第一章 美都のアソコはえっちなかおり    彼に女神と呼ばれて嬉しくて




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 二十八歳の川原美都が肩まで伸ばした髪をかき上げると、シャンプーの馥郁とした香りが、美都がリーダーを務める電子基板製造ラインの中に、ふわっと漂った。

「川原。この間の打ち合わせで決まった件だが・・・」

「おう川原、調子どうだ?」

「川原、この前お前が作った資料、お客さんからの評判が良かったよ。また頼むな」

 ドライバーを片手に、ラインの機械の改善作業に勤しむ美都を、彼女を気にかける上司たちが、様々な用件で呼び止める。

 中高一貫の女子高を卒業後、会社のソフトボール部に入り、二十三歳で引退して社業に専念してから五年。先輩社員たちからも一人前と見做され、徐々に、責任のある仕事を任されるようになってきた。

 ソフト部では、外野の要であるセンターを務めていた美都が、軽やかなステップワークでフロアを駆け巡れば、当時、スイングの際に邪魔になるのではないかと囁かれていた九十センチ超のバストが、上に下へと揺れる。

 野球やソフトボール経験者特有の大きなヒップは、しゃがむとプリッと張って布地にラインが食い込み、新鮮で取れたてのニンニクのような形を作る。

 類まれな美貌とボディを併せ持つ美都の働く姿は、その一つ一つが、いちいち絵になると評判だった。

「ごめん、あのね、川原さん。あの、あの」

 ラインを見渡せる位置にあるリーダー机でデスクワークをしていると、美都のラインで作業をしている三十一歳の派遣社員、間島慎吾が、製造中の基板を両手に持って、おずおずと歩み出てきた。

「ん?どうしたの、間島さん」

「あの、僕ね、これ、落っことしちゃって」

「そう、ぼく落っことしちゃったの。じゃ、この基板は廃棄にしておくね」

「う、うん。ごめん」

 美都が、遠慮がちに自分のミスを報告する慎吾に、子供扱いするような口調で応対すると、慎吾は頬をポッと赤らめ、瞬きを多くした。

「あ、あの、ところでさ」

「なあに?」

「川原さんが今日してる髪飾り、とっても可愛いと思うよ」

「そう?ありがと。間島さんがそう言ってくれるなら、明日からもしてこようかな」

 美都への誉め言葉がキマったと思った慎吾が、はにかみながら踵を返した。

「あっ、間島さぁん、待ってぇ」

 今度は甘えるような口調で言いながら、美都はラインに戻りかけた慎吾の制服の裾を掴んだ。

「な、なに?」

「あのね。今朝、機械のトラブルがあったでしょ?それで、生産数が目標に届きそうにないの・・。間島さんだけでも残業していってもらえると助かるんだけど、お願いできる?」

 美都が息の吹きかかる距離から上目遣いで言えば、よほどの無理難題でない限り、慎吾は美都の頼みを聞いてくれる。

 三歳下の正社員である美都への好意を隠そうともしない慎吾は、裏表のない、素直な性格だが、美都の知る限り、作業者の中で多数を占める派遣社員の中では、これは珍しいタイプである。

 誤解を恐れずに言うと、派遣社員という人たちには、真面目は真面目でも、変なところで真面目な人が多い。劣悪な条件で働かされたり、あちこちの工場を右へ左へたらい回しにされたりしているので仕方ない面もあるが、妙に疑り深く、被害妄想が激しいのも特徴である。

 美都も言葉足らずや、余計な一言には気を付けているつもりなのだが、どうしても、ちょっとした言葉のあやを大げさに捉えられ、あらぬ誤解を生んで、トラブルに繋がってしまうということがある。こちらが好かれようとしてやったことが、嫌われる原因になってしまうこともある。

 だから美都は、特に年上の派遣社員に対しては、できるだけ事務的な、堅い口調で接するよう心がけているのだが、美都が好きで、美都のことを知りたがり、美都に対して、自ら積極的にコミュニケーションを取ろうとする間島慎吾――筋肉質の身体と、よく日焼けした肌が特徴の男性作業者にだけは、飾らない自分で接することができた。

「う、うん。わかったよ。あーでもそれって、もちろん、川原さんも一緒だよね?」

「そうよ。嬉しい?」

 美都が微笑みかけながら言うと、慎吾の頬も緩くなる。三歳年上の男だが、慎吾といると、まるで幼稚園児を相手にしているような錯覚に襲われる。

「うん・・嬉しいよ。それなら僕、頑張るよ」

 美都と話せた慎吾が胸を弾ませながら持ち場に戻っていくと、ラインの中から、後輩の正社員、児玉愛がやってきて、「彼氏、楽しそうですね」など、冷やかしを入れてくる。

 余程鈍感な者でない限り、慎吾が美都に恋愛感情を抱いているのは丸わかりだが、派遣社員である慎吾にはどこかで諦めがあるのか、美都に連絡先を聞いてきたり、美都を二人きりで食事に誘ってきたりなど、美都との関係を、より親密なものに踏み込もうとしてくることはなかった。

 二十八歳。若い世代の感覚では、まだ、それほど結婚を焦る年齢ではないが、親世代はそうは行かず、田舎のことで、見合い話を持ち掛けてくる親戚縁者は後を絶たない。

 友人から合コンに誘われたり、そこそこ条件のいいフリーの男を紹介されることもあったが、美都は周囲のお節介を、すべて体よく断っていた。

 このまま、甘い思い出の一つもなく二十代を終わるのかと思うと、一抹の寂しさを感じないではない。しかし、過去に男性との関係でトラウマを抱える美都は、別に自分はこのまま一人でも、一向に構わないと思っている。


 美都の初めては二十三歳、ちょうど、ソフトボール部を引退し、社業に専念し始めた頃のこと。友人の紹介で知り合った、慎吾と同じ三歳年上の男性に見初められて交際をスタートし、二回目のデートで、言葉巧みにホテルに連れ込まれた。

 交際期間からすると、まだ、ちょっと早いのではないかという気はしたが、初めて付き合った男性に求められているのが嬉しかった美都は、流れに身を任せた。

 それが、後悔の始まりだった。 

 部屋に入った途端、初任給で買ったお気に入りの服を乱暴に脱がされて、恥ずかしがる間もなく、下着も強引に剝ぎ取られた。

 五分もない前戯が終わって、初めて男性のものを受け入れたとき、激痛に呻き声を漏らす美都を見て、彼は眉を潜めた。
 
――君・・・。もしかして、これが初めて?

 歯を食いしばって頷く美都に、あからさまに面倒そうな顔を見せた彼は、しょうがねぇな、と呟くと、破瓜の鮮血がこびりついたペニスを美都の口に押し込み、髪の毛を掴まれて強引なイラマチオをやらされ、最後は美都の口の中に、熱くてねばねばしたものを放ってきた。

 行為を終えた後、彼は気だるげにタバコを吸いながら、枕に突っ伏したままの美都を、何度もため息をつきながら眺めていた。

 やがて彼は、一人でシャワーを浴び、服を着て、自分のホテル代をテーブルに投げると、涙が止まらない美都を置いて、一人で部屋を出て行ってしまった。

 シャワーを浴びて男の付けた汗を流し、何度もうがいをして口を濯いだ。

 虚ろな顔でホテルから出た後、彼から届いたメールの内容が、今でも脳裏から離れない。
  
――あのさぁ。言っちゃ悪いかもしれないけど、君、アソコが凄いにおうんだよ。一度、病院で診てもらった方がいいんじゃないかな。


 好きだった彼の一言が、美都の心をズタズタに引き裂いた。

 自覚がまったくなかったわけではない。しかし、他人と比べられるものでもないから、自分のそれが、明らかに異常なものだとまでは思っていなかった。好きだった男性から――自分の体をおもちゃにした男から指摘されて、初めてそれを知った。

 不快な思いをさせてしまったのは悪いと思う。

 だけど、そんな言い方ってないと思う。

 自分の体質への嫌悪と、男性への不信感と、何もかもが一辺に襲ってきたショックに耐えきれず、美都はその晩、可愛い顔を泣きはらした。

 美都は、それからは脇目も振らずに仕事に打ち込み、プライベートでは、同性の友人、信頼できる仕事の仲間との関係を大事にすることだけに努めてきた。

 六年間、チャンスは何度もあったし、言い寄ってくる男性もいた。しかし、美都は一歩を踏み出すことができなかった。

 好きになった男性から乱暴に扱われ、美都の唯一にして最大のコンプレックスである、デリケートゾーンの臭いを指摘される。

 もう一度、あんな思いをしたら、正気を保っていられるかわからない。せっかく仕事で順調にいって毎日を、壊してはいけない。

 寂しくもないし、相手を気遣うのは面倒でしかない。また、心を引き裂かれるくらいなら 、このまま一人でいい。男性を嫌な気持ちにさせる体質に生まれてしまったのだから、一人でいるのは仕方がないと、美都は自分に言い聞かせていた。

 美都は、ウキウキした手つき足取りで作業をする慎吾の背中から、微かな憂いに揺れる視線を剥がし、沈着冷静なラインリーダーの顔に戻って、デスクワークを再開した。
 
                      
 大好きなラインリーダー、川原美都と話した直後の間島慎吾の心臓は、バクバクと唸っていた。

「おい。お前、ミスしたくせに、なにヘラヘラしてんだよ。ちょっとリーダーと仲良くしてるからって、調子に乗ってんじゃねえぞ」

 ライン作業で、慎吾の隣の工程を担当する同僚の派遣社員、高野が、舌打ちを連発しながら苦言を呈すのに取り合わず、慎吾は鼻歌混じりに作業に取り組んだ。

 川原美都。

 美都、美都、美都・・・。

 半年前、地方の電子基板製造工場に派遣され、三歳下のラインリーダーの元で働くようになってから、慎吾にとって、これまでずっと、ただつまらないだけだった仕事の時間が、この上もなく刺激的な時間に変わっていた。

 川原美都。カッコよくて可愛い、理想の女性。慎吾の女神。 

 美都と接したとき、慎吾の心拍を上昇させるのは、美女を前にしたときの雄の本能と、それに、人としての劣等感。 


 慎吾も、ソフトボール選手だった美都と同様、野球の経験者だったが、高校での挫折組だった。

 リトルリーグの神童が、中学ではベンチを温め、高校ではとうとう、スタンド応援団の一員となる。珍しいことではない。ただ、自分が野球の神様に選ばれなかったのだと知ったとき、慎吾はうまく気持ちの切り替えができなかった。

 高校二年の三学期で野球部を中途退部してからというもの、慎吾は何をするのもバカらしくなり、学校が終わると、家でゲーム三昧の日々を送るようになった。次第に、授業にも集中できなくなり、時間は有り余っていたにも関わらず、成績はむしろ下降していった。

 高校を卒業して入った植木屋の仕事は半年余りで辞め、数年間、フリーターともニートともつかぬ生活を送った後、専門学校に入り直し、今度はIT系の会社に職を得たが、そこも一年ほどで退社してしまった。

 仕事が長く続かないことに、人が聞いて同情するような理由があるわけではない。どこに行っても、何をやっても、いつも慎吾は、些細なことでマイナスの思い込みに囚われ、どうにもならないほど落ち込んで、途中で挫折してしまうのである。

 二十代の半ばで社会のレールから完全に外れ、そしてどうやら、再びそこに戻るのは至極困難であるとわかったとき、自分はこれからどう生きるべきなのか、初めて真剣に考えた。

 どうも、人と同じようにやっても、さっぱり幸せになる気がしない。

 欠点が多すぎる自分の場合、このまま人と同じようにやっていては、人生のレースの、スタートラインに立つことに努力を費やすだけで、一生が終わってしまう。

 歪を修正して平坦にならそうとするばかりではなく、もっと、自分の個性を活かすような生き方ができないかと思って二十六歳のとき始めたのが、小説の執筆だった。

 小説は本音を吐き出す作業である。日常生活の中で、人が抑制し、場合によっては完全に切り捨てている感情に真正面から向き合い、深く研究している者ほど、いい文章が書ける。 

 喜びや感動といったポジティブな感情も人一倍だが、嫉妬、あるいは憎悪といった負の感情にも付け込まれやすい。良くも悪くも、感情の振れ幅が極端すぎる自分には、うってつけの仕事ではなかろうか。

 動機は間違っていなかったと思うのだが、結果は中々ついてこなかった。

 三十一歳になるまでの五年間で十本あまり、四百字詰め原稿用紙に換算すれば、総計五千枚にはなる作品群を書き上げてきたが、一度だけ三次選考まで進んだのが最高で、ほとんどは箸にも棒にもかからなかった。

 小説は誰にも読まれなければ、紙クズと一緒である。店頭で平積みにならなくても、せめて誰かの目に触れ、世の中に評価されるキッカケになればと思って、過去に落選した作品はすべてネットのホームページ上にUPしていたが、そちらの閲覧数もまばらだった。

 五年間。すぐに投げ出しがちな慎吾にしては長続きした方だが、報われない日々は、もともと弱い慎吾の心を、確実にすり減らしていった。

 自分のやっていることは、まったくの時間の無駄、すべて徒労である。

 世の中に評価されるどころか、僕のことを見てくれる人も、誰もいない。

 原稿用紙に向かう時間は、年々減っていった。酒とギャンブル、そして風俗に溺れるようになり、気づけば、サラ金からの借金が百万円を超えていた。

 まるきりデタラメな人生を送ってきた慎吾にとって、ソフトボールで社会人まで進み、引退後も、自分の道を真っ直ぐ歩んでいる川原美都は、真夏のグラウンドに照り付ける太陽よりも眩しい存在だった。

 どれほど焦がれていても、川原美都は高嶺の花。彼女を幸せにするだけの力がない自分は、彼女のプライベートにまで食い込むことは許されない。

 ただ、仕事場で流れるような美都の動きに見惚れ、時折、甘やかな声で自分の名を呼ばれるだけで満足しなければいけないのだと、慎吾は自分に言い聞かせていた。


「・・・?なに、間島さん」

 作業中、改善でラインに入ってきた美都が、慎吾の様子が妙なのに気づいて、小首をかしげてみせた。

「えっ。いや、何でもないよ」

 慌てて誤魔化したが、美都が近くにいるとき、慎吾がいつも鼻を膨らませて、美都のニオイをスンスンと嗅いでいることは、きっともうバレている。

 朝礼のときの美都は、いつもシャンプーと、肌着の柔軟剤の、爽やかな香りをさせている。 午後になると、それに仕事でかいた汗の甘い匂いがブレンドされ、得も言われぬ芳香となる。

 しかし、慎吾が本当に嗅ぎたいのは、美都の人間の女性らしい、馥郁とした香りではない。

 匂いよりも臭い。慎吾が毎夜の如く、それを思い描きながら自分を慰めているのは、美都の衣服の下で蒸れた部分が漂わせる、雑食の牝の臭いの方だった。

 一般に、男女ともに適度な体臭はフェロモンとなり、情欲を掻き立てられる素になるというが、慎吾のように、女性の放つ生々しい淫臭に強く惹かれる臭いフェチは、女性の蒸れた部分が、ノーマルの男が顔をしかめるほどの悪臭を放っていないと、物足りなさを覚えてしまう。

 官能小説などにおいて、女性のデリケートゾーンのニオイを表現する場合には、よく「牝の香り」「微かな磯の香り」などといった表現を用い、できるだけオブラートに包もうとするのが定番であるが、臭いフェチの場合は、クサいものはクサいのだと認めた上で、それを全面的に肯定しようとする。

 おまんこ、アヌス、腋、足の裏、へその穴――女性の身体の「スイートスポット」は、臭ければ臭いほどいい。美人がクサイのはご褒美であると考える臭いフェチは、一般の官能小説に多く用いられるような、生易しい表現では満足できないのである。

