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外道記 改 4


                           4


 弱みを握っている東山から金銭を搾取することで、俺の生活は豊かになった。消費者金融からの借金の支払いに余裕ができ、食生活も改善され、体調もよくなった。くたくたになっていた服も買い換えられた。

 働かずに生活することも可能であったが、とりあえず仕事は辞めなかった。東山が俺の言う通りに金を払ってくれるか、まだ様子を見る必要があった。

 丸菱運輸の倉庫で仕事を続けると決めたのならば、責任者の立場である東山を使い、労働環境をより良いものにしようと考えるのは当然である。たとえば、小うるさいハエを追っ払うということも、東山を使えば簡単にできる。

「おい。お前、さっきから手が動いてないぞ。ちゃんとやれ」

 東山に特別扱いされているのをいいことに、サボりたい放題の俺に、東山腹心の部下である中井が注意をする。自分の職場で誰が一番力を持っているのかわからない、愚か者である。

「中井。てめえ、俺に借りがあること、忘れたわけじゃねえだろうな?」

「俺は何も間違ったことはしていない。仕事をしない奴を殴って、何が悪い」

 世間とは隔絶された奴隷工場だけのルールが、誰にでも通用すると思ってしまっている猿には、躾をしなければならない。俺は東山のケータイを鳴らし、作業場に呼びつけた。

「どうした?」

「いや、この野郎が・・・」

 中井が、俺が東山の番号を知っていたことに驚きながらも、俺のことを指さし、東山に一緒に叱ってもらおうとする。

「わかった。俺から言っておくから、お前は自分の仕事に戻れ」

「しかし・・・」

 俺のこととなるといつも遠慮しがちな上司に疑念を抱いたらしい中井が、今日こそは東山に俺を叱責してもらおうと粘る。が・・・。

「いいから、とっとと消えろっ!」

 上司の命令は絶対、先輩の言いつけは絶対の軍国教育で洗脳された丸菱運輸の社員がそう一喝されたら、もう引き下がるしかない。中井はにやつく俺を後目に、他の作業員の指導、監督へと戻っていった。

 その中井が最近とくに熱心に指導しているのは、近ごろ急激に増えた、女の派遣労働者が固まって作業をしているテーブルである。

 丸菱運輸の倉庫内作業は簡単な梱包作業で、特別力がいる仕事ではないため、女でも十分できる。派遣労働者の数は男女比率に大差はないが、工場での作業は、物理的体力的に男しかできないというものが多いため、必然的に、女でもできる仕事には、女が固まりやすいという傾向はある。それにしても、ここ一か月の間で、二十代~三十代前半の女が五人も入り、男や三十代後半以上の女は、カムフラージュ程度に、たったの一人しか入ってきていないというのは、異常な偏り具合である。

 背景にはもちろん、俺の圧力があった。一か月前から、人事の権限を持つ東山に、海南アスピレーションからスタッフの紹介があったときは、若い女を積極的に採用するように命じていたのである。醜く汚く、間もなく閉経を迎えて母乳が出せなくなるゆかりを捨て、新しい、若い女体を手に入れる計画を、本格的に始動させたのだ。

 派遣労働の職場で男女が出会い、交際に発展するケースは意外に多い。正社員で勤めている会社なら、職場内恋愛は成立しなかった場合のリスクも大きく、気に入った相手がいても声すらかけられないこともあるだろうが、最初から契約期間が決まっており、嫌になったらすぐ辞めてしまえばいい派遣労働なら、躊躇うことなどは何もなく、積極的に異性にアタックをすることができる。

 女はネットで漁るという手段もあったが、如何せん手間と時間がかかる。しかも、地方在住の俺の場合、出会い系などに登録しても、近所に在住している女がそもそも少ないという問題もあった。

 それに・・傾向として、現在登録している派遣会社、海南アスピレーションの女は、特に落としやすいという見立てがあった。

 そもそも、丸菱運輸の倉庫のような、飛ばれるリスクの極めて高い劣悪な労働環境の会社に、貴重な弾である派遣スタッフを派遣しなくてはならないというのは、海南アスピレーションが、丸菱運輸と同じようにろくでもない派遣会社だからである。

 派遣会社もピンキリで、十分な体力がある大手ならば、派遣先の企業もある程度選ぶことができる。スタッフを人間扱いし、親身に接していた方が、人材が定着し、口コミやネットの書き込みで評判も広がり、長い目でみれば会社の利益になる。

 だが、短いスパンでの利益を考えていかなければ会社がもたない海南アスピレーションのような零細の派遣会社では、派遣先がどんなブラックだろうが、他に仕事がない以上、スタッフを押し込んでいかなければならない。機関銃で武装した相手が待つ戦場に、竹やりしか持っていない兵士を送り込むようなものだから、当然、人材は定着しない。だから利益を上げるための方法も、闇金の発想と同じように、少ないスタッフから、いかに搾り取っていくかという考え方になっていく。

