犯罪者名鑑 宅間守 2


たくま

 
  無鉄砲


 宅間守は昭和38年11月23日、大阪府のプレス工場で働く父、武士と、3歳年上で、同じ工場で働く母の間に誕生しました。あのJFKが暗殺されたのと同じ日です。

 守を身籠ったのがわかったとき、母は不安げな顔で、こんなことを言ったといいます。

「あかんわ、これ。ウチおろしたいねんこれ。あかんねん絶対」


 いわゆる、第六感というものが働いたのでしょうか。そんな漫画のような話があるのかと思いますが、父、武士は、確かに妻のこの言葉を聞いたのだといいます。守が真っ当に育っていれば、母の方が酷いことを言う親だということになったのでしょうが、結果的には、母の予感が見事に的中したことになってしまいました。

 4000グラムと、生まれたときから大柄だった守は、すくすくと育っていきました。活発すぎるほど活発な子供で、まだよちよち歩きのころから、ご両親や祖母の目を盗んで家を飛び出しては、三輪車で近所を走り回っていたといいます。そんなことを書いてある文献はどこにもありませんが、「名前は”宅の間を守る”やのになぁ・・・」と呟いた人も、近所にはいたことでしょう。

「あのころから守は自ら深みにはまるヤツやった。親がハラハラするようなこと平気でやりよるんよ。兄貴は面倒かけず、どちらかというと慎重な性格やったのにな」

 とは、父、武士の言葉ですが、守はどうも、当時から怖いもの知らずというか、後先のことがまったく考えられない性格であったようです。

 守少年が小学校に上がる前に起こした、無謀さを表すエピソードは枚挙に暇がありません。

 ・海に出たとき、何度注意しても沖の方まで泳いでいく。
 ・落ちたらケガでは済まない高さの木にも平気で登っていく。
 ・テレビの月光仮面の真似をして、押入れから飛び降りる。
 ・両親や祖母と町へ出かけても、目を離したらすぐにいなくなる。
 ・国道の真ん中を三輪車で走り、車が渋滞するのを見て愉しむ。 


 まあ、典型的な、多動優勢型のADHDの症状です。ADHDに関しては別の記事でも触れていますが、一応ここでも簡単に説明すると、落着きがなく、じっと座っていられなかったり、食事中にも立ち歩いたりしてしまう多動性障害と、注意散漫で、忘れ物や落とし物が多い注意欠陥障害の二つの障害を併せ持つ、発達障害の一種です。

 このうち注意欠陥の方は、成人以後も症状が残りやすいのですが、多動性の方は、成人が近づくにつれ収まってくるもので、三十歳前にはほとんど目立たなくなるのが普通です。

 が・・・。宅間の場合は、成人以後も「無鉄砲」な部分が濃厚に残ってしまったようで、二十二歳のとき、宅間は精神病院の5階からの決死のダイブを慣行し、瀕死の重傷を負ってしまうことになってしまいました。このとき、守は頭部も強打したようで、これ以後、持ち前の凶暴性がさらに激しくなってしまったようです。


あくま


 羞恥心



 守には幼児のころから、人並みの羞恥心が足りないところがありました。ふら~っと外へ出てかえってこれなくなり、警察に保護されて帰ってきたとき、悪びれた様子もみせず「お巡りさんとかえってきた!」「パトカー乗せてもろうた!」と無邪気にはしゃいでいたり、好奇心から一人でバスに乗ったとき、運転手さんに「ちんちん(乗車賃)もってきたか」、と聞かれ、おもむろにパンツを脱いで、男の子の大事なおちんちんを引っ張り出したこともあったそうです。

 とんでもない子供のようですが、まあ、夏目漱石の「坊ちゃん」と「クレヨンしんちゃん」のハイブリッドみたいなものだと思えば、かわいいものかもしれません。

 行動力のある人は、例外なく羞恥心が希薄であるといえると思います。恥をかくことを恐れていたら、思い切ったことなどできません。家族にとってみればたまったものではないかもしれませんが、個人の目線では、羞恥心のなさはある意味強みともいえます。 