「はぁ・・・今日も働いたなぁ」

 美都に頼まれ、二時間の残業を終えた慎吾は、工場の廊下を、棒のようになった足を引きずって歩いた。

 身体はぐったりしているが、普段よりも長く美都を眺めていたせいか、トランクスの中のものは妙に活き活きとしている。

 いつになくムラムラした状態で、無人の玄関を通ったとき、ふと魔が差した。

 気付いたときには、憧れの川原美都の靴箱から、美都が仕事でかいた足汗がたっぷりと沁み込んで黒ずんだ、スニーカータイプの静電靴を取り出していた。

 臭いフェチの慎吾が一番好きなのは、女性の陰部が漂わせる、肉蒸れの悩ましいニオイだが、同じく汗腺が多くて蒸れやすい、腋や足のニオイにも、並々ならぬ関心がある。

 通常、女性のクサイ部分に直接触れる「お宝」を入手するためには、女の花園にまで侵入しなければならないが、唯一の例外が存在する。

 靴――。女のおみ足を包むものだけは、男子禁制の場にまで足を踏み入れなくとも、容易に手中に収めることができる。

 もちろんそれとて、リスクはまったくないわけではない。然るべき立場にある人間に現場を目撃されれば、まず一発でクビになるだろう。

(だけど・・・)

 構わなかった。どうでもよかった。

 慎吾の立場は、安価で、いくらでもすげ替えの利く、非正規の派遣労働者。自分を本当に必要としている人は、この工場には誰もいないし、いなくなって悲しむ人もいない。

 一瞬と引き換えにできる一生が、自分にはない。

 同じ職場で働いていても、美都のような正社員と、派遣である慎吾は、けして交わることのない平行線なのだ。

  三歳下のラインリーダーへの恋心を隠そうともせず、作業場ではよく笑顔を見せる慎吾を、将来の心配もしないお気楽者と思っている者もいるかもしれないが、内心は違う。

 会社では、人というより、機械の一つのように扱われ、自分が本当にやりたい小説の道では努力がまったく報われず、寄り添ってくれる人もいない慎吾の心の中にはいつも、夜の砂漠のような寒風が吹きすさんでいる。

(僕がどれだけ美都ちゃんを好きでも、あの子は僕を何とも思ってない。あの子と僕は違う・・・)

 つい数分前まで美都の足を包んでいた静電靴の熱気を掌に感じながら、慎吾は、彼にもある派遣社員特有の猜疑心と被害妄想を、際限なく膨らませていた。

 好きな美都が、実は自分を見下しているのではないか――ゴミとまではいかなくとも、あの、いつも自分がラインの中で右から左に流している部品と同程度、もしくはそれ以下に思われているのではないか――。

(仮にそうだとして、こちらが文句を言える筋合いは何もないわけだけど、でも・・・)

 正社員である美都と、派遣社員である慎吾の、会社、いや世の中における存在価値の差を意識するほどに、美都のクサイ臭いを嗅ぎたい気持ちが強くなる。

 美都だって、自分と同じ人間なんだ、大事なところを放っておけば、自分と同じようにクサくなってしまう人間なんだ、ということを、自分の鼻で確認したくなる。

 美都の蒸れた足汗で、しっぽりと黒ずんだ靴の中に鼻を突っ込み、ニオイを心行くまで味わった後、ベロベロに舐め回してやりたい衝動が強くなる。

(僕がこんな変態なことをするのはしょうがない。君が可愛すぎるのがいけないんだ)

 自己弁護が済むと、慎吾は再度、周囲に誰も人がいないのを確認したうえで、美都の黒ずみ静電靴の中に、そっと鼻先を近づけた。

 ウワンムゥ――。

 熟成された汗の、埃っぽくズシリと重みのあるニオイと、酢飯のような酸っぱいニオイと、よくかき混ぜた納豆の臭いとが混じり合った複雑怪奇なニオイが、鼻孔になだれ込んでくる。

 慎吾のピンク色の脳漿が、たまらぬ至福で満たされる。頬は蕩け、男のものは浅ましく膨れ上がっていた。

「美都・・美都ちゃぁん・・・」

 知らなかった。美都の足が、こんなにえっちなニオイだったなんて。

 興奮した慎吾は、股間に張ったテントをスウェット越しにまさぐりつつ、靴の中敷きに染み着いた美都足の臭いを、スゥッ、スゥッ、と、犬のように鼻を鳴らして夢中で吸い込んだ。 

「美都・・・美都美都美都水戸納豆」

 くだらぬことを呟きつつ、慎吾は、たっぷりと嗅いだ美都の靴の中敷きに、舌先をチロッと這わせた。

 舐めとった美都の成分を唾液に溶かし、口の中を転がして、舌の味蕾に触れさせれば、慎吾の口の中いっぱいに、汗のうまみと、働く女の苦味が広がっていく。 

「美味しい・・美都ちゃん、あぁ美味しいよ」 

 慎吾が、美都の汚れをペロペロしながらポケットから取り出したスマホのデータフォルダには、ネットで検索して見つけた、美都のソフトボール選手時代の画像が多数保存されている。

 大人の色香を漂わせる二十八歳の美都もいいが、筋肉がついている分、今よりも太めで、表情にはまだ少女のあどけなさも残す二十歳前後の美都も、思わず画面に吸いついてしまうほど魅力的である。

 慎吾は秘蔵の写真の中から、最もお気に入りである、美都がバッターボックスに入って、ヘルメットのつばに日差しを反射させているときの雄姿をチョイスして、スマホの画面に大写しで開いた。

 当時、左打席でバットを構える美都の凛々しい姿に、民衆を導く自由の女神の如き気高さを感じた男も、数多くいたことだろう。

 しかし、その泥のこびりついたストッキングから、便所の床に落とした納豆巻きのような、すっぱい、くーっさいニオイが漂っていることを知る者は、自分一人しかいない。

 カワイイ美都を知っている男は何人もいても、クサイ美都を知っているのは、この世でただ一人、自分だけだという優越感が心地よかった。

「美都・・・美都美都美都美都水戸納豆」 

 再びくだらぬことを呟きつつ、慎吾は夢中で、美都の靴をクンニし続けた。


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 駐車場まで出たところで、うっかり、タイムカードを押し忘れていたことに気づき、会社の玄関へと戻ってきた美都が目の当たりにしたのは、想像を絶する光景だった。

 持ち前のフットワークで、フロア内をアクティブに動き回る美都の、スニーカータイプの静電靴の中敷きは、汗をしっぽりと吸い込んで黒ずんでいる。

 使い込まれた消しゴム、あるいは、丸まらないダンゴムシ、もしくは、昔懐かしのブラウン管テレビの砂嵐にも似た、グレーとブラックの中間色。

 およそ官能美とは程遠いはずの、あの薄黒いものの臭いを嗅いで、なぜか、恍惚の笑みを浮かべている男がいる。靴の中の布地に染み着いて、何か月も熟成された女の足汗をジュージュー吸って、美味しそうに目を細めている男がいる。

 あまりの衝撃に、美都は声を上げることもできず、戻ってきた目的も忘れ、一目散に逃げ帰ってしまった。

 家に帰って、食事を取っている間も、ラベンダーの入浴剤を溶かしたバスタブに浸かっている間も、美都の脳内では、美都の黒ずんだ静電靴に、鼻と口を突っ込んでうっとりしている慎吾の姿が再生されていた。

 あんな光景、忘れたくても忘れられるものではない。

 頭の中から掻き消せないのなら、向き合うしかない。問題の本質を徹底的に解明し、今後の対策を練るしかない。 

 美都は風呂から上がると、インターネットで、ついさっき目撃したことについて、キーワードを絞って検索をかけてみた。

 女 靴のにおい 嗅がれた・・・。

 男 足のにおい 好き・・・。

 部下 変態 対処・・・。

 すると、臭いフェチ――異性の強い体臭に興奮する性癖を持った男について説明をしている記事が、いくつかヒットした。

「嘘でしょ・・・」

 人間の足は、一日のうちにコップ一杯分もの汗を掻く。それが密閉された靴の中、皮膚常在菌によって分解されることで、悪臭を放つ原因となる。

 その悪臭を嗅いで、悦んでしまう人種が、世の中には存在するのだという。

 官能小説でよく用いられる「牝の香り」「微かな磯の香り」などといった、オブラートに包んだ表現では満足できず、クサいものはクサいのだと認めた上で、なおかつそれを全面的に肯定することで情欲を掻き立てようとする。

 女の蒸れる部分、すなわち、陰部、肛門、腋、足、へその穴のニオイに性的興奮を催し、汚れたその部分を、平気で舐めてしまう。

 女である自分にとっては、クサいとしか感じないはずの恥ずかしいニオイを犬のように嗅ぎまわり、可愛い子ならむしろご褒美、と感じてしまう。

 検索してわかった、臭いフェチなる人種の生態は、美都には宇宙人よりも理解に苦しむものだった。

 美都の唯一にして最大のコンプレックス――美都の心が、二度と修復不可能なほどザックリと切り裂かれる原因となったデリケートゾーンの強い臭いで、あろうことか喜んでしまう男がいるなど、俄かには信じられるものではなかった。

(なんなの・・。意味が分からない。なんで私が、こんな目に遭わなきゃならないの)

 翌朝の寝覚めは悪く、会社に向かう足取りは重かった。

「あ。川原さん・・・。メガネも、可愛いね」

 朝礼の前、昨晩遅くまでネットで調べものをし、睡眠不足になっているために目が乾くのでコンタクトが付けられず、メガネをかけてきた美都に、慎吾がいつものように褒め言葉をかけてきた。

「・・・・・」

 いったい、誰のせいで、メガネで出勤しなければならなかったと思っているのか?

 容姿を褒められるのは、もちろん悪い気はしないが、この日ばかりは、彼の期待する笑顔を返してやる気にはなれなかった。

「なんなの、アイツ・・・」

 あんな変態行為を働いて、少しは後ろめたい気持ちになっているかと思いきや、ライン作業をしている慎吾は、いたって普段通りの様子である。

 慎吾が普段通りでいるのも許せないが、それと同じかそれ以上に、ほかならぬ自分自身が普段通りにリーダーとしての業務をしているのが、美都には許せなかった。

 昨晩、美都が目撃した慎吾の行為は、犯罪になるかどうかまではわからないが、少なくとも彼のやったことが、問題であり変態な行為であるのは間違いない。

 それなのに、自分はなぜ、昨晩のことを、然るべきところに訴えられないでいるのだろう。

 慎吾が散々嗅ぎまわし、舐めまわした静電靴を、自分はなぜ、平然と履いているのだろう。

 それは、美都が慎吾の唾液よりも、自分の掻いた足の汗の方を、汚いものだと認識しているからではないか。

 クサい美都の足を、慎吾が舌でお掃除してくれたような気がするからではないか。

 慎吾に何らかのペナルティを受けさせるよりも、慎吾の行為を公にすることで、自分の靴が、女にはけして許されない、とんでもなく恥ずかしいニオイをさせている事実が明らかにされてしまうことの方が、もっとずっと、恐ろしいからではないか。

(わたしは悪いことなんて、何もしていない。こんなことになったのは、すべて間島さんのせいなのに・・・)

 オカシイことを、オカシイと言えない。

 事件から日が経つに連れ、美都の中で、自分を混乱の極致に追い込んだ三歳年上のライン作業者、間島慎吾に対する怒りは募っていった。

「間島さん、休憩に行くのが一分早い!ちゃんと時間守って!」

「ごめん、次からはちゃんとします・・・」

 堪えなきゃ、と思っていても、どうしても慎吾に対し、当たりが強くなってしまう。

「間島さん何これ!冶具が壊れちゃってるじゃない!」

「ごめん、使い方がよくわからなかったから・・・」

「何でわからないまま、作業を進めるの?わからないことがあったらすぐに聞いてって、いつも言ってるでしょ!何度も同じこと言わせないでよ!」

 美都に怒られた慎吾がしょげた顔をしているのを見て、どこか愉悦を感じ、昂っている。そんな自分を自覚するのも、美都はたまらなく嫌だった。

(こんなクサイわたしの靴のニオイ嗅いで、あんなに悦んで・・・)

 一日の労働を終えて、靴箱に仕舞うときの美都の靴は、どう取り繕ってもクサイものである。しかし、足よりももっとクサイ場所が、美都の身体にはある。

(クサければクサいほどエッチでいいって言うのなら・・足よりももっとクサイここのニオイも、嗅ぎたいのかしら・・・)

 一日の労働を終えた後、トイレで便座に腰掛けたときに立ち昇る臭いは、まともに嗅げば、一発で食欲が失せてしまうほどである。

(こんなニオイを、エッチだなんて思うなんて・・・)

 洗ってないまんこはくさい。でも嗅ぎたい、と思う、アイツが憎い。

 でも知りたい。

 おかしな話だが、あの日のことを思い出し、慎吾に対して怒りの感情が沸々と湧き上がってくるのと同時に、美都がインターネットで、「臭いフェチ」なる、摩訶不思議な生物の習性を調べる機会も増えていた。

「わけわかんない・・・。どういう頭してたら、こんなことになるの・・・」

 キレイなお姉さんは、クサければクサイほどいい。キレイなお姉さんがクサいのはご褒美である。

 キレイなお姉さんに、行為の前シャワーを浴びさせてしまうのは、納豆を食べる前に水洗いして、ニオイもネバネバもすべて落としてしまうに等しい愚行である。

 それが男の性だというのなら、では、八年前、自分が味わった悲痛は、いったい何だったというのか?

 美都の初めてを最悪な思い出にした男は、いま、東京でコンサルタント会社を経営している。
 会社の社長が必ずしも偉いわけではないが、少なくとも、慎吾と彼を、婚約者として実家に連れていったとき、親がどちらを歓迎するかは、比べるまでもない。

 インターネットで、女の未処理のニオイを嫌う彼の名を検索すれば、新進気鋭の青年実業家を賞賛する記事が、何百件とヒットする。

 一方、女の未処理のニオイが大好きだという彼の名は・・・。

 美都は戯れに、キーボードに間島慎吾の名を打ち込み、検索をかけてみた。

 ヒットした記事のほとんどは、彼にはまったく関係のないものだったが、ある一つのホームページに、美都の良く知る顔写真が掲載されていた。

 そこは、どうやら慎吾が創作発表に利用しているホームページのようで、慎吾の書いた小説作品が多数UPされていた。

 本名と顔写真を、自らインターネットで公開するという行為は、非常に大胆であるように思えるが、それは、自分を大切だと思えるだけの財産や社会的地位、あるいは交友関係を持つ者の感想なのだろう。

 大切にしたい自分が、慎吾にはない。

 慎吾の書く小説からは、慎吾の孤独と世の中への呪詛、自分の生に対する絶望が、痛々しいほど滲み出ていた。

 貪るように、慎吾の小説に読みふけった。お腹の鳴る音で気づいたときには、空が白む時間になっていた。

 慎吾が、小説家の道を志していたことは意外だった。

 派遣社員という人たちについて、どこかで、彼らは総じて怠惰であり、将来のことなど何も考えていないというような、見下した印象を持っていたのかもしれない。

 慎吾もそうだと思っていたが、違っていた。

 美都とは歩む道も、歩む速度も違うけど、彼は彼なりの手段で、自分の運命に抗い、人生にケリをつけようとしている。

 まだ、結果は出ていない。これから先、成功できる保証もなく、彼が自分の時間でコツコツ取り組んでいることは、すべて徒労に終わってしまうのかもしれない。

 でも・・・懸命にもがいてる。

 慎吾のことが、なぜか無性にいじらしく、胸がギュッと締め付けられるのを感じた。

 女のニオイが大好きだという彼が、八年前にザックリと開いた美都の傷を、すっかり癒してくれるような気がした。

 証拠はすでに押さえている。確信に近いものはある。でも、もう少し様子を見てみたい。

 慎吾が、美都を本当に幸せにしてくれる運命の男性なのか、もう少し段階を踏んで、見極めていきたい。

 幸いにして、すでに自分にぞっこんらしい彼は、少々のことでは文句を言わないし、自分のやることを何でも受け入れてくれる。仮に当てが外れていたとしても、職場で問題になることはない。

 リスクはないけど、恥ずかしい気持ちはある。でも、ここでやらないと後悔する。

 慎吾が、美都のどんなニオイにも耐えられるかどうか、試してみたい。

 意を決した美都は、二時間ほど仮眠を取ると、昨晩から履きっぱなしの生理用ナプキンを取り換えないまま、マイカーに乗り込んだ。
        

 作業中、ラインで隣の工程を担当している作業者、高野から、西成のドヤ街にいるホームレスのような強いアンモニア臭を嗅ぎつけた慎吾は、露骨に顔をしかめ、こういう時のために常備している、香り付きのマスクを装着した。