 海南アスピレーションのように、出勤時の家出報告、退勤時の終了報告に罰金が科せられるなどというのは、大手の派遣会社ではありえない、とんでもない話だ。百歩譲って、家出報告は遅刻防止のため大事なのはわかるにしても、仕事が終わった報告などは、日々派遣先が異なるスポットならともかく、派遣先が固定されている丸菱のスタッフにはまったく必要ないはずである。仕事が終わった後は気が抜けているから、うっかり忘れてしまう可能性も高い。その終了報告の方に、より大きな罰金額が設定されている。それで儲けてやろうという会社の魂胆が明らかで、端から、末永く勤めてもらおうとは思っていないのだ。

 そんなアコギなことをする派遣会社にしか勤められないのは、数々の不行状により、大手の派遣会社を軒並みアウトになった、俺のような「派遣難民」か、会社のどんな劣悪な労働条件にも何の疑問も抱かない、極度の情報弱者だけである。

 ここがダメならホームレスになるしかない、最後の受け皿ともいえる海南アスピレーションのような派遣会社に登録するしかない女は、まとな社会常識がない。社会常識がない女がオツムのねじが外れているとは限らない。オツムのねじが外れた女が股も緩いとは限らない。しかしその可能性は高いといえる。

 勝算は十分にあると見込んだ俺は、東山に、若い女を積極的に採用し、また、その女たちが定着するよう、俺と同様に、細かいことには目を瞑って接するように言い渡していたのである。

「おい、お前、仕事中に何やってんだ!」

「は?何って、汗で化粧が崩れてたから、治してたんだけど?」

 俺でさえ信じられないような理由で中井に注意をされたのは、いまどき天然記念物ものの山姥メイクを施した女である。山姥メイクといっても、その女が当時ブームの中心にいた女子高生であったのは推定で十年以上も前であり、そろそろ本当の山姥に近づいているような感じである。同じテーブルには、何か変なキャラクターの大きなぬいぐるみを、おんぶ紐でおぶりながら働いているような女や、仕事中にイヤホンで音楽を聴きながら働いている女もいる。

 そんな常識外れの女どもに怒鳴ることもできず、我慢して使わなくてはならない東山のストレスは半端ではないようで、それが他の、男や三十代後半以上の女の派遣スタッフに余計に厳しく当たり散らし、辞めさせてしまう原因となり、空いた枠にまた常識外れの女が入ってくるという、東山にとっては耐えがたい悪循環を生んでいた。

 東山が、若い女の派遣スタッフと契約破棄するのは、女が俺の求愛を断ったときだけだ。アホのくせに俺からの誘いを断るような腐れマンコは、この最後の受け皿からも放り出してやる。その結果、昼の世界に居場所を失い、身体を売るしかなくなろうとも、知ったことではない。ここに丸菱運輸の倉庫は、俺のハレムと化したのである。

「おい・・・。その、なんだ・・。女ばっかり採れとか、優遇しろっていうのは、そろそろ終わりにできないか?あちこちで不満の声が出てる。俺たちの関係が怪しまれるかもしれんし、そうなったらお前もまずいだろ・・?」

「っせーなー、わかってるよ。しょうがねえだろ、ちっと難航してんだよ」

 東山からも無理を指摘されており、それは俺自身も重々わかっていたのだが、方針を改めるわけにもいかなかった。俺がなぜに、こんなアホ女どもを集めなければいけなかったかといえば、それ
には海より深い事情があった。

 西側に五個、東側に五個、全部で十個並んでいる作業テーブルのうち、俺がついている東南側から一番遠い、西北側のテーブルで、ひとりの三十路女が、俺が遠くから、嫉妬と憎悪に満ちた昏い視線を向けているのにも気づかず、仲間と和気あいあいやりながら、楽しそうに作業をしている。

 細い奥二重の目に、色素の薄い唇、太目の眉。彫りの浅くのっぺりとした、平安時代の公家のような顔だち。髪型は戦中戦後の小学生みたいなおかっぱ頭にしてしまっており、取りえといえば色が白いことくらいで、その肌すらも、まだ夏場だというのに、長袖の裾の長いワンピースで隠してしまっている。

 けして美人ではなく、性的魅力もなく、若くもない女だが、その女は、俺が一か月半前から、激しく愛している女だった。

 下川莉乃。あの女が現れたことで、東山のお蔭で上向いてきたはずの俺の人生に、早くも陰りが見え始めてしまった。


 下川莉乃が丸菱の倉庫にやってきたのは、東山に若い女を掻き集める命令を出してから、十日後のこと。朝方、控室の扉を潜ったまま止まってしまい、不安げな面持ちで室内を見回している彼女にはじめに声をかけたのは、派遣スタッフのリーダー役を気取る深山であった。

