犯罪者名鑑 佐世保小6女児殺害事件 4

させぼ


 トラブル

 
 新学年が始まった四月までは仲良しだったAと御手洗さんの関係が俄かに悪化するのは、五月が終わりに差し掛かったころのことでした。Aが御手洗さんに「ぶりっこ」「いい子ぶってる」などとHPに書き込まれ、怒りを露わにしたというのです。Aは、不快な書き込みを辞めて欲しいと訴えましたが、聞き入れられず、御手洗さんがもう一度そのような書き込みをしたことから、殺意を覚えた、と語っています。

 Aは口頭による警告だけでなく、御手洗さんのHPの内容を勝手に書き換えたりするなどの報復措置も行っていたようですが、これに対して御手洗さんは、「なんで(原文ママ)アバターがなくなったり、HPが元に戻っちゃってるケド、ドーセアノ人がやっているんだろぅ」「荒らしにアッタんダ。マァ大体ダレがやってるかワわかるケド。心当たりがあれば出てくればイイし。ほっとけばイイや。ネ。ミンナもこういう荒らしについて意見チョーダイ」と、HP上に書き込んでいます。

 他にも、五月の頭ごろに、女の子同士でおんぶをする遊びをしていたところ、御手洗さんが冗談で、Aを「重い」と言ったのを真に受けて(Aの体重は40キロ台で、太ってはいない)、Aがダイエットをする決意をHPに書き込んでいたこと、御手洗さんも参加していた交換日記で、Aが文末に「NEXT」と書いていたのを、面白がってみんなが真似し始めたところ、Aが「パクらないで」と真剣に怒ったこと、などが伝えられています。これなどは、「冗談が通じず、相手の言葉を真に受けやすい」「些細なことに拘りを見せる」アスペルガーの特徴と取ることもできますが、真偽はわかりません。

 Aと御手洗さんの関係について、私は前回、「一方が無二の親友だと思っていたのが、もう一方にとっては多数いる友達の一人にすぎず、独占欲が満たされないことへの不満があった」ケースではない、と書きました。実際に、Aは他の友達とも普通に遊んでいましたし、御手洗さんとの関係について、「もっと仲のいい友達は他にいた」と、捜査関係者には語っています。

 しかし、六年生にもなれば、本音はごく一部の信頼できる人以外には隠すようになるものです。まして、殺意を抱くほどに強く思った相手への感情を、第三者に簡単に語ろうとするものでしょうか。凶悪犯罪者には自己顕示欲が強く、聞かれてもいない自分の本音や、事件の真相をポンポンと喋るような人もいますが、Aは伝わっている本人の発言の少なさから考えても、どちらかといえば口を閉ざすタイプであるように思います。Aが御手洗さんにどのような感情を抱いていたのか、その真相は、本人にしかわかりません。

 私が個人的に気になるのは、御手洗さんがHPに記述した「ミンナもこういう荒らしについて意見チョーダイ」という部分です。これは女性が良く使う嫌な手段ですが、御手洗さんはこのトラブルにおいて、多数の人(自分に同意してくれそうな人)の意見を求め、あたかも大勢の人が相手を責めているような形に持っていっています。確かに相手を心理的に追い詰めるには有効な手段なので、男でもやる人はいますが、どちらかといえば、「一対一」の美学の意識が薄い女性のほうが、やる人が多い気がします。

 御手洗さんは事件の被害者であり、この程度のトラブルを殺害にまで発展させたAの方が悪いことは承知の上ですが、やはり最後の「ミンナも意見チョーダイ」はダメ押し、余計な一言ではなかったか、という気はします。これがAを必要以上に追い詰めてしまったのではないか、というのが、私の個人的な想像です。

 また、Aは4月の末から5月にかけて、同級生の食事の仕方を中傷する文章や、有名な「うぜークラス」、また、クラスメイトたちが殺し合いを繰り広げる小説を、HP上にUPしていました。Aが憎んでいたのはクラスメイト全体であり、その怒りの矛先が、クラスの中心人物だった御手洗さんに向いてしまった。バトルロワイヤルのように皆殺しにするのが無理ならば、「お前らが一番大事にしているものをぶっ壊してやる」ということだったのかもしれません。

させぼ


 
 佐世保小6女児殺害事件


 二○○四年六月一日、午後〇時三十五分ごろ、六年生の教室で、「いただきます」の声とともに、給食の時間が始まりました。そのとき、担任教諭が、教室にAと御手洗さんの姿がないことに気が付きます。

 その頃二人は、同じ階の学習ルームにいました。Aが御手洗さんを「話がある」と呼び出したのです。昼休みなどの自由時間ではなく、給食の前の時間を利用したのは、余人を立ち入らせないためでしょう。午前の授業が終わってから、給食が始まるまでの僅かの時間で犯行に及んだのは、もうこの時点で話し合いをするつもりはなく、明確な殺意があったものと断定できます。

 Aは学習ルームのカーテンを締め、椅子に座らせた御手洗さんの目を手で隠すと、首筋を一気に、カッターナイフで切り裂きました。大量の返り血を浴びたAは、そのまま教室へと帰っていきますが、すぐに教室に入っていくことはできず、しばらく廊下で立っていました。それを担任教師が発見します。