 おそらく、二、三日、風呂に入っていないのだろう。派遣社員には、こうした最低限の衛生観念に欠けた人間は、けして珍しくない。

(マジ、ふざけんなよな・・。カワイイ美都ちゃんのおまんこがクサいのは超興奮するけど、高野みたいな汚いオッサンが臭くたって、不快でしかないんだよ・・)

 あんなキレイな人から、こんなエグイ臭いがするなんて――。

 異性の強い体臭に惹かれる臭いフェチのすべての基本は、その「意外性」「ギャップ」にあると言って、間違いはない。

 臭いの強さだけならば、慎吾は以前、同じ工場で働く太ったブラジル女の足から、美都よりもクサい、車にひかれて、路肩に打ち捨てられたたぬきの死骸のような臭いをかぎ取ったことがあるが、そのとき慎吾は官能どころか、猛烈な殺意を感じた。

 汚い男や、見るに堪えない容姿をした女が臭っても、何の不思議もなく、面白みもない。

 美都のような、けして臭ってはいけないはずの美女から、美女ではなく野獣の臭いを嗅ぎ取ったときにこそ、慎吾は官能の極みへと達することができるのだ。

「ねぇ間島くん。今週のことなんだけど、急に用事ができちゃって、やっぱりお断りさせてもらっていいかな・・・」

 休憩の時間、慎吾がサシでの飲みに誘い、一度は同意を得ていた四十代の女性の派遣社員、平林真理恵が、改めて予定の断りを申し出てきた。

「ああ。いいですよ。残念だけど、しょうがないですよね」

「ゴメンね。また、誘ってね」

真理恵は笑顔を浮かべたが、彼女の言う「また」がないことくらい、今年で三十一歳にもなる慎吾は当然わかっている。

 これ以上しつこくすれば、嫌われる。イケると思ったのだが、また、ダメだった。

 大人になるというのは、色々なことを諦めなければならないということだが、派遣社員の慎吾には、諦めなくてはならないことの量が、同世代の正社員よりも、ちょっぴり余計に多い。

 慎吾の美都への思いは真夏の太陽よりも熱いが、川原美都が高嶺の花であり、自分には見向きもしないことくらい、慎吾はわかっている。だから、現実的に、股間の疼きを解消するための相手は別に探していたのだが、そちらの方も、ことごとく空振りに終わっていた。

 こちらとて本命ではないのだから、悔しさはない。

(だけど、寂しい・・・)

 女の蒸れた部分が漂わせるクサイ臭いに有難みを感じ、女性の汚れた「スイートスポット」を犬のように嗅ぎたがる、慎吾の性癖。

 自分のそれが芽生えた理由を、慎吾は、これまで女性方面において、甘い思い出以上に何度も味わってきた、苦い思い出にあると自己分析していた。

 まるで相手にされなかったという程ではない。しかしそれ以上に、フラれた数が多かった。また、フラれ方が酷かった。

 先程のように、丁重に断られるのがほとんどだが、時には、我が耳を疑うような心無い言葉を浴びせかけられたこともあった。

 向こう岸の存在である女性の考えることには、慎吾には及びもつかぬ深謀遠慮があるのかもしれない。しかし、たった一度きりデートに誘っただけで、身の程を知れとばかりにこちらをボロクソに言ってきたり、慎吾がどれだけダメで、慎吾をどれだけボロクソに言っても構わない理由を得意げに語る一方で、イケメンに対してはすべての事柄を自分の都合の良いように捉え、ウリウリと腰を振りながらすり寄っていく女に対し、肯定的な解釈はどうしても浮かんでこず、いつまでも根に持った。
 
 慎吾ばかりが、一方的に痛めつけられたわけではない。フラれた女に妄執し、付きまとってしまったこともあったし、こちらを悪からず思ってくれた相手に、こっ酷く傷つける対応をしてしまったこともある。

 その不細工な恋愛経験の数々が、じわじわと長い年月をかけて、慎吾をミュータントのように突然変異させていった。

 慎吾の想いを平気で踏みにじる女の、恥ずかしい部分のニオイが嗅ぎたい。どれほど気取っていても、お前らだって、一皮むけば自分と同じ人間なのだということを、己の鼻で確かめ、己の言葉で証明してやりたい。

 トラウマを抱え、性格が歪むほど、女で痛い思いをしておきながら――否、だからこそ慎吾は、好きになった女に対して、あたかも女神を信仰するかのように、盲目的に賛美し、過度に理想化してしまう。

 ほかのすべての女がクソでも、彼女だけは違うと信じ込んでしまう。そして裏切られ、ボロボロになることを繰り返してきた。

 好きな思いが強いからこそ、裏切られたときの憎しみも強くなり、再び好きになったときの思いもまた強くなっていく。感情を抑制できない慎吾の女性への思いは、恋を抱き、果敢無く散るごとに、良い方にも悪い方にも、振り子が揺れるように増幅していった。

 愛と憎悪、匂いと臭い。

 女の肉体から、可憐な美女と、獰猛な野獣のニオイをそれぞれ嗅ぎ取ったとき、慎吾の鼻粘膜では、女に対して相反する二つの思いが複雑に混じり合い、生ハムにメロンを挟んで食べたときのような、得も言われぬ官能のケミストリーが発生する。

 女性の嫌な面を知れば知るほど、女性の可愛い面を知れば知るほど、あの茂みの奥の割れた部分の、淫猥にして不浄なニオイへの執着は強くなっていく。

 三十一年間の無様な人生で、誇れることは何一つない。だが、まんこのくささへの思い、くさいまんこへの情熱だけは、胸を張って本物といえた。

 もし、この世に慎吾の女神がいるのだとしたら、それはきっと、おまんこから、納豆とブルーチーズと、イカの干物をボールの中でぐじゃぐじゃに掻きまわしたような、いやらしい、くさぁいニオイをさせている女性に違いないと、慎吾は確信していた。

 納豆とブルーチーズとイカの干物をボールの中でぐじゃぐじゃに掻きまわしたような、いやらしい、くさぁいニオイ。それが、憧れの川原美都のおまんこから漂ってきたらいいなぁ、というのが、慎吾の願望だった。


                        3


「高野さん、この基板、どう見ても不良品ですよね。なんで気付かなかったんですか?」

 一日の作業が終了する間際、ラインから流れてきた完成品の欠陥に、最終チェックの段階で気づいた美都は、この日、目視検査を担当していたライン作業者、高野に注意を与えた。

「チッ・・っぜーな、クソアマが・・」

 美都の言い方が気に食わなかったのか、高野が持ち場に戻る際、何事かを呟きながら、舌打ちをしたのが耳に入った。

 今日、美都は女の子の日である。作業者に注意をするときは、自分の感情を必要以上に表に出してはならないとわかっているつもりだが、この日だけは、どうしてもカリカリして、余計な一言が、つい口をついて出てしまう。 

「間島さんも!他人事だと思って聞いてないで!何かおかしいことに気づいたら、アラーム上げて、すぐにリーダーを呼んで!」

 半ば八つ当たりのように、美都は一緒にリーダー机に呼び出した慎吾にも怒りをぶつけた。

「ご、ごめんよ、川原さん・・・」

 この日ばかりは、慎吾が自分に向ける好意も、鬱陶しく感じてしまう。いくら平静を保とうとしても、メンスの日だけは、男という生き物すべてが、自分を苛立たせる不快な虫のように見えて仕方がないのである。

「あ・・・チャイムだ。それじゃ川原さん、お疲れ様・・・」

「お疲れ様・・。あ、ちょっと待って」

 うっかり、慎吾を呼び出した目的を忘れて、彼を帰してしまいそうになった美都は、一日の最後に好きなリーダーに叱られ、しょんぼりと肩を落としてフロアを出て行こうとする慎吾を慌てて追いかけ、制服の裾を掴んで引き留めた。 

「ねぇ間島さん。ちょっと、聞きたいことがあるんだけど・・」

 美都に上目遣いで見つめられた慎吾が、背筋をピシッと伸ばした。

「え?な、なに、聞きたいことって?」

 緊張の一瞬。周りが誰も二人に注目していないのを確認し、美都は大きく息を吸い込んだ。

「・・・・・間島さん、わたしの靴の臭い好きなの?」

 二十八歳の女の口から飛び出すにはあまりにもショッキングな言葉に、美都と慎吾の間に流れる空気が氷結する。

 しばしの時間をおいて、自分の破廉恥行為がバレていたとわかった慎吾が、目を丸くして驚愕を露にした。

「え!いやあのその、それはその・・・」

「いいから。怒ってるわけじゃなくて、わたし知りたいの。女のクサイところを嗅いで、クサければクサイほど興奮するっていう男の人のことが知りたいの」

 美都が身を乗り出すようにして言うと、慎吾は、今度は目を点にして、ウソダロー、という形に、口を動かした。

「ねぇ教えて。お世辞とかはいいから、本当のことを教えて。間島さん、わたしの靴のニオイ好き?」

 後じさりして、壁に背中を預ける恰好になった慎吾に詰め寄りながら、美都は重ねて問うた。

 一度口に出してしまうと、あとはどこまでも大胆になれた。恥ずかしい気持ちより、知りたい気持ちの方が勝って、自分でも信じられない言葉が、次々と口を突いて出てきた。

「・・・・好き。大好き」

 美都に迫られた慎吾が、とうとう、観念したように言った。

「ほんとに?間島さん、わたしの足が、クサければクサイほど興奮するの?」

「・・・・する。川原さんがクサければクサイほど、いやらしいニオイさせてるほど、僕、興奮する」

「ほんとに?ほんとにほんとに、ほんとなの?」

「ほんと。ほんとにほんとにほんとに、僕、女の子の・・・川原さんのニオイが、とっても大好き」

 開き直って、目をキラキラと、少年のように輝かせながら語る慎吾の言葉に、嘘は感じられなかった。

 やはり慎吾は、女の汚れた部位のニオイに異常な執着をみせる、特殊な性癖の持ち主だった。

 けれどそれだけじゃ、慎吾が美都の、運命の人であるかまではわからない。

 だって、美都のアソコは、とんでもなく臭うから。

 どれほどの辛党でも、暴君ハバネロの十倍辛いといわれる唐辛子、ドラゴンズ・ブレスを生で齧ることはできないように、臭いフェチの慎吾でも、美都のアソコのニオイには耐えられないかもしれない。

 また傷つかないために、もう少し、様子を見てみなくてはならない。慎吾が本当に美都のすべてを受け入れられるか、段階を踏んで、確かめてみなくてはならない。

「わかった。そしたら間島さん、帰るとき、ちょっと靴箱のところで待っててくれる?間島さんに、いいものあげるから」

「・・・・うん、わかった」

 慎吾に言い渡すと、美都は、慎吾のために作ってきた「成果物」を外すため、女子トイレに駆け込んでいった。 


 言われた通り、靴箱の前で美都を待つ慎吾の心臓は、バクバクと唸り続けていた。

 自分のやっていた、卑怯にして下劣な行為は、美都にはとっくにバレていた。

 しかし、そのことで、美都は慎吾を責めるのではなく、むしろ興味津々に、慎吾の浅ましい性癖について尋ねてきた。そして仕事終わりに、美都が来るまで、あの破廉恥行為の現場となった靴箱で待機しているように命じてきた。

 いったい、この後、自分をどんな運命が待ち受けているのか?

 恐ろしいような、楽しみなような、奇妙な期待に、慎吾は胸を躍らせていた。

 人生で一番長い十分間。定時で仕事を終えた連中がみんな帰って静かになった靴箱の前で、身じろぎもせずに待って、ようやく背後に、人の気配を感じた。

「間島さん」

 声のした方を振り返ると、Vネックのシャツとキャミソールを合わせた私服姿の美都が、白いソフトボール大の球を右手に持って立っていた。

 慎吾と目が合うと、美都は持っていたボールを、現役時代、美都が守っていた外野から内野の中継に返球するような、無駄のないキレイなフォームで放ってきた。

「うぉっ・・・と」

 左手で受け取った、ボヨボヨとした触感のボールからは、鼻を突く強烈な鉄の臭気に、昼間に高野から嗅いだようなアンモニア臭が混じったニオイが立ち昇っている。女と同棲した経験のない慎吾にも、自分が受け取ったものが何であるかは、一発でわかった。

「とっ。わっ、ちょっ・・・」

 慎吾は、美都から受け取った布と紙のボール――つい先ほどまで、彼女の股間を覆っていた生理用ナプキンを、両手でお手玉のように弾ませた。

「それ、あげるから。好きに使って。それで明日、感想を教えて」

 筋骨隆々のスラッガーが、金属バットの真芯でボールを捉えたときのような音が、慎吾の頭の中で響き渡っている。

 美都の靴のニオイを嗅いでいるのがバレた時点で、この工場での日々は終わりだと思っていた。
 それがよもや、さらならるお宝を手に入れる幸運に繋がるなど、誰が想像できるだろうか。
 
「ちょ、川原さん待って・・・」

 サラサラのロングヘアをなびかせながら、華麗に立ち去っていく美都の後ろ姿を眺めながら、慎吾は困惑した。こんなときどうすればいいか、教わったこともないし、考えたこともない。

 ひとまず、手の内のものを素早くバッグに隠し、慎吾も玄関を出て、会社から退散した。

 はやく家に帰って、嗅ぎたかった。今日一日、美都の股間にあてがわれて、アソコの蒸れ蒸れ臭をたっぷりと吸い込んだ生理用ナプキンを、クンクン嗅ぎたかった。

 逸る気持ちをぐっと抑え込み、慎吾は、工場からほど近い場所にある派遣社員の独身寮に、全速力で自転車を走らせた。

 部屋に入るやいなや、慎吾はさっそく、テープを剥がして、美都の生理用ナプキンを開放した。

「うわあァ・・・」

 独身寮の六畳間で、ナプキンの中央部に広がった赤黒いシミを目にした慎吾は、感動の声をあげた。 

 ヌウゥッ、と立ち昇るニオイは、鉄クサいのと、強いアンモニアのニオイとで、激しく目に染みる。脱ぎたてだったのだろう、慎吾の手に触れるナプキンの裏からは、美都の蒸れた部分の温もりがたっぷりと感じられ、布地には赤黒い血液とともに、レバーのような子宮内膜のかけらも付着していた。

 誇り高き大和民族の血がそうさせるのか、慎吾は無意識のうちに起立して、美都ナプキンを抱きかかえながら、胸に手を当てていた。

 約一分ほど、目を閉じて、愛する美都のことを思ってから、慎吾はいよいよ美都の愛しい部分を包み込んでいたナプキンに唇をつけて、チューッと吸った。

 ザラついた金属の味が、口の中にズシンと突き刺さる。ツーンとした臭いで目にいっぱい涙があふれるのも構わず、慎吾は夢中で、経血のシミに舌を這わせた。

「はぶっ・・・ベロッ・・・ムブッ・・。おいしい。おいしいよ美都ォ・・」

 意外に清潔な尿と違い、血液は様々な病原菌を含んだ危険なものである。

 しかし、構わなかった。こんな命など、一つも惜しくない。愛しい美都の血液で、何かの病気になって死ねるのなら、それは慎吾にとって本望だった。

「美都っ。あァ、美都・・・」

 愛しい人が、苦しみに耐えた証のものを嗅ぎ、舐めて、三十一歳の男根が、ぐぐっと持ち上がっていった。

 廊下から万年床に場所を移し、ティッシュを用意した。美都のプレゼントを鼻に押し付けながら、トランクスを下ろして、ガチガチに勃起したものを扱いた。

「美都、美都っ、美都ッ、美都美都美都美都美都ミート」

 口に入れた子宮内膜の欠片が、柔らかいビーフのように蕩けていく。美都の肉の苦みと臭みを味わいながら、慎吾は愛しい美都の肉体を、己の身体の一部とできる喜びに咽せかえった。

(ああ・・・なんで君は、こんなに可愛いんだろう。美都ッ、美都ッ、僕の女神・・)

