犯罪者名鑑 麻原彰晃 14

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 人民寺院 ジム・ジョーンズ
(1931~1978)

 オウムを宗教化していくにあたり、麻原が大きな影響を受けたであろうアメリカのカルト集団について考察していきます。

 ジョーンズは、白人至上主義者の父と、反対に黒人愛護者の母の子として産まれました。父はジョーンズが幼いころに家を出ていったため、ジョーンズは母の影響を強く受け、幼いころから聖書に親しみ、成人してからは聖職者の道を歩み始めます。

 若い頃のジョーンズは、正真正銘の聖人でした。貧しい黒人が住むゲットーで、差別主義者の弾圧を受けながらも布教、慈善の活動を続け、多くの人の心を救ったのです。このまま生涯を終わっていれば、ジョーンズはキング牧師やマルコムXのように、道徳の教科書に載ってもおかしくはありませんでした。

 しかし、ジョーンズが次第に共産主義に傾倒し、共産主義活動家としての色を強めていくようになると、雲行きが怪しくなっていきます。反資本主義のアジ演説をぶつなど過激な面が垣間見えるようになり、暴力事件にも発展します。また、ジョーンズが主催していた人民寺院において、ジョーンズが多数の女性を囲っていることや、インチキ霊感商法で多額の金を集めていること、信徒に強制労働を行わせているなどの実態が暴かれ、マスコミからも批判の声が上がるようになりました。

 麻原も当初は牧歌的なヨーガサークルの主宰者にすぎず、熱心にヨーガの修行をし、他人のためを思い「菩薩行」を実践していた時期もありました。活動の当初において真っ当だった人物が、組織が大きくなるにつれ我欲を肥大させ、横暴になっていく現象は世界に共通してあるようで、やはり「権力が人を狂わせる」ということはあるようです。

 オウムや麻原にもいえるのですが、宗教団体や宗教家は、社会に批判されると、かえって頑なになり、主張をより過激にしていく傾向があります。ジョーンズはこの社会は腐っている、自らが本当の理想郷を築くしかないと宣言し、南米ガイアナに広大な土地を購入、そこを「ジョーンズタウン」と名付け、信徒数千名とともに移住します。

 黒人など、国家から差別を受け、貧困に苦しむ人を救った真の理想郷ともみられていたジョーンズタウンですが、マスコミの調べにより、本当はそこが北朝鮮と同じこの世の地獄であったことが明らかになっていきます。信徒たちはロクな食べ物も与えられず不衛生な生活を強いられる一方、ジョーンズと側近は権力を欲しいままにし、既婚者を引き剥がして妻を奪い取る、逃亡者にリンチを加えるなどの横暴を働いていました。また、麻薬の使用や軍事訓練を行っていたことなども明らかになっています。

 事態を重くみた米国政府は、議員を派遣し教団の本格的な調査に乗り出しました。派遣されたライアン議員は、そこで接したジョーンズの不安定な精神状態や、十数名もの老人が狭い小屋にすし詰めにされ死を待っているなどの光景を目にし、本国へ報告しようと飛行機に乗り込もうとしますが、ジョーンズは帰国しようとするライアン議員を配下に襲撃させ殺害します。

 その直後、ジョーンズは信徒たちに毒物を飲んで死ぬように命じました。命令に従わない信徒も幹部によって強制的に毒物を注射され、合計で914名もの人が命を落としました。この数は戦争ではない事件によって亡くなった人の数としては世界最多の記録として今も残っています。

 オウムのサティアン強制捜査の際、警察が恐れたのは、人民寺院同様、麻原が多数の信徒を巻き添えに自殺するのではないかということでした。だからこそ、慎重にも慎重を期して乗り込んだわけですが、幸いといっていいのかわかりませんが、麻原は信徒のことなどそっちのけで札束を握りしめて震えているだけで、犠牲になる信徒は出ませんでした・・・。


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 マンソン・ファミリー チャールズ・マンソン
 (1934~) 

 ジム・ジョーンズとほぼ同じ世代で、彼の活動も麻原には多大な影響を与えたものと思われます。

 マンソンを産んだのは売春婦の母親で、彼は産まれて数か月が経つまで名前も与えられず、ほったらかされたまま大きくなったそうです。普通の子供が学校に通っている間、彼は盗みなど悪さばかりを働き、三十歳ごろまで、人生の半分以上の月日を、少年院や刑務所で過ごしました。今でこそ教育のプログラムも充実した少年院ですが、昔はただの隔離施設のようなもので、マンソンは成人してからも読み書きが満足にできなかったようです。

 この点、熱心な読書家であり、宗教以外の知識にもそれなりに長けていた麻原とは相違していますが、マンソンには麻原にはない、人を惹きつける魅力がありました。ルックスと音楽です。

 60年代はヒッピーの最盛期で、顔立ちが整ったマンソンが、長髪に髭、貧乏くさい服装で道を歩くと、若い娘がわっと寄ってきたといいます。麻原も「常人離れ」した容姿ではありますが、それは嫌悪感や不潔感も含むもので、マンソンのようにアイドル的なカッコよさ(対象が下層階級限定としても)ではありませんでした。

 そして歌ですが、彼が目指したビートルズを超えられるほどの代物ではなかったものの、レコーディング・デビューを狙えるだけの水準にはあったようで、後にはマリリン・マンソンなどのミュージシャンにカヴァーされています。

 昔の日本で、庶民の教材で最適のものは「平家物語」など琵琶法師の弾き語りと言われたように、読み書きが満足にできない層に対しては、大層な能書きを垂れるよりも「リズム」で覚えさせるのがもっとも高い教育効果を生みます。麻原も尊師マーチなど歌による布教を行いましたが、マンソンに倣ったのかもしれません。オウムのようにエリートをだまくらかすことはできませんでしたが、マンソンは音楽によって下層階級の信徒を増やし、巨大なファミリーを形成していったのです。

 はじめはキャンピングカーなどで寝起きをしていたマンソン・ファミリーですが、所帯が大きくなってくると、大地主に取り入り、下半身のご奉仕をしてあげるのと引き換えに、牧場に住まわせてもらうようになります。ビートルズを超えるミュージシャンになることを夢見てレコーディング・デビューを狙うマンソンでしたが、レコード会社との話は中々まとまらず、彼が造った異様な集団だけが大きくなっていきます。ファミリーの生活は、廃棄された食料品を譲り受けたり、自動車泥棒をすることで賄われていましたが、金銭的にはいつもカツカツでした。

 そのうちに、麻薬やLSDなどの幻覚剤を用いるようになったマンソンは、妄想を肥大させていきます。近い将来、黒人が白人に対する戦争「ヘルタースケルター」を仕掛け、黒人が勝利する。しかし、黒人には統治能力がないためマンソンが台頭し、世界の王になる、という、まさに麻原が唱えたハルマゲドンと同じ、荒唐無稽な予言を唱え始めたのです。

 マンソンは暇を持て余したファミリーに、来るべきへルター・スケルターに備えて戦闘訓練をさせるなど過激化していきます。しかし、当然の如くへルター・スケルターなど起こるはずはなく、ファミリーは暴力衝動のはけ口を、犯罪に求めるようになっていきます。

 マンソン・ファミリーの暴走が始まりました。強盗目的で薬の売人を殺害したのを皮切りに、新進女優のシャロン・テートを、家の使用人にぞんざいな扱いを受けたという一方的な逆恨みにより殺害、スーパーのオーナーを強盗目的で殺害と、凶悪犯罪を繰り返していきます。

 最後には警察によりファミリーごと一網打尽にされたマンソンは、終身刑の判決を受け、今なお服役中です。逮捕によってますます神格化された感があり、現在も彼を崇拝するアメリカ人は多いのだとか。

 
 薬物の使用、軍事訓練、共同体の形成など、オウムとマンソン・ファミリー、人民寺院は数多くの共通点が見られます。熱心な勉強家であった麻原が、彼らを参考にして教団を組織、運営していたことは間違いないでしょう。
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No title

やはり海外の犯罪者はスケールが違いますね。
ジム・ジョーンズやチャールズ・マンソンも人を惹きつけるカリスマ性がずば抜けて高かったのでしょうね。
ルックスも麻原と違い目力があり容姿端麗だったのでしょう。
能力はかなり高い人達なのではないかと思います。
ルックスと能力が高かった犯罪者といえばテッドバンディがいますね。
麻原が過去の犯罪者について知識を深め自分流のアレンジを加えていきながら信者を増やして組織を大きくしていったのでしょうね。

まず殺害人数には驚きました!



こういう事例を知ると、「やっぱり途中で止まれないのかな」という考えが私の頭をよぎります。「和をもって尊し」な日本は、とりわけその傾向が強いようにも思われます。



嫌だな、私も「少しでいいから世の中をいい方向に変えられたら」、とか考えてしまう時があるんです。無論、自分にそんな力はありませんし、他人に影響力をもとう考える自体が私にはエゴに思えるのですが、時折、自分の描くいい世の中について、考えてしまいます。



それから気になる点があります。マンソンは、多少なりとも共産主義に、というかもっとハッキリ言えば、マルクスに被れていたりはしなかったのですか?

No title

>> seaskyさん

 スケールという点では、殺害人数はジョーンズに負けていますが、負傷者はより多く出してますし、国家に喧嘩を売ったという点で麻原もジョーンズに負けていませんね。やはり彼は世界で通用する犯罪者です・・・。どっかのサイトでは多数を巻き添えに集団自決したジョーンズにくらべ、札束を持って震えていた麻原はあまりにチンケとか書いていましたが、そんな侍的な潔さは犯罪者の評価には関係ないのに何言ってんだって感じでした。

カリスマ性という概念は抽象的ですが、それがどこから出てくるのかといえば自信でしょうね。自分の考えに絶対の自信がある人にはおのずと人がついてくるのだと思います。あとはその人が積み上げた事績にもよるでしょうか。麻原でいえば厳しい修行であり、その人がどれだけの思いで、どれだけの量のことをやってきたかというのは、自己紹介などされなくてもやはり滲み出てくるものだと思います。

