犯罪者名鑑 麻原彰晃 21

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 TBSビデオ問題

 
 TBSは、問題とされる番組の制作に向けて、オウムがマスコミ向けに公開した、富士山総本部での「水中クンバカ」の模様を録画するとともに、公平を期すため、坂本弁護士、牧太郎、永岡弘之ら、被害者の会側にもインタビューを実施しました。

 インタビューの中で坂本が主張していたことを要約すれば、

 ・信教の自由は認められるべきである。しかし、宗教も社会のルールの中で行われるべきであり、家庭を破壊することは許されない。

 ・宗教が金儲けの手段ではあってはならない。オウムの金集めの方法は常識を逸脱しすぎている。

 ・麻原に空中浮揚などの特殊能力はない、イニシエーションに使われる麻原の遺伝子に、特別な効果などはない、といった客観的事実。

 というところです。

 オウムの水中クンバカ撮影は、被害者の会インタビューの収録を終えた数日後のことでしたが、水中クンバカ撮影後に行われた、麻原へのインタビューの中で、やはりオウムの金儲けについて批判する内容の質問がされたということで、オウム幹部と、ディレクターとの間で言い争いが起こってしまいます。その言い争いの中で、ディレクターが、番組の中で、被害者の会のインタビューが放送されることを、ついうっかりと漏らしてしまいました。

 事態を重く見た麻原は、後日、早川紀代秀、上祐史浩、青山吉伸の三人を、TBS千代田スタジオの「3時に会いましょう」スタッフルームへと送り込んで来ました。三人は、番組の制作スタッフに対して、被害者の会のインタビューが収録されたVTRを見せることを要求。スタッフは三人の圧力に負けて、VTRを見せてしまいました。

 これは重大な信用問題です。マスコミには「取材源の秘匿」つまり、取材相手の承諾なしに、その内容を外部に漏らしてはいけないという報道倫理があります。これが守られないと、取材相手との信頼関係は完全に損なわれてしまい、結果的に、世間に対して正確な情報が伝わらなくなってしまうことに繋がります。

 報道関係者にとっては基本中の基本、入社以前に知っているべきことのはずですが、なぜか番組制作の責任者は、こともあろうに、取材源である坂本弁護士らと対立するオウムの幹部に、未発表のVTRを見せてしまったのです。

 VTRで坂本が語った内容に関しては、これまでオウムに行ってきた批判のまとめに過ぎないもので、このVTRが直接的な原因となって一家が殺害されたとは、単純には言えません。しかし、VTRを見せたことが、麻原やオウム幹部の反感を煽る結果となったことは明らかです。

 極め付けだったのは、結局、このとき制作された番組が、世間に向けて発表されることはなかった、ということです。どうせこうなったのなら、せめて番組が放送されて、世間が早いうちから一家失踪とオウムとの関連に気づけるようになれば良かったと思いますが、オウム側からの激しいクレームに屈したのか、番組の放送は中断され、しかもその見返りとして、TBSはオウム側に、被害者の会のインタビューが収録されたVTRを見せたことを公言しないように要請したのです。

 TBSは一家の失踪が明らかとなってからも、オウム幹部にVTRを見せた一件を公表しませんでした。経緯からして、オウムが「怪しい」のは小学生にもわかることであり、この時点でTBSが過失を認め、事実を公表していれば、地下鉄サリン事件など、後に起きた事件はすべて防げていたであろうことを考えると、事実を隠匿したTBSの責任は大きいと言わざるを得ません。

 坂本本人にも、番組の放送が中止になったことは知らされましたが、オウムがスタジオに押しかけてきたこと、オウムに未発表のVTRを見せてしまったことは伝えられませんでした。坂本は「中途半端な内容では、番組がオウムの宣伝になってしまうかもしれないし、かえって良かった」と、中止になったことを歓迎しているようでしたが、すでにこのとき、麻原の殺意は、坂本に向けられていたのです。


あさあらしゅこう


 
 対決


 オウム側のクレームにより、番組の放送はひとまず中止されることが決まりましたが、TBS側の説明では、今後同様の趣旨の番組が放送される可能性がないとはいえない、とのことでした。そこでオウムは、今後永久に、マスコミを使って教団を誹謗することを辞めさせるよう、坂本弁護士との直接交渉に臨みます。

 横浜法律事務所で行われた話し合いでは、オウム側は、青山だけがテーブルに着くという当初の約束を破り、上祐、早川を同席させます。そのことに坂本が憤慨すると、上祐、早川は別室で待機ということになったのですが、当時まだ二十代、若く血気盛んで、弁舌に自信があった上祐は自分を抑えられなかったのでしょう、持参した資料の説明にかこつけて、結局は交渉のテーブルに座ってしまいました。