「おい、なんだ君は。なに突っ立ってるんだ。名簿に名前は書いたのか?名前も書かずに何やってるんだ。名前も書かないのにこんなところにいるのは、君、住居不法侵入だぞ?」

 海南アスピレーションの派遣スタッフは、会社に出たらまず、丸菱運輸の社員が点呼をとるための名簿に氏名を記入しなければいけない決まりになっているのだが、勤務初日だというのに海南アスピレーションの営業の付き添いもなく、一人で勤務に入らされた新規のスタッフが、それを知るはずもない。不安だらけの後輩に、こういう最低な応対しかできないのが、深山という男である。

「新しい人ですね。海南のスタッフは、出勤したらこの名簿に名前を書くって決まりになってるんですよ。名前を書いたら、女子のロッカーでエプロンを着て。作業場に出るまでは、ここでゆっくりしていていいですから」

 俺は新人いびりに鼻息を荒くする深山を押しのけて、初日からクソのような奴に出会って泣きそうになっている下川莉乃に、朝の準備について説明をしてやった。

 下川莉乃を初めて見た瞬間、俺の胸は激しく高鳴った。下川莉乃の容姿は凡庸だが、もともと俺の好みの対象は、十点満点中五点程度の、並みの女である。ストライクゾーンが広いということではなく、内角高めや外角低めしか打てないということだ。ゆかりのような目を背けたくなる醜女――完全なボール球では論外だが、ちゃんと女の形をしているのであれば、タレントのような美女よりも、もっと俺の身の丈にあった女の方がそそるのである。

 若干驚いたのは、彼女の年齢であった。オドオドした印象から、最初は俺よりもだいぶ下ではないかと思っていたのだが、後で本人の口から聞いて明らかになった年齢は、俺と同じ三十二歳だという。しかし、それでも十分許容範囲。今までの間、それより十二歳も上のゆかりをずっと抱いてきたことを考えれば、「ピチピチ」ともいえる。総合点をつければ、下川莉乃は合格どころか、お願いしてでも付き合いたいほど、魅力的な女だった。

「じゃあ、作業場に向かいましょうか。最初は、僕が要領を教えますから」

 一緒に作業場まで出て、同じテーブルで仕事をしてみると、莉乃は動作はテキパキとしており、物覚えもよく、すぐに仕事には馴染んだ。昼食も隣同士の席でとったのだが、大人しそうな印象だが暗くはなく、コミュニケーションは普通に取れ、冗談を言えばちゃんと笑ってくれるなど、ユーモアの心得もあるようだった。日常会話すらままならないゆかりとは大違いで、知能面はまったく正常であるかと思われたのだが、午後の作業で莉乃は、育ちの良さそうな見た目であるにも関わらず、こんな掃き溜めのような底辺派遣会社に来ることになった理由である、大きな欠陥を露呈することになる。

「莉乃さん、二本松化粧品って書かれてる段ボールを、取ってきてくれないか」

 俺は莉乃に段ボールの補充を頼んだのだが、段ボール置き場に行った莉乃が、いつまでたっても帰ってこない。迷子にでもなったのかと思って見に行くと、莉乃は段ボール置き場の前で、右に行ったり左に行ったりと、うろうろと彷徨っている。心配になって近づくと、後ろから深山がやってきて、先に声をかけた。

「おい、君、何サボってるんだ?ん?」

「いえ、あの・・二本松化粧品っていてある段ボールが見つからなくて・・・」

「二本松化粧品?ここにあるじゃないか。君は目が見えないのか?ん?」

 深山が指さすケースには、複数の段ボールが、畳まれた状態で積まれている。出荷先に合わせて、それぞれ、書いてある文字やデザイン、サイズが異なるのだが、莉乃はその中からなぜか、二本松化粧品の段ボールを抽出することができないでいる。

「どうした?君は文字が読めないのか?ん?ん?」

 深山にいじめられて、莉乃はまたおろおろして泣きそうになってしまう。この場面は俺が代わりに取ってやることで解決したが、勤務終了後、派遣会社の出勤表に出退勤、休憩の時間を記入するところで、問題はまた発生した。俺の簡単な説明にはきちんと頷き、納得した様子でいたはずの莉乃は、いざ書く段階になると、出勤表のどの項目にどの時間を書き込めばいいのか、わからない様子で困ってしまっているのである。 