 美都臭に浸されているとき、慎吾は獰猛な男の欲求よりも、甘く切なく、瑞々しいピュアな気持ちで満たされていく。

 こんなに血を出しながら、頑張って仕事して、自分なんかの面倒も見てくれて。

 ツンとくるニオイが愛おしくて――吸っても吸っても、後から後から染み出してくる鉄の苦みと、女の子の酸味が美味しくて、慎吾はいつの間にか、涙を流していた。

「美都、美都ッ、美都ォ」

 最後に、己の顔面にナプキンを押し付け、顔中に美都の経血を塗ったくった後、慎吾は己の愚息を美都のナプキンで包み、激しく手淫した。

「クッ、ハアッ・・・」

 甘美な電気が下腹部に流れ、美都に埋め尽くされた脳がスパークする――。

 慎吾は愛する人の血の海に、一日の労働でたっぷり溜め込んだ落とし子を、ドビュルルッと勢いよく解き放った。

「はァはァ・・・。おいおいマジかよ・・。川原さんのナプキンに出しちゃったよ・・・」

 溜まったものを吐き出してスッキリすると、自分の身に起こったことが、改めてとんでもないことのように思えてくる。

 もちろん、好きな女の子の靴をこっそり拝借して、中敷きのニオイを嗅いでしまう自分が人のことは言えないのだが、女の靴を嗅いで喜ぶ変態に、お返しとばかりに、経血のたっぷりしみ込んだ使用済みナプキンを与えてしまう美都の方も、大概ズレている。

 もちろんそれは慎吾にとってイヤなことではなく、むしろ大歓迎である。

 何よりも、こんなものをくれるというのは、美都の方も、慎吾のことを悪からず思っている証拠であろう。

「嘘だろ・・・川原さんが・・・美都ちゃんが、僕なんかに」

 これから何が起こるんだろう。僕どうなっちゃうんだろう。

 少年のようにジューシーで、甘酸っぱい期待に、慎吾は胸を膨らませていた。

 こんな気持ちになったときは、いつだってロクなことがない。でも、こんな気持ちになってしまったのだから仕方ない。せめて今だけは、大事にしていたい。

 慎吾の立場は、安価でいつでも首のすげ替えが利く、非正規の派遣労働者。仕事は誰でもできる面白みのない単純作業で、長く勤めても給料は上がらず、スキルも身につかない。工場で慎吾に期待している人間は誰もいないし、本気で心配してくれる人もいない。明日いなくなっても、すぐに誰かがやってきて代わりを務める。

 だけど、好きなあの子がいるから、会社に行こうと思う。

 明日、仕事に出るのが、慎吾は楽しみで仕方なかった。


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 わたしのアソコのニオイが染み込んだアレの感想を聞くために、会社に行こうと思う。

「ねぇ間島さん。昨日のアレ、気に入ってくれた?」

 慎吾に、美都の使用済み生理用ナプキンを渡した翌日、美都はさっそく、十時の休憩に行こうとする慎吾を捕まえて、「プレゼント」の感想を求めた。

「うん。も、もちろん。気に入った。気に入らないはずがない」

 頬を赤らめ、瞳をパチクリさせて答える慎吾の言葉に、嘘や冗談は感じられない。

「気に入って、どうしたの?」

「ど、どうしたって?」

「アレを使って、なにをやったか、言ってみて」

「そ、それはその・・・。ニオイを嗅いだり、舐めたりしながら、手で自分のものを扱いて・・最後は、アレでものを包みこんで、アレの中に出して・・・あぁ、何言ってんだろ僕。ごめん、ごめんね、川原さんの大事なもの、変なことに使っちゃって・・・」

 慎吾が、自分の汚物のニオイを嗅ぎ、舐めながら、男性のものを扱いていた・・・。

 情景を想像して、美都は生唾を飲み込んだ。

「ううん。楽しんでもらえたのならよかった。他に欲しいモノって、何かある?」 

 美都が、ライン作業者に改善の案を求めるように尋ねると、慎吾は目を泳がせて動揺を露にした。
「いや・・そりゃ、何だって欲しいけど・・でも・・・」

「いいよ。遠慮せずに言ってみて。わたし、間島さんの欲しいもの、なんだってあげるから」

「ほんと?じゃあ・・・。やっぱり・・・・かな」

「え?なに?もっと大きな声で言ってくれないと聞こえない」

 美都が言うと、慎吾は困ったように頬を掻いて、持っていたメモ帳の一枚に、リクエストの品を書き連ねていった。

「・・わかった。来週までに用意するから、ちょっと待ってて。あと、今度はね、間島さんがこれを使ってるとこ、実際に見せてみて」

「えっ。それって、どこで」

「パソコン、持ってるでしょ。スカイプのアカウント、教えるから。私が見たいって言ったら、間島さんは私があげたものを使っているところを、私に見せるの。いい?」

「うん・・・わかったよ」

 戸惑いを隠せないでいる慎吾に言い渡し、美都は二日後、生理が終わったその日から、慎吾へのギフトを「熟成」させ始めた。

 三日以上履きっぱなしにした、パンティと靴下。それが、慎吾から渡されたメモ用紙に書かれていた、慎吾のリクエストの内容だった。

 さすがに遠慮したのか、書いた後に二重線が引かれているが、「シャワーを浴びるときには、おむつを履いたり、ビニール袋で足を覆ったりして、股間と足がキレイにならないようにしてくれると尚良し」との記述もある。

(いつも、こんなことばっかり考えてるなんて・・・バカなんじゃないの)

 慎吾の、女の身体の、くさいニオイへのこだわり。それは、美都がラインの設備の改善に励むのと、まったく変わらない情熱だった。

(でも・・これじゃ改善どころか、改悪じゃない)

 一日の労働でしっぽりとかいた足汗が染み込んだ靴下と、排泄物と膣分泌液のシミが浮かんだパンティは、自分でも顔をしかめたくなるほど、雑食性の獣特有の据えた臭いを漂わせている。これを、あと二日もの間履き続けなければならないなんてとんでもない話だし、こんな汚いものを嗅いで喜ぶ男がいるなんて信じられない。

 一週間前、美都は慎吾に送る最初のギフトに、パンティではなく、経血に塗れた、生理用ナプキンを選んだ。 

 普通の感覚からいえば、男がもらってビックリするのはパンティよりもナプキンの方であり、女が嗅がれて恥ずかしいのも、パンティよりもナプキンの方だと思う。

 だが、美都が傷ついたのは、経血のニオイを嗅がれたときではなく、生理が来ていないときの、肉蒸れのニオイを嗅がれたときだった。美都にとっては、経血で汚れたナプキンよりも、誤魔化しの効かない、普段の美都のニオイが染み込んだパンティを嗅がれた方が、ずっと嫌だった。

 もし本当に、美都のアソコの、くさぁいニオイを嗅いで悦ぶ男がいるのだとしたら、是非ともこの目で見てみたい。

 パソコンの画面の中で、慎吾が美都のパンティを嗅ぎながら、恍惚の笑みを浮かべているところをみてみたい。

 三日間の熟成期間、美都は慎吾のリクエストに応えて、風呂に入るとき、紙おむつとビニール袋を装着して、足と股間を洗わずにした上で、パンティと靴下を履きっぱなしにしてやった。

「はい、これ。約束通り、三日間、ずっと履きっぱなしにしておいたから。それじゃあ、今晩八時に、スカイプでね」

 定時から十数分後、会社の玄関で、ジップロックに包んだパンティと靴下を慎吾に手渡した美都は、もう一度フロアに戻り、残った仕事を片付けて、六時半過ぎには会社を出た。

 有り合わせのもので食事を取り、熱いシャワーを浴びて、三日間も洗わずに、滓とか、汚れとか、色々なものがこびり付いてベトベトになった股間と足を流した。

 髪と身体を乾かし、Tシャツとコットンパンツを着たころ、約束の時間がやってきた。スカイプを起動すると、慎吾はすでに、カメラ機能をONにしてスタンバイしていた。

「あ・・・川原さん、こんばんは」

「こんばんは。大丈夫?間島さん、疲れてない?」

「大丈夫。今すぐ、始める?」

「お願いできる?」

「うん。じゃ、やるよ川原さん。あ、えっと、アレが見えていた方がいいのかな?」

「うん・・・・見せて」

「わかった」

 椅子から立ち上がった慎吾が、おもむろにスウェットとトランクスを下ろすと、臍の下から太ももの付け根まで生い茂る密林の中から突き出た、どす黒い肉の柱が画面に大写しになり、美都の視線は釘付けになった。
「見える?」

「見えてる」

「ごめん、もう、ちょっと勃ちかけてて・・。恥ずかしいな、はは。そ、それじゃ、川原さんからのプレゼント、嗅いでみるね」

 慎吾が、美都の渡したジップロックから、ピンクのリボンと花柄のレースがあしらわれたパンティを取り出したのが目に入ると、羞恥と期待とに、美都の心臓が暴れ始める。

「あ・・・あっイヤッ・・・・」

 慎吾が、ついさっきまで履いていた美都のパンティの、桜の樹液のような琥珀色の粘液が付着したクロッチ部分に鼻孔を押し付けると 美都は思わず目を逸らしてしまった。

「あぁ・・。あぁいいニオイするよゥ、川原さん。すっごく、いやらしいニオイ」

「いやぁ、やだぁ。いやらしいって、どんなニオイ?」

 火の出るように顔が熱くなって、美都はもう、正気を失う寸前だった。

「えっちなニオイ。あんなにキレイな川原さんでも、大事なところを洗わないでいると、大変なことになっちゃうんだってニオイ」

「それじゃわかんない。もっとハッキリ言って」

「犬小屋の床に敷かれたバスタオルのにおい。くっさい、くーっさい、でもえっちなニオイ」

「やだぁ・・やっぱりクサイんじゃない。そのクサイのを、どうしてそんなに嬉しそうに嗅いでいるの?」

 わたしのアラを見つけるのが、そんなに楽しいの?

 お願い、わたしの日頃の指導が悪いのなら、これから改めるから、だから許して――。

「クサイのが、いいニオイだから」

 自分の言葉を証明するように、慎吾は犬のように、スンスンと鼻を鳴らして、美都が汚したパンティを嗅ぎまわっている。目の前で見せられて、それでもまだ、美都は信じ切れない。

「なんでなの。意味がわかんない。間島さんって、バカなんじゃないの?」

 目の端にいっぱい、涙を溜めながら、美都が抗議するように言った。

「バカでごめん。あぁぬぅはァ、あァでも、もうこうしなきゃ」

 慎吾は、たっぷりとニオイを嗅いだ美都のパンティに、今度は唇を付けた。三日間履きっぱなしにして、琥珀色の粘液がべっとりと付いたパンティの汚れを、ジュージューと吸い出し始めたのである。

「だめっ。そんなことしたら、病気になっちゃう」

「いいよ。川原さんのおまん菌で病気になれるなら、僕、本望だから・・・。あぁ。ああしょっぱいよ。川原さんのおまんこで一杯育ったおまん菌、しょっぱくて美味しいよ」

(おまん菌って何よ・・。ほんとバカじゃないの)

 画面の中で慎吾が繰り広げる、信じられない行動の数々に、美都は何度も目を逸らしながらも、懸命に食らいついていった。

(ヤバい・・。さっきから、股間のジンジン止まらない)

 美都が汚したものを美味しそうにしゃぶる慎吾を見ているうち、美都の中で、次第に、二十八歳の牝が疼き出していた。純粋なまでに自分を求める三十一歳の雄の姿が、これまでになかったほどの下腹部の痛痒を起こさせていた。

 慎吾なら美都を、あのときなり損ねた女にしてくれるかもしれない・・・。

「次、川原さんの靴下、嗅いでみるよ」

 美都パンを心行くまで堪能しつくした慎吾が、今度は美都の足汗がタップリ染み込んだ真っ黒靴下をジップロックから取り出し、鼻先に押し付けて臭いを嗅ぎ始めた。

「あぁ・・あぁイイニオイだ。こっちもたまんない、すっごくいやらしいニオイしてるよ」

 元の色が何だったかわからないほど汚れた靴下を、慎吾は頬を蕩かすようにしながら、スンスンと音を立てて嗅いでいる。

「やめてよぉ。間島さんがいいニオイってことは、くさいニオイってことじゃない・・・・。どんなニオイ、するの」

 美都は顔面を両手で覆い、指の隙間から慎吾を見ながら、恐々と尋ねた。

「グチャグチャにかき混ぜた納豆と、お酢のスッパイのを混ぜ合わせた臭い。それに、スパイスの効いたインドカレーのニオイも、ちょっと混じってるかも」 

「なにそれぇ、最悪・・・」

 慎吾の口から流れる比喩に、美都は戦慄した。

「ああエッチだぁ。すっごくエッチなニオイ、川原さんの靴下。ニオイだけじゃない。味もピリッと辛くて美味しいよ」

「エッチじゃない。そんな汚いのが、エッチなわけないもん」

 嬉しいのと、恥ずかしいのと、気持ち悪いのと、次々と押し寄せる感情の処理が追い付かず、美都は涙が止まらなかった。

「信じられない?」

「信じられない。信じられるわけない」

「これを見ても、まだ信じられない?ほら、よく見て。僕のここ、川原さんの靴下とパンティのニオイ嗅いで、こんなになっちゃってる」

 慎吾が得意げになる通り、画面に映る肉の柱は、彼が美都のプレゼントを悪戯し始める前とは、まったく様子が違っていた。

 天を突くように屹立する肉柱は、彼の腕や足の皮膚に比べてどす黒く、赤や緑色の血管が川のように巡っている。完全に露茎した亀頭は、血液が充満してワインレッドに染まり、エラが大きく張り出して、鈴口からビルビルと透明の液体を垂れ流している。

 今にも画面から飛び出してきそうな雄の器官の迫力に、美都は息をのんだ。

「川原さん、僕もう我慢できない。シコシコしちゃうよ、ゴメンね」

 慎吾が、また美都の汚れものをスゥッ、スゥッと嗅ぎ、チュパチュパと吸いながら、ゆっくり上下に、肉胴を扱き始めた。

 鈴口から流れる透明の液を潤滑油にして、傘の部分から真ん中あたりまでをピンポイントに、親指と人差し指、中指を滑らかに使ってコシコシと摩擦する卑猥な動きで、怒張は爆発しそうなほど膨れ上がって、雁首がグイグイと動いている。

「川原さん、見てる?」

「見てる。音も聞こえる」

「どんな音?」

「クチュクチュって。イヤらしい音が聞こえる」

「そう・・・。あぁ、気持ちよくなってきたよ。もうイッちゃいそう・・」

 頬を上気させて恍惚顔を浮かべる慎吾が、竿を扱くピッチを上げ始めた。

(出るの?あの白いの、出てきちゃうの?)