 類似する海外の犯罪者についてはこれからも取り上げていきたいところですね。バンディについても紹介したいところですが日本だと誰が似てるのかなあ。ルックスが良くてそれなりに社会で成功した実績がある人物でいうなら松永太とかでしょうか・・。

 麻原は、一連の行為について信者を言いくるめるだけでなく本当に、自分では宗教的に正しいことを行っている自信があったと思うのですが、一方で犯罪者のことを研究し、現実的にそれを参考にするというのは清濁併せ呑むというか、常人では考えられない思考回路ですね。
 

>>L,wさん

 少数の人間に権力が集中するような体制だと、トップが道を誤ったとき制御できず、またトップも配下の欲望を制御できず止められなくなってしまうのでしょうね。

 いい世の中に変えたいと考えることは大事だと思いますよ。たとえ小さなことでも動くことも大事だと思います。ただそれには金と力が必要ですね。思想だけでは無理です。悪人に対し、ただ口で悪いことを考えるのはやめろ、幸せになろうといっても強いヤツには一笑に付されるだけですし、弱い人にはお前に何が分かるとなるだけです。

 単純な話ですけど世の中がよくなるには経済が上向くしかないです。金に勝る思想はないです。歴史をみると復興というものは案外急速になされるものですが、今の日本は様々な利権が絡み合って思ったような政策がとりにくいですから、仮に織田信長のような千年に一人の英雄が出たとしても中々変革は難しいでしょうね。
 
 織田信長もそうですし初期のヒトラーもそうですけど、弱者に支持される政治をやれば社会は復興します。消費の主役である弱者にお金が回らなければ経済は上向かないのは私のような素人でも知っていることです。それにはアベノミクスよりも中間から上の層が握っている不当な利権をはく奪するのが先だと思いますが、自民党もまた利権の上に成り立っている政党なのでしょうから変革など無理でしょうね・・。
 
 バブル崩壊から長い年月をかけて、ようやく「努力すればみんなうまくいく、貧乏なヤツは自己責任」という思想が間違っていることにみんな気付き始めてきましたけど、今の体制だと復興にはまだまだ時間がかかるでしょう。私は混迷期の人間らしく、せいぜい世の中を引っ掻き回したいと思っていますが、今の状況では犯罪しか方法がありません・・・・。

 マンソン自身は無学で書物にも触れなかったということですが、聖書を独自の方法で解釈するなど、思想を理解する知能はありました。時代背景もあり共産主義に傾倒していたとしても不思議ではないですね。

私が考える、ここでの「いい世の中」とは、稚拙な言い方をすれば、個々が互いを尊重し合う世の中、という超素朴なものです。


自分と他人との差異をしっかり認識し、自分の価値観を押し付けるのは止めましょう。また、関わりを求めるのも止めましょう。という、簡素なもので、それこそ「じゃあ宗教でも開けよ!」と言われてしまいそうなものです 笑


ロールズが言っていました。個人個人の年収を個人個人が解らないようにしてしまえば平和になるよ、みたいな事。いわゆる「無知のヴェール」です。


発言権を持つためには、ロールズのような著名な学者(または思想家)になるか、経済力や権力をもつ者になるのが、解りやすい方法でしょう。

そういった方法もある中で、津島さんのように小説によって大衆に働きかけようという考えは、とても夢のあるものであると、私は思います。


小説は、観念を牛耳るツールであり、また、形式に捕らわれない、という性質があるので、様々な可能性を秘めていると思います。

「ウェルテル効果」などがその最たる例ですかね。限定効果的とはいえ、読者の観念に訴えかけ、読者に死の決断を迫る、小説の効用。


津島さんも是非、無限の思想宇宙の中でのある座標の価値を、大衆に示して下さい!

No title

>>L,wさん

お互いを尊重し合える世界が実現する唯一の方法は格差がなくなることですね。価値観も多様化してますし、どれだけ権力や発言力があろうと、もう一人の言葉で国レベルの数の人の心が動くことはないと思います。一人ひとりがゆとりある暮らしができるようにならないと。結局、金です。金がすべてです。

これからまた私の人生を語っていきますが、小説とは実社会で通用する能力、性格を持たなかった私が「逃げ」で始めたものであり、自分では夢のある物とは思えません・・・。ただ、私が人生の中で感じた怒りをその場であらわさず、溜め込んで溜め込んだことで、文学という形で金銭収入に結び付けばいいと願うばかりです。金にならなければ、私のやっていることはただのゴミの量産です・・。今はせめても、コメントが欲しいところですが、ここ二か月新規の方からコメントが貰えていない状況で不安です・・・。拍手数も少なく、今の活動にはまったく自信がもてません。

可能性として、夢があると思います。


人間どうにかして自分の望むものを手に入れたい。その方法論として、小説は、夢があると思います。


前にも書いた通り、津島さんがもっていられるような情念が、芸術には必要でしょう。

No title

>>L,wさん

今の状況で前途に希望を見出すことはまったくできませんが、とにかくやっていくしかないです。
プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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