「どうしたんだ」

 担任教師が声をかけると、Aは

「私の血じゃない!!」

 と、大声で叫びました。

 担任はAが固く握りしめたカッターナイフを取り上げると、もう一度、Aの身体をゆすりながら、「どうしたんだ」と声をかけます。Aは消え入りそうな声で「あっち」と言い、学習ルームの方を指さしました。担任が学習ルームに行くと、そこで御手洗さんが、折れたカッターの刃が浮かぶ血の海の中、うつ伏せに倒れていました。

 担任は他の教師に応援を頼み、病院、警察に通報。御手洗さんのお父さんも連絡を受け、タクシーで救急車よりも早く到着。変わり果てた娘の姿を目の当たりにしました。その頃Aは、保健室に移されていました。

 大久保小学校は混乱の様相を呈していきました。学校から連絡を受けた保護者が校門の前に立ち、我が子の安否を心配し、校内に向けて怒号を飛ばしますが、警察がガードする校門は固く閉じられ、学校側から詳しい説明は何もありません。教室で待機していた六年生がようやく解放されたのは、午後七時ごろのことでした。

 1日夜は、学校内にて、御手洗さんのお父さんの記者会見が開かれました。ジャーナリストである恭二さんは、「正直、話をしたくないと思っているが、逆の立場ならお願いしている」と、気丈にコメントに応じました。校門前では、群がる報道陣の前に、この後の事態収拾に信じられない稚拙な対応を連発する、出崎叡子校長が登場。「まずは御手洗さんのご冥福をお祈りします。子供たちの心のケアを図っていかなければならないし、教職員一丸となって、また事件が起きないよう努力していきます」とコメントし、嵐のような一日は締めくくられました。
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非公開コメント

No title

2人の関係はどちらかというとAさんのほうが立場的に上で引っ張っていくタイプだと思っていましたが違ったのですね。
結構お互い意見を言ったりイタズラ的なこともしたりでほぼ対等な関係だったのが見受けられますね。
この2人と共通の友人もいたと思うのでその友人の証言も事件に結びつく手掛かりになりそうです。
思春期の時期で感情のコントロールが抑えられないことがあるにしてもさすがにこの事件は特殊だと思います。
このくらいの年齢でネットや掲示板を使うことが果たしていいのかという問題も考えてしまいますね。

No title

seasky さん

 どちらが上か下かということではないようですね。やはり両親がブロックしているのか、友達に話を聞くのは大変だったみたいですね。今なんかみんないい歳だから、なんでも話してくれると思いますけど、取材やらないんですかねえ。

 いったいネバダちゃんの何が、彼女を殺人にまで駆り立てたのかは、ハッキリとしたことはわからないですよね。概ね報道通りで、特に驚くことはなかった酒鬼薔薇くんより、ネバダちゃんの方に話を聞いてみたいものです。

 ネットは明らかに「必要はない」と思いますが、ネットの何がいけないかをちゃんと説明できるかですよね。頭ごなしに「やるな」って言っても六年生くらいなら普通に反論してきますし、それに対しても「ダメなものはダメ」としか言えないようでは、親としての資質を疑われてしまいます。
 

このサイトでも、本件を謎の多い事件として扱ってらっしゃいますよね。


犯行は明らかに計画的ですが、犯行直後のAの行動には多少の疑念が残ります。

Aは犯行を誤魔化す気はなかったのでしょうか。

No title

L,wさん

 普通に考えれば言い逃れできない状況とはいえ、小学生の稚拙な頭だとしょうもない嘘をつこうとするものですが、自分もパニックになってそこまで頭が回らなかったのでしょうね。

いじめっ子に復讐しようと思ったことは数え切れない程あった
しかしどれも失敗に終わった
いじめっ子の方が強かった
父親の部屋からライターを持ち出し家に放火しようとしたこともあったが
ライターに火をつけることすらできない不器用だったので最初から無理だった
転校する直前には不良の先輩方と知り合いであることをやたらアピールされた
「私がいなくなってもお前はいじめられるんだよ」
とでも言いたかったのか
見た目が不良の人達でも言う程ワルではなかった
挨拶しないことを注意されたくらいだ
あの転校以来、近所から本物の悪人がいなくなった気がした

ネバダちゃんは被害者より強い自信はあったのか
抵抗されたらどうするつもりだったのだろう
出回ってる写真ではいかにも不良に見える写真はなかった
バスケをやっていたから運動能力は高かったのだろうし
体重が重いと言われるくらいだから被害者よりは大きめな身体だったのだろうが
被害者が呼び出しに応じなかったり
「ミンナ」を連れて来たら?
落ち度があるとか叩くつもりはないが
被害者はネバダちゃんに恨みを持たれていることに気づいていたのだろうか?

No title



MSKSさん

 体重が重いのは、どうやらネバダちゃんの思い込みだったみたいです。二人で写ってる写真でも、ネバダちゃんの方が小柄ですしね・・。

 恨みの認証ですけど、これは難しかったと思うんですよね。関係が悪化したのが本当に一か月程度の短い期間でのことでしたし、ネバダちゃん側にも問題があったのも事実です(交換日記の表現をマネされたくらいでマジギレした)。ましてカッターで切り付けられるなど、まず予測できなかったと思います。

 普通に、「私に謝ってくるのかなあ。そしたら私も謝ろうかなあ」くらいの気持ちでついていったと思います。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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