 莉乃は、もしかして本当に文字が読めないのではないだろうか。それから二、三日と一緒に勤務をして会話を重ね、ある程度親しくなったところで、俺は真相を確かめてみた。

「莉乃さん。君はひょっとして、ディスレクシアの人なんじゃないか?」

 ディスレクシア――日本語で難読症や失読症、識字障害などと言われる障害の、英語圏での名称である。この障害の持ち主は、脳の神経伝達回路の異常で、たとえばbとdなど、反転文字の識別が困難であったり、文字の間隔が詰まってみえたりするなど、文字の認証に支障をきたす。そのため、授業の形式を文字によるインプットに依存している一般の教育法では十分な成果を上げられず、学齢期に劣等生の烙印を押されやすい。

 発達障害や学習障害に理解のある米国ならば、専用の教材を用いた学習により、健常者と同程度の学力を身に着け、将来、社会的地位の高い職業に就くといった例もあるが、先進国中でも発達障害の理解が遅れており、重度の知的障害以外はすべて「努力」で克服できると思っている人間も今だに多い日本では、本来の潜在能力を開花できず、社会的地位の低い仕事をやるしかなくなったり、引きこもりになってしまう例が多数派を占める。

 莉乃の特徴を見れば、何らかの学習障害を抱えていることは明らかだった。俺もディスレクシアについての知識が豊富なわけではないが、日本であまり馴染みがない横文字を口にするだけでも、それに対して理解があるようには思わせられる。莉乃が俺に心を許してくれるキッカケになると思ったのだが、俺の問いに対する莉乃の答えは、意外なものであった。

「ディ・・・なんですか、それは」

 小首を傾げる莉乃は、ディスレクシアという名称を知らないようなのである。

「いや、その・・・あれだろ?莉乃さんは、読み書きがうまくできない障害の持ち主なんじゃないのか?」

 止む無く、「障害」という直截な表現を用いて問うてみたのだが、莉乃はこれに、少しムッとしたような表情を見せる。

「確かに、私は字がうまく読めないですけど・・・。五組さんとか、七組さんとかにいたことは一度もありません。だから、障害者じゃないですよ」

 五組とか七組というのは、小学校や中学校での特殊学級のことだろう。どうやら莉乃は、ゆかりと同じく、障害者でありながら、健常者の世界に無理やり適応できるよう育てられたクチのようだった。
 
 それから莉乃は、俺に自らの生い立ちを語り始めた。

「小学校二年生のころから、私の勉強はみんなから遅れていました。ひらがなも読み間違えるし、うまく書けない。算数も、かけざん九九なんて、いえるだけで計算はできません。足し算引き算も、指を使わなければできません」

 そんな学力では、確かに丸菱運輸の倉庫作業のような単純労働ですら、大いに支障をきたすだろう。コミュニケーション面では正常と思っていたが、もしかしたらそれも、「雰囲気」を察知することで、かなりの部分を補っていたのかもしれない。

 たとえば、俺のギャグに笑ったように見せても、それは言い回しのおかしさにウケたのではなく、ただ単に、この人は何か面白いことを言ったつもりなのだろうと察することで、ウケたように見せたということである。学習障害系の持ち主は、語彙の拙さを補うため、相手の表情や声のトーンから心を読み取る能力が発達するケースがあるという。莉乃もそうした一種の異能を身に着けることで、普通学級において、健常者の世界に適応してきたのではないか。

「でも、お父さんやお母さん、先生、クラスのみんなは、そんな私を一生懸命励ましてくれました。テストの点が悪い代わりに、授業の準備の手伝いをしたり、ノートをきれいに作ることで、三とか四をつけてくれました。学校が終わったら、みんなで私の家に集まって、お菓子づくりとかをして遊びました。中学二年生のとき、新しい副校長先生に七組さんに入れられそうになったとき、みんなで署名を集めて止めてくれました。みんな私を、障害なんてないよって言ってくれたんです」

 その結果、莉乃は本来持っていた潜在能力を十分に開花できず、奴隷工場でしか働けない底辺派遣労働者になってしまった。莉乃は、友人や教師らが自分を差別しなかったと感謝しているようだが、人の個性や能力の差を無視して、何でもかんでも横並びに走らせようとすれば、それこそ埋めようのない差が生まれてしまう。人は歩む速度も違えば、ゴールまでの距離も人それぞれなのだ。差別がなんでも悪いと思った大間違いで、良い意味での差別が必要なときもある。

 我が国で障害者を扱った書物やテレビ番組が持てはやされるのはいつも、「健常者の世界で、健常者と同じように頑張る障害者」のおとぎ話だけだ。健常者の世界に必死に食らいつき、仲間に入れてくださいという話だけしか認められず、障害者が社会の中でいかに苦労をし、劣等感を抱き、それを埋めるためにどんな保障を望んでいるかといった現実の話はタブーとして扱われ、隅に追いやられていく。

 健常者の世界で頑張ろうとする障害者のおとぎ話に涙する健常者のほとんどは、本当にその障害者の幸せを思っているわけではなく、頑張る障害者を見て涙している、自分自身に酔いしれているだけである。その根底には、受け入れ、迎え入れる立場としての傲慢さと優越感がある。無意識だろうが、心のどこかで、障害者を見下しているのである。

 学生時代、莉乃の周りにいた連中も、莉乃のことを想っていたわけではなく、莉乃を差別せず平等に扱おうとする、己に酔っていただけであった。その証拠に、莉乃を散々自分たちのおもちゃにしておいて、卒業した後は知らん顔を決め込んで、掃きだめのような職場に平気で送り出しているではないか。本当に莉乃のことを想うのなら、中学校の副校長のように、莉乃を特殊学級に入れ、然るべき教育をすることを望むはずだ。もし、莉乃の友人とやらの中に、莉乃の話を就職面接か何かでアピールをし、自分は優良企業に内定をもらったとかいう者がいたとすれば、その者の罪は万死に値する。

「中学校を卒業してからは、おしぼり工場に就職しました。でもそこでは、私をからかう嫌な人がいて辞めました。でも私は、それからも、色んな仕事を探して、一生懸命頑張りました。お母さんは言ってくれました。俳優のトム・クルーズさんも、文字がうまく読めなかったんだって。それでも、一生懸命努力して、スターになったんだって。だから私も、一生懸命頑張れば、きっと幸せになれるんです」

 子供に無償の愛を注ぎ、正しい道へと教え導くはずの親からすらも、ただ己に酔うためだけのおもちゃにされる莉乃を見て、俺は何か、無性に不憫な気持ちとなってしまった。

 強烈過ぎる自我を持て余し、異常な嫉妬心や執着心に散々苦しめられてきた俺も、社会の中で生き辛さを抱えているという点では、莉乃と同様である。だが、莉乃と俺とでは、双眸から見えている世界が違う。俺は自分をどうにもしてくれなかった親や社会に対して強い恨みを抱き、ずっと抜け出せない桎梏の中でもがき続けているという自覚があるが、あくまでも純粋な莉乃は、自分が親や友人におもちゃにされてきたという自覚はなく、今もおとぎ話の主人公として、幸せに生きているのだと思い込んでいる。

 哀れなこの女に、真実をわからせてあげたい。莉乃をおとぎ話の中から救い出し、ともに世間に恨みをたぎらせ、復讐者としての生涯を歩んでいきたい。このときから俺は、莉乃を単に、ゆかりよりも十二歳も若く、母乳を出せる年齢が長い女体を手に入れる目的だけでなく、真のパートナーを求める目的で手に入れたい、と考えるようになった。

 莉乃に対する思い入れは強まったが、この時点では、口説きは慎重に進めようと考えていた。カルト宗教の洗脳を解く場合においても、頭ごなしに相手の信仰を全否定することは、余計に依怙地にさせてしまうだけで逆効果になる。俺はまず、莉乃に自分が味方だということを認識させ、信頼を深める作業を、地道に進めていくことにした。

「莉乃さん、おはよう。昨日の残業の疲れはとれたかい?」

「弁当、自分で作ったんだ。うまそうだね。いい奥さんになれそうだ」

「最近、作業の手が早くなってきたね。器用な人に入ってもらってよかったよ」

 仕事中も休憩中も、常に莉乃の傍に自らのポジションを確保し、積極的に声をかけていくことで、莉乃との距離を縮めていこうとする俺の様子は、誰が見ても明らかに、莉乃に気がある風であったろう。莉乃の方も満更ではない様子で、向こうからも積極的に話しかけてきたし、仕事で困ったときは、まっ先に俺のところに相談に来るようになっていた。

「おっ。仲の良い二人が来たぞ!」

「なんか君たち、カップルみたいだなあ」

 会社の送迎バスの中で俺とよく話す、四十代の派遣スタッフ、田辺などは、いつも一緒にいる俺と莉乃を茶化して、二人がくっつきやすくなる「雰囲気」を作ってくれた。莉乃に恋心を抱いたことで「ウキウキ」としてきた俺は、周りから好意的に受け入れられるようになり、莉乃や田辺以外にも、色々な連中と会話を交わすようになった。

「蔵田くんって、ずっと暗いヤツだと思ってたけど、話してみると結構面白いヤツだったんだな」

「蔵田くん、この前してくれた、高校時代のマラソン大会の話、続きを聞かせてくれよ」

 昼休みは毎日のように、同僚の連中に囲まれて雑談にふけるようになり、その分、莉乃と会話をする機会は少なくなってしまったのだが、莉乃に社交性をアピールする上ではいいことだった。昼休みの会話には莉乃もよく加わっており、俺の話にはウケているようであった。

 脈あり――。自信を深めていたところで、大きな事件が起きた。

 その日、俺はいつものように仕事をサボり、午後の作業が始まるやいなや休憩室に引っこみ、ゲームに興じていた。三十分ほどが経過してからまた作業場に戻ったのだが、入口から莉乃が作業をしているテーブルの方に視線をやったとき、妙な様子に気が付いた。莉乃が何かそわそわとして、落ち着かない感じなのである。

 俺はすぐにピンときた。莉乃は排泄を我慢している。頼りになる俺は傍におらず、東山や中井らコワモテ社員が目を光らせている状況で、トイレに行くことを言い出せないでいるのだ。東山たちだって漏らされる方が困るだろうし、トイレくらい行けばいいのにと思うが、以前の職場で、休憩時間外にトイレに行くと言ったら、嫌な顔をされたといったような思い出があるのかもしれない。

 ここですぐに莉乃のところに戻り、さりげなくトイレに行くことを促して助けてやれば、俺の株はますます上がっただろう。しかし、そのときの俺は、莉乃が失禁する光景をこの目に収めたい欲求が勝ってしまった。この世に三十路女は星の数ほどいるが、三十路女が失禁する光景を見られる機会など、一生に一度あるかないかである。頑張っても手に入るかわからない大きな喜びより、黙っていれば手に入る小さな喜びを、確実に取りに行きたかった。俺は作業場の入口で、扉の陰に隠れ、両足をピンと張ったり、くねくねさせている莉乃の様子を固唾を飲んで見守った。

 十数分後、俺の願い通りに、大洪水が起こった。莉乃の足もとには瞬く間に水たまりが広がり、それはすぐに湖となった。土砂崩れまでもが同時に起こってしまったようで、湖は茶色に染まり、倉庫内には耐えがたい悪臭が広がった。莉乃の半径五メートル以内からは人が去り、作業が止まった倉庫内に、魂を震わせるような莉乃の慟哭が響き渡った。

 股間を膨らませて事態の推移を見守る俺の目に、とんでもないものが飛び込んできた。なんと、豚男の宮城が、バケツと雑巾を持って、号泣する莉乃に近寄り、床にぶちまけられた莉乃の排泄物を掃除し始めたのである。

 有難迷惑という言葉を、ここまで完璧に実践できる人間がこの世にいるなど、信じられなかった。ここまで他人の気持ちをまったくわからない人間を見たのは、東山以来だった。

 すごいのは、これが人に対して偉そうに、女に失礼云々を言っていた男の行動というところである。「ここに我あり」と叫んでいるかのような威風堂々たるその姿に、俺はしばし瞠目し、その場を一歩も動くことができなかった。

「あんた、もういいから。私が代わりにやるから」

 見かねて、三十代後半の女の派遣スタッフ、松原が、宮城から雑巾を奪い、掃除を代わった。どんな馬鹿でも、いい加減このあたりで察せそうなものだが、己の行為があくまで相手のためになっていると信じて疑わない宮城は、今度は「さあ、待機室へと行きましょう」などとわけのわからないことを言い出して、生き恥を晒し、精神崩壊寸前の莉乃の背中に手をやったのである。

「ふざけんな、変態ヤロー!あっちいってろ!」

 この場面で、男はそれをやってはいけない。他に女がいない状況でもない限り、それは男のやる仕事ではない。当たり前すぎること――敢えて口に出して言う必要もない、誰もが感覚として身に着けているべき当たり前のエチケットであったゆえに、松原も、咄嗟に言語化することができず、とりあえず怒鳴るしかなかったのだろう。女から変態とまで言われ、ようやく宮城も引き下がったが、その表情には憮然とした色が浮かんでいる。いかにも不完全燃焼の様子であった。

 その後、莉乃は松原に付き添われて待機室へと連れていかれ、松原が近所のスーパーで買ってきた服に着替えて、家へと帰った。倉庫では、莉乃が汚した床の掃除、除菌が完了した後、何事もなかったように作業が再開された。

 貴重な人生経験ができたことは満足であったが、こうなっては、莉乃を落とすことは諦めなければならなかった。結局、手を繋ぐことさえできなかったが、すべては自業自得、俺が助けに入らなかったせいである。どうせ、職場には若い女が毎月のように供給されることになっている。俺の気持ちは案外サバサバしていた。

 ところが、ここで奇跡が起きる。なんと、翌日莉乃は、何事もなかったかのように、職場に復帰したのである。いつもと同様、夏だというのに、素肌を見せることを拒んでいるかのような長袖のワンピースを着こんだ莉乃が「なにか問題でも?」とばかりに、すまし顔で控室に入ってきた瞬間は、誰もが我が目を疑い、凍り付いていた。中井や深山も唖然とし、東山でさえも、「次は、トイレに行きたかったら遠慮しないでいえよ・・」などと、カマキリ顔をひきつらせて言うのが精一杯であった。

