犯罪者名鑑 宅間守 6


 ~後編~ 定めの地へ――宅間守、大阪池田小までの”彷徨”


たくまあ



精神病院


 
 父、武士との「決闘」から暫くして、守は自らの意志で、精神病院へと入院しました。当事者の声を聞いていただいた方が状況がわかりやすいと思うので、父、武士のインタビューを掲載します。

「まあ、そんなんしてレイプ犯罪熱中してたとき、たまたま奴は一個だけ引っかかったわけよ。それは不動産賃貸物件の紹介案内をした際にやった事件や。女の客を部屋に上げて犯ってしまうもよし、合鍵ももっとるさかい、契約成立すれば入居してからいつでも犯れるし、趣味と実益を兼ねてヤツにはもってこいの仕事やったんやろね。この件の捜査が始まっとったことを察知したのか、今思えばあれほど入院するの嫌がっとった精神病院に、己から急に飛び込んでいったのはやはりそれやろ。守の犯罪ライフプランによると、キチガイの実績をここんとこでちゃんと積んどけば、後々女の件でも使えるちゅうこっちゃ。ヤツなりに悪知恵働かせたうえでのことやろ。パワーアップや。犯罪者も進化するっちゅうの。昭和五十九年の十二月のことや」

 武士の推察通り、守が自ら精神病院に入ったのは、レイプ犯罪を起こしても、いわゆる「心神喪失状態による無罪」を勝ち取るための実績づくり、また詐病のノウハウ獲得のための「研修」のつもりだったようですが、守の当ては完全に外れてしまいました。軽い研修の気分で入ったはずが、精神病院とは、守が思っていた以上の「地獄」だったのです。以下、当人の言葉をお伝えします。

「あんな鍵かけられて無茶苦茶やられるところやと思わなかった」
「なんかしたら縛られる」
「薬飲むとよだれバーーッと出てくる」
「なんかソワソワソワソワしてイライライライラして」
「早朝覚醒するし」
「小便は出んようになる」
「看護人に、あんなんやったらお前、何年でも入っとけとか言われるし」


 この「地獄」から逃れるため、宅間はとんでもない暴挙に出ます。なんと、精神病院の五階から、地上めがけて決死のダイブを試みたのです。

 幼き日、人前でチンチンを平気で露出し、月光仮面の真似事をして両親をハラハラさせる、「坊ちゃんとクレヨンしんちゃんのハイブリッド」であった守は、大人になって、「クレヨンしんちゃん」の部分がパワーアップされ、ちんちんを露出するだけでなく、そこら中の女に片っ端から突っ込むようになってしまいましたが、「坊ちゃん」の方も大幅パワーアップし、学校の二階から飛び降りた本家を越える、五階から飛び降りてしまったのです。

 どうやら向精神薬の影響もあって、衝動性がますます盛んになってしまったところもあったようです。一体何のための薬なのでしょうか。当然、五階から飛び降りて、タダで済むはずがなく、守は全身を複雑骨折し、一か月半以上の長期入院を余儀なくされてしまいました。また、父、武士の言葉で当時の状況を紹介します。

「そのとき病院見舞いに言ったら、恨めしそうな顔でこっち見とるんよ。下あごが砕けて口も聞けんようになっとったが、なにやらもごもご言っとったよ。わけわからんことをよ」

 守の被害妄想かもしれませんが、どうやら守の母親が、守を精神病院に長期収容し、絶対に外に出さないように働きかけたということがあったそうです。守はそれを酷く恨み、母親に「慰謝料」を払うように求めたそうですが、母親は断固拒否。この直後、守は強姦罪で奈良少年刑務所に収監されることになるのですが、守は刑務所の中からも、母親に対する「請求書」を送り続けていたといいます。

 守はこの飛び降り事件によって、チックの後遺症を負ってしまいました。他にも、手足のしびれなどの症状が、この後も度々あったようです。

 また、確実な話ではありませんが、守はこのとき、脳の前頭葉も損傷してしまった可能性もあります。ドラゴンボールの悟空などは、頭を強く打ち付けたことで穏やかな性格になりましたが、実際にはその逆で、事故で脳の一部を損傷した人は、衝動性を抑えることができなくなり、粗暴になったり、また異常性欲に悩まされたりする場合が多いようです。宅間がもともと持っていた性質が、事故の後遺症により、ますます増幅されてしまった可能性があるということです。


kouつうじこ


 
 武勇伝


 
 二十代の頃のタックマンの武勇伝を纏めて紹介します。

 ・昭和六十年の御巣鷹山飛行機墜落事故の際、遺族とウソをついてバスで事故現場まで行き、一泊した。

「トコトンのことをやっていると思わせたかった。好奇心ゆうか暇つぶしに、ひょっとしたら散らばってる死体みれるかなあと思いたかった」

 後学のため、一度「実物」を見てみたいという気持ちがある人は少なくはないと思います。しかし、大抵は死者を冒涜することの畏れなどが先に立ち、自ら現場に行くということは躊躇われるものです。

 倫理を超越しているというより、私が感じるのは、底なしの「絶望」です。死者に祟られることを恐れるのは、幸福な人生を送っている者、大事にしたい何かがある者だけです。何も失うものがないと思う者には、亡者はまとわりついてきません。宅間の人生には、冥界に引きずりこまれて困るものは、何もなかったのでしょう。自分の命すらも。

 ・昭和六十一年ごろ、奈良刑務所で、「結婚式の引き出物を作る仕事」があった際のこと。

「結婚式の引き出物だい、と帰るヤツがあれば、不快な思いをするやろうと思って(笑いながら)、ケツに指突っ込んで、ウンコ掻き出して、チュッチュッとぬっとった」


 退屈な刑務所暮らしですから、この程度のことは割りと誰でもやるような気もします。自分でその光景が見れるのだったら、私も間違いなくやると思います。手を洗うついでに、ムカつくヤツのお味噌汁に溶かし込んでおくのもいいでしょう。

 ・刑務所出所後、ダンプやトラックの運転手を勤めていたときのこと。

「山奥に産業廃棄物を十トンダンプで運ぶ仕事をしていたときに、下りのカーブでブレーキ踏んだらスピンして、対向の十トントラックにボカーンと当たって、十トンのヤツが何日か後に死んだ。警察には、向こうがセンター割ってきたとウソをついて、不起訴になった」

「トラックを運転中に、首都高速の付近で、乗用車とかぶせあいとなり、割り込んでブレーキを踏むことを十回くらい繰り返しているうちに、相手の乗用車が側壁にぶつかり、運転手が失敗して死んだ。知らん顔して逃げたので事件にはならなかった」


 二件の死亡事故について、宅間は薄ら笑いを浮かべながら語り、

「こんな形で死に損になってるヤツ、なんぼでも世の中におるやろうなあ」

 と、他人事のように言い放ったそうです。

 二件は書類上では事故として処理されているものの、宅間の無茶な運転が原因であったことはおそらく間違いのないところでしょう。そして、日本では年間4000~5000人が、交通事故で命を失っています。

 宅間の言う通り、「こんな形で死に損になっている」人は、世の中には案外、たくさんいるのかもしれません。

うんこ


 
 精神疾患

 二十代のころ現れていた宅間の精神疾患について纏めて紹介します。

 二十代のころから、宅間は被害妄想が激しくなり、人が三、四人集まっているとき、自分の噂話をヒソヒソとしているのではないか、と疑うようになっていました。視線恐怖もあり、「誰かにじーっと見られている気がして」いつも不快で仕方なかったといいます。

 誰しも経験はあると思います。ようは頻度と程度の問題ですが、宅間の場合はしょっちゅうで、思い込みも強く、刑務所でもシャバでも喧嘩騒ぎを起こしていました。

 潔癖症も現れていました。

 宅間は排便について異様なこだわりがあり、自衛隊に入っていたころから、「うんこがついているような気がして」共同便所のサンダルがはけなかったり、手を石鹸で洗わなければ気が済まなくなったりするようになっていました。

 それはまだしも、刑務所を出たころから、「水しぶきがかかるような気がして」うんこを流さなくなったというのはいただけません。手を洗ったあとも、自分がひねった蛇口が、「うんこついてる気がして」もう触れず、水をずっと出しっぱなしにしていたというのも酷い話です。

 電車の座席にも「うんこついてる可能性あるから」座ることができず、自宅の座布団にさえも、「うんこついてるかもしれんから」お気に入りのズボンを脱いでからでないと座れなかったそうです。

 ちょっと前に、自分のうんこを結婚式の引き出物にくっつけたときのお前はどこに行ったという話ですが、二十代のころの宅間にとっては、「うんこ」との戦いがひとつの重大なテーマだったようです。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

あはは、なんか可愛いですね。確かにクレヨンしんちゃんみたい。

No title

あやかさん

 うんこに対する過剰な恐怖は笑ってしまいますね。しんのすけもあれは育て方間違ったら犯罪者になる可能性あると思いますね。

No title

宅間父の語り口は独特の味があって、笑ってはいけないのですが
なんだか笑ってしまいますね、結構好きです。
精神病院というのは聞きしにまさるところですね、
私だったら入りたくはないです。
宅間のうんこ絡みのエピソードは引き出物を除いて初見でした、
あの宅間にもそんな事があったなんて意外ですね。

精神病院がそれほど酷い所だとは知りませでした。
それにしても5階から飛び降り死なない所が運がありますね。
宅間がうんこ恐怖症だとは知りませでした。
これだけ悪事の限りを尽くし、やりたい事をやり、最後にだいそれた事件を起こし有名人になり死刑になり死んでいくのはある意味、中途半端に生きているよりいいような気がします。
同じ死刑囚でもわずか18歳で人生これからという時に捕まり童貞のまま吊るされるであろう福田孝行と比べたら全然幸せですね。(屍姦が童貞損失かどうか分かりませんが…)

No title

NEOさん

 こういうのは生まれ持ったものなのか、聞いている人間を引き込むセンスは持っていますね。精神病院は町の中にあるメンタルクリニックなどと似たようなところととらえがちですが、実態はだいぶ異なるようですね。私も昔通ってましたが、メンタルクリニックなんか通っている人は、全然精神障害でも何でもないという証明といえると思います。酒鬼薔薇などどうでしょう?

