犯罪者名鑑 加藤智大 4


かとーあ


 高校

 当初の報道では、加藤の「挫折」の始まりとされ、学歴コンプレックスを抱くキッカケになったと言われていた高校時代ですが、意外にも本人は、この時代のことを、「人生の絶頂期」と語っています。

 加藤は高校入学当初から、勉強について、「母の期待にある程度答えたのだから、もうそんなに頑張らなくてもいいだろう」と思っていたといいます。加藤が入学後、最初に受けた中間試験では、すでに「ビリから2番目」の成績であり、はやくから授業についていけなくなったのは事実のようですが、それについても、「勉強しなかったのだから、当たり前。最初からわかっていた」ということで、まったく気にしておらず、単なる自分の努力不足にコンプレックスを持つなど持っての他である、と語っています。

 加藤はこの時期、勉強などよりも遊びに夢中でした。一人でゲームをするのも好きだったようですが、友達の家に集まって遊ぶことも多く、交友関係に恵まれていたこの時期は、加藤にとって本当に楽しかった時期なのかもしれません。

 ただその一方、相変わらず「キレるとき、理由を言わずにいきなり行動で示す」癖を発揮してもいました。ある日の集まりでは、加藤がゲームを独占していることを友人に咎められた際、「黙って立ち上がり、そのまま帰ってしまった」また別の日には、加藤が好きなゲームについてケチをつけた友人に、「いきなり殴りかかった」ことがあったそうです。

 殴られた友人はその理由を、なんと、加藤が事件を起こして、裁判を受ける過程で初めて知ったそうです。「そんなこと、言ってくれればよかったのに」と友人は思ったそうですが、十人中十人が、同じ感想を抱くでしょう。

―――とにかく、地雷がどこにあるのかわからない。

 加藤と仲良くしていた友人たちも、加藤が理由も言わずにキレる癖については、大いに困惑していたようです。

 進路について、お母さんは北海道大学への進学を望んでいたようですが、三年生になった時点で、加藤の成績は、合格ラインにまったく届いていませんでした。そのため加藤は、自分の身の丈に合った大学を選ぶことにしたのですが、ここでお母さんが、「北海道大学に行かないのなら、車は買ってあげない」ということを言い始めました。

 逮捕直前、自動車を作る工場で働いており、凶器にも車を選んだ加藤は、高校のころから自動車が好きで、「大学に合格したら、車を買ってもらう」という約束を、母と取り交わしていたようです。ところが、約束破りというよりはおそらく言葉足らず、解釈の違いで、加藤は「四年生大学に合格するのなら、どこでもいい」と考えていたのに対し、お母さんは、「北海道大学に入学すれば、車を買ってあげる」と考えていたようです。

 「よく話し合わない」この親子らしい話ですが、母親に約束を破られたと感じた加藤は、ここで四年制大学そのものへの進学を辞めてしまったようです。落ちこぼれとはいえ名門高校で三年学んだのですから、高望みしなければ四年生大学には行けたでしょうが、加藤は自らその道を閉ざしてしまったのです。

 ただの母親への「当てつけ」であり、当然このときも、なぜ進路を変更したのか、母親に言うことはありませんでした。

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 短大

 
 高校を卒業した加藤は、岐阜県の中日本自動車短期大学へと進学しました。自動車にはもともと興味があったようですから、「当てつけ」の結果だとしても、本人としては望み通りの進路でもあったのかもしれません。

 加藤はここで、自動車整備士になるための勉強を始めたのですが、夢はまたしても、加藤の「怒っている理由を言わず、いきなり行動を示す」癖によって頓挫してしまいます。

 加藤は短大に進むにあたって奨学金をもらっていたのですが、その奨学金は全額父親の口座に振り込まれ、加藤の手元には渡らなかったというのです。加藤はこの件に関する不満を父親に伝える手段として、「自動車整備士の資格を取らない」ことを選びました。

 「なぜ?」「意味がわからない」と思うのが当然ですが、加藤に言わせれば、「父になぜだろうと考えさせたかった。思い当たるフシがあって、関連付けば気づくだろうと思った」ということです。余計に意味がわからない、なぜ、一言言わないのか?という話ですが、加藤にとっては、不満に思ったことを口にする、という発想がそもそもできないのであり、なんとか行動で示そうとするしかない中で、一番理にかなった選択だったのでしょう。

 加藤は試験が近づいてもまったく勉強せず、寮の相部屋に籠ってゲームばかりしていました。ルームメイトが、せめて試験前は勘弁してくれと言うのにも、聞く耳を持ちません。そのくせ、ルームメイトのいびきを不満に思って、壁を叩くなどしていたのですから、トラブルにならないはずがありません。加藤は結局、寮を追い出されることになってしまいました。

 加藤は一人暮らしを始めることになりましたが、相変わらず勉強はしませんでした。結局加藤は、資格も取れず、進路も決まらないまま、短大を卒業することになってしまいました。

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 社会へ


 短大を卒業しても進路の決まっていなかった加藤は、仙台へと移り住みました。仙台には「絶頂期」高校時代に加藤が親しくしていた友人たちが多数おり、就職活動をしながら、誰かの家に集まってゲームをしたりなど、賑やかな毎日を送っていたようです。

 小学校から現在まで、所属した先々で友人を作ることには苦労しないものの、基本的に「その場限り」であり、集団を離れた途端に音信不通になってしまう私からすれば、高校時代の友人と切れずにずっと続いていることは、大したものだと思います。時々、意味のわからないキレ方をしたりもするものの、加藤はそれを補って余りあるユーモアセンスの持ち主であり、面白い男だったのでしょう。