 一方、早川は、部屋に置いてあった、事務所の機関誌に目を通していました。そこに書かれていたのは、坂本の家族構成と、横浜市に住まいがあるという個人情報でした。

 横浜法律事務所が入っているビルの玄関が閉まる二十一時半ギリギリまで行われた話し合いがうまくいかなかったのは、紅潮した坂本の顔と、「こちらには信教の自由がありますから」という上祐の捨て台詞、それに対する「人を不幸にする自由は許されない。徹底的にやりますからね」という坂本の返答が物語っていました。オウムは、「今後も被害者の会が活動を続けるのなら、子どもを使って、被害者の会に所属する親を裁判で訴えさせる」とまで言ってきたようです。

 坂本は憤慨しましたが、被害者の会側にも、切り札はありました。脱会信者で、百万円を払って血のイニシエーションを受けたが何の効果もなく、返金を要求したが応じられず、何とか取り返したい旨を相談してきた男性です。男性は、オウムに入信したいきさつや、教団での修行内容をマスコミに暴露していたのですが、オウムは記者と偽って男性の自宅に上がり込み、脅迫をして、マスコミに話した内容を訂正し謝罪する文書にサインをさせたというのです。

 話が事実なら、民事だけでなく、刑事でも告訴できるかもしれません。坂本は、ようやく自分の戦場で腕を振るう機会が来たと意気込んでいました。


わたぬ




 殺害指令


 翌年に真理党として総選挙に出馬することを計画している麻原にとって、加熱するオウム批判の動きは、目障りなことこの上ないものでした。

 この時点で言っても無意味なことですが、ここで疑問に思うのは、そもそも麻原が総選挙出馬など考えなければ、反オウムの動きがこれほど加熱することはなかったのではないか・・・?ということです。

 出る杭は打たれるのは世の常。また、人というものはえてして、本当の悪人よりもむしろ「偽善者」に反感を覚えるものです。明らかな違法集団がええかっこしいをして目立とうとすれば、世間から袋叩きに合うのは必然です。

 また、坂本弁護士はもともとオウムに関わるのは乗り気ではなく、オウムという社会悪を断罪するというより、困っている被害者の役に立ちたいという想いで、オウム問題に関わっていました。つまり、訴えがあった時点で、オウムが被害者に素直に信者を返すなど譲歩していれば、坂本はそれ以上オウムに深入りするのをやめ、ここまで批判の声が大きくなることもなかったはずです。麻原ほど頭の良い人物が、それをまったくわからなかったわけではないと思うのですが、総選挙に出馬することを考えると、いかなる過ちでも認めたくはなかったのでしょう。

 この後、麻原率いる真理党は、総選挙で惨敗という結果を迎えたことを考えれば、総選挙出馬という無謀な野望が麻原自身の首を絞めており、無駄に金を使い、部下を振り回しただけで、組織にとって何の得にもなっていないということが言えると思います。

 「自己顕示欲」というのは厄介なシロモノだな、というのは、こういうブラックな団体をみたときに感じることです。今でいえば「ワタミ」がそれですが、あの会社だって、バカ社長があんなに出しゃばって、企業のマイナスイメージを世間にばら撒いていなければ、あれほど業績が急激に低下することはなかったはずです。

 ワタミの肩を持つわけではありませんが、飲食の会社などはどこも似たようなものですし、世間には表に出ていないブラック企業など山ほどあります。そういう会社の社長たちは、「ワタミはバカだな。俺たちみたいに、分を弁えて、もっと目立たないようにコソコソやれば、世間から叩かれることもないのに」と、バカナベ美樹を笑っていることでしょうが、バカナベ本人は、自分がバカだなどとは夢にも思っていないでしょう。

 麻原もバカ美樹も、「自分は絶対正しい」と思い込んでいるはずです。その割には、後ろめたいところを指摘されたとき、慌てふためいてオーバーなリアクションをとってしまうのが矛盾しているように思いますが、逆に考えれば、自分を後ろめたい存在、追及されたらヤバい存在だと強く自覚しているからこそ、ああいった正反対の偽善的アピールをして、自分自身までをも誤魔化さないとやっていられないのかもしれません。こういう人間の心理も、中々興味深いものはあります。

 とにかく、反オウムの動きを苦々しく思った麻原は、オウムを批判する人々を殺害できないかと、真剣に考えます。冷静に考えれば、今現在オウムを批判している人々を抹殺したところで、別の誰かが立ち上がるだけで、事態はかえって悪化するという結論に至るはずですが、目の前の選挙戦のことしか見えない麻原は、まずはサンデー毎日編集長の牧太郎の抹殺を計画。しかし、牧が編集部に泊まり込むことが多く、危害を加えるのが難しいことがわかると、とうとう坂本弁護士をターゲットに選びます。