No title

まっちゃんさん

 今でも宅間のやられたようなことをされるのかはわかりませんが、病棟は鉄格子でほとんど刑務所みたいですからね・・・。 

 貧乏で女もいないまま生きていくよりか好き勝手に生きる方が勝ちだと思います。福田孝之とか若くして大犯罪起こした奴らは、真面目にやってりゃいいことあったかもしれないのにもったいないですね。やるとしたら35~40くらいが一つの節目なのかな。それ以上グズグズしてると気力も体力もなくなるし、社会に復讐するのも難しくなりそうです。

No title

宅間が自分から精神病院に入院したのは心神喪失状態を裁判で使うためだったというのが宅間ならではですね。
精神病院での生活は普通の病院とは別世界でしょうね。
宅間も根を上げるくらいですので相当でしょうね。
宅間についていつも思うのが本当に身体が丈夫ですよね。
五階から飛び降りて多少の後遺症で済んでいますし寝たきりにもなっていないのが凄いです。
打ちどころが悪ければ亡くなってしまってもおかしくないですよ。
この出来事で宅間の凶暴性のレベルが上がってしまったのですね。
20代から死を恐れていない様子がすでにありますね。
宅間は自分が死のうが相手が死のうが構わないという何もかもどうでもいいという感覚がありそうな気がします。
この状態で更に被害妄想や視線恐怖や潔癖症を抱えていたのですから相当でしょうね。
潔癖症はかなり重症で日常生活に支障のある度合いですね。
宅間は粗暴で細かい事は気にしない性格だと思っていましたが神経質な部分も持ち合わせていたのですね。

No title

seaskyさん

 その場しのぎ的な頭はかなり働く男だったように思います。

 五階から飛び降りて助かったのは身体の頑丈さもそうですが、変なところで運が強いですね。お前なんてさっさと死んでればよかった、という言葉は、拘置所の宅間の耳にも届いていたでしょうが、宅間からしてみれば、「ワシだって死のうとした」ってなもんでしょう。もう一度やれっていうのは、私には言えないですね・・・。

 死を恐れない人間には恐怖もなく、霊的なものへの畏れもないというのは私にはよくわかります。絶望の淵にあるときにあえて何が怖いかというなら、他人のハッピーなところを見せつけられることですね。

 むしろ異常に神経質だから粗暴になってしまうということですね。細かいことを気にしない性格なら、ここまでは荒れていないでしょう。

流石の犯罪エリートっぷりですね。


その交通事故だけでもかなりの悪行ですよ。


他人を傷つけるのは平気でも自分が傷つくの全くもって平気でない、といった人間の典型とでも言いましょうか。

そういった人間はよくいますが、宅間ぐらいになると、外敵等には目もくれずにもっと憮然と破滅の道を歩んで欲しいような気さえします。


ウンコの下りは、それだけでも1つの物語として成立しせうですね 笑

Lwさん

自分が傷つくのは平気でない、というのは少し違って、宅間は自分に自殺願望があり、このようにして死をいとわない行為によって自分自身を傷付けた過去があったことが、彼にとっての正当化の論理になっていたのだと思います。俺がこれだけ傷付いているのだから他人を傷つけてもいいという論理ですね。

松永太のような全く訳のわからないケースとは少し違うんですよね。松永太すら、腹を割って話せば(それが至難ですが)、本人の中での犯罪を正当化する論理が出てくるかもしれない。

犯罪者を全く理解不狽フモンスターのように見てしまうと、本質を見誤ることになります。読者さんにできる限り先入観を取っ払ってもらい、結論を急がないでもらいたいというのが私の思いです。

うんこに対しての怯え方が尋常じゃあないですね。
破天荒なイメージからは、肛門に指を突っ込んで掻き出す行動の方がしっくりします。
父親はよく喋りますねー。
話好き➡人間好きと、宅間とは正反対のタイプだったのでしょうか。
文中から人懐っこさが滲み出てる気がします。大事なことですよね

No title

ひなさん
 
 自分がうんこを恐れるのはいいとしても、うんこを流さないで人に迷惑をかけるというのはよくないですね。水を流しっぱなしにするのも・・。

 当時の武士さんは、もともと少ない友人は息子が起こした事件のことでみんないなくなり、家を訪れる人間といえば心無いマスコミばかりという状況で、かなり心細かったんでしょうね。宅間も鑑定を行った精神科医など、心を開いた人間には饒舌でした。塀の中はとにかく退屈で、人との会話に飢えるんでしょうね・・。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR