犯罪者名鑑 酒鬼薔薇聖斗 4



 
 後編~絶歌~酒鬼薔薇聖斗の凶行と社会的抹殺へのカウントダウン


sssさけおにばら



 秘密の儀式


 酒鬼薔薇が小学校5年生のころ、酒鬼薔薇を可愛がってくれていた祖母が亡くなりました。

 酒鬼薔薇は、祖母には大変よく懐き、いつも会うのを楽しみにしていたといいます。手記「絶歌」にも、幼い酒鬼薔薇を抱く祖母の姿が、唯一の写真として挿入されています。
 
 その「絶歌」の中で、酒鬼薔薇は最愛の祖母との思い出を汚す行為をしたことを、自らの「原罪」として記しています。祖母の死後のこと、酒鬼薔薇は押入れを開き、祖母が愛用していた電気按摩器を発見したのですが、それを何の気になしにペニスにあてがったところ、激しい快感を覚え、以後何度も、祖母の部屋で「電マオナニー」を愉しんだ、というものです。

 酒鬼薔薇といえば「性的サディズム」の持ち主と言われていますが、「生物の死」と「性的快楽」が初めて結びついたのがこのときである、と、本人は自己分析しています。酒鬼薔薇は愛する祖母の遺影に見つめられながら、祖母の電気按摩器でオナニーをしたことに激しい罪悪感を感じ、射精の際には快楽とともに激痛を伴った、などと書いていました。

 酒鬼薔薇が、「猫殺し」を始めてしまったのは、この直後のことでした。

 凶悪犯の生い立ちを見ると、幼いころ動物を虐待していたという話が出てくる例が非常に多いですが、動物「殺傷」と「虐待」の間には、明確な隔たりがあるといっていいでしょう。あの宅間守も子供のころ猫を虐待していたことで有名ですが、本人によれば殺すことが目的だったわけではなく、弱い者をイジメて苦しむところを見て楽しむのが目的だったそうです。それだけでも大きな問題には違いありませんが、やはり、「殺して性的な快楽を得る」目的とは、ヤバさ加減もヤバさの質も違ってくると思います。

 酒鬼薔薇が殺していたのは、近所の野良猫でした。本当の動機は、殺して性的な快楽を得ることでしたが、それは心の奥深くに仕舞われていたもので、猫を殺した直接的な「トリガー」として酒鬼薔薇があげていたのは、「亡くなった愛犬・サスケの余ったドッグフードを、サスケのお皿で食べていたのが許せなかったから」ということです。

 私も大好きだった家族の犬と死別した経験はありますが、酒鬼薔薇の気持ちはまったくわかりません。余ったご飯を猫ちゃんが食べてくれたら嬉しいやんけと思うのですが、酒鬼薔薇は変なところに異常に拘って、感じなくてもいい不快感に苦しめられてしまっていたようです。 

 電気あんまオナの件にしても、この時点でそんなに罪悪感を感じる必要があったのかな、という気はします。猫殺しや、2件の殺人事件のあと、「俺が異常になったのは電気あんまオナがキッカケだった」と振り返って罪悪感を感じるならわかるのですが、たまたま婆ちゃんの遺影の前で、溜めに溜め込んだアソコに電気あんまをあてがった結果、ドピュッとイってしまっただけのことになんでそんな罪悪感を感じるのか、私にはよくわかりません。

 お祖母ちゃんが生きていたら、「Sくんも男になったんやねえ」と、むしろ喜んでくれたでしょう。お祖母ちゃんの思い出が汚れたのは、この後に殺人などを犯したからであり、電気あんまオナの時点では何も汚れていなかったはずです。こんなことが「原罪」になるのなら、小学生の頃から同級生だろうが学校の先生だろうが、かたっぱしからオカズにしていた私の方が「原罪者」といえるはずです。

 なんというか、妙に潔癖というか、生真面目なヤツだったのかもしれません。あまりにもウブすぎて、物事をなあなあで済ませられず、ちょっとした矛盾も受け入れられないようなヤツだったから、あそこまで荒れ果て、歪んでしまったのかもしれません。