 後先を考えられない故とはいえ、宅間の行動力だけは感嘆に値すると、素直に思います。失敗も多かったのでしょうが、まあ、引きこもるよりはマシな生き方でしょう。

<ホテトル嬢50人以上とケツの穴セックス、おまえらやったことあるか?医者のねるとんパーティに行って、ベッピンの女、数人とオメコやったことあるか?複数回、再婚なのに初婚とだまして結婚したことあるか?処女と20人以上やったこと、お前らにあるか?歩いてる女、スパッとナイフで顔を切って逃げたことあるか?>


 という宅間の獄中手記に対し、「コンプレックスに喘いだ男の悲しい咆哮。男はセックスした女の数だけを誇りに、絞首台に上っていった」――などと、冷めたコメントをしている記事もありましたが、いったいこの記者は、どれだけ勝ち組の人生を歩んできたというのでしょうか。多数の女とセックスできたんなら、勝ちでいいじゃないかと思いますが。

 長所は常に、短所の裏側にあるものです。この超アグレッシブという長所を生かしつつ、一線を越えないよう何とかコントロールできれば、宅間が人並み以上に幸福な人生を送れた可能性も、私はあったと思います。

 彼の人生は、いったいどこから、本格的に狂ってしまったのでしょうか・・?


じえいたい


 
 小学校


 守は小学校に上がってからも、相変わらずの問題児でした。

 実家に残された通知表の中で特に目につくのは、弱い者に暴力を振るっていた、という記述です。毎年のようにこれが書かれています。父、武士も、守はこのころから、特殊学級の子供を子分にして、殴ったり、万引きをさせたりしていたと語っています。

 弱い者いじめは良くないことですが、私が守をそこまで責める気になれないのは、彼はイジメにしても、誰の後ろ盾もなく一人でやっているのであり、徒党を組んで、一人を集中的に、ねちねちイジメているわけではないところです。

 成人以後もそうなのですが、宅間は悪事を働くにも、「仲間を作る」ということを、まったくといっていいほどしません。あまりの社会性のなさに、不良ですら寄り付かなかったのだと言ってしまえばそれまでなのですが、どうも宅間本人も、根っから友人というものを必要としない体質だったようにも思えます。

 大人になり、自分の時間を大切にするようになってからそうなる人は大勢いますが、まだ自己のアイデンティティも確立できていない小学生のころから孤独に強かったというのは、結構凄いことではないかと思います。どんな問題児でも、この時期はまだ、除け者にされて寂しい、とか、放課後に一緒に帰ってくれる友達がいなくて辛い、とかいった風に思うはずなのですが、宅間がそんな風に思っていた形跡は、まったくといっていいほどないのです。共感性が極端に薄かったからでしょうか?それにしても、他人から孤独に見られてもまったく気にしないのはすごいです。友達がいない恥ずかしいやつだと思われたくなくて、「便所飯」をしている大学生などには、宅間を見習ってほしいくらいです。

 この孤高さというのは、宅間の魅力ではあります。

 もう一つ目につくのは、守は当時から「虚言癖」「空想癖」を発揮していたということです。虚言、空想といっても、小学六年のとき、「正月に日光に行った(父は完全に否定)」ときのことをテーマにして作文に書いただけの可愛らしいものではありましたが、それが卒業文集だったというのがすごいところで、国語の授業の単発モノならともかく、一生モノの文集に堂々と嘘を書いてしまうというのは、考えようによっては大物の風格ともいえます。

 わかっている限りではこの程度ですが、他にもきっと、大人では予想もつかない、しょうもないような、とんでもないような嘘がたくさんあったのでしょう。のちに泌尿器科の医師を装って、ねるとんパーティで高学歴の女を食い荒らした猛者は、こうして成長していったのです。

 将来、自衛隊に入隊し、パイロットになるという夢もこのころから抱いていたようで、アメリカやドイツの戦闘機に乗るんだとか、山本五十六がどうのこうのといったことを、よく先生や友達に言っていたようです。