 俺も驚きはしたが、すぐに心は躍った。実家暮らしで、生活に困っているわけではない莉乃が、生き恥以外の何物でもない醜態を晒した職場に復帰するのは、それなりの重大な理由があってのことに違いない。そしてそれは、職場において、莉乃の話し相手を独占している俺との縁を切りたくないから以外に考えられなかった。

 このときの俺は本当に幸せに包まれており、皮肉な話だが、いつも五キロで千円の家畜の飼料米しか食べさせていないゆかりに、栄養豊富なコンビニ弁当を与えてやったり、油粘土を買ってきて、大好きな粘土遊びをさせてやったりなど、優しくしてやったりもした。いずれお払い箱になって捨てられる運命であるとも知らずに、ゆかりも無邪気な笑顔を浮かべていた。

 自信を深めた俺は、当初、長期戦で臨む予定だった莉乃攻略のピッチを早め、莉乃を食事に誘ってみた。確実に約束は取り付けられると思われたが、莉乃は意外にも、俺の誘いを断ってきた。

「私はみんなとしか遊ばないんです。蔵田さんと二人で会うとかはできないです」

 残念ではあったが、信じられないほどのショックではない。見た目からしても、莉乃は男に免疫がないのではないか。もしかしたら、三十二にしてまだ処女なのかもしれないと、むしろ期待感も湧いた。

 この頃になると、田辺以外の連中も、俺が莉乃に抱いている思いには気づいており、勤務中、莉乃と俺が同じ作業テーブルを取れるように気を使ってくれるなど、周りが俺の恋を後押しする気配も見え始めた。

 遅れてきた青春――こうして他人から慕われ、友人に囲まれるのは、東山と繰り広げた「生存競争」以来のことだった。周りから特別な目で見られ、誰もが「蔵田マジック」を期待し、すべてが俺を中心に動いていたあの時期に比べればまだ物足りないが、今も今で、まあまあ充実していた。素直に、楽しかった。

 ただ、これはあくまでオマケ。莉乃を手に入れられなければ、俺は「リア充」でも何でもない。男と話しているだけでは、股間の疼きは癒えはしない。

 名誉も大切であるが、実利はもっと大切である。愚にもつかない人気だけあって、適当に煽てられるだけで、金も女も手に入らないよりは、すべての男に嫌われてでも、一人の女が欲しかった。莉乃が手に入らなければ、こんな吹き溜まりのような集団での人気などは何の意味もない。出会ってからまだ一か月。しかし、派遣には契約期間というものがあり、いつまでも丸菱に莉乃がいてくれるという保証はない。けして焦っているわけではないが、少しずつでもいいから、進展が欲しかった。

 流れが変わったのは、莉乃が言葉通りに、俺以外のみんなもいる職場の飲み会に参加した席でのこと。このとき、アルコールの入った莉乃が放った一言により、人を疑うことと、物事を悪い方に考えることにかけては右に出る者がいない俺は、この先けして抜けられることのない、深い靄の中に足を踏み入れてしまう。

「莉乃さん、前に、彼氏とかいたの?」

 しっかり莉乃の隣を確保していた俺は、酒の勢いを借りて、今、一番気になっていることを尋ねてみた。考えてみれば、三十二歳の女には失礼な質問で、口走ってしまったときは若干後悔したが、莉乃は特に嫌な顔はせず、コクリと首を縦に振った。

 処女である可能性はなくなってしまったが、莉乃の年齢を考えれば、もともと期待する方がおかしな話である。まだこの時点では、なにも問題はなかった。いまにして思えば、ここで質問を打ち切っておけばよかったのだ。

「へえ。どんな人だったの?」

「すごくモテる人でした。その人とはほうこうせいの違いで別れましたけど、今でも尊敬はしています。次もそういうモテる人と付き合いたいです」

 これが俺を悶々とさせた。ただのイケメン好きということならまだしも、「モテる人」と、他人の目線を重要視したような言葉を使っているのが曲者である。

 これを生真面目に解釈しようとすれば、莉乃が男を選ぶ基準は、自分が好きかどうかよりも、他人から見て、その男がどう評価されているかが重要、ということになる。もしかして、地味な見た目と、語彙が拙いことから醸し出されるピュアな雰囲気はとんだフェイクであって、莉乃は男をルックスや社会的地位でしか判断せず、男を己を引き立てるアクセサリーのようにしか見れない、とんでもないミーハー女だったのではないのか。

 他人に細やかな気配りができないくせに、他人の細かいところが気になって仕方がない。おとぎ話の中に幽閉された莉乃を哀れだと思う反面、気づかぬうちに、哀れな莉乃を理想化し、囚われの姫を救い出そうとしているヒロイズムに酔いしれていた俺は、莉乃も一皮むけば所詮は売れ残りの三十路女であり、売れ残るには売れ残るなりの理由があった・・・・のかもしれないという、ある意味当たり前の真実を突き付けられ、アイドルの恋愛が発覚したオタクのような悲憤に苛まれていた。
 