さじぇいぶヴぁら「

 
 
 劣等感



 1995年4月、酒鬼薔薇は、惨劇の舞台となった友が丘中学校に入学しました。
 
 「絶歌」を読んで私が印象的だったのは、中学生当時に酒鬼薔薇が抱えていた悩みやコンプレックスはけして特別なものではなく、むしろ彼は普通の、どこにでもいるような、ちょっと「もっさい」少年だったということです。

 中学時代に酒鬼薔薇が愛読していたマンガに、「行け!稲中卓球部」という作品があります。私は高校ぐらいのときにチラっと立ち読みしただけですが、私が読んだことのある学園モノでいえば、「スラムダンク」のような、爽やかな青春を描いたものではなく、「GTO」のように荒唐無稽なアクション活劇が描かれているわけでもなく、何の取柄もなく注目もされない、「非リア」階層にいる少年が、ごく日常的に感じている、卑屈で哀れな感情を淡々と描いた作品だったと思います。

 非リアのマンガを愛読する子が必ず非リアであるとはいえませんが、酒鬼薔薇は当時、この作品の登場人物に、深く自分を投影していたと語っています。「絶歌」の冒頭から、酒鬼薔薇は自分のことを、


――勉強も、運動もできない。他人とまともにコミュニケーションを取ることもできない。教室に入ってきても彼の方を見る者はいない。廊下でぶつかっても誰も彼を振り返りはしない。彼の名を呼ぶ人はひとりもいない。いてもいなくても誰も気づかない。それが僕だ。



――どの学校のどのクラスのも必ず何人かはいる、スクールカーストの最下層に属する〝カオナシ”の一人だったぼくは、この日を境に少年犯罪の”象徴(カオ)”となった。



 と書き記しており、当時の自分がいかに、「勉強・運動・ルックス・コミュニケーション」といった、ごく普通の少年が感じるようなコンプレックスに塗れており、全国に事件が報道されたことで、そのコンプレックスを克服した瞬間にいかに歓びを感じたかを語っています。

 「序」では、少年院を出た後の酒鬼薔薇が、人並みに世間の波にもまれ、底辺労働の世界で苦しんできたことも書きましたが、彼は酒鬼薔薇のことを詳しくは知らない人が思っている以上には、「普通」だと思います。
 
 酒鬼薔薇は犯行声明文の中では、自分は「異常快楽殺人者」であり、自分をまるで神聖なものかのように装っていましたが、それは酒鬼薔薇が世間に認知してほしい自分の像であって、本当の自分の姿が、あまりにも卑小かつ「俗物」であり、醜いものだということの裏返しだったのでしょう。

 「絶歌」を出版し、HPを開設した酒鬼薔薇は、当初「ナメクジ」のイメージを強調していましたが、まさしく自分は、日陰者の「ナメクジ」のような存在だったのだと、ずっと思っていたようです。

 その「ナメクジ」が、虫でいえばカブトムシやクワガタのような花形の存在になる唯一の手段として見出したのが、「異常快楽殺人」だったのです。

酒鬼ばあ



 
 卓球


 「稲中卓球部」をバイブルとする酒鬼薔薇は、友が丘中学校でも卓球部に入部し、毎日部活動に取り組んでいました。お母さんも地域の卓球サークルに参加しており、お父さんも卓球をする卓球一家でしたから、中学一年生のころはよく家族で卓球をし、良いコミュニケーションが取れていたようです。

 最初のうちはお父さんお母さんに叶わなかった酒鬼薔薇でしたが、卓球部に入部して半年もするとメキメキと実力をつけ、お父さんお母さんを追い抜いてしまいました。酒鬼薔薇は初めてお母さんに勝った日、記念にカレンダーに印をつけていたようです。

 ただ、卓球部内での酒鬼薔薇の実力は下から数えた方が早いレベルだったようで、対抗試合での選手に選ばれるようなことはなかったようです。酒鬼薔薇も、がむしゃらにレギュラーを取りに行こうと自主練習をするような情熱は見られず、次第に面白くなくなってしまったのか、二年生の中頃には、部活に行くのをやめ、家族での卓球もやめてしまったようです。

