神山に屈辱を味合わされた私ですが、この時点で特に動くことはしませんでした。
まず、神山からのメールを受け取った鍋島、深沢は、神山の言ったことを真に受けたわけではなく、タチの悪い冗談だとしか思っていなかったようで、私とは普通に仲良くしてくれました。このことが、けして当時の私が、異常だったわけでもなんでもない証明になると思います。
神山の方も、それ以上に何か動いてくるわけではありませんでした。私を本当の異常者だと思っているなら、自分の忠告を聞かない鍋島や深沢を何としてでも私から引き剥がそうとするはずですが、そうしなかったということは、神山の目的が、ただ単に私をバカにするだけだったという証明になると思います。
学生の本分の勉強の方ですが、私は、自分で言うのもなんですが、クラスの中でも、相当しっかりやっていた方だと思います。クラスメイトの中には、高卒現役の子ならともかく二十代の中にも、夏休みの宿題もやってこない人間もいましたが、私は夏休みの間に、宿題だけでなく、すでにかなりの程度まで自己学習を進めており、小テストでは毎回良い点数をとっていました。
友人も多く、第二回で紹介した連中の何人かとは、夏休み中遊んだりもしていました。また、この頃になると私に飽きたのか、ゴミ糞のような野村、福山、金沢、中尾らの嫌がらせも一段落していました。交友関係は、まあまあ充実していたと思います。
言うまでもなく学校に行く主目的は勉強であり、就職です。とりあえず、勉強をするには差し支えない環境は整っています。神山があれ以上、何か、私の評判を落とそうと動いてくるならともかく、私を無視するだけで何もやってこないのなら、ひとまず事態を静観しようと決めていました。神山に無視されるのも、なにかの誤解であり、きっと状況はよくなる、と信じていました。
しかし、段々と心の平静を保ってもいられないようになっていきました。神山が、私のメールを転送した「深沢」に、よく話しかけるようになっていったのです。
話しかけるだけで、恋愛感情を持っているとは言えません。しかし、私のように嫉妬深い人間は、どうしても邪推をしてしまいます。
まずいことに、深沢は顎が少し出ているのが気になるものの、細面で目がパッチリした二重をしており、ジャニーズ系どころか、ジャニーズにいてもおかしくないイケメンでした。例の表の男版を作ってみるとしたら、7はまず固く、私の恨み補正も入っているかもしれませんが(イケメンの方が恨みが増幅する)、8もあり得るレベルだったと思います。
「普通以下の女がイケメンと付き合う」。私はこの構図に非常に強い憎悪を燃やしており、こういうカップルを発見次第、射殺できる世の中になればいいと思っています。
別に、すべてのイケメンを憎んでいるわけではありません。イケメンはイケメンらしく、同じ美女の尻を追いかけていてくれる分には、全然かまいません。私は美女は端から諦めていますから、それなら私の利益には何ら関係しません。警察のキャリアとノンキャリと同じで、待遇が違ったとしても、そもそも別路線を歩んでいるという意識なので、嫉妬や利害で対立するということがありません。
イケメンが並み以下の女と付き合うパターンでも、ホストや結婚詐欺師、そこまで悪くなくても、禁治産者とか、女に暴力を振るう男であれば、クソ女が不幸になるので、それはいいとします。神山がそういうイケメンに引っかかって酷い目に遭うなら、むしろそのイケメンを全力で応援します。
有名人でいえば気になるのはダルビッシュですが、あれはなんか「アスリート縛り」みたいなのがある感じがしますし、アスリートの中だけでしか選べないのだったら、奥さんは結構美人な方だと思います。フィジカルエリートの優秀な遺伝子を交配させるのは社会的な意義もありますので、まあ、そういうのも例外的にいいとします。
そうではなく、ルックスも良く、一定以上の社会的地位や稼ぎもあり、特別な拘りがあるわけでもないくせに、美人を追いかけずに、フツメン以下の米櫃に手を突っ込んでくる、「意識低い系」のイケメン、こいつらが問題なのです。こういうクズがいるから、美人なんかいらないし、モテなくてもいいから、並み程度の女と、そこそこの恋愛を楽しめればいいではないかと考える私のような男が苦労するのです。
女はこういうクズどもを、「女を外見じゃなく中身で見る、心のキレイな男性」とか言って持て囃しますが、私からすれば、心がキレイなんてとんでもないことです。この「意識低い系」のイケメンがやっていることは、自然界の生態系を崩すのと同じ悪行だからです。