 八年前、口の中に、乱暴にぶちまけられたもの――生暖かくて、ベトベトして、青臭さくて、甘苦い味のするアレ。もう、二度と見たくなかったはずのアレが噴き出るところを見るのが、今は楽しみで仕方がなかった。

 美都は固唾を飲んで、慎吾が肉竿を扱きたてるのを見守っていたが、慎吾は何を思ったか、途中で右手の動きを止めてしまった。

「あのさ、川原さんにお願いがあるんだけど・・」

「なあに」

「川原さんも、その・・・してみてくれないかな。僕、できたら、川原さんと一緒に、気持ちよくなりたい」

 慎吾からのリクエストには、戸惑いもないし、抵抗もない。向こうにも美都の姿が見えている以上、慎吾がそれを望むのは、当然だとも思う。

 スタイルはともかく、大きな胸には自信がある。これを見せれば、慎吾はきっと、美都を褒めてくれる。男に褒められる女の喜びを味わいたくて、身体の芯が疼いている。

「私も、間島さんのこと見ながら、していいの?」

「川原さんが、僕なんかのこと見ながらオナニーしてくれるなんて、今すぐ死んでもいいくらい感動するよ」

「ほんと?ほんとにほんと?」

「ほんと。ほんとにほんとだよ」

「わかった。じゃあ、ちょっと待ってて」

 美都は意を決して、リクライニングの座椅子から立ち上がると、桃尻を後ろに引いて、コットンパンツと、淡いグリーンのパンティを脱ぎ去った。

 ふっくらと盛り上がった恥丘は濃い目の繁茂に覆われ、慎吾の昂りを目の当たりにして湧き出した女の蜜で、ぬらぬらと濡れ光っている。美都がまたリクライニングに腰をおろすと、下腹がこんもりと、エロティックに膨れた。

 続いて、美都がTシャツを脱ぐと、パンティとセットの、淡いグリーンのブラに包まれた双乳がY字の谷間をのぞかせる。さらに、美都が両手を背中に回してブラのホックを外すと、九十センチを超すボリューミーな生乳が、ボロンとまろび出てきた。

「ごめん。太っちゃってて、みっともないよね」

 しばらく、黙って美都の裸体を眺めていた慎吾に、美都が困惑して言った。

「いや・・・なんていうか、言葉が見つからなくて。僕の乏しい語彙じゃ、川原さんの裸の神々しさは、とても表現できないよ」

「表現できない?小説書いてる、間島さんでも?」

 美都が小説のことを言うと、慎吾が怪訝な顔をみせた。

「あれ?僕が小説書いてるってこと、言ったっけ?」

「ごめん。間島さんのホームページ、たまたま見つけちゃったの。小説、読ませてもらった。一言で感想をいうのは難しいけど・・なんていうか、命を削って書いている気がして。私、好きになったよ」
「そっか・・・。見つけてくれたんだね」

 長く勤めても社内での上がり目もなく、会社が一生面倒を見てくれるわけではない。会社でどれだけ褒められ、好印象に受け止められても、慎吾たち派遣社員にとっては、それは本当の自分ではないのだという空虚が付きまとう。たとえ、まだ社会には受け入れられなくとも、慎吾にとっては、会社以外の人生の方が本番なのだ。

 美都に本当の自分を見つけてもらえた慎吾は、恥ずかし気であり、嬉しそうでもあった。

「好きだ・・・。僕、川原さんのこと、大好きだよ」  

 いつの間にか慎吾の手は、再び黒光りへと伸びていた。

「夢みたいだよ。川原さんのパンティと靴下を嗅いで、川原さんの裸を見ながらシコれるなんて、ほんと夢みたいだ・・」

 慎吾の指が卑猥に動き、お掃除液で濡れた粘膜が、ヌチヌチといやらしい音を響かせる。美都を思うあまり、獰猛に形状を変化させた物体を見て、美都の下腹部の疼きも限界を迎えていた。

 美都は、月に数度、自分を慰めるために用いる右手の人差し指と中指を、慎吾に見られて潤いの量を増した秘苑へと伸ばした。

「・・ンッ。クゥン・・」

 細指が、繁茂の奥の肉唇をツツッと這うところを慎吾に見せながら、美都は可愛く哭いた。

「ねぇ川原さん。川原さんのおまんこ、いまどんなニオイしてる?」

 粘膜から迸る電流で美都の身体が小刻みに震え、大きな釣鐘型の乳房がプルンと揺れるのを凝視しながら、慎吾が訊いた。

「言いたくない」

「お願い、教えて」

「わかってるくせに」

「わからないよ。パンティに移ったのと、直に嗅ぐのとじゃ、また違うんだ。だから教えて。川原さんの、直マンのニオイ」

 慎吾にしつこく問われ、美都はクレバスの淵をなぞった後の指を鼻先にあてがい、ニオイを嗅いだ。

「どんなニオイ?」

「・・・ヨーグルトみたいな、スッパイにおい」

「ヨーグルト・・・すごい。お風呂に入ってから一時間くらいしか経ってないのに、もうヨーグルトになっちゃうんだ・・・。すごい。川原さんのヨーグルトおまんこ、すごいすごい・・」

 美都の言葉で興奮の度合いを高めた慎吾が、竿が変形するほど黒光りを強く握りしめ、包皮を上から下までグイグイと剥き始めた。

 竿を強いグリップで握りしめ、包皮を激しく摩擦することで性感を得る皮オナを繰り返していると、性交の際に女性の膣圧に違和感を覚え、遅漏や中折れする体質になってしまうリスクが高い――そんなことは、もちろん美都は知る由もないが、いまの慎吾が、思わずオナニーの禁忌を破ってしまうほど燃えがっていることは伝わってきた。

「ァ・・ンッ、わたしのあそこのニオイ想像して、子供みたいに目ぇ輝かせて、バカバカバカ・・・・・・・んッ・・・ゥ・・ゥん、ゥゥウ」

 美都も慎吾と一緒に気持ちよくなりたくて、クリトリスの包皮を剥き、露出した真っ白な肉芽を、美都蜜で濡れそぼった指で擦った。

「川原さん僕・・・僕、我慢できない。もう出すよ」

 糸を引く粘り汁を竿全体にまぶして、ヌチヌチヌチクチュンと淫靡なBGMを奏でながら、慎吾汁の大噴火が近づいていく。

「出して。私見てるから、思いっきり出して」

 自分では気づかないが、いつの間にか美都も少女のように目を輝かせて、ゾーンに入った慎吾のバットを見つめていた。

「くぁぁぁっ。でっ出るっ」

 画面の向こうで、激しくピストンしていた慎吾の指が止まり、先端から爆出した白く濁ったものが、画面の外にまで飛び散っていった。

「あぁすっげえ出る。川原さんが可愛すぎるから、すっげえいっぱい出てくるよっ・・」

 ドクビュン、ドクビュン、ドクビュン――。

 場外ホームラン三連発の後、白濁の弾丸は徐々に飛距離を落とし、ときにアーチを描き、ときにライナーで一直線に飛びながら、キーボードを汚したり、パソコンの脇の麦茶にポチャンと落ちたりしていった。

「間島さんすごい・・。こんなに出しちゃって、痛くない?」

「痛くない・・めっちゃキモチィよ」

「わたしのせい・・・わたしのせいでェ、間島さん、いっぱい、出しちゃってるっ・・のォ、ッ」

 牝の悦びをスパークさせながら、美都は掌を上に向けて、Gスポットを探り始める。三年ほど前、自分でやっているとき、うっかり触って失神しかけた強烈な刺激のスイッチ。

 右手が恋人の期間が長かった分、同年代に比べて卓越した指遣いで、向日葵の種のようにしこっている部分を、深爪にした指先でチョ、と触れると、焼け火箸で突いたような熱さで身悶える。
「そう、川原さんのせい。川原さんがこんなに可愛いのに、こんなにクサイから、僕もう気持ちよくって、どうしようもなくって。可愛いのにクサイなんて、川原さん、反則だよ」

「ハァァァァッゥん・・・反則でッ・・ゴメン・・・ね・・・ア」

「謝らないで。川原さんが、反則してくれたせいで・・・。ぼく、気持ちよくなれたから・・」

「あっウゥ・・わたしも、わたしもイクゥ・・ア・・」

 慎吾よりワンテンポ遅れて、美都にもオルガスムスの波が襲ってきた。瑞々しく張った豊乳が、桃色の蕾をプクリと膨らせながら重たげにフルフル揺れ、エロ肉のフワッと詰まった下腹も小刻みに波打つ。蜜壺からGスポットに触れた指で掻き出されるようにして、チュぷっと射精のように、微かに潮が噴いた。

「アんクッ・・ォッ・・・まじ、間島さ・・・・」

 指アクメで引き起こされた電流に、下腹部がジワリと痺れていく。男性の視線を浴びている分、達したとき快楽の量はいつもと段違いで、痺れが持続する時間も長かった。

 余韻を味わうように、コリコリに勃起し、醗酵した蜜のニオイを振りまくラフレシアの花芽を弄りながら 、美都の視線は、荒く息をつく慎吾の股間に、なまこのようにぶら下がる半萎えの肉塊をとらえていた。

(見られているだけでこんなにイイなら、アレを入れられたら、美都は一体どうなっちゃうの?)

「間島さん。今週末、予定ない?」

 メスイキに一段落がつくと同時に、美都は瞳を潤ませながら尋ねていた。

「ない。全然ないよ」 

「ねえデートしよう。二人きりで会おう」

「うん。会おう。デートしよう。僕、川原さんが欲しい。これを嗅いでいる間にも、ずっと思ってるんだ。パンティと靴下に移ったニオイでこんなに凄いなら、生身の川原さんのおまんこと足は、どうなっちゃってるんだろうって」

「くさいよ」

「くさいのが欲しい。可愛い川原さんのくっさいニオイ嗅いで、川原さんだって、僕と同じ人間なんだってことを確認しながら、汚い僕のザーメンで、川原さんのことベチョベチョにしたい」

 慎吾が、また美都のパンティを嗅ぎながら、もう硬度を取り戻した肉棒に、美都の靴下をはめて扱き始めた。

「間島さんとわたしは、同じ人間だよ」

「違う。全然違うんだ。川原さんと僕は違うんだよ。周りの期待にちゃんと応えて、スキルを積み重ねて、大事な人間関係も築いてきた川原さんと、これまでずっと、何もない、ゴミみたいな生き方をしてきた僕は違う。同じ人間の形をしていても、同じ職場で働いていても、僕らはまったく違うんだよ」

 聞いているこちらが痛々しくなるほどに、自分を卑下する慎吾。そうではないと言ってやるのは簡単だが、慎吾が自分の言っていることを否定してほしいのかというと、そうではない気がして、美都は何も言えなかった。

「僕は、川原さんだけいればいい。川原さんだけが僕を見てくれれば、それでいい」

 慎吾が、切なげな目で美都を見つめて言った。

(わたしだけ・・・)

 もちろん、慎吾も世の中に認められるため、自分のできることを、精いっぱいやっている。しかし、彼はそれが、最後まで実を結ばずに終わるかもしれないことを知っている。 

 生きる意味よりも、生きている実感を求めて、懸命にもがいている。圧し掛かる徒労に押し潰される恐怖に抗いながら、ローソクの炎を燃やすようにして生きている。

 不器用で、繊細で、人と同じようにできず、うまく生きられない慎吾が、美都を女神と信奉し、一途に思っている――。

「ねぇダメ、それ取っといて」

 美都に言われて、慎吾が、靴下を被せた肉棒を扱く手を止めた。

「今出さないで、ためておいて。今度、私に思いっきりかけて」

 今週末、美都のセカンドヴァージンを捧げることを決めた相手に、美都は精液をできる限りチャージしてくることを命じた。

 美都の痛みをすべて消してくれる慎吾の肉棒を、少しでも熱く、硬く尖らせておくために、余計な体力を消耗させず、コンディションを万全にさせておかなければならない。

「・・・わかった。川原さんのこと、僕の溜め込んだザーメンで汚すから。二人きりで会ったとき、川原さんにいっぱい、ぶっかけちゃうから・・・」

 女神の命令に従い、慎吾がビクつく剛肉から、美都の靴下を外した。

「うん。それじゃ、今晩はお休み。また明日ね」

 ノートパソコンを閉じると、美都は指先の甘酸っぱい液を洗い落とさぬまま、電気を消してベッドに入った。

 目を閉じて、意識を集中させると、瞼の裏のスクリーンに、慎吾が美都を求めて大きくした熱棒が再生される。

「アン・・・アッ・・ゥ・・・ウ・・・ウッン」

 慎吾に我慢を命じておきながら、美都は微睡みが美都を招くまで、疼きの収まらなくなったものを指先で弄るのだった。 


                      5
 
「すげぇ・・・」

 マシンから放たれる、一三〇キロのボールを広角に打ち返す美都のバッティングに、バッティングセンター中の視線が吸い寄せられていた。

 始動時にはバットのヘッドがしっかりと前を向き、軽く上げた右足を力強く踏み込み、左足を軸に、巻き込むように回転する美都のキレイなスイングは、他の男が連れている彼女のへっぴり腰のスイングとはまるで違う。自分自身は、美都よりも遅い一二〇キロを前に飛ばすのにも難儀しているが、慎吾は得意げだった。

「はぁ。スッキリした。間島さん、誘ってくれてありがとう。ほんと楽しかった。一人だと、なかなか行く機会ないから」

 晴れやかな顔をする美都に礼を述べられ、慎吾は頬をかいた。

 相互オナニーを楽しんだ日から、昼も夜もなく胸を高鳴らせ、心待ちにしていた、美都との初デート。慎吾はこの日のコースを、ステーキショップからバッティングセンター、そしてホテル、と設定していた。

 臭いフェチである慎吾は、女性の体臭を強くさせるための工夫をすることにおいても余念がない。
 
 脂質が多いため消化器への負担が大きく、腸内で悪玉菌が発生し、汗に含まれるアンモニアの量が増加することから体臭がキツクなる肉類を摂取させてから、真夏に屋外のバッティングセンターで、たっぷり汗をかかせる。

 慎吾の作戦は見事に功を奏し、ホテルの上階に向かうエスカレータの中、慎吾の腕に絡みつく美都からは、すでに女性ホルモンを煮詰めた、南国のフルーツのような甘ったるい匂いがふんぷと漂っていた。

「ここだね・・五〇五号室。部屋に入ったら、僕、軽く身体流してくるから。川原さんは、そのまま待っていて」    
            
 美都を部屋へとエスコートすると、慎吾はグレーのYシャツとスラックスを脱いで、一人バスルームへと入っていった。女性のニオイを楽しむ慎吾は、男である自分のニオイで美都を台無しにしないために、自分だけは風呂に入り、身体を隅々まで入念に洗浄するのである。

 タオルでよく身体を拭いて、バスローブを羽織り、マウスウォッシュもしっかりしてから、美都の座るベッドに腰を下ろした。すると美都は入れ違いに立ち上がり、バスルームへと向かおうとする。

「あ、そのままで」

 慎吾に呼び止められた美都は足を止めるが、しかし振り返らない。

「・・・やっぱり、洗ってくる」

 女の生々しい体臭に惹かれる慎吾の性癖は、よくわかっているつもりである。だが、やはり、いざそのときになると、一日お風呂に入っていない汚れたニオイを直に嗅がれるのは抵抗があった。

「待って」

 慎吾は後ろから美都の肩を掴むと、何も言わずに唇を重ねた。

 すると美都は胸がギュッとなり、身体からふわっと力が抜けていってしまう。

 慎吾は美都に口づけしたまま、美都の肩に置いた手に少し力をこめ、美都をもう一度ベッドに座らせた。

「・・・・」

 慎吾は美都にもう一度口づけし、美都を押し倒した。

「はぶっ・・むちゅっ・・・・べろっちゅ・・」

 優しく覆いかぶさりながら、美都の唇の裏に舌をねじ入れて、歯茎を撫ぜてやると、美都が舌をネロネロと絡ませてきた。

「ん・・・・きゅ・・こっく」

 慎吾は一度口を離し、己の舌にたっぷり掬い取った、美都の唾液を嚥下した。水あめのような甘い味。

「は・・・んンッ・・・」

 慎吾の唾液は、バニラソフトのような甘い味。美都は、今度は自分から慎吾の唇を奪い、まむまむと舌をねじ入れた。

 二体のアナコンダが絡み合うように口内をうねり、溢れる唾液を攪拌する。そのうち、キスに飽いた慎吾は美都の他の部位に行こうとするが、美都はこの口をけして離すまいと、慎吾の後頭部を掴み、チュパッ、ちゅぷっ、チュパアと、慎吾の唇を何度もついばんだ。

「はぁっ・・あぁ、川原さん、川原さんごめんね」

 このままずっと口を重ねているのも悪くはない。しかし、燃え上がった雄の肉体は、キスだけでは収まらない。

 美都が口を欲しがるのに十分応えた慎吾は、少し身体をずらし、美都の脇の下を凝視した。

 慎吾がシャワーを浴びている間、わざと、冷房をかけせさせないでいた部屋の中で、美都が着ているモスグリーンの半袖ブラウスの下に、汗の染みがジワリと浮き出て、そこだけ色が濃くなっている。ここがずっと、嗅ぎたかった。

「イヤッ、そんなとこ嗅いじゃイヤッ」

 美都が、汗染みに顔を近づける慎吾の頭に手をかけて押そうとするが、もちろん本気ではなく、慎吾は鼻先を湿った場所にピトッとくっつけて犬嗅ぎする。

「台所のニオイがする」

 腋嗅ぐ変態犬に恐々とした視線を落とす美都に、慎吾は笑みを浮かべながら言った。

「お母さんが、トントンってネギを切ってるでしょ。それを、床下で熟成させていた味噌を使った味噌汁に入れる。ダシの効いた、お母さんの美味しい味噌汁が、ここから湧き出てるんだ」