 7月になって、加藤は宮城県内のある会社に職を得ました。アウトソーシングなどの事業を手広く行っている会社で、加藤が配属されたのは警備事業部でした。つまり非正規の使い捨てだったわけですが、現場で能力を見込まれた加藤は、半年後には内勤に異動となり、待遇も固定給の準社員となりました。

 加藤が運転免許を取得したのは、この時期のことでした。自動車が好きで、自動車関係の短大に通っていたはずの加藤が、それまで運転免許を持っていなかったというのは変な話のようですが、これもいつものパターンで、「車を買ってやるという約束を反故にした母親への当てつけ」だったそうです。

 ともあれ免許を取得し、自分のお金で車を買った加藤は、車の改造にのめり込んでいきました。バブル時代の若者なら誰もがやっていたことですが、加藤の世代では珍しい趣味といっていいでしょう。この改造に加え、加藤が購入したスバル・インプレッサーは燃費が悪かったため、加藤は消費者金融に借金をするようになってしまいました。

 ときには昼食を抜くことさえあり、加藤は職場でもイラついた様子を見せるようになっていきます。警備の管制官は、現場の隊員に電話で指示をするのが仕事ですが、加藤はちょっとしたやり取りで怒りを露わにし、「明日から干すぞ、コノヤロー」と怒鳴ったこともあったそうです。

 やがて年末になると、現場の方で人手が足りなくなり、内勤の加藤が駆り出されることも増えてきました。加藤はある日、建設会社でダンプカーの誘導を任されたのですが、その際、運転手が自分の指示に従わなかったことに腹を立て、無断で帰ってしまうということがありました。また、「いつもの癖」です。

 当然、厳しく叱責されることになり、そのときは反省したようですが、やがて加藤は無断欠勤を重ねるようになり、ついに退社してしまいました。

 加藤の「怒っている理由を言わず、いきなり行動で示す癖」が、本格的に社会との摩擦を起こし始めていったのです。
 
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No title

加藤の子供の頃からの癖は発達障害か何かでしょうか。
加藤は自分のために何かをするというより他人が何かをしてくれなければやる気を出さない性格であるように見受けられます。
家族でさえ怒っている理由が分からないとすれば友人からすれば加藤の意図は全く理解できないでしょうね。
加藤は友達がいないということを掲示板に書いていましたが実際は社交能力があり友達が多くいたのですね。
車の改造にのめり込みすぎて借金までしてしまうというのは後先考えない行動ですね。
短気な性格とはまた違ったいきなりキレる癖を何とか改善する方向にもっていくことができれば良かったのでしょうね。
加藤のような性格だと人とのトラブルは絶えないでしょうし加藤自身もストレスを多く抱え込んでいたと思います。

No title


seaskyさん

 加藤の癖は、虐待の連鎖のように親にやられたことを自分もやっちゃうようになるアレだと思うんですよね。まだ暴力とかだったら他人の家庭と比べて気づくこともあるでしょうが、内面の癖とかだとわかりづらいでしょうし、実際、加藤も逮捕されるまでわからなかったと言っています。

 ギャンブルが原因でないだけマシですが借金はまずかったですね。精神的に不安になる原因の一つになっていたと思います。友達は普通に多かった方だと思いますが、本人にしてみれば不満だったのかも・・。

加藤は高校時代が絶好調ならまぁ〜時期的に良いのではないですか?
高校生の時も女にモテたのでしょうか?
母親に当てつけのためだけで四 年生大学行けるのに行かないのはもったいないですね。
突然わけが分からずキレるのは怖いですね。
加藤も精神的に何か病んでいたのでしょうか?
このすぐにキレる性格が事件を引き起こしたのでしょう?

個人の交友関係の認識について、主観と客観が大きく食い違うというのは解る気がしますね。


私も、大学の卒業式後の謝恩会でクラスメートに「将来なるべく人と関わらないで生活していきたいな~」みたいなこと言ったら、そのクラスメートは酷く驚いていました。どうやら彼は私の事を社交家だと勘違いしていたようです。


自分について的外れな分析をされるのは腹立たしい事です。そこも加藤に共感します。



ただ、キレてはダメですね。そのような癖は早めに克服しておかないと、後々大変な事になりますよね。


No title

まっちゃんさん

 高校時代は友達には恵まれていたものの、女っ気はなかったみたいですね。就職ということだけを考えるなら無名の四年制大学行くよりも専門性の高い短大を選んだのはよかったと思いますが、そこでちゃんと勉強しなかったのは痛かったですね。切れるとき理由を言わないのが問題という以前に単純に切れやすいという気もしますね・・。

No title

L,wさん

 的外れな分析というか、ただ単に高校時代に学力が落ちたという情報だけ見て、ここで挫折感を味わったんだろうと憶測で報道したメディアに、全部のメディアが追随してしまったという感じでしょうね。

 加藤の発言に不自然な点はないし、高校時代の件は加藤の言っている方を信じていい気はします。

母親を反面教師として育ったのではなく、母親と同類になってしまったのですね。
それは仕方ないとは思いますが、怒ってる理由を言わないで行動で知らしめる生き方って辛そうですね。
それとも言わないでいると、そっちの方が楽になっちゃうのでしょうか?
資格取得の件はマイナスでしかないのに…

No title

ひなさん

 短大で資格を取らなかったとか、目に見える損をしても、自分のやってることのおかしさにまったく気づかないんだから怖いですよね。母親もせっかく好成績だったのに再受験をあきらめたりしていますから、極端から極端に走りやすいところも遺伝だったんでしょうね。

 だれか彼の欠点を、わかりやすく、論理的に教えてくれる人がいたらよかったと思いますが、友達のなかにもそこまで真剣に彼にぶつかってくれる人はいなかったようですね・・・。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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