「坂本を生かしておけば、オウムにとって大きな障害となる。坂本がこれ以上悪行を積まないためにも、ここでポアしなければならないのではないか」


 こうして、坂本弁護士一家殺害計画が、実行に移されることとなったのです。
 
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No title

坂本弁護士とオウムの幹部は実際に会って話し合いまでしていたのですね。
麻原が噂を聞いていきなり指示したとばかり思っていました。
当時は個人情報も今よりかなり緩かった時代で個人の住所や電話番号などは普通に書類等に記載していたのでしょうね。
そこまで他者に対して警戒しない時代だったのでしょうね。
大きな組織のトップは自己顕示欲はかなり強い人が多いでしょうね。
麻原クラスだともう際限なく突っ走っていきますね。
総選挙に出馬することに反対意見はなかったのでしょうかね。
麻原の暴走をもう誰も止められなかったのだと思います。
それにしても空中浮遊の写真は笑ってはいけないと思いつつも笑ってしまいます。
麻原の必死な形相が何とも言えない可笑しさを醸し出していますね。

No title

seasky さん

 オウム幹部も独断で被害者の会と和解する方向に持っていけなかったのかと思ってしまいますね。上祐や青山の性格からすると、麻原への恐怖というよりは、自らすすんで対立する方向にいき、弁舌で坂本弁護士を打ち負かそうとするあまりに、話しを余計に拗らせてしまったという感じがします。

 当時のセキュリティ意識の甘さはあったと思いますが、次回で触れる坂本弁護士宅に鍵がかかっていなかったのは幾らなんでもおかしいんですよね。様々な仮説から検証していきたいです。

 昔は堀江信者とかもいましたけど、最近は成功者の立志伝とかウケないですよね。時代の流れとか読めてない時点で、美樹は経営者失格でしょう。

 空中浮遊の写真は笑いますよね。ただ松永太の偽葬式とかもそうですが、こういうパフォーマンスを羞恥心なくやってしまうところが大物と言うか、天性の詐欺師なんでしょうね。

更新待ってました。ありがとうございます。
総選挙出馬も本気で当選すると思っていた麻原にとっては、坂本弁護士の存在は邪魔でしかなかったんでしょうね。
麻原のかいた絵の通り進めるには冷静な判断が出来なくなってしまったのでしょうか?

それにしても、TBSの対応が違ったら…と思わずにはいられません。

No title

まんじゅうさん

 こんな大失態を犯したTBSがいまだにキー局で全国に映像を流しているというのが、ある意味一番怖いですね。

 選挙戦に出馬を決めたのは、先に起きた二事件の隠ぺいという目的もあったかもしれませんね。権力を握ってしまえばどうにでもなるだろう、という。拡大発展的な麻原らしい思考ですが、現実的に考えれば、目立たないようにしていた方がいいと思いますけどね・・・・。

やはり、手段を選ばない相手に正攻法で挑むのは得策ではないでしょう。

自分の信念を貫きたい気持ちは解りますが、殺されてしまってはどうにもなりません。


とはいえそんな事は、事件が起こった時に初めて身に染みるのでしょうね。


歴史上の権力者の大敗の記録を見るようには、自分の先行きを考えられぬものですね。



No title

L,wさん

 ただ、誰かが必ずやらないといけないのも事実ですけどね・・。民事不介入の原則がある以上、警察も万能ではないので。

お初になります

初めまして。

仕事の合間にこのサイトを見付けて一部読ませて頂きました。

まだ麻原死刑囚についてしか読んでいませんが、週末等に改めて遡って拝見致します。

それにしても麻原死刑囚に関しては当時あれだけマスコミを賑わせており、ある程度の情報は自分なりに得ていたと考えていましたが....。初めて得る情報の多さに驚いています。

今後も続編を心待ちしています。有難う御座いました。

No title

RATTさん
 
 はじめまして。コメントありがとうございます。前半部の麻原の生い立ちなどはテレビではそれほど詳しくやらないと思うので、そこそこ楽しんで頂けたかと思います。二十回以上やってるんで、個別の記事に感想などいただけると嬉しいです。

 ほかの事件についても、是非感想ください。よろしくお願いします。

No title

TBSは普段から自民党政権叩いたりして正義の味方面してますけど
この件に関しては未だに清算できていないですよね。
故筑紫が他人事のように「TBSは死んだ」とかほざいたくらいで。
出したスタッフは実名顔出しで糾弾されるべきですよ。
今でも平気な顔で仕事してるか定年終えたかでしょうけど。

もちろん、尊師の空中浮揚には最敬礼です!

No title

NEOさん

 もう二十六年も前のことですから、当時のスタッフが残っているかも微妙なとこでしょうね。ただ、やはり巨大メディアのような権力と財力を握った連中を監視していくのも国民の役目なんで、やはり風化させてはならないと思いますよね。

 コメントありがとうございます、他の記事にも感想頂けると嬉しいです。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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