 嬉しいような、嬉しくないような例えを持ち出した慎吾が、美都の腋の汗染みを唇に挟み、チューッと吸ってきた。

「んまっ、うんまっ、川原さんが溶けてるっ。このお味噌汁、川原さんのダシが、すっごい効いて、めっちゃおいしいっ」

 美都汁を吸いながら、慎吾のゴツゴツした手は、二十八歳の脂肪が程よく乗った、しかし十分に曲線の美しさを残したウェストを触れていた。

「ねぇ間島さん、あんまりなぞらないでぇ。太ってるのがバレちゃう」

「太ってなんかないよ。むっちりしてやわらかい、セクシーなおなかだよ」

 美都の身体を撫ぜ回していた慎吾が、服の上からでは満足できなくなって、美都のブラウスの袖をくいくいと引っ張ってくる。美都は半身を起こして、ブラウスをさっと脱ぎ去った。

 脱ぎ際、首筋から出る甘い女の香りと、腋から出るネギ味噌の刺激臭がブレンド・ミックスされたニオイがふわっと舞い上がり、慎吾は鼻孔を恍惚気に拡げ、美都は羞恥に顔を赤らめた。

「ねぇ間島さん。あんまり嗅ぎすぎると、鼻がおかしくなっちゃうから、ほどほどにしといた方がいいよ」

「おかしくなんかならないよ。川原さんのにおいをずっと嗅いでいれば、僕はメロメロになるんだよ」

 ニオイを吸いながら、肉の柔らかみを味わいたい慎吾が、深い谷間を刻んでいる双乳をブラジャーの上から揉みしだいていると、美都がすぐホックを外して、自慢のFカップメロンがぼろんとまろび出た。

 揉み解されていない美都のバストは年の割に硬く、ゴムボールのような張りがある。デラウェアを少し小さくしたような大きさの蕾は、十代のように淡いサーモン・ピンクである。

「川原さんのおっぱい・・ぁ・・すご、吸収されそう・・・」

 美都の汗ばんだ乳肉は、慎吾の掌にヒトヒトと吸いつき、労働の毎日でカサついた指先を潤すようである。

 濡れ餅のようなおっぱいを優しく揉み解しながら、慎吾は美都の、キレイにムダ毛の処理された腋へと鼻を埋めていく。

「ハァッ・・・イヤッ・・」

 慎吾が、自分のパンティや生理用品を悪戯するところを見ていても、汚れた部分を直に嗅がれることには、どうしても抵抗がある。

 美都が閉じかけた腋を、慎吾はそっと押し開き、剃り跡の黒点と、汗の雫が浮かぶ腋嵩に、再び鼻孔をダイブさせた。

「川原さん・・・美都ちゃんって呼んでいい?」

 慎吾が、美都の直腋を嗅ぎながら尋ねた。

「いいよ。そしたら、わたしも慎吾さんって呼ぶ」

「美都。美都ッ、美都ッ、美都ッ・・・・」

 愛する人の名を連呼する慎吾は、美都の腋臭を嗅ぎつつ、反対側の腋を、小指の腹で擦っていた。

 くすぐっているのとも、愛撫しているのとも違う。強く押し付けて、何かを塗り付けようとする指の動きである。

「ねえ慎吾さん。その小指さんは、何をやっているの?」

「ん・・・。お土産をもらってるんだよ。舐めたら、ニオイが落ちちゃうからね。美都ちゃんがいっぱい臭ってるうちに、指にニオイを付けておくんだ」

「そんなことして、どうするの・・・」

 怯えたように、美都が訊いた。

「家に帰ってから、一人で楽しむんだ。今晩、美都ちゃんと別れたあとも、美都ちゃんとずっと一緒にいられるようにするんだ・・・よし。美都ちゃんのにおい、いっぱい取れた。これで心置きなく、美都ちゃんのエキスを取り込める」

 慎吾が、ネギ味噌汁のにおいをタップリ染み着けた指を離し、かわりに舌を、ちょっぴり茶色な美都の腋にひたっと付けた。

「フフッ。慎吾さん・・。フフ、くすぐったいよ」

 汗腺が多く、神経が密集した部分を舌で舐められると、快楽よりも、くすぐったさに襲われて、身をよじってしまう。すると、美都が部屋に入ってからもずっと履きっぱなしにしているカジュアルブーツが、美都に覆いかぶさる慎吾の腹にゴリッと当たった。

「あ、ごめん。痛くない?」

「ごめんね。足、痒くなってない?」

 ふたりが同時に、まったく違うことで謝ったのがおかしくて、笑いが漏れた。それから見つめ合い、ソフトキスをしてから、慎吾は美都の足元まで下がり、カジュアルブーツに手をかけた。

「ごめんね。真夏にこんな、分厚い靴なんか履かせちゃって」

 美都が、真夏に違和感のあるカジュアルブーツを履いていたのは、慎吾のリクエストだった。言うまでもなく、美都の足を蒸れさせ、ニオイを愉しむためである。

「デート中、何回も痒かったけど、慎吾さんが嗅ぎたいって言うと思って、我慢してた」

「ごめんね。苦しい思いさせちゃったね。いま、脱がすからね」

「やだ。脱ぎたくない」

 美都が、宙を蹴るようにして、ブーツにかけられた慎吾の手を振り払い、そっぽを向いて、聞き分けのない子供のように言った。

「でも、脱がないと、痒いのとれないよ」

「だって脱いだら、慎吾さんに、わたしの足のニオイ嗅がれちゃうもん」

「僕、美都ちゃんの靴のニオイと靴下のニオイ、もう嗅いだことあるよ」

「でも、やだもん」

「靴と靴下はよくても、直に嗅がれるのはイヤなんだ」

 慎吾の問いに、美都がそっぽを向き、口元を手の甲で覆い隠しながら、コクリと頷いた。

「美都ちゃん。僕は美都ちゃんのニオイを、生まれたときから探していたんだよ」

 しばし思案したあと、慎吾は口元に笑みを湛えつつ、美都を真剣な眼差しで見つめながら言った。

「嘘。赤ちゃんのときから、こんなニオイが好きな人なんていないもん。わたしの足のニオイが好きなのは、慎吾さんみたいに、大人になってから変な風になっちゃった男の人だけだもん」

「そう。だから、僕が変な風になるのは、神様が最初から決めたことだったんだ。今まで起きた辛いことも、嬉しいことも、みんな神様が、僕が美都ちゃんを好きになるために仕組んだことだったんだよ」

 美都の足のニオイが嗅ぎたい慎吾は、言葉巧みに、しかし一途な思いを伝えて、慎美都の心をほぐし、美都が自らの意志でブーツを脱ぐように持っていこうとする。

「美都ちゃん・・」

 美都の足元から一時撤退して、美都のおっぱいに帰ってきた慎吾が、仰臥しても形の崩れない釣鐘おっぱいを、ソフトクリームのカップを持つようにしてムネムネと縦に揺らしながら、ザラメ味のする美都の唇を甘噛みしてきた。

「慎吾さん、慎吾ォ」

 股間のものをすでに硬くいきり勃たせて、花柄のフレアスカートから伸びる太ももに押し付けてくる慎吾が、美都の大好きなキスとおっぱい揉みをしてくれるのが嬉しくて、それなら慎吾にも、慎吾が大好きな、美都の足のニオイをたっぷり嗅がせてあげなければいけない、という気になってきた。

 美都は慎吾の頭に手をやって、自分の足元へそっと押しやってから、半身を起こして、カジュアルブーツのヒモを緩めた。

 慎吾はブーツを脱ごうとする美都の足元を、目を皿のようにして見つめ、鼻孔をビー玉サイズにまで広げ、半開きにした口から涎を垂らして、これから起こることを期待している。

「とりゃ」

 かわいいかけ声とともに、美都が脱ぎ去ったブーツの中から、熱で赤らんだ足が顕わになった。
 同時に、うな重の蓋を開けた瞬間のように、芳ばしいニオイが辺り一面に、ウワンムゥ、と漂う。

「美都ッ。美都美都美都ッ、美都美都美都ッ」

 慎吾が、美都のすごいニオイを嗅ぎながら、腋と同じように、左手の薬指に、美都の足のニオイをこびり付けた。

「すごいぃ・・・。工場の近くの道路で、たぬきが車に撥ねられて、道路の脇に吹っ飛ばされて死んだときのニオイが、可愛い美都ちゃんの足からするよォ」

「やアだ。たぬきが可哀想。慎吾さん、たぬきを殺しちゃヤぁ」

「ごめん。たぬきが可愛そうだよね。たぬきじゃなくて、納豆が百個潰れてた。納豆が百個ってことは、納豆菌が一兆個くらいあって、それが美都ちゃんの靴の中で生まれてたってことだよ」

 慎吾が適当なことを言うと、美都が、たぬきの死骸にたかるウジの群れを見たかのように、顔をしかめてみせた。

「やめてぇ。納豆なんか生んだって、全然うれしくない」

「納豆は美容の最大の友だよ。それが美都ちゃんの足から産まれたんだから、美都ちゃんは世界一の美人だよ」

「やん・・・ヤん、そんなの、嘘だもん。わたしの足はっ・・・ただ、くさいだけだもん・・・キャ、ヤ、慎吾さん舐めないで。やめてっ、勘弁してっ」

「勘弁しない。美都ちゃんが可愛すぎるのがいけないんだ。ああ。丸くて、しめじみたいな、かわいい指。こんなに可愛いのに、なんでこんなにクサイんだろう」

 慎吾に、たぬきの死骸と納豆をぐちゃぐちゃにかき混ぜた足を舐められると、くすぐったくて気持ちいい。

 慎吾の舌の温もりと滑らかさが、美都の傷の痛みを癒していく。


――ねぇ。なんかこの部室、クサくね?

――ほんと。マジヤッバイ、雨上がりの排水溝みたいなにおいする。誰がこのにおいさせてんだか。

 中学のころ、ソフトボールの練習を終えたとき、美都にレギュラーを奪われた先輩が、悪意のこもった目を美都にチラチラ向けながら囁く声が、美都が最初に負った、心の傷だった。

 でも、いま、美都の足を嗅ぎ舐めている男は、美都がダメだと思っていた足のニオイを嗅いで、ごちそうにありつく犬のように、喜色を全面に表している。

 慎吾とだったら、美都は自分の体臭を恐れなくていいし、どんな美都も好きだって言ってくれる。
 慎吾にだったら、アソコのにおいも嗅がせられる――。

 慎吾が、美都の心に刻まれたバッテンを、花丸にしてくれる――。

「あぁイイッ。美都ちゃんの足、ほんといいニオイ。全部いいニオイだけど、特にこの、指のおまたのところが最高・・・っ。最高にニオイが溜まってて、最高にウマいよ」

 ピチャピチャといやらしい音をたてながら、慎吾は美都の足の、指のおまたで繁殖した白癬菌を、夢中で舐めとっていく。

 慎吾の中に、美都の痛みが溶け込み、慎吾の中で喜びに昇華されていく。 

「美都ちゃん全部ちょうだい。僕、美都ちゃんの何もかも、受け入れてみせるよ」

 言いながら、慎吾は美都の、蒸れてふやふやになった足から、美都の腰の方へと移動した。

「次、美都ちゃんのおへそのゴマ、ちょうだいね」

 慎吾は、トップレスの状態にある美都にそっと身体を重ね合わせ、美都が母親と繋がっていた部分に、深爪にした左手の中指を入れた。

「ごめんね。ちょっとだけ、我慢してね」

 内臓に直結するヘソに指を入れてほじくると、独特の不快感に襲われる。美都の痛みとシンクロするように、慎吾も下腹部を襲う苦しみに耐えながら、左手の中指の先に、雑穀のようなヘソのごまを掬い取った。

「美都ちゃんの魔法の壺から出てきたゴマちゃん、いただくね」

「・・・どうぞ、召し上がれ」

 鳥の餌のようなニオイをふりまく、美都のドライ型のヘソのごまをたっぷり嗅いでから、口に入れようとする慎吾。

 慎吾にほじくられ、ズムッとした気持ちの悪さを味わった場所は、美都がまだ生まれる前に、お母さんから栄養を貰っていたところ。

「ねぇ慎吾さん。慎吾さんは、ほんとにほんとに、わたしが産まれる前から、わたしのことが好きだったの・・?」

 美都は握りしめた両手を胸の前で合わせ、Fカップの豊乳をムギュッと押しつぶしながら、慎吾に天然っぽく訊いた。

「そうだよ。僕は美都ちゃんが生まれる前から、美都ちゃんが好きだったんだよ」

 慎吾は、まるで不思議少女のような美都の言動に笑顔で付き合いながら、美都のヘソのゴマをにちゃにちゃと租借した。

「さぁ、いよいよメインディッシュだ」

 キラキラ輝く慎吾の瞳は、美都のフレアスカートに包まれた、美都のいちばんクサイところを見下ろしていた。

 美都が種を受け取り、お母さんになるための場所のニオイが、美都の長年の悩みだった。

 どうして自分のここはこんなにクサイのか、ずっとわからなかった。どうして自分だけが、こんなにクサくなければいけないのか、納得できなかった。

 でも、今ならわかるし、納得できる気がする。

 美都のおそそがクサくなったのは、美都のどんな部分でも、どんな美都でも好きだって言ってくれる人を見つけるため。

 神様が、美都を幸せにしてくれる人と巡り合わせるために、美都のおそそをクサくしてくれたのだ。
「美都ちゃん。僕は一万年前に、美都ちゃんのここを嗅いでいたんだよ」

 美都の腰骨に触れながら、慎吾が真顔で、不思議なことを言ってきた。

「一万年前に、慎吾さんとわたしは、生まれていたの・・・?」

 慎吾ワールドに引きずり込まれて、美都は頭の中がほわっとなった。

「ああ。まだ、人類が、股間を葉っぱで覆うだけの恰好でいたころ、生まれてから一度も石鹸で洗ったことがない美都ちゃんのおまんこを、僕はスンスン嗅いで、舐めていたんだよ」

「やだぁ。生まれてから一度も石鹸で洗ったことがないアソコなんか舐めたら、慎吾さんが病気になっちゃう」

「美都ちゃんを舐めて、病気になりたいよ。美都ちゃんのおまん菌を食べて死ねるなら、僕は本望だ」

 ふいに感情が昂って、慎吾は美都の肉感溢れる太ももを強く握り、嗚咽を漏らした。

 慎吾の目尻から、どっと涙が溢れたのを見て、美都は肺腑を貫かれる。

「慎吾さん、どうして泣くの」

「生きるのが辛くて。苦しくて」

「どうして慎吾さん、生きるのが辛いの」

 慈愛に溢れる聖母のように、美都が訊いた。

「僕が生きていることを、誰も認識してくれない。美都ちゃんがいるあの会社にも、ほかの場所にも、僕はどこにもいないんだよ。この世界の中で、僕は息はしているけど、生きてはいないんだ」

 しゃくり上げる慎吾を見て、どうすればいいのか考えた。

 涙をこぼす慎吾の顔を、慎吾がいっぱい揉み解してくれた豊乳で包み込んだ。

「わたしだけは知ってる。慎吾さんがこの世に生きていることを、わたしは知ってるよ。慎吾さんが頑張って働いていることも、慎吾さんが小説書いていることも、わたしは見てるよ」

 どんな精神安定剤よりもリラックス効果のあるおっぱい。慎吾は美都の柔らかみに包まれて、生まれた哀しみが、いくらか和らいだ気がした。涙が止まった。

「慎吾さんのことが好き。だから慎吾さん、わたしが生きている証も味わって。わたしだって、辛いことも、苦しいこともあるけど、必死に生きてるんだってことを、慎吾さんの鼻と舌で感じてみて」