 私も軍オタというほどではないですが、どこの国の軍でも、軍服や武器、乗り物はカッコいいなと思います。ただ戦うための機能美を追求しただけとは思えないくらい、無駄にデザインが凝っています。

 まあ、間違いなくリクルーティングを意識しているのでしょう。中世の武士が、戦場で個性を出すために華美な軍装を好んだのとは違い、みんなでカッコいいユニフォームを着ることで、連帯感を高める効果も狙っているものと思われます。素朴な旧日本軍の制服とかも、あれはあれで味があっていいと思いますし、ミリタリーファッションには、なにか男心を引き付ける磁力のようなものがあります。

 自衛隊のパイロットに憧れること自体は、男の子らしい、いい夢だと思います。しかし、夢を叶えるためには、当然、それなりの努力というものが必要です。守もそのことはわかっていたのでしょう。小学六年のある日突然、守少年は、大阪池田中学校の願書を取り寄せたのです。

 しかしそれは、パイロットになるためにはいい大学に通わなくてはならない=それには国立のいい中学校に行かなければならない。と、安直に考えただけにすぎませんでした。実際には、守には池田中に入る学力などまったくなく、しかも、地道に勉強を始めることもなかったのです。

 受験もタダではありません。近所の笑いものになることも恐れたのか、母親は怒って、守がとってきた願書を捨ててしまいます。守も無謀な計画であったのをわかっていたのか、受験をやめさせられたことについては納得していたようでしたが、ねじくれ曲がった守は、「親がもっと勉強に適した頭に産んでくれたら、池田中にも入れた」などと恨むようになってしまいました。

 宅間守と大阪池田小の深い因縁は、ここから始まったのです。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

宅間の幼少期のエピソードは知らない物が多かったので新鮮でした、やはり幼少からある種の風格があったのですね。発達障害に関しては私も覚えがあるので宅間が抱えていたものをなんとなく理解できます。中学時代の「知人」を思い出しました。彼も社会性が酷く少なく、中学卒業後何をしているのか知れません。今のところニュースにはなっていませんが。

宅間の行動力は流石ですね。
確かに女とヤル事だけが男の価値ではないですが羨ましいですね。
確かに弱い者イジメは良く無いが徒党を組んでイジメているよりは遥かにマシですね。
宅間の母親が妊娠したとこれあかんや降ろしたいと言った話は本当なのでしょうか?
小さい頃から1人で寂しくないのは流石ですしこの孤高さが本当に宅間の魅力だと思います。
他人の目を全く気にしないのも凄いです。悪事を働く為に生まれてきた様な人間ですね。池田小とはそんな前から因縁があったんですね。



No title

NEOさん

 凶悪犯罪者のエピソードだからやばいように見えるかもしれませんが、犯罪者というフィルターを外してみると、クレヨンしんちゃんみたいなもんだったと思いますね。ちんちんをポロンと出したシーンなどはその場にいたら笑っていたでしょう。

No title

まっちゃんさん

 倫理観を平気で飛び越えますし、ホテトル嬢とかはバックに怖いお兄さんがいるとかまったく考えないのがすごいですよね。それだけのエネルギーがあるなら、他にもっと頑張れることがあったんじゃないかと思わなくもないですが、まあこれだけ好き勝手やれたなら勝ちでいいでしょう。

 栃木リンチとか他がひどすぎるんで相対的にまともに見えるだけですが、卑劣さがないというのはいいところではないかと思います。本文にも追加しましたが、孤独でいると思われたくなくて「便所飯」してる大学生には宅間を見習ってほしいですね・・・。

 母親の発言は本当だとしたら漫画の世界ですよね・・。

No title

宅間は幼少の頃からもう振り切れていますね。
他のエピソードは活発な子供ならあり得るとは思いますが国道の真ん中を三輪車で走り、車が渋滞するのを見て愉しむ子供はまずいないでしょうね。
思い立ったらすぐ行動する人物であることは間違いなさそうです。
頭部を強打すると凶暴性が増すということがあるのですね。
発達障害を持つ人の脳細胞に何かのダメージが加わると色々な影響がある気はしますね。
人間は寂しがり屋の人もいますし孤独に強いという人もいるというのも生まれ持った性質なのかもしれませんね。
宅間はエリート願望はあったでしょうね。
皆から尊敬や称賛されたいという気持ちは強かったと思います。
小学生が自分で中学校の願書を取り寄せることは正直凄いなと思ってしまいます。
やる気があると思いきや受験勉強をしないという所が良いと思いますね。
大人になってもその時の出来事をかなり根に持っていたことは事実でしょうね。