イケメンを百獣の王ライオン、フツメン以下の男をジャッカルとします。非力なジャッカルは、草原を駆け巡るシマウマは、確かに食べられる肉は多いものの、挑んだところで蹴り殺されるだけだとわかっているため、端から諦めています。また、シマウマを食べられるライオンに嫉妬する気持ちも起こりません。自分の力をよくわかっているジャッカルは、手に負えない相手はさっさと諦め、藪の中に潜み、自分でも容易に仕留められそうな野ウサギを追うことに専心します。
ところが、ここに、シマウマの味に飽きて、野ウサギをつまみ食いしてみたくなった、節操無しのライオンが現れました。ジャッカルはライオンに自分のテリトリーを荒らされ、食料にありつけなくなってしまいました。野ウサギも、ライオンが深い藪の中まで突っ込んでくるなら、隠れていたってしょうがないと気づき、広い草原に出て行ってしまいました。ジャッカルはますます飢えて、とうとう死んでしまいました。
この例えで重要なのは、たとえジャッカルが野ウサギに逃げられたとしても、同じジャッカルが野ウサギを仕留めるのならば、なにも問題はないということです。それだったら生態系は何も変わらないので、ジャッカルは今後、また別の野ウサギを捕まえられる希望があるということですから。
しかし、ライオンがこれからはウサギは俺の獲物だといってウサギを取っていってしまうのなら、これは大変なことです。同じジャッカルではなくライオンがライバルということになれば、これからジャッカルはもう二度と野ウサギにありつくことはできず、餌のランクをもう一段落として虫を食べるようになるか、もしくは完全に餓死するしかないのですから。
生態系を乱すライオンの横暴をむざむざと許すくらいならば、リスク承知で反乱を起こす。「窮鼠猫を噛む」―――。そういうふうに考えるジャッカルが現れても、けして不思議とはいえないでしょう。
後になって発覚したことですが、神山は過去にイケメンと付き合ったことがあり、「あの人くらいモテる(イケメンではなくモテるという言葉が曲者。後でまた触れます)人じゃないと恋愛する気にならない」という発言をしていたようです。その話が事実だとしたら、もっといい女をいくらでも抱けるくせいに、野口似の神山をつまみ食いしたその糞節操無しのせいで、私が屈辱を味合わなくてはならなくなったともいえます。
加藤智大の言うように、イケメンが女を独占するせいで、不細工に女が回ってこなくなる。また、イケメンが下手にブス女に構うせいで、ブス女も勘違いをしてプライドが高くなり、彼氏がいない状況でも不細工に振り向かなくなる。まさしく生態系の崩壊です。
この構図、女も悪いですが、元をただせば、つまみ食い程度の気持ちでブス女に手を出したイケメンからすべてが始まったわけですから、どっちかといえば、イケメンの方が罪が重いと思っています。なので私が総理大臣になるとしたら、イケメンとブス女のカップルが成立したことが発覚次第、イケメンは死刑、ブス女は不細工男とセックスして子供を一人産む法案を作りたいと思います。少子化対策にもなり一挙両得です。
神山と深沢のカップルが成立するにおける問題は、「モテ界の生態系の崩壊」ばかりではありません。神山23、深沢21という年齢も、私にとってはかなり気になるところでした。
最近は姉さん女房が増えており、かくいう私の女房となる女も3歳上なのですが、伝統的にカップルの年齢は、男が上、女が下の方が「しっくりくる」イメージがあると思います。女が上のときだけ、わざわざ「姉さん」が付くのが、もともとそれがイレギュラーであることを表しています。
日本という国は世界でも類を見ないほど、女性の貞淑を重んじる国であり、女は基本的にアプローチを待つ側で、女から積極的に行くことは、なんとなく「はしたない」イメージがある国ですが、私の場合、「しっくりくる」男上、女下のカップルのときは、女が熱烈にアタックして男をゲットしたパターンでも、あんまり「肉食」という感じはしません。「一途」だなあと思います。
また、男上、女下のパターンなら、ある程度の年齢差があれば、女側のルックスが男に比べ劣っていても、そんなに気になりません。女という生き物において若さというのが重要なステイタスになるのは誰しも異論のないところで、男にとって若い女をゲットするのは、美女をゲットするのと同等に名誉なことだからです。
イケメンにブス女を掻っ攫われる形だったとしても、年齢差がある場合は、老いて群れから置き去りにされたライオンがウサギを捕まえるような感じですから、「生態系の崩壊」とはなりません。例の表も、若さという概念を重視したら、だいぶランクが変動するかもしれません。
反対に、女が上、男が下というパターン。この場合、男が熱烈にアプローチした結果なら、特に違和感は感じません。しかし、女側から近づいたパターンだと、若い女がオッサンに告白したパターンより、なんとなく「肉食」感が強いと感じるはずです。女のルックスがイマイチで、男のルックスがよかった場合、その感覚はより顕著になります。
23歳の神山が、21歳の深沢にアプローチするというのは、年齢差だけみればそれほどでもありませんが、「しっくりくる」パターンとはいえません。こうなると、神山5、深沢7~8という顔面の大きなランク差が存在するというのが問題となってきます。
野口顔の神山が、ジャニーズの深沢にマンコから汁を垂らしながら近づいていく光景は、私にとっては、「肉食」「ガッツいてる」「びっち」 「チーズくさい」「おちんぽシャブリーナ」「きゅうりが親友」「全身生殖器」「淫乱ババア」「ヴァギナ怪人オカッパ・ダダ」「頭の中セックスだけ」「とにかくくさい」という風に見え、大変不快なものでした。
そして、私のこの不快感はけして特別なものではなく、程度の差こそあれ「そう見える人が多い」ことは、他ならぬ神山自身が証明してくれました。
一応、このときは神山が深沢に気があったのかどうかまではわからず、また、混乱を避けるため、結局、神山と深沢のカップルは成立しなかったことはこの時点で書いておきますが、随分あとになって鍋島から聞いた話によれば、やはり神山は、この時期深沢に気があって、深沢とあわよくばいい関係になれればという狙いから、深沢によく話しかけていたようです。
それ自体は、「やっぱりな」というだけの話でしたが、問題だったのは、神山が深沢に惚れた理由として、「フィーリングが合ったから」と語っていたことです。
この「フィーリングが合ったから」という理由、これは並みかそれ以下を振って、イケメンや美女を選ぶということをした時点で、言っちゃいけない、説得力のない言葉だと思います。
たとえば、ある俳優がハンティングをする企画があったとします。武器にライフルと黒曜石の槍を選べたとします。俳優はライフルを選んで、見事に獲物を仕留めました。インタビュアーが俳優に、「なぜ、武器にライフルを選んだのですか?」と質問をぶつけました。俳優はこう答えました。「ライフルの方が、私との相性が合ってるからさ」と。
「それってなんか違くない?」と思わないでしょうか?相性もクソも、黒曜石の槍よりもライフルの方がはるかに殺傷能力が高いことは、子供でもわかることです。もし、俳優がライフルではなく黒曜石の槍を選んだうえで、「相性が合ってるから」というなら、「カッケー!」とみんな思うでしょうが、逆では何の説得力もありません。俳優がライフルを選んだ理由は、ただ単に「強いから」ということでしかないはずです。
恋愛もそれと同じです。もし、神山がイケてる深沢ではなく、イケてない私の方を選んだうえで、「フィーリングが合ったから」というなら、みんな「おー!」と感心するでしょうが、イケてない私の気持ちを踏みにじって、イケてる深沢のほうにマン汁を垂らしながら近づいておきながら、「フィーリングが合ったから」なんて言っても、「いやいや・・・」という話でしょう。
「フィーリングが合ったから」なんてことは、本人だけが感じているかもしれないことで、深沢の方は何とも思ってないかもしれません。そんなことより、深沢はイケメンであり、それは誰しもが認めていることなのだから、神山が惚れた理由として、明確で伝わりやすいのはそっちであり、実際、ただ単にイケメンだったから、神山は臭いマンコからベタベタ汁を垂らしながら近づいただけのはずです。
神山がウソをついたのは、まさに私が感じたように、他人から「ビッチ」「肉食女」「男を顔だけで判断する女」と思われたくなくなかったからでしょう。それなら、深沢に気が合ったこと自体言わなければいいだけの話ですが、頭がバカだったからついポロッと言ってしまい、何とか取り繕うために、「フィーリングが合ってたから」などと言い出したに違いありません。
前回述べたように、神山恵美子は「自分の評判を落とさないための姑息な計算が働く女」ですが、所詮頭が悪いため、わかる人にはわかる「浅知恵」にしかならない。そんなところが、こういうちょっとしたエピソードからでもわかると思います。
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