 ただ生きるだけのことが、どうしてもうまくいかない。生まれてきた絶望を、せめて文学に昇華しようとしてみても、やっぱりうまくいかない。

 美都がどんなに口で言っても、慎吾がいま現在の境遇を、前向きに捉えてくれることはないのだろう。

 だから脱いで、嗅がせて、舐めさせる。

 そしたら、美都のことも、もっとわかってもらえる。

 美都はしゃがんだ状態で、パステルイエローのフレアスカートに手をかけ、足元まで一気にずり下ろした。

 ピンクのリボンと花柄のレースのあしらわれた、純白のパンティ。汚れが一番目立つ色のパンティの、股間部に浮かぶシミに、慎吾はゴクリと生唾を飲んだ。

「美都ちゃん・・・美都ちゃん」

 慎吾は美都の染みに向かって、慎吾が大好きな名前を呼んだ。

 美都は、美都の染みに顔を近づける慎吾を、頬に薄紅に染めながら迎え入れた。

「っくおっ。ヨーグルトができてるっ・・・。美都ちゃんパンツのから、すっぱいヨーグルト漏れてきてるよ・・・」

 美都染みの強い醗酵臭を嗅ぎながら、ゴムに手をかけ、パンティを下に少しずらすと、太く硬く、量も多めの陰毛とともに、一段と強い臭気が、ワモォッ、と漏れ出してきた。

「あぁ・・ヨーグルトのスッパイ臭いに、ブルーチーズのケモノっぽい臭いと、ぐじゃぐじゃにかき混ぜた納豆の臭いが加わって、一段とエッチなニオイになったよ」

 慎吾が美都に送った最大級の賛辞に、美都は身ぶるいした。

「なにそれぇ。いやぁ」

 羞恥は堪えがたかったが、蒸れ肉の熱気と臭気をスウッ、スウッと吸い込む慎吾は、本当に幸せそうである。

「美都ちゃん、腰、ちょっと浮かせてもらっていいかな」

 美都の大きな尻とベッドとの間に隙間ができると、慎吾は美都の大事なところを覆う唯一の布を、一気に足首まで引き下ろした。

 力強く生えた剛毛がふくらかな恥丘を覆い、繁茂の奥に、年相応にやや酸化してはいるものの、まだまだ朱の色素をたっぷりと残した姫肉が覗いている。花弁には白いペースト状の恥垢がビトビトと付着し、緑色のオリモノもぬるついていた。

「行くよっ・・」

 慎吾はちぢれた美都草をかき分け、エッチなトッピングがこれでもかと盛り付けられた、洗ってない汚まんこへと、鼻を押し進めていった。

「あぁ、なんていやらしいニオイなんだろう。美都ちゃんのおまん菌、すっごくクサくて、いいニオイだよ」

「やめて。慎吾さん、美都に触ると美都菌がつくから、早く離れて」

 言葉とは裏腹に、美都はもう、慎吾に嗅がれるのが、嫌ではなくなっていた。

 美都のクサイところを喜んで嗅ぎ、美都がクサければクサイほど喜ぶ慎吾は、まるで犬のようである。

 美都の後をどこまでも付いてきて、美都の言うことをなんでも聞いてくれる慎吾は犬。美都のことが大好きで、美都にどっぷり依存して、美都がいなければ生きていけない慎吾犬に美都は心行くまでニオイを嗅がせて、タップリなでなでしてあげたかった。

「あぁ、いいニオイたまらない・・」

 いやらしすぎる牝蒸れのにおい。よくかき混ぜた納豆に、青かびの生えたチーズ、天日干しにしたイカ、トッピング三点盛りのお好みおまんこに、ヨーグルトのデザートまでついた極上のディナー。

「おまけに、持ち帰りまでできるなんて・・」

 慎吾は美都の一番クサイ部分のニオイを、左手の人さし指に、タップリと擦り付けた。

「いやらしィおまんこのニオイ、いっぱい嗅がせてくれてありがとう。今度は、美都ちゃんのおまん菌、いっぱい舐めて、美都ちゃんのことも気持ちよくさせるからね」

 美都の姫肉をチロッと舐めると、慎吾の舌は、酸性の分泌液で、東南アジア原産の檳榔を噛んだときのようにピリッと痺れる。構わず、唾液をたっぷり付けた舌先でラビアを撫ぜた。

「ヒッ。アア・・・ッンッ、クッ・・・」

 自分の指でするのとはまるで違う、恐ろしいまでの快感に、美都は歯を食いしばった。

 柔らかく、ぬめった慎吾の舌が、美都の秘裂をそっと割って、入り口をチムチムと舐めたくる。極上の電流が腹腔内に流れ、美都は汗ばんだ重い乳房を切なげに震わせながら哭いた。

「美都ちゃんのおまん菌で醗酵させた美味しいチーズ、いただいちゃうからね・・」

 慎吾は、美都のラビアに、カッテージチーズのようにこびりついた恥垢を舐めとり、唾液に溶かして、舌の上で転がした。ねりっとした食感に、塩辛さと苦みが絶妙な塩梅でミックスされた汚れた女のうま味が、心地よく喉を通っていく。

「アンン、アンン、アンン。ああダメッ、ダメッ、そんなんしたらだめぇ」

 やがて慎吾は、そっと舌を這わせるのではなく、ジュプッ、ジュプッと音を立てて、美都蜜を吸い出すようにして舐め始めた。

「ウ、あ・・ぁッ。ぁぁ・・・、嫌、嫌ぁ。いやだぁ」

「まだ嫌なの?」

「だって。信じられないもん。こんなのがいいなんて人、信じられないもん」

「僕がこんなに愛しても、まだ信じられない?」

「だって。だって・・・」

 嗚咽にも似た牝哭きを絞り出す美都の、薄皮にムッチリと肉の張りつめられた太ももを、慎吾は優しく撫ぜた。

「・・・過去に、辛いことがあったんだね。じゃあ、美都ちゃんが辛いことを忘れられるまで、僕が舐めるよ。美都ちゃんの痛みも悲しみも、全部消えてなくなるまで、舐め回してやる」

 慎吾は舐めた。気の遠くなるまで舐めた。

 慎吾にとって、愛しく、恋しく、神々しい、美都の淫臭。でも、それが彼女の痛みと悲しみだというのなら、舐めてかき消し、すべて自分の中に取り込んで、喜びへと昇華させてやる。

「アフッ、ズチュゥ、ジュプッ」

「ァァア・・アッ・・。やぁ・・・やぁ、なのぉ」

 粘膜全域を這う慎吾の舌攻めが、緑がかったオリモノの溜まったクリトリス周辺に及ぶと、美都の甘やかな喘ぎがセクシーな艶を帯び、慎吾の耳に心地よく響いてくる。

「ハブッ、ブチュウ、チャプウ。だいぶ、ニオイ消えてきたかな」

 十分ほども執拗にクンニリングスをしていると、嗅覚がマヒし始めたのもあるだろうが、だいぶ、美都臭が薄くなったように感じられてきた。

 メインディッシュを、しっかりと堪能した慎吾は、デザートを求めて、最後の「スイートスポット」に向かうことにした。

「そしたら美都ちゃん、今度は、四つん這いになってもらえる?」

 美都は慎吾に言われた通り、両ひざを立てて、後ろにいる慎吾に向かって、工場で多数働く南米人にも負けない大きなヒップを突き出した。

 慎吾は、ソフトボール経験者特有の、筋肉と脂肪のブレンド・ミックスされたプリプリの尻肉を揉みたてながら、窄まりの部分に鼻を近づけていった。

「あっ・・・。そこも嗅ぐの・・」

 排泄に使う部分に近づいていく慎吾に、美都は怖気をふるった。

 デリケートゾーンに比べ、さほど意識していたわけではなかったのは、そこに男性が性的な興味を持つということ自体が、想定の範囲外にあったからである。自分の目から見えない場所にある分、独特の不安もあった。

「笑われちゃうかもしれないけど、小さい頃、僕は可愛い女の子には、汚いところなんてないと思っていたんだ。可愛い女の子は、うんちなんてしないと思ってた」

「フフ。実際は、どうだった?」

 純真な頃の慎吾を想像して、美都は一瞬、今の状況を忘れ、笑いながら問い返していた。
「大人になってわかった。可愛い女の子にも、汚いところはあった。可愛い女の子だって、でっかいおならをするし、ぶっというんちだって、することがわかった」

「幻滅した?」

「ううん。もっともっと、好きになった。よく、好きな人なら汚いところなんかないし、クサくても舐められるとかいうけど、そうじゃない。僕は、好きな女の子が汚いから舐めるんだ。クサイからこそ、悦んで舐めるんだよ」

 言うが早いか、慎吾は、ひくひくと収縮するセピア色の肉菊に、鼻先を埋めていた。

「ぅおぅっ・・・すごい。美都ちゃんが可愛いお口から食べたものを、腸がこんなえっちなニオイにしちゃって・・」

「えっち・・・?わたしのそこ、えっちなニオイなの・・?」

 慎吾の言うことは、とても簡単には信じられない。でも、美都の一番クサイところを完食してくれた慎吾の言うことなら、信じてみようという気になっていた。

「えっちだよぉ・・・。美都ちゃんが食べたくさやもドリアンも、ケーキもクッキーも、最後はみんな、このえっちな・・・。男を虜にする、香ばしくて、妙に甘ったるいニオイになるんだよぉ」

「そんなの嘘。ケーキとクッキーの方が、ずっといいニオイだもん」

「美都ちゃんは、欲望に忠実な脳に騙されちゃってるんだね。自分のことしか考えないバカな脳と違って、人体にいるみんなのことを考えている腸は、一度身体に取り入れたものを差別しない。クサいもの、マズイものも、いい香りなもの、甘いものも、口に入れて、食道を通過しちゃえば、同じうんちになっちゃうんだ。そしてそのうんちは、男をメロメロにするえっち臭をお尻の穴にひり付けながら、ボトッとおトイレに落ちていくんだよ」

 美都は、慎吾は頭がおかしいのではないかとも思えたが、なぜか、妙に納得できる気もした。

 働いて、生きる上で、無駄なことばかり考えてしまうのが、間島慎吾という人の脳。彼の考えることは、人類がより良い未来に向かう上では何の役にも立たないけど、でも、美都は愉しいと思う。

「よぉし・・・。美都ちゃんのおしりのニオイ、もらったからね」 

 慎吾は、美都のアヌス臭を左手の親指に擦り付け、これで美都のスイートスポットのニオイを、すべて左手にコンプリートした。

「お土産が出来上がったから、美都ちゃんのデザート、いただいちゃうね」

 慎吾は、美都の芳ばしくも悩ましい窄まりにこびり付いた、排泄の臭いと、黒糖のような甘ったるい臭いの元を、ヌモヌモと舐めとった。

「アン・・ァァゥゥ・・ァゥ」

 入り口に取り付けられた、排泄を積極的に行うための性感帯を刺激され、美都は子猫のように哭いた。

「僕のこと、信じてくれた?美都ちゃんの全部が好きだって、信じてくれた?」

 アヌスに舌先をねじ入れ、直腸をこね回してやると、慎吾の手の内にある美都の尻たぶは、中に鉄板が入ったように、フッと硬くなる。ソフトボールを引退して何年も経っているが、美都の大きな尻には、厚い脂肪のコーティングの中に、鍛え抜かれた強靭な筋線維がたっぷりと残っているのだ。

「信じるぅ。ア、アンン、信じるぅ、慎吾さんのこと、信じるぅ」

 恥かしい部分を舐められているのに、瘡蓋をカリカリと引っ掻かれたときのような不思議な快感で、美都の声はどうしても、甘く切なくなってしまう。

「美都ちゃん気持ちいいの?お尻の穴舐められて、気持ちいいの?」

「イイ・・。汚いところのはずなのに、気持ちいぃ・・・こんなの、変」

「モノが触れて気持ち良くなるところには、みんな意味があるんだよ。おまんこが気持ちよくなるのは、女の子がおちんちんを入れられるのを好きになるため。お尻の穴が気持ちよくなるのは、うんちをするのを、恥ずかしくしないため。神様は偉いから、アダムとイブが知恵の実を食べて、羞恥心という感情を身に着けた後のことまで、よく考えていたんだね」

「アウ、アウゥ、慎吾さん、物知りィ」

「そうだね・・。余計なことばっかり勉強して、余計なことばっかり考えているから、僕は非正規の派遣なんだろうね・・・」

「余計なんかじゃなない・・。だってわたし、いまとっても楽しいもん。慎吾さんと話せて、慎吾さんと気持ちいいことできて、とっても楽しいもん」

「美都ちゃん、ありがとう・・・」

 美都食いを満喫した慎吾は、美都の愛しい皮膚の老廃物と雑菌をいっぱい食べた口を、美都の滑らかな唇に重ね合わせた。

「んっちゅっ、んちゅっちゅゥ、ちゅゥん、ちゅんちゅん」

 美都と唇を突っつき合いながら、慎吾の手は、ツンと張って、仰臥してもまったく形の崩れない美都のバストへと伸びていく。

 汗ばんで、照明を反射して鈍く光る乳肉を揉むと、ミトミトとなんともいえぬ音がする。

 硬く勃起した乳首を口に含むと、口の中いっぱいに、女の子の味が広がっていく。赤ちゃんを産んでもいない美都からミルクが出るはずもないのに、美都のおっぱいは、なぜか妙に甘い味がするのである。

「美都ちゃん、僕がもう、たまらなくなってるのわかる?」

 下腹部に押し付けられた慎吾の象徴は、美都が全力で投げたソフトボールも打ち返そうなほど硬くなっている。

 仕事で面倒くさいときに冷たくしても、イライラしてるとき辛く当たっても、慎吾が美都を求めてこんなになってくれたことに、美都は強い感動を覚え、ガチガチに張りつめた慎吾をはやく楽にしてあげたくなる。

「美都ちゃん、僕、美都ちゃんの中にいってもいい?」

 慎吾が尋ねると、美都は少しだけ間をおいて、控えめに頷いた。

 美都の許可が下りると、慎吾はもう一度、美都の秘所を舌で撫ぜ、美都の受け入れ態勢が整っているかどうかを確かめた。

「うん・・・・よさそうだね」

 潤いが十分だとわかると、慎吾は透明汁をたっぷり垂れ流し、お掃除のすっかり済んだ剛棒を、右手で照準を調節しながら美都にインサートした。

「ツッ!・・・」 
 八年ぶりに男のものを受け入れた美都の姫肉に、鋭い痛みが走った。

 あのとき、男は美都が初めてだとわかるや、面倒そうな顔を浮かべてすぐに引き抜き、上の口で咥えさせて腰を振り、一人で満足してしまった。

 経験値の少ない美都にも、慎吾のモノがロングバレルであることはわかるが、慎吾は熱された銃身をいきなり奥まで突っ込んできたりはせず、先っちょだけを使って入り口をクニクニとマッサージしつつ、接吻したり、首筋を愛撫したりしながら、美都の中が樹液で満ちるまで待ってくれた。

「おつゆが湧き出してきた。そろそろ、動かしても大丈夫そう?」

 十代や二十代のガキではない。向こうの準備を待つだけの余裕は備えているが、男の胸を甘い鼓動で破裂させようとする美都の美顔と巨乳を俯瞰していて、いつまでも雄の爆発を抑えていられるものではない。

「いいよ。来て・・」

 美都の許可が下りるや、慎吾はゆっくりと、出し入れの動きを開始した。

 先端から中ほどまで入れて、媚肉の収縮の具合を確かめながら、徐々に深刺しして、ストロークを大きくしていく。すると美都襞が包皮をズリュズリュと剥き、ツブツブが亀頭を刺激して、慎吾の下腹部は男の幸せでいっぱいになる。

「ァアゥ、ぁ、ォ・・すっご、しん・・・ぁゥ・・・・」

 美都の上で腰の動きをして、出たり入ったりする慎吾を受け止めながら、美都は痛みと快楽の狭間を揺蕩っていた。

 八年前に女になり損ねた美都から、今度こそ、重荷を取ってくれる男が現れた。

 このときまで待って、本当に良かった。生まれついておまん菌が多く、おまん臭をいっぱい放ってしまうおまんこに生まれたお陰で、汚マン嗅ぎと汚マン舐めが大好きな変態に出会えた。変態に女にされた美都は、変態女――。

「あぁいいよ。美都ちゃんの洗ってないおまんこ、すごくいいよ」

「ダメ・・・洗ってないから、慎吾さんのキレイなおちんちん、汚くなっちゃう・・・」

「汚いから、いいんだよ。美都ちゃんの汗と、垢ちゃんと、おまん菌がいるから、気持ちいぃんだよ」

「ぁん・・・また、そんなこと言う・・・もう知らない」

 美都のポテンシャルを限界まで引き上げる慎吾のピストンで貫かれ、美都汁がどんどん分泌されていく。

 痛みが消えた、苦しみが消えた、悲しみが消えた。

 美都は天使の翼をはためかせ、痛みも苦しみもない涅槃へ――慎吾と二人きりの楽園へと昇っていく。

「アァゥ、アンアン、ぁお、ぉ・・こ・・・ァ・・・ゥゥ・・・ィ、しんご、ィ・・ァ。これいい、これいい、しんご・・ィ・・・ィゥゥン・・」

 洗わぬ女体に包まれ、快楽の咽びをあげる慎吾棒は、何度かの抽送によって美都の肉洞窟を少しずつほぐして掻き分け、とうとう美都の赤ちゃん部屋まで到達した。

 パンパンに腫れあがった、慎吾の相棒の亀山くんに玄関口をノックされ、美都はここがどこかもわからなくなり、言語中枢も破壊されて、もう、なにを言っていいかわからなくなる。

「ああっ、美都が気持ちいいから、腰の動きが速くなってきたっ・・・よ。美都ちゃんの身体って、スゴ・・ィ・・・。男を夢中にさせるために作られた身体・・・ァッ」

「違うもん。わたしの身体は、だめな身体だもん。男の人をイヤにさせる、くさいニオイだしちゃうもん・・・」

「だれだっ、美都のニオイをイヤなんて言ったヤツは・・っ、探し出して、ぶん殴ってやる。美都のニオイは最高だっ。可愛い美都から、醗酵したケモノの、クサァい臭いを嗅ぎ取って興奮できないヤツなんか、男でもなんでもないよっ」

「ァゥ、ァゥゥ。慎吾がイイッていうなら、それでイイ、美都それでイイッ、慎吾さえいればイイイイッ」

 快楽を貪る二人の下腹が、タンタンタンと肉の打擲音を鳴らし、美都の喘ぎをより艶やかにして、慎吾の鼓膜に響かせる。

 慎吾は美都の背中に手を回し、蟻の這い出る隙間もないほど密着して、美都に口づけしながら、熟練の洋裁師が操るミシンの動きで、下半身を打ち付けた。

「チュ、チュッチュウ、チュ、チュゥ、チュウ、チュゥ、チュゥゥゥッ」

「チュ、チュチュゥ、チュゥ、チュチュ、チュ、チュ、チュゥゥゥッ、チュウ、チュウゥ」

 活字に起こせばゲシュタルト崩壊を起こしそうなほど連続してチュッチュ音を響かせながら、慎吾と美都はお互いの唾液を求め、口を吸い合った。

「わたし、イイッ。わたしだけがこんなに良くて・・・イイのっ・・・かなっ・・・」

 美都は自分の悦びを慎吾にも味合わせたいが、セカンドバージンを失ったばかりの美都はまだ、男性が喜ぶような動きをすることはできない。せめて、慎吾が大好きなことを伝えようとして、美都は慎吾の首に手を回し、逞しい背中を両足で抱きしめた。

「ああすごいっ、それすっごくいい・・。美都、僕を抱きしめて。美都に包まれて、美都っ、美都っ、美都美都美都・・・・」

 美都。

 慎吾。

 もっと、ヨガリ哭いて。 

 激しく、いっぱい突いて。

「あの・・・ね、慎吾・・さん。調べたんだけど、ね、わたし・・・今日、大丈夫な日・・・だから・・・」

「このまま出しちゃっても・・・ッハァ、平・・・・気?」

 射精感高まる慎吾が問い返したのに、美都は大きな目をうるうるさせながらうなずいた。

「わかッ・・・・たっ・・・・・。美都に、僕の子種を注いでやる・・・」

 ズリッズリッと、ビラビラを裏返し、襞をこそぎ落とすようにして、慎吾は美都に摩擦の快楽を送る。
「イクッ・・・イクイクイクよっ、美都ちゃんっ」

 股間からせり上がってきた甘美な電流がスパークする。撃鉄が弾倉を叩く。

「出すぞォッ。美都ちゃんの中で僕を出して、また美都ちゃんを作るんだっ」

「わ・・・たしの中でっ・・慎吾さんを出したらっ・・美都と慎吾さんの子ができるんだよ・・・」

「だめ・・・。僕の遺伝子が混じった子なんて、子供が可哀想だ・・・。この世で生まれていいのは、美都ちゃんの子だけだっ」

 タンタン、タパパパパン、ミッチミッチ。肉と粘膜の音が、ダウンライトに照らされたホテルの一室で淫靡に響き渡る。

「でも。そしたら、わたし、ほかの男の人と、エッチなことしないと・・・」

「そんなのダメ。美都ちゃんとエッチしていいのは、僕だけ。美都ちゃんは僕だけのもの。美都ちゃんは僕とエッチしながら、僕の遺伝子が混じっていない子供を妊娠するんだ」

「アウゥ、そんなの無理ィ」

「無理じゃない。美都ちゃんならできるっ」

 トットッ、タンタンタン、タパパパタタンタン。

 世の中に理解されない男の世界に、世の中に理解されない男をたった一人理解しようとする女が、必死に食らいついていこうとする。

「アンン、慎吾さんのワガママぁ」

「ワガママでごめんんんんあああああぁっ、出る、出る、美都イクっ、美都ォ」

 グググウッ、と、美都の中で慎吾の雁首が持ち上がって、慎吾の硬さと大きさが、限界以上に到達する。 

「美都ォッ」

 ドヴアッ、ビクルルルッ――。

 美都城の本丸にいる淀殿を目がけて、十万を超える慎吾兵たちが、一斉に放流された。

「グォ・・・ォッ」

「アァ慎吾、慎吾いっぱい来てッ」

 ウネウネとくねる媚肉が螺旋を描くように慎吾のバレルを絞り上げ、中を通る弾丸の飛距離と命中精度を上昇させる。

「美都にイクッ、美都をイカせるっ、美都との子を作るッ」

 真田丸から打ち出される散弾に蹴散らされても、無限に湧き出して襲い掛かるアルカリの兵士たちが、本丸の淀殿を手籠めにしようと突き進む。

「アッツぃ、熱いぃっ、ヤ、慎吾・・・熱いぃ、熱いよぉっ」

 ズド、ド、ドォッと注がれる慎吾汁に子宮を焼かれた美都は、叫びをあげながら、ゾグゥッと身を震わせた。

 今日は安全な日。

 でも、慎吾が凄すぎて、できちゃうかもしれない。慎吾の子が欲しい、慎吾がもう一人欲しい。

「・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」

 無数の慎吾兵たちが、そこここで美都の淀殿を犯す阿鼻地獄の中で、美都はとうとう、アクメへと昇りつめた。

 もう何もいらない、慎吾以外は、なにもいらない。

「ッ・・・ハァッ・・・・ハァッ・・・・・」

 食後の運動というには激しすぎるピストンを繰り出し、相互オナニーの日から数日間、悶々をひたすら我慢して装填してきたおたまじゃくしをすべて撃ち込んだ慎吾は、とうとう力尽きて倒れ、エアバッグ以上のクッション性を誇る美都おっぱいに埋まった。

「慎吾さん・・・ありがと」

 役目を終えた慎吾の頭を、美都の掌が撫ぜた。

 憧れの女上司に、頑張ったね、よしよししてもらった。

 疲労と空虚と索漠に満ちた派遣労働者生活のすべてが、それで報われた気がした。

「慎吾さん、凄かった。凄くて凄すぎて、わたし気持ちよくなっちゃった」

「美都ちゃんが可愛すぎるから、頑張れたんだよ」

「可愛くない。わたしなんて、全然可愛くない」

「世界で一番かわいいよ」

 慎吾が、半ば血の引いた肉棒を引き抜くと、牝風呂に満ちた雄液が、蜜壺からトロリと漏れ出てきた。枕元のティッシュで残滓を拭き取って、二の腕を美都の枕に差し出した。

 美都が小づくりな顔を、慎吾の隆起した二の腕に重ねた。

「美都ちゃんとこういう風になれて嬉しい。嬉しいけど、ごめん」

「どうして謝るの?」

「今の僕じゃ、美都ちゃんを幸せにはできないから・・。美都ちゃんを口説くのは、自分の小説を、世に出してからって決めてたんだけど・・・」

 小説。活字で金を稼ぐ夢だけが、何もない派遣労働者生活を、ずっと支えてきた。

 今の自分は、世を忍ぶ仮の姿。ここにいる自分は本当の自分ではないと思うから、職場でどれだけ無能扱いされても気にもならないし、多少の屈辱にも耐えることができた。

 執筆の時間と余力を確保するために、残業や休出はできる限り避け続けてきたし、執筆のために朝早く起きても、タイムカードを押すのはいつもギリギリだった。

 五年間。すぐに投げ出してしまいがちな慎吾にしては長続きしたのは、書くのが好きだというよりも、勉強やスポーツのように、実力がハッキリと数字に現れるジャンルではなかったからだった。

「今はまだ、読み手側の需要と、自分の書きたいものが噛み合っていないだけ・・。なんて信じて、五年も続けてきたけど、僕のやってきたことは、何の実も結んでない。本当は五年間、ずっと自分に言い訳して、人生に真剣に向き合うことから逃げていただけなのかもしれない」

 ダウンライトを見上げながら憂いを浮かべる慎吾の顔は、職場で見せる、締まりのない子供のような顔ではなく、哀愁を帯びた男の顔で、美都は胸がギュッとなった。

「言い訳だっていいじゃない。言い訳しながらでも、愚痴を吐きながらでも、続けられることが偉いことなんだから。言い訳はみっともないことじゃなくて、明日また立ち上がるための、魔法の言葉だと思えばいいのよ」

「ありがとう。そう言ってくれると、救われる。美都ちゃんは優しいね」

「いつも優しくできなくて、ゴメンね」

「いいんだ。女神が微笑むのは、ときどきだけでいいんだ・・」 

 美都は、美都のニオイが染み着いた慎吾を抱きしめ、美都に甘い唾をいっぱいくれた唇をチュッチュした。

「ねぇ慎吾さん。今度の夏季休暇、二人で楽園に行かない?」

 汗をかいて失った水分をペットボトルのお茶で補給し、それを慎吾にも渡しながら、美都が言った。

「楽園・・・?」

「そう、楽園。そこではね、嫌なことも苦しいこともないし、悲しい思い出も、辛い思い出も、全部なくなっちゃうの。二人の楽園でね、気持ちいいこと、沢山するの。どう?」

「・・・行きたいな。そんな場所があるなら・・・」 

 美都ちゃんと二人なら、たとえマンホールの下の下水道だって、楽園だけどね。

 せっかく、楽園に連れて行ってくれるという美都に、それを言うのは野暮だと思って、飲み込んだ。
 慎吾は美都から受け取ったお茶で、ひりついた喉を潤した。

「まさか美都ちゃんとこんな関係になれるなんて、夢みたいだよ」

 始まりは、女の靴のニオイを嗅ぐという変態行為だった。

 嫌われて、罵倒されて、クビになるかと思ったら、女の子の血がベットリこびりついた生理用ナプキンを渡された。それから、リーダー業務でしっぽりとかいた汗を吸い込んだ黒ずみ靴下と、醗酵したシミのついたパンティでオナニーしているところを見られて、向こうのオナニーも見せてもらって、ついには、洗っていない美都の生身のニオイを直接嗅ぎ、己の身体で貫くことができた。

 何もない空っぽのようだった慎吾の人生には、申し訳ないと思えるほどのご褒美を頂いた。もう、ここで死んでもいいと思えるほどの心地だったが、美都はもっと幸せな場所へと、慎吾を連れて行ってくれるのだという。

 楽園――そこではきっと、お風呂には入らず、冷房もつけず、用を足した後ウォシュレットも使わずに、しっぽりと汚れた美都の身体をたっぷり嗅げて、美都の身体にびとびとこびりついた、汗や皮膚の老廃物、恥垢、オリモノ、尿やうんちの残滓などをたっぷり舐められて、ムチムチした美都の身体を、精根尽き果てるまでヤリまくることができるのだろう。

 楽園――人と同じようにやろうとして、ちっとも幸せになれなかった無様な思い出も、小説家を志してから五年間、書いても書いても報われなかった悔しさも、惚れた女に、こっ酷く拒絶されたときの傷の痛みも、何もかも忘れて、汚れた美都と二人だけでいられる場所があるのなら、是非とも行きたい。

「まだ、夢の続きがあるのよ」

 美都の心に刻まれたバッテンを、慎吾が花丸にしてくれた。

 今度は慎吾を、癒してあげよう。

 慎吾と美都の――においフェチと汚れた女神の楽園に、二人で行こう。
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No title

慎吾は憧れるだけの存在だった美都と遂に結ばれましたね。
正社員と派遣社員という垣根も性癖の相性が良ければ関係ないのでしょうね。
ノーマル同士よりもアブノーマル同士の方が関係性は深いものになりそうです。
バーチャルセックスの場面は今の時代の官能小説という感じがしました。
画面越しとはいえお互いの姿が見えるので興奮度は高いものだと思います。
実際のセックスとはまた違った描写になるのでしょうね。
美都が段々と積極的になって慎吾をリードするようになっていますね。
慎吾の臭いフェチがばれたことが良い流れになったのでしょうね。
美都の過去のトラウマは大事な部分ですね。
この部分があることで慎吾という心の傷を癒してくれる人と出会えたことに繋がるのですね。

慎吾は美都にいくら好意をもっていたとしても幼児、扱いの言葉で接しられて馬鹿にされていると感じないのでしょう?
まぁ~好きな女と話せるだけで嬉しいのはわかりますがプライドと言うものがないのでしょうか?
臭いフェチの慎吾と自分の体臭に悩んでいる美都、最高のカップルの誕生ですね。
まぁ~正社員とはいえ三流企業の工員じゃあ派遣とたいして変わらなそうなので上手くいきそうですね
流石に病気レベルの臭い体臭ではいくか外見が良くても普通の男なら一回ヤったら別れるだろうから美都も男を選り好み出来ないだろうからお互いにまさしくベストパートナーですね。
美都と慎吾の楽園がどんなところなのかがキモいような気がしますが覗いてみたいですね。

第1章読みました。この話はテーマは「臭い」ですね。前に書かれていた「なおちゃんのお家」に似ていましたが、女の子のセリフや過去の詳細な描写によってより魅力が増していた様な感じがしました。

No title

一話目は王道という感じなのでしょうか?慎吾は境遇が作者様と重なっているように見えました。二人のその後が気になります。

No title

seasky さん

 憧れのリーダーと結ばれた慎吾はこの世に思い残すことがないくらいでしょう。官能小説を書く上でなぜかわからないけどよくモテる男というのは書きたくないので美都のような美女が慎吾に惚れる上で過去のトラウマという理由付けはやはり必要でしたね。文明の利器を使うのは実体験が生きましたね(あのときは私のオナニーをただ見られただけでしたが・・)

 

No title

まっちゃん さん

 慎吾は小説の方が自分の本当の人生だと思っているので職場で侮られてもまったく気にならないというところですね。慎吾が小説を書いていることを美都が知るという場面は私の中では重要なところだと思っています。

 体臭フェチとノーマルのギャップについてはぜひ皆さんの意見を参考にさせて頂きたいところです。官能小説でも女の体臭について書いている場面はありますが私ほど綿密に描写しようとしている人はいないので・・。なんとかそこを持ち味にしていきたいと思っていますが、どう評価されるかは未知数ですね。

No title

ばかがいこつ さん

 体臭について細かく書いてみたいというところをどのように受け取られるかですね。登場人物の設定や過去の描写などは最低限感情移入できる程度にした方がいいのか細かく書き込んだ方がいいのか自分の中では迷いが続いています。

NEO さん

 官能小説を読み込む中で独特のリズムみたいなものは作れてきましたね。竿役を一人に絞るとハーレムにしなければならずそれは私の人生とあまりにかけ離れているのでこういう形式の方があっているのかもしれません、
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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