 頑張ったうえでの挫折なら心の傷にもなったでしょうし、「試合に出られない生徒にとっては苦行でしかない」日本の部活動システムの欠陥にも言及したかったところですが、最初から情熱もなかったのなら、本人にとってもどうでもよかったことなのでしょう。「絶歌」にも卓球に関する記述はほとんど見られません。

 なので卓球のことに関してはあまり深く掘り下げる必要はないと思いますが、それでも、一時とはいえ家族のコミュニケーションになり、エネルギーの発散場にもなっていたこの卓球をもうちょっと頑張れていたら、酒鬼薔薇が事件を起こすこともなかったのではないか、という一抹の思いはないではありません。
 
 
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冒頭の祖母の電マの話で思いましたが、結局は自分の異常性を正当化するための、後付けの理由な気がします。

ジトクの揺らめき

そういえば幼稚園に通っていた頃の私も、訳もなくマッサージ機にナニを押し当てたところ、痺れるような快感を覚えました。ただ、習慣化はしませんでした。



「死」と「性的快楽」とが結びついた道程について、酒鬼薔薇も案外雑な考え方をしているんですね。


酒鬼薔薇の自己顕示欲は強い、という一般的な見解にやはり私も同意します。


ただ、確かにお年頃の人間の殆どがそういう葛藤を抱きますよね。


自分はもっと優秀で徳のある人間で他人から尊敬されて……要は周りからスゴい奴だと思われたい!

そこで理想と現実の隔たりを知り、少年は大人へとなっていくわけですが、中には自らを承認しない社会を恨んで犯罪に手を染める者、はたまた以前の津島さんの上司のような、大人になっても傍迷惑な自己演出をしたがる者もいますよね。


確かに本物の快楽殺人者なら、サスペンスやミステリーものに出てくるキャラみたいに、完全犯罪を企てて、コソコソ沢山の人を殺せばいいのに……やっぱり世間から注目を浴びたかったんでしょうね。確かに有名人ですよね、彼は。


そういえば三島由紀夫も、コンプレックスの完全な解消を望めば、それは得手して犯罪に繋がる。みたいな趣旨の事を言っていました。

No title

酒鬼薔薇は祖母との良い思い出がたくさんあったようですね。
確か宮崎は祖父が特別な相手だったようですね。
祖父母から見ても孫は可愛いでしょうから自分に優しくしてくれたのは嬉しかったのだと思います。
酒鬼薔薇は宅間とは違ったタイプなのですね。
宅間の弱い者をイジメて苦しむところを見て楽しむのが目的というのも歪んでいますね。
性的なものに対して過剰に悪いことであるという気持ちを持っていたのでしょうかね。
酒鬼薔薇の中学時代の悩みは特別でもなく一般的な男子生徒の悩みですね。
自信がないとか自己否定感も強くなってしまう時期のような気がします。
酒鬼薔薇は部活をしていたのですね。
卓球部を辞めるにしてもその代わりになるような物が必要だったのかなと思いますね。
酒鬼薔薇が熱中できて継続して続けられるような趣味があればまた違っていたかもしれませんね。

電マオナニーは別に罪悪感を感じる事は無いと思います。
最初はともかくそれ以降もわざわざ祖母の部屋に行って遺影を見つめながらと言うのが気になりますが…
電マオナニーより猫殺しの方に罪悪感もってもらいたいですね。
酒鬼薔薇なりに罪悪感もつこだわりがあるのでしょう。
私も小学生のころ下校途中に生意気な犬がいたので毎日イジメるのを楽しみにしてました。
今考えてもイジメたことに全然後悔も反省もしてません。
まぁ〜犯罪につながらなくて良かったとは思ってます。
私も中学校時代は勉強も運動もできない他人から無視されいてもいなくてもどうでもいい存在、むしろいない方がいいと思われてました。
酒鬼薔薇みたいに部活もやっておらず帰宅部でしたね。
犯罪犯さなかったのは、自称イケメンだと思っていたのと犯罪犯す勇気と度胸がなかったからだと思います。
まぁ〜変な所で勇気と度胸がなくて良かったと思いますが…