No title

seaskyさん

 他のエピソードはADHDの範疇で説明できますが、国道の真ん中を三輪車で走るのはそうそうないでしょうね。三歳なので罪悪感が薄いのは仕方がないにしても、自分の命を軽く考えすぎです。

 頭部を強打したことが原因で凶暴性や異常性欲に目覚めてしまう例は海外でもあります。ドラゴンボールの悟空は逆におとなしくなりましたが実際にはまったく反対のようです。

 受験は先生が色々教えてくれたんでしょうけど、自分で調べて願書を取ってくるだけでも確かにすごい気がしますね。ひらめきで行動する力はありましたが、いかんせん地道さに極端に欠けていたのが悔やまれますね・・・。

宅間守を身ごもった時の母親の発言を初めて聞いた時は、ホンマかい? と思いました。

しかし、そんなエピソードさえホンマであると思える程、宅間守という男は破天荒ですよね。


このエピソードが尊師のおじちゃんのものだったのなら、こちらも「また捏造して~」となります(尊師のおじちゃんが自らの生誕を否定する事はなさそうですが)





宅間がモテたのは、ひょっとすると尼崎の土地柄が少なからず関係しているのではないでしょうか?


尼崎、ワルがモテそうじゃないですか 笑

No title

L.Wさん

 結果論で人を語ることはあんまりしたくないですが、宅間の人生を見ていると、確かにそういうことがあったのかもしれないと思えますね。

 尼崎はヤンキーとやくざはかなり多いですけど、宅間はそれらとはまた違うんで全然関係ないでしょうね。結婚した女性も、みんなちゃんとしてる人です。

読みに来ました!

宅間守の生い立ちが知れて、色々と考えましたが、どうも上手くコメントが書けなくてすみません。犯罪者バトロワを読んでいた頃は宮崎と宅間に注目してました。頭を打って凶暴化したんですね。そこらへんは結構あることなんでしょうか。一回も結婚出来てない精神病患者からすれば、数回結婚できるなんてすごすぎます。悪事もこれくらいならまだ、という気はしますがこれからヤバイことになるでしょうし続きが気になってます。

No title

かなえさん

 ありがとうございます。犯罪者名鑑は、何も犯罪に詳しいひとと犯罪者マニアの会話がしたいわけではないので、私が書いたものをみて感じたことを書いてくださればうれしいですよ。

 バトロワ再開したいんですけどねぇ。結局再開できぬまま来年5月で更新中止ということになりそうです。まあ何年後かでも終わらせられればいいですけどね💦

 後で紹介しますが、頭を打って凶暴化した例はアメリカの結婚詐欺殺人鬼レイモンド・フェルナンデスが有名ですね。異常性欲に悩まされたのも宅間とまったく同じです。前頭葉を損傷するとそうなってしまうみたいですね。

 これから宅間がどんどん悪の階段を上っていきますので期待してください・・・。つぎ山地悠紀夫ラストやるんでまた遊びにきてください。

「歩いてる女、スパッと顔をナイフで切って逃げたことあるか」
宅間は通り魔的な事をしたことがあるんですか?
知りませんでした。

小学生が勝手に願書を取り寄せるなんて、面白くて笑っちゃいますが…
母親は怒ってしまうのですね。
怒ることではなく、ただ言い聞かせればいいと思いますが。
後々笑い話になりそうですしw

No title

ひなさん

 わかっているだけで前科11犯ですから、表沙汰になっていないものはその3倍はあると思っていいでしょうね。

 小学生で学校まで足を運んで自分で願書を取ってくるなんて偉いと思うんですけどねぇ。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR