私小説の続き4 いかりやジジイ

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 最後の研修はA店でした。ただ妙なことには、A店のシフトリーダーではなく、B店のシフトリーダーと一緒の勤務であったということです。ただ、A店にはシフトリーダーは一名しかいませんが、B店にはキャプテン一名にシフトリーダーが二名という人材を抱えており、たまたまA店のシフトリーダーが休みだったから、応援にきたB店のシフトリーダーとやることになったのかな、と、このときも深くは考えませんでした。

 B店のシフトリーダーは二十代後半くらいの、穏やかな人でした。深夜ということで、お酒が深く入った人も来店するんですけど、カウンター席でおしっこを始めてしまうような人もたまにはいるんですよね。そういう客にも冷静に対応していたのが印象的でした。仕事の教えも丁寧で、私がミスをしたときもけして声を荒げたりはせず、何が悪いかを教えてくれました。世が世なら、もっとまともな仕事に巡り合えたであろう人材だったでしょうね。私のようなボンクラならまだしも、団塊以上の糞じじいたちの大半より確実に優秀なこういう人にまで「自己責任」のレッテルを張り付けて不当に冷遇する社会には本当に怒りを覚えます。

 この日の勤務で嫌な思いをしたのは、店内の有線放送でした。福山雅治の「ゆう~じょのように抱かせてよ~」という曲のCMがずっと流れていたんですけど、10時間の勤務時間中、せっまい店内で、ずっと同じ曲ばかり聞かされるストレスは半端じゃないです。オウムのヘッドギア洗脳と同じですよ。これで福山信者になる人もいるんでしょうけど、私の場合は、福山雅治が大嫌いになりました。

 そんなこんなで研修が終わり、いよいよA店での本勤務と相成ったのですが、この日、なぜ店長が私の研修をわざわざ他店でやったのか、その真の理由が明らかになりました。

「あ、どうも。今日お世話になります、津島と・・・」

「知ってる。はやく着替えて」

 A店のシフトリーダー、いかりや長介似のいかにも陰険そうなツラをした五十歳くらいのオッサンの第一印象は、まったく最悪のものでした。

 実際に勤務が始まってみると、私の嫌悪感はマックスに近づいていきます。

「昼の連中は何やってんだよ。余計な仕事増やしやがってよ~」

 ぶつくさと他の時間帯の人の仕事ぶりを批判してるんですけど、詳しくは覚えてないですが、オッサンの愚痴ってることなんて、時間にしたら十秒か二十秒くらいの仕事量なんです。そんなのお互い様だろ、と思うんですが、コイツはミスを一切しない完璧人間だったんでしょうか。そんなはずはありません。

 松屋では、料理が出来上がった際、調理担当が接客担当に聞こえるように「○○できました」ということを言う決まりになってるんですけど、オッサンは一切言わないんですよ。オッサンが言ったのは「料理が出ているかどうか、君がキッチンを見て確認しろ」ということでした。いや、それマニュアルどおりじゃねえから、と。ベテラン同士ならそれでいいかもしれないですけど、僕まだ入って一か月半しかたってないのに、そんな余裕ねえよ、と。

 その旨を抗議したところ、オッサンはしぶしぶ声を出してくれるようになったんですが、その声が小さい小さい。仕事を教えるときも、ボッソボソ小さい声だから何言ってるのかわからない。そのくせ、口癖なのか何なのかわからないですけど、「こんなのは常識だぞ」と注意の最後に言う声だけははっきりと聞こえるほど大きい。

 もうお分かりだと思いますが、店長は、オッサンに人を教える能力がないことをわかっていたんです。だからわざわざ、他の店で私をたらいまわしにして仕事を教えさせていたんです。B店には三人もいるシフトリーダー以上が、A店にはオッサン一人しかいないのも、たぶんオッサンのせいでしょう。コイツのせいで人がすぐ辞めて育たないんです。

 圧巻だったのは、オッサンが休憩中、私がまだ作ったことがない料理のオーダーが入った際、教えてくれるように頼んだときのことです。

「そんなのは自分でマニュアルみながらやれよ!常識だろ!」

 こんなヤツをなんでシフトリーダーにしたのか、店長に小一時間問い詰めたい気持ちでした。夕方の時間帯に、リュウ君(仮名)という中国人の留学生がいたのですが、レベル4まで上り詰めた彼が、そろそろシフトリーダーにしてくれと店長に頼んだとき、店長は「人に教えられるようにならないと、シフトリーダーにはできないよ」と言っていたのです。

 じゃあ実際どうなのかと見てみれば、人に仕事を教えないオッサンがシフトリーダーやってるじゃないかと。いやあ、コイツをシフトリーダーにするならリュウ君もシフトリーダーにしてあげようよと。時間帯が違うから仕方ないっちゃないですけど、なんかねえ・・。

