できるホールを貸し切ってライブを行ったこともありました。楽器など触ったこともない社員を集めて無理やりバンドを結成し、自分がボーカルを務め、社員たちに一か月の猛特訓を行わせたというのですが、松永は「松永の歌が演奏とズレている」と指摘する社員を殴り、「お前たちが俺の歌に合わせろ!」と言い切ったそうです。

 迎えたライブ本番当日、観客席には緒方とお腹を大きくした妻、松永が当時入れ込んでいた女の三人が離れて座っていました。自分の女たちに見守られる中、松永は徳永英明の曲などを熱唱し、まるで人気歌手になり切り、曲が終わるたびに観客席に向かって大げさに手を振っていたそうです。

 自らを効果的にアピールする演出力に長けていたというよりは、恥をかこうが笑われようが、目的に向かってやると決めたことをやり抜く図太い精神力を持っていたという点を評価するべきでしょう。

 羞恥心というのは、小さな幸せを大事にして生きる上では大事ですが、人を凌ぐ大成功を目指す場合においては邪魔になる要素です。常識を外れた発想は当たればでかいが、多くは失敗して嘲笑されるもの。それにめげず、果敢に挑戦し続けた人間だけが大きな成功を手にすることができる。

 松永は確かにモテ要素は持っていましたが、すべての女がこんな誠実さが1%もない男に騙されたとも考えられず、おそらくは落とした女の倍以上にはフラれていたはずです。しかし、松永はそれを意にも介さず次を狙う割り切りの早さも持っていました。その点、ひとつの恋を引きずりやすい私などは羨ましいとも思えます。

 目的のために手段を選ばない強引さと、人の目を気にしない厚顔さ。女性方面のみに関していえば、松永はこの時点で成功者といっても良かったかもしれませんが、その後の彼は己の才能をすべて犯罪を成立させることに振り向けていくことになりました。

なんぱ


 妻

 平成四年に松永と離婚した妻もまた、純子と同じように、松永のDVの対象となっていました。

 松永より年上である妻が松永と出会ったのは、松永がまだ高校生のころのことでした。バスで帰宅する彼女を毎日バス停で待っている松永を、最初はかわいいと思ったそうです。松永がいつもの虚言で、「ヤクザの鉄砲玉にされそうで、もう会えないかもしれない」と言ったときには本気で心配もしました。

 しかし、妻が松永に気を許したのを見て取ると、松永はたちまち豹変しました。前回の記事でDVが人の精神に与える効果について書きましたが、松永の妻も暴力を受けたことで純子と同じような精神状態に陥り、子供が生まれたことで離れられなくなってしまいました。

 床に正座をさせて膝の上に「踵落とし」を食らわせる。床に絞り出したマヨネーズを舐めさせる。自分で殴っておきながら、殴った手が痛いといって同じ手で殴り続ける。妻や純子、ワールド従業員に対する松永の暴力は執拗で、常軌を逸していました。

 妻と純子は高校時代から面識があり、ワールド時代、従業員であった純子は、松永という魔王の城のようなビルの一階に住む妻を「若奥様」と呼んでいました。

 一度、純子が松永の蹴りで膵臓を痛めて入院したとき、医師による通報で松永は警察に逮捕されかかりました。妻はこれで地獄が終わると安堵していましたが、得意の弁舌で追及を躱したのか、松永は何食わぬ顔で帰ってきてしまいました。

 そのすぐ後、家族の前で暴力を振るわれたのをキッカケに、妻は松永から逃げ出す決意を固めました。警察署でDVの被害申告をし、紹介された婦人相談所の施設で仮住まいを始め、離婚調停をして二か月後には松永も了承し、離婚が成立しました。

 松永は「いつか人を殺してもおかしくはない」と思っていた妻は、その後に起きた連続監禁殺人事件に関わっていた純子には「申し訳ない」という思いだったそうです。

 心理学に関係する本を好んで読んでいたという松永は、明らかに暴力が人の精神に与える効果を計算していました。誰にどれだけのことをすれば、どれほど洗脳される・・ということを、松永は交際していた女性や「ワールド」の従業員を使って実験していたのでしょう。

 もとが残酷な性格ではなくても、人が人に酷いことをすることはあります。しかし、たとえば戦時中のナチスドイツが民族浄化で行ったような家畜を処理するようなやり方ではなく、長い時間をかけて人を精神的に追い込んでいく松永のやり方は、動物を甚振ることに快楽を覚える性癖がなければできないことです。

 松永の快楽殺人者としての一面と、金銭的欲求を追求し、冷静に犯罪を行う詐欺師の一面は恐ろしいほどにシナジーを持っていました。松永が趣味で人を甚振れば甚振るほど人は松永に従うようになり、松永に金を運んでくるようになる。

 妻と別れた平成4年に「ワールド」を計画倒産し、詐欺容疑で指名手配されると、松永はいよいよ形振り構わず人を騙し、虐げ、凶悪な道へと突き進んでいくことになります。
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No title

松永は偽葬式をやったり大掛かりなライブをしたり女のためにそこまでやるかということを平然とやってのけますね。
女をものにするための行動力やめげない精神力は相当あったのでしょうね。
松永に魅力を感じてしまう女は一定数いるでしょうね。
心理学の本を読んで人の心の操り方を学んでいたというのは怖いですね。
暴力で支配する夫と服従するしかなくなる妻という夫婦は離れられない関係になってしまうのですね。
松永は快楽殺人者でもあり詐欺師でもあるという犯罪者としては珍しい存在ですね。
悪いことをしているという感覚はなく自分には特別な能力があるくらいに思っていそうですね。

No title

seasky さん

 松永という男はナルシストでプライドが高く、神経質で執念深く、一見ストーカーになる条件も満たしていますが、そうはならずにすぐ次の女に行けるというのは興味深い点ではありますね。他人に対する興味はまったくなかったのかもしれません。

 同じように快楽殺人者の性質を持ち、それを金銭を獲得するための組織づくりに効果的に利用していた人物としては関東連合の元リーダー見立真一が挙げられるかもしれません。また記事の中で紹介していきます。

No title

松永のエピソードはどれも常人とはかけ離れたものばかりですね
出生や生い立ちが異常でもないのに数々の逸脱行為に走ってしまうのは宅間や酒鬼薔薇と同じく天性の犯罪者としての才覚を感じてしまいます
人間は十人十色なので現代社会に馴染めない人が多少いるのはしょうがないですね

No title

松永や宅間は奇行も目立ちますが行動力はあり、少なくとも女方面に限ってはそれなりだった時期もありました。
やはり他人の痛みがわからないというところでしょうね
よくサイコパス=猟奇殺人者と勘違いしている人がいますが人の痛みがわからない人間が結果的に犯罪者になりやすいというのが実際のところです。

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