No title

たにやんさん
 
 正当化にはなってないし、本人もそのつもりはないと思いますよ💦

 性的サディズムとやらが芽生えたキッカケがそこにあると本人が思っているのは、別にそれでいいと思います。

 ただ、お祖母ちゃんとの思い出が汚れたのは、オナニー行為とは何の関係もないんじゃないの?お前が殺しなんかやらなきゃ、汚れた思い出なんかにならなかったんじゃないの?と指摘してみたという話です。

No title

まっちゃんさん

 まあ普通の人でも、人として本当に気にすべきことを気にしないで、変なとこばっか気にしている例は結構ありますけどね。価値観は色々なんで、本人なりにその説明ができればいいんだと思いますが、少なくとも私には、酒鬼薔薇が電気あんまオナの件やサスケの餌の件をそこまで気にしている理由はわかりませんでした。 


No title

L,wさん

 自分というものを作り上げるための手段において、犯罪は手っ取り早い手段でしょうね。地道に勉強なり、運動なり、友達作り、恋人作りするより、手っ取り早いは早いですよ。

 ただ普通の人にとってそれは、すべての選択肢がなくなったうえでの最終手段です。なぜ14歳という年齢で酒鬼薔薇がそれを行使しなくてはいけなかったか、彼は何を生き急いでいたのか?が問題ですよね。

No title

seaskyさん

 親と関係の悪い凶悪犯でも祖父母を慕っていた例は結構多いですね。祖父母にすらあまり懐かなかった私からすれば、親族に理解者がいて羨ましいと思いますが・・・。

 現在は読書とお絵かきとナメクジ採集を楽しんでいるようですが、そんなもんで欲求を発散できるなら、なんとかなったような気もしますけどね・・・。

過去の出来事を引き合いに出して、原罪だのなんだの自己分析している時点で、自身を正当化する行為に思えますが。

もちろん津島さんの言う通り、それは正当化でもなんでも無いし、祖母の電マオナに類似した背徳感を感じる体験など、誰しもが経験し得ることでしょう。

そんなことを持ち出して原罪だのなんだの言ってる酒鬼薔薇にイラっときたということです。

No title

たにやんさん

 詳しくは「絶歌」を読んでいただければ、と思いますが、自分の罪を正当化したいとか、同情してほしいという目的であの話を書いたとは思いませんでしたね・・・。ただ、気にするところがズレてるんじゃないの?という話ではあったと思いました。

 他のコーナーにもコメント頂けると嬉しいです

確かに、特に殺人は手っ取り早いですね。ハイデガーに曰わく、人間は死んで初めて代行不可能な存在に成りうるそうで……という事は、ある個人を代行不可能な存在に導く個人もまた、代行不可能である。という考えが一応は成り立つ。



他人と関わらなくても、自尊心を樹立する事が容易に出来る現代、酒鬼薔薇も、他者からの承認を必要としない思弁的な自己の像を練り上げまくっていたようですね。




今回の出版は、成人となった彼が自己決定原則に基づいて出版したわけですから、自己責任原則の点からいっても断罪されて然るべきでしょう。

ただ、そこで再び成人する以前の環境についての話を持ち出されてゴネられたら面倒くさいですね。

規範についての話をするしかなくなります。

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No title

別人になってどこかで生きてるんですよね
今も・・・・
顔も一部に画像出ていますが 整形していたりしたら
わからないですからね・・・・
自分の犯行を隠すというより
保持したい願望のほうが強いのでしょうか・・・・

No title

カズさん

 酒鬼薔薇が自分を晒し続けるのは、自己顕示欲とかよりもとにかくカネもうけのためだと思いますね。彼を常人には理解しがたい怪物と思うのは間違いで、あれもただの人間、俗物ですよ。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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