 ちなみに、オッサンが作る料理は、マニュアルと明らかに食器が違うなど、デタラメなものばかりでした。オッサンの言う「常識」とやらで仕事を覚えた結果がそれですよ。

 少しだけオッサンを擁護するなら、シフトに入る人数が少ないというのは確かにあります。まだ未熟なスタッフがいることがわかっているならもう一人教える要員入れて、休憩くらいはゆっくりとれる体制にするべきなんじゃないかとは思います。オッサンもそれは不満だったでしょうが、その不満は上にぶつけるべきものです。ちなみにB店での研修の際も特に増員はなくキャプテンのおじさんが一人で教えてくれたのですが、その人は休憩時間を潰されても憤りをあらわにしたりなどはしませんでした。

 私もいい加減、限界でした。こんなジジイと十時間も狭い店内で一緒にいたら、頭がおかしくなります。

「もうてめえ一人でやれ!俺は辞めるからな」

 オッサンに水の入ったコップを投げつけて、私は店をバックれました。それきり、もうこの店には寄りついていません。店長からの電話は入りませんでした。よくあることで、予想されたことだったんでしょう。根は小心者なのだろうオッサンが最後に見せた、泣きそうな顔が印象的でした。

 
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No title

映画のワンシーンみたいな光景ですね。
もう我慢の限界だったのですね。
店長の考えが全く分からないです。
どういう人か見極める能力も店長には必要な要素ですよね。
被害者は数多くいたと推測されますね。

お世話になっておりやす。金満家です。

例の件は私に意気地がなかったのがげんいんですのでお気になさらず。本当は津島さんのアドバイスが正しいのですが私はビビってしまったのです…。

いかりやは何処にでもいそうでなかなかいない希有な存在ですね。店長も何を思って教育係りにしたのでしょうか?
特に松屋は牛丼だけじゃなく他のメニューも扱ってるので覚えるの大変そうですよね。私はその系統のバイトしたことないんでよくわかりませんが…。
一度すき家の面接行こうと思ったことがありますが行かなくて良かったです。

No title

seaskyさん

 店長も頭の痛い問題だったでしょうね。昼の時間帯なら店長の目も届くからいかりやみたいなジジイがのさばることもないですが、深夜だとどうしても野放しになってしまいますからね。そもそも深夜営業自体やめるべきですよ。競争の名のもとに便利さを追い求めすぎた結果、人の生活が破壊されていることを、現代人はいい加減気づくべきです。


金満家さん

 すみません、私の伝え方が良くなかったのですが、いかりやは教育係ではないんですよね。私が勤務するA店で唯一のシフトリーダーなので、ゆくゆくはコイツと勤務しなければならないのですが、いかりやには人を教える能力がないため、他の店で私に経験を積ませて、ある程度形にしてからいかりやと組ませる、というのが店長の考えだったと思うんです。まああの性格では、私がいくら仕事ができていたとしても続くことはなかったでしょうね・・。

 すきやは松屋以上のブラックですから入らなくてよかったですね。「バイトは労働者ではない」とか、どんな頭してたらそんな言葉がはけるのか理解できないですよね・・・。

ファスト・フード店ではないですが、私はスーパーでバイトした事があります。

ああいった店もアホな人間がかなり多く、そんな彼等を見て、当時まだ高校生であった私は素直にドン引きしていました。

例を挙げる事すらしょうもないような連中ばかりでした。

因みに私も、最後はキレて飛びました。


私の場合、キレてから辞めるまでに結構タイムラグがありました(給料の締め日まで働いたわけです)

その間、私にキレられた社員は私を無視し続けました。

私からしたら好都合でしたが、たかだかバイトのガキとの間で起きたトラブルさえも鎮圧出来ない、そんな裁量だから、こんな所でこんな事をやらされてるんだな、とも思いました。

No title

L,wさん

 スーパーは私も高校時代のときにやりましたね。そんときにくらったのは、「30日以内の解雇予告通知のない解雇」でした。完全にこっちの無知につけ込んでいるわけですね。

 今思い返せば私の勤務態度もよくなかったと思いますが、それも安価だからといって、簡単に子供を雇う店の自業自得ともいえます。高校生や大学生にテスト休みをとらせない「ブラックバイト」の存在も問題になっていますが、小売店なども大概モラルが崩壊していますね。

誰もが煙たがる、うるっさいババアがおり、バイトのある少年がキレて、そのババアを鮮魚部の冷凍庫に閉じ込めた事がありました。

その時は、流石に笑いましたね。

No title

L,wさん

 これから社会に出ていく高校生にデタラメな労働現場を見せて恥ずかしい気持ちにならないとは、大人としてのプライドもくそもない子供のような連中なのでしょうね。強制力がないとそういう奴らは図に乗る一方です。

 息苦しい世の中と言われようと、もっと学生を学業に専念させるような改革が必要かと思いますね。

No title

タイトルと関係のないコメントですいません。
連休中はどこか旅行に行かれたりするのですか?

No title

seaskyさん

 GW中には旅行は計画していないですね。5月後半か梅雨が明けたくらいに、フラっと中部から近畿にかけて、史跡巡りをしようかなと思っています。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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