 莉乃を疑いたくないと願う俺をあざ笑うかのように、この辺りから徐々に、職場の人間関係は、俺にとって好ましからぬ状況へとなっていく。

「莉乃ちゃん、読めない字があったらいつでも言ってね。すぐに教えてあげるから」

「できないことは全部、代わりにやってやるよ。莉乃ちゃんは自分ができることを頑張って」

 莉乃の抱えた障害のことは、やがて仲間の派遣スタッフ全体が共有する情報となっていき、それは皆にとって、好意的なものとして受け入れられた。これまでバラバラだった海南アスピレーションの派遣スタッフたちが、みんなで莉乃を支えるという、一つの思いで団結するようになったのである。それは莉乃を独占したい俺にとっては、非常に好ましからざる空気であった。

 純粋無垢に見える莉乃は、確かに現代社会で人が失ってしまったもの、本来人が大切にしなくてはいけないものを持っているように見える。いつも健気に仕事を頑張り、人に笑顔を振りまくことを忘れない莉乃の周りに人が集まってくるのはわかる。

――私はみんなとしか遊ばないんです。蔵田さんと二人で会うとかはできないです。

 語彙の乏しい莉乃の発言の中に、意味のない言葉はない。私はみんなとしか遊ばないんです、とは、「私はみんなの莉乃なんです」。莉乃は、自分が小さい頃から、健常者の連中にただのおもちゃにされてきたのだとは知らず、自分は常にみんなのアイドルで、ちやほやされてきたのだと思い込んでいる。そして、その自分をヒロインとしたおとぎ話のような世界が、この丸菱運輸の倉庫にも再現されることを予感していた。だから、勤務中に脱糞するという醜態を晒しながらも、莉乃は丸菱に残った。俺のことなどは、自分を引き立ててくれる大勢の脇役の一人としか思ってなかったのだ。

 莉乃が予感した通り、あの事件で莉乃の排泄物を処理した松原が中心となり、莉乃をみんなで支えていこうという雰囲気が、派遣スタッフ全体に行き渡っていった。莉乃は、皆の前でうんこを漏らすという生き恥を利用し、己をお姫様とちやほやしてくれる「王国」を築き上げることに成功した。

 かつて、東山との「生存競争」を繰り広げていた時期の俺は、紛れもなく、俺を王とする「王国」の中心にいた。権力の座に人一倍執着の強い俺にとって、それは大変な心地よさを感じるものであった。

 権力の座に人一倍の執着を見せていたのは、俺のライバルである、東山も一緒であった。一見、イジメのようであったあの出来事は、世間というものに溶け込めない人間――自分の世界を作り出し、他人から特別扱いされなければ生きていけない俺と東山が、お互いの王国の領民を奪い合って繰り広げた、まさに「生存競争」だった。

 他人から特別扱いされなければ、生きていけない――莉乃もあるいは、俺や東山と同じ人種だったのであろうか。だとするならば、俺と莉乃は最悪の相性である。磁石の同じ極同士は、永遠にくっつくことはない。長いこと同じ空間にいれば、いずれ争うことになってしまうかもしれない。

 職場で莉乃との交流の機会を重ねるうちに、徐々に莉乃の受け入れがたい性質が明らかとなっていき、俺のショックは大きかった―――が、落ち着いて考えてみれば、まだ、すべては俺の思い込みに過ぎないと、楽観視できる段階ではあった。

 莉乃が処女ではないからといって、歪んだ男性観の持ち主とは限らない。莉乃が皆と仲良くなったからといって、俺や東山と同じ人種であったとは限らない。俺の憶測がすべて外れており、莉乃が俺の求愛を受け入れ、彼女をおとぎ話の世界から救いだし、現実の世界へ導き出してあげられる未来だって、まだ夢みていてもよかった。

 最悪、莉乃が俺を受け入れてくれなくてもいい。惚れた女を抱けないだけなら、まだ耐えられる。

「蔵田さんと二人で会うとかはできないです」、が、「俺と二人で会うことができない」ではなく、「男と二人で会うことができない」だったならば、俺が狂うことはない。

 北関東ローカルの運送会社、丸菱運輸・物流倉庫――泥底の城のお姫様を気取る莉乃に、「王子様」が現れなければ、俺はまだ平気でいられる。惚れた女を他の男が抱くのでなければ、俺は莉乃のおとぎ話の中でも生存することはできる。

 東山に、現在計画が難航しているといったのは、俺の恐れる展開が実現してしまったということである。
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津島 博行

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1987年4